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2018年7月25日 (水)

「第六百三十二話」

 新しい町に引っ越して来て早々、体調を崩してしまった僕。家の近くの町医者を探し、そして今僕は順番を待っていた。
「次の人間どーぞ!」
「ガチャ!」
「いや、先生!次の人間どーぞって!って、ゾンビ!?ゾンビが白衣着て医者みたいに座ってる!?」
「病院内では、お静かに。」
「白衣着たゾンビに注意されてる!?」
「それで?今日はどうなさいました?」
「体調を聞かれている!?白衣着たゾンビに体調を聞かれている!?」
「大丈夫ですか?」
「心配されている!?白衣着たゾンビに心配されている!?」
「あの?病院内では、お静かにと言いましたけど?」
「息が臭い!?何とも形容しがたい臭いだ!?そして、今気付いたけど診察室の中は消臭剤だらけ!?」
「あの?少し落ち着かれたらどうです?」
「なら、ちょっと質問してもいいですか?」
「構いませんよ。」
「ここは一体何なんですか?アミューズメント施設ですか?」
「町医者です。」
「はい、僕もそうだと思って来たんです。引っ越して来たマンションの近くの病院にそう思ってやって来たんです。そしたら、診察室にゾンビ!?これ、どゆことなんですか?貴方は一体何なんですか?」
「医者ですよ。ゾンビの医者です。」
「ゾンビの医者!?白衣着たゾンビじゃなくて!ゾンビの医者!?」
「そうです。それで、今日はどうなさいました?」
「いやまだそこまで行けない!本題に入れない!とてもじゃないけど本題に辿り着けない!」
「まだ何か聞きたい事がお有りなんですか?」
「お有りもお有り!お有り過ぎてお有り過ぎますよ!」
「そうですね?うん。今日の午前中の診察は、どうやら貴方で最後のようなので、何か聞きたい事があれば、どうぞ?」
「あのう?大丈夫なんですか?」
「何がですか?」
「いろいろとですよ。」
「大丈夫ですよ。」
「大丈夫じゃないでしょ!」
「何をそんなに心配されているんですか?」
「お医者さんて、患者さんの事をいろいろするじゃないですか?」
「しますね。」
「熱を計ったり聴診器当てたり、直接触れたりするじゃないですか?」
「ええ、医者ですからね。」
「大丈夫なんですか!?」
「何がですか?」
「そのう?失礼な言い方かもしれないですけど?」
「馴れてるので構いませんよ。」
「感染したりしないんですか?ほら、だって映画とかでよく、ゾンビに噛まれたりすると噛まれた人間がゾンビになっちゃったりするじゃないですか!」
「あれは、映画ですよ?」
「映画以上の事が僕の目の前で巻き起こってるんですけど!?」
「ゾンビは、病気ではありません。ゾンビは、死体が腐って甦った者です。」
「病気じゃないのか。良かった良かった。なら、感染はしないんですね。」
「しません。私の病院でゾンビになったと言う患者さんは一人もいません。」
「ああ、そうですか。それを聞いて安心しました。って、死体が腐って甦ったって何なんですか!?それはそれで、それはそれでしょ!」
「いちいちですね。」
「いちいちですよ!こんなのいちいちでしょ!数日前にこの町に引っ越して来たばっかなんですから!突然こんな体験したら、そりゃあ!いちいちでしょ!」
「しかし、それ以上でもそれ以下でもないので、ゾンビについては説明のしようがないですよ。」
「元々、この町のお医者だったんですか?それで、ゾンビになってからも患者さんを助ける為に続けてるって事ですか?」
「いえ、生きてる時はグラディエーターでした。」
「剣闘士だったんですか!?と言うか物凄く昔の人なんじゃないですか!?」
「ええ、それで気付くとゾンビで甦っていて、時間も有り余っていたので、勉強してこの道に進みました。」
「ゾンビから医者になれるの!?」
「まあ、元々人体の構造については人より知識がありましたからね。」
「まあ、どこをどう切れば的な事ですもんね。でも、授業中に何か臭うなと思って隣見たらゾンビがいたらビックリですね!」
「そうでもないですよ。」
「そうなんだ!?」
「意外とみんな、私の体に興味津々でした。」
「逆に!?」
「医者なんて知識と技術があれば、猫でもなれますよ。」
「そうなんですか!?いやいやいや、猫は無理でしょ!猫は!」
「人間の言葉、喋れませんもんね。」
「そう言う問題じゃなくて!」
「手術中に毛玉とか入ったら大変ですもんね。」
「先生は先生で目玉とか入っちゃいそうですけどね。」
「昔、術後の患者さんのレントゲン写真を見た時に、目玉が写ってた時は驚きましたよ。」
「入っちゃってた!?」
「冗談ですよ。さて!緊張もほぐれて来ましたか?」
「ああ、緊張をほぐしてくれてたんですね。」
「それで?今日はどうなさいました?」
「それが、何だか無性に血が飲みたいんですよ。それに、急にコウモリになっちゃうし、十字架が苦手になっちゃったんですよね。」
「それあれじゃん!」

第六百三十二話
「ゾンビの医者と吸血鬼の患者」

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