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2018年3月

2018年3月 7日 (水)

「第六百十二話」

「ここに、オレンジがあります。」
「はい。」
「このオレンジを箱の中に入れる。」
「はい。」
「すると、箱の中のオレンジは、どうなる?」
「すいません、博士。私には、今回の事件と箱の中のオレンジと一体どう関係あるのかが分かりません。」
「刑事さん。」
「はい。」
「箱の中のオレンジは、どうなると思いますか?」
「すいません、博士。博士の事だから、きっと今回もこの殺人事件とは一見何の関係もなさそうな実験が、事件の解決へと導かれて行くのでしょうが、私にはてんで箱の中のオレンジがどうなってるのか想像もつきません。」
「全く?」
「ええ、全くです。」
「では、もう一度。」
「もう一度?」
「さっき入れたオレンジを箱の中から取り出します。」
「はい。」
「オレンジは今、僕の手のひらの上にあります。」
「はい。」
「このオレンジをこうして箱の中に入れる。」
「はい。」
「さて、箱の中のオレンジは一体どうなる?」
「いやですから、博士。私には、全く理解出来ないんですよ。きっと今回も思いもしない形で実はこの実験が殺人事件のトリックを暴くのでしょうが、博士。全く見当も付きません。」
「刑事さん?何でもいいんですよ?箱の中のオレンジがどうなっているのか?何でも構いません。どうぞ、自由な意見を言ってみて下さい。」
「そう言われましても、博士。本当に見当も付きませんよ。」
「全く?」
「全くです。」
「なら、仕方ありませんね。」
「すいません、博士。博士がせっかくこうして用意して下さったと言うのに、期待に答えられなくて、本当に申し訳ない。」
「もう一度最初からやってみましょう。」
「え?」
「箱に入ったオレンジを取り出します。」
「博士?」
「オレンジは今、僕の手のひらの上にあります。」
「いや博士?」
「このオレンジをこうして箱の中に入れる。」
「は、はい。」
「さあ、刑事さん?箱の中のオレンジは一体どうなっていると思いますか?さあ?刑事さん?」
「博士、この実験を何度繰り返しても私の答えは同じです。」
「何でも構いません。どうか自由な意見を言ってみて下さい。」
「この実験を何度繰り返して、その質問を何度聞かれても私の答えは同じです。博士、私には箱の中のオレンジがどうなっているかなんて、さっぱり分かりません。」
「ふざけんなっっ!!」
「は、博士!?」
「何でもいいって言ってんだろ!どんな意見でも構わないって言ってんだろ!」
「ちょっと、博士!?」
「何で言わないんだよ!何で何度も何度も何度も何度もチャンスを与えてんのに、何度も何度も何度も何度も見当も付きません見当も付きません見当も付きません見当も付きませんって言うんだよ!言えんだよ!何でもいいじゃん!何か答えればいいじゃん!」
「ちょっと、落ち着いて下さい!」
「箱の中のオレンジは、マジックのように消えたとかさ!箱の中でオレンジは、腐ってるとかさ!箱の中にオレンジは、入ってないとかさ!何でもいいじゃん!」
「す、すいません、博士!分かりました!分かりましたから、もう一度チャンスを下さい!次は必ず何か答えます!お願いします、は博士!」
「いや、もうチャンスは与えません。」
「え?」
「今回の殺人事件は、迷宮入り確定です。」
「冗談ですよね?博士!」
「僕が冗談を嫌いなのは、知っていますよね?刑事さん。」
「そんなぁ!」
「お帰り下さい。」
「またですかぁ!」
「僕には、完成させなきゃならないタイムマシーンの研究があるので、お帰り下さい。」
「箱の中のオレンジは、オレンジジュースになってる!」
「もう手遅れです。」
「箱の中のオレンジは、四角くなってる!」
「刑事さん?出口は、あちらです。」
「トホホ。」

第六百十二話
これが完成すれば今犯人がどうこうなんてどうだっていいじゃん案件」

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2018年3月14日 (水)

「第六百十三話」

「医療ミス!?」
「ば、馬鹿!声がデカい!」
とある病院のとある一室で男性医師二人がだいぶ遅めの昼食を取りながら何やら焦臭い会話をしている。
「お前、医療ミスって一体どんな医療ミスしでかしたんだよ。」
「手術でミスした。」
「どんな!」
「臓器を全部摘出しちゃったんだよ。」
「はあ?何だよ!ジョークかよ!驚いて損したぁ!」
「ジョークなんかじゃない!」
「ジョークなんかじゃなかったら、臓器を全部摘出したって何だよ!臓器を全部摘出しちゃったんだよってさ!そんな医療ミス有り得ないだろ!」
「でも、そうしろって言われたんだよ。」
「そんな訳ないだろ!」
「でも、確かに手術室入る前にそう言われたんだよ。」
「誰に!」
「誰とかそう言う問題じゃなくて、そう言う言われたんだよ。」
「誰とかそう言う問題だろ、これは!いや、そもそもがそんな指示を出す医師はいない!で、仮に誰かが、臓器を全部摘出しろって言ったんだとしても、それを実行する医師もまたいない!」
「医療ミスだよ。医療ミス。」
「頭抱えて医療ミスだよって言ってるレベルの医療ミスじゃないだろ!こんなの手術じゃなくて解剖だよ!解剖!」
「いやでも、手術自体は成功したんだよ。」
「臓器を全部摘出して何をもってそんな純真無垢な笑顔で手術成功と言えるんだよ!」
「右手の小指の骨折の手術のだよ!」
「何で臓器を全部摘出しといて右手の小指の骨折の手術の成功をキレながら言えるんだよ!お前は、右手の小指を骨折した患者の臓器を全部摘出して殺してんだぞ!」
「え?殺してないよ?」
「はあ?死んでないのか?」
「死んでないよ。今は麻酔で眠ってる。」
「逆に何で死んでないんだよ!臓器を全部摘出しちゃってんのに!何の話が展開されてんだよ、今!ここはどんな異空間に支配されてれんだよ!」
「臓器を全部摘出しちゃったのは事実だけど、その後これは医療ミスだって気付いて、摘出しちゃった臓器を全部元に戻しちゃった。」
「パスルゲーム感覚じゃん!」
「記憶力が人並み外れてて良かった!記憶力だけでここまでやって来た甲斐があったよ!」
「技術がモノを言う世界で、よくもそんな自慢気に語れるな!てか、その患者は本当に生きてんのか?」
「ああ、パズルさんは生きてる!手術前と手術後の数値に何ら変化はない。」
「あだ名付けちゃってんじゃんか!いやでも、絶対に何か後遺症が出て来るぞ?」
「右手の小指の骨折の手術自体は大成功したんだ!後はパズルさんがリハビリをどれだけ頑張るかだ!」
「そっちの心配なんかこれっぽっちもしてねぇっての!パズルさんのパズルさんたる由縁の心配だ!」
「摘出しちゃった臓器は全部完璧に元通りにしたんだ!何も心配する事はない!まあただ心配な事が一つあるとすればだな?」
「一つしかないのかよ!」
「パズルさんが目を覚ました時にだよ?右手の小指の手術って聞いてたのに、首から下腹部に掛けての長い一本傷があるって事にいちゃもんつけて来ないかが心配。」
「そんなの絶対に何か聞いて来るに決まってんだろ!」
「パズルさんが細かい事を気にしない性格に賭けるしかないな!」
「細かい事じゃ済まされないポイントだろ!気にしたくなくても気になるよ!だって絶対スゲェ痛いぜ?」
「白々しく前からありましたよ?とか言って誤魔化せないかな?」
「お前それ、本気で言ってんのか?真新しい傷をそんな風に捉えられる訳がないだろ!いや、それ以前に全世界が証人だろ!」
「よし!じゃあ、ちょっと脳をいじって来る!」
「何考えてんだよ!」
「ジョークだよ。ジョーク。」
「ジョークでも言っちゃダメなヤツだろ!それ!」
「素直に謝るよ。」
「それしかないな。」
「パズルさんに。」
「それは口が裂けても言うなよ!」

第六百十三話
早右手の小指動かしワールドチャンピオンの悲劇」

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2018年3月21日 (水)

「第六百十四話」

「聞いてみるか?だが、どうやって?」
この心地良い広さの心地良い喫茶店に来て、マスターの淹れる心地良いコーヒーをさまざまな人間賛歌が飛び交う中で堪能する。それが週末の朝の俺のストレス発散法だ。だが、今日は違った。俺がマスターの店に入ると既にそのスーツケースの男はカウンター席で、スクランブルエッグとコーヒーを堪能していた。俺は特に気にする事もなく、いつもの窓側のテーブル席に座り、いつもの心地良いコーヒーを注文した。しばらく他の客の会話に耳をやり、窓の外の人間賛歌を垣間見ながら、ふと俺はカウンターのスーツケースの男が気になり、何気なく目を向けた。黒のスーツに黒のパンツ、黒いコートと黒い帽子を隣の席に置き、黒いスーツケースは足元にある。特に気にする事もない出で立ちだが、何かが違和感だった。何だ?何がそんなに気になる?そう、自問自答しながら俺はスーツケースに目を向けた。
「!?」
今のは何だ!?夢か?幻か?俺には、一瞬そのスーツケースの中に若い女性の死体が入ってるビジョンがレントゲン写真のように見えた。いや、いやいやいや、そんなはずはない。そんな訳がない。人を殺してスーツケースに入れた人間が、朝からスクランブルエッグとコーヒーを喫茶店で堪能なんかするか?俺ならしない!そんなバカな話がある訳がない!ない、絶対にない。そうやって、自分の気持ちを落ち着かせようとすればするほど、さっき見えたビジョンが生々しく頭の中でリフレインする。
「聞いてみるか?だが、どうやって?」
今日この喫茶店に来てからの事をダイジェストに思い出しながら俺は、味のしないコーヒーを口に運び、窓の外を見ていた。いや、実際には窓ガラス越しに店内のあの男のスーツケースを凝視していた。考えてもみろ?仮にあのスーツケースの中身が若い女性の死体だとしてだ。だから何だって言うんだ?だってそうだろ?別に自分に関係のある人間が殺された訳じゃない。それに、あの男が殺した訳でもないかもしれない。あの男自身も誰か別の人間に頼まれて、あのスーツケースをどこかに運ぶ途中なのかもしれない。その途中でこの喫茶店に立ち寄り、スクランブルエッグとコーヒーを堪能しているのかもれない。いやむしろ、中身を知らないからこそ、そうなのかもしれない。そうだな。それがもっともしっくりくる。
「今日は冷えるね。」
「えっ!?あ、ああ、こんな日は、マスターが淹れるコーヒーに助けられてるよ。」
「心にもない事をいいやがって!」
「いや、本当さ。」
マスターは、気付いてない。気付いているんだとしたら、俺にあんな普通に話し掛けては来られない。そもそもマスターの性格なら、とっくに警察を呼んでいるはずだ。
「!?」
マスターとの会話を終え、ふとその視線を何気なくスーツケースの男の方に向けると、男はコーヒーカップを持ち上げ、笑みを浮かべて軽く会釈をした。俺も手にしていたコーヒーカップを少し上げ、笑顔で軽く会釈を返し、視線を窓の外へ向けた。
「気付いた事を気付かれたのか?」
いやいやいや、考え過ぎだ!何にどうスーツケースの男が気付くって言うんだ!今のは、マスターとの会話を聞いた男が、そうですよね的な無言の同意を示したまでだ。そう、こう言う店でありがちな客同士のアイコンタクトみたいなもんだ。それに、さっきも考えた事だが、仮にあのスーツケースの中身が若い女性の死体だとして、俺には何の関係もない事なんだ。そもそもあのスーツケースの中身が何であっても全く俺の明日からの人生には影響はない。むしろここでスーツケースの男と会話してしまった方がトラブルの始まりだ!ここは、いつも通りに過ごすのが一番だ。いつも通り、窓の外の人間賛歌を垣間見ながら、店内の会話を堪・・・って何だと!?やけに店内が静かで、珍しくマスターが話し掛けて来たかと思ったら、店内には今、俺とマスターとスーツケースの男しかいないじゃないか!?
「落ち着け、落ち着くんだ。」
そう、落ち着こう。少し落ち着いて考えてみろ。そう、息を吸って、目を瞑ってゆっくり開けて、息を吐く。そもそもスーツケースの中身が若い女性の死体な訳がない。あのビジョンも何かの間違いだ。日常に非日常の刺激を欲する悪い癖が見せたビジョンだ。実際には、見えていない。頭の中でそうだったら何か刺激的だなと思っただけだ。そう、俺は暇なんだ!暇過ぎて暇過ぎて、どうしようもないだけだ!
「お先に。」
「え?」
気付くとスーツケースの男が帽子を少し上げ、笑顔で軽く会釈をしながら話し掛けていた。俺もそれに答えるように、軽い会釈で返した。そしてスーツケースの男はスーツケースと共に、俺の横を通り過ぎて店を出て行こうとしていた。
「そのスーツケースの中に女の死体が入ってる!!」
気付くと俺は、席を立って言葉を口にしていた。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
ああ、どうやらまた、やってしまったようだ。

第六百十四話
スーツケース病」

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2018年3月28日 (水)

「第六百十五話」

「先生?この状況は、一体何なんですか?」
「海だよ。」
「それは分かりますよ。」
「体育座りで夕陽が赤く染める海を眺める短編小説家と出版社の女だよ。」
「だから、そんな事は分かってますよ。そう言う事じゃなくて、何でこの状況になってるのかの説明を求めてるんですよ。」
「短編小説家と言ったら、海だろ?」
「そんな事はないでしょ。短編小説家と言ったら何々なんてそもそもないじゃないですか。強いて言うなら、SFですか?」
「漠然としてるな!」
「海よりカテゴライズされてるでしょ!てか、先生?アタシは、作品が出来たから取りに来てくれって連絡を受けて先生の家に行ったら玄関のドアに、ここの地図が貼ってあってわざわざ来たんですよ。」
「ご苦労!」
「いや、労いは作品を渡してから言って下さい。」
「こうして海を眺めてると、人生って何なんだろうって考えさせられるな。」
「何ですか?今回は、海をテーマにした作品なんですか?」
「幸福も不幸も、希望も絶望も、生も死も、全てがどうだっていいやって気になるな。人々の数だけ闇がある。人々は闇を心の中に隠しながら光の中で日常生活を過ごしてる。でも、こうして夕陽が赤く染める海を眺めてると、何だかんだで、平等なんだなって気になるな。」
「すいません。ちょっといいですか?え?何?何で夕陽が赤く染める海を眺めながら哲学的な事を言ってるんですか?」
「刹那感!」
「せつなかん?」
「人はもっと刹那感を持って生きて行くべきだ!」
「どう言う意味ですか?あのう?とりあえず完成した原稿を?」
「明日、自分は死ぬかもしれない。いや、数時間後には、数十分後には、いやいや、七秒後の未来には死んでるかもしれない!そう言う価値観で生きて行けば、もっと目の前の今の人生が素晴らしいモノになるんじゃなかろうか?」
「そんな面倒臭くて現実味のない感覚で生きて行けませんよ。」
「現実味がない?だがしかし人はいつか死ぬ!」
「そうかもしれないですけど、目に見えない死と言うモノを意識しながら生きて行くのは、しんどいですって話ですよ。」
「俺達だって今日、無事に家に帰れる保証はない!」
「保証はありませんが、アタシはそう言う気持ちで生きてます。」
「だからダメなんだよ!」
「何ですか急に!?何で頭ごなしに否定されなきゃならないんですか!」
「だから、美人ってだけで取り柄と言ったら足が速いだけのお前はダメなんだよ!」
「それ関係ないでしょ!と言うか、早く完成した原稿を渡して下さいよ!何に付き合わされてるんですか?アタシは!」
「刹那感!」
「分かりましたよ!先生は先生で刹那感で生きて行けばいいじゃないですか!それとも?今回の作品は、その刹那感とこの海がテーマなんですか?だとしたら、わざわざこんなとこに呼び出したりしないで、家で説明してくれればいいじゃないですか。」
「いや、海に来たのは、ただただ気付いたらこうして体育座りで海を眺めてたからだ。」
「それダメなヤツじゃん!仕事に行こうと電車に乗って気付いたら海!って、パターンの人生に疲れちゃった的なヤツじゃないですか!絶対的に命の洗濯が必要なヤツじゃないですか!」
「疲れちゃったのかな?俺。」
「俺、疲れちゃってないでしょ!気付いたら海パターンの人は、本当に気付いたら海なんですよ!先生は、意図的に海に来てますよね?玄関のドアに貼り紙までして、意図的に来てますよね!」
「でも、本当に気付いたら海だったんだ!」
「寝たからでしょ!それは電車の中で寝てたからでしょ!別の意味の気付いたら海パターンのヤツじゃん!徐々に海に近付いて行くワクワク感を楽しめなかったパターンのヤツじゃん!」
「で?お前はなぜ、俺の横で体育座り?」
「ぶっ飛ばしますよ?」
「刹那感!」
「殺しませんよ!」
「確かに、ワカメでぶっ飛ばされたとこで、死にはしない。だがな!ワカメでぶっ飛ばされても当たり所が悪かったら死ぬんだぞ!」
「何でアタシがワカメでぶっ飛ばさなきゃならないんですか!」
「ある登山家がこう言った。」
「そこに山があるから、ですか?」
「言うなよー!それ先に言うかー!言わないだろ!普通!」
「いやちょっともう、いい加減にしてくれますか?訳が分からないんですよ!意味不明な言葉を羅列して列挙されて頭の中が酔って気持ち悪いんですよ!さっさと完成した原稿を渡してくれませんか?」
「ん。」
「何で海を指差してるんですか?まさか、この海が作品なんて突拍子もない事を言うんじゃないでしょうね!」
「そんな突拍子もない事を言う訳がないだろ!」
「先生なら言うでしょ!じゃあ、何で海を指差してるんですか?」
「そこに完成した原稿があるから。」
「捨てたのかーっ!」
「まあ、捨てたと言うか、陶芸家がやるアレだよ。」
「自宅のゴミ箱でやれ!」
「いやほら、山がテーマの作品だったからさ。何か海を眺めながら読み返してたら違うなってなっちゃって、つい!」
「だったら山へ行け!何で山をテーマの作品を書いて海に来るんですか!バカなんですか?いや、違う。わざとですよね?これ全部、わざとやってますよね?先生?本当は、作品なんて完成してないんじゃないんですか?それを誤魔化す為にわざわざこんな事をしてるんじゃないんですか?」
「何で海に波が立つか知ってるか?それは、反対側から大きな人が押してるからなんだぞ?」
「近くにホテルがありましたよね?今すぐ!書き上げてもらいますからね!」
「お化け怖い。」
「今日中にお願いしますよ!と言うか、完成するまで缶詰めですからね!ほら!行きますよ!」
「替えの下着ない。」
「アタシもないですよ!」
「汚ねぇ!」
「誰のせいだと思ってるんですか!途中で買いますよ!」
「経費?」
「先生は自腹です!」
「ええーっ!」
「ええー、じゃない!」
「お得なプランとかあるかな?」
「何で満喫しようとしてるんですか?」
「イベントとか開催されてるかな?」
「だから、何で満喫しようとしてるんですか?さっさと歩いて下さい!」
「助けてー!」
「叫ばない!助けて欲しいのはアタシの方ですよ!」
「見よ!」
「え?」
「夕陽が沈む海は、絶景だな。」
「そうですね。」
「明日も見たいな。」
「見るなら一人で見て下さい!ほら、歩く!」
「はい。」

六百十五話
「短編小説家、別荘買うってよ」

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