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2018年7月11日 (水)

「第六百三十話」

「チェックメイト。私の勝ちのようだな。」
「いや、それはどうかな?」
「どう見てもこのゲームは私の勝ちだ。ここからの逆転劇は不可能だ。」
「フハハハハハハハハ!」
「そんな悪魔的な笑い方をしたとこで、どうしようもない。神も悪魔もこの状況からの逆転は不可能だ。」
「それはどうかな?」
「何を根拠に不敵な笑みを浮かべられるんだ?」
「人は、勝利を確信した時から勝利の女神を見失う。そんな感じの言葉を知らないか?」
「そんな感じの言葉を知っているがな。いいか?それには、逆転出来るルートが必要だ。だが、この盤上の完璧なまでの勝利を見てみろ。ここにそんな逆転のルートが一体どう存在する?」
「フハハハハハハハハ!」
「だから、その笑い方はやめろ。」
「分からないか?この盤上には、勝利を確信した者には見えない逆転のルートが存在する!」
「いいか?教えてやろう。キミが今している言動の事を世の中では何と言うのかを。」
「何て言うんだ?」
「負け惜しみ、だ。もしくは、悪足掻き、だ。」
「フハハハハハハハハ!」
「悪魔的な笑い方はやめろ!」
「ダハハハハハハハハ!」
「鍛冶屋的な笑い方はもっとやめろ!」
「後で吠え面かくなよ。」
「かくか!全ての駒で王を取り囲んでる状況からどうやって逆転出来ると言うんだ!」
「ジッと待つ!」
「ジッと待つ?ジッと待つとは?ジッと待つとは何だね?」
「例えばどうだ?貴方が心臓麻痺で死んだとしたら、このゲームは僕の勝ちだ。」
「何?」
「例えばどうだ?貴方がスナイパーにぶっ殺されたら、このゲームは僕の勝ちだ。」
「いや、ちょっと待て。」
「例えばどうだ?貴方に隕石が落ちて死んだとしたら、このゲームは僕の勝ちだ。」
「お、おい。」
「例えばどうだ?窓から入って来た蜂に貴方が刺されてアナフィラキシーショックで死んだとしたら、このゲームは僕の勝ちだ。」
「ちょっと待て!!」
「ん?どうした?トイレか?なら例えばこれはどうだ?トイレの水が大逆流した勢いで貴方が天井に激突して頭がペシャンコになって死んだとしたら、このゲームは僕の勝ちだ。」
「トイレではない!」
「なら、どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたもない!さっきから一体何を言ってんだ?何の話が展開されているんだ?」
「え?何の話って、僕がここから逆転する話だろ。その話以外に今する話があるか?」
「逆転する話?」
「ああ。」
「今のが逆転する話なのか?私が死ぬ話ではなくてか?」
「結果的に貴方が死ぬ事が、このゲームに勝つ事に繋がる。殺して申し訳ない。」
「謝られても複雑な気分だ。」
「なので、僕はこれから果てしなくジッと待たせてもらう。」
「だから、ちょっと待て!果てしなくジッと待つな!」
「今さら時間制限を設ける訳じゃないだろうな?これは大会じゃないんだぞ?素晴らしい庭園でお茶を飲み会話を楽しみながら行う趣味の領域だぞ?だから僕は、ジッと待たせてもらう。」
「ジッと待つって一体どれぐらい待つって言うんだ?」
「そんなの決まってるだろ?貴方が死ぬまでだ!!」
「そんな勢いよく立ち上がって鼻に触れるか触れないかの距離で指差しながら大興奮して言う事ではないだろ!」
「すまない。」
「まあ、座って紅茶でも飲んで落ち着きなさい。」
「・・・・・・よし!落ち着いた!」
「本当か?」
「さあ、ゲームを再開しよう。」
「ゲームを再開と言われても別に中断していた訳ではないだろ。そもそもが既に私の勝ちが決まっているのだから、私の死を待ったとこで、このゲームの結果が変わる事はないと思うが?」
「それはどうかな?」
「こんな無駄な時間を過ごすのなら、もう一度ゲームをしようではないか。」
「それは出来ない。」
「なぜだね?何もしないで私が死ぬのをジッと待つなど、無駄で仕方がないだろう。」
「新たにゲームを開始すると言う事はつまり!今回のゲームで僕は敗北したと認める事になる!」
「いいではないか。」
「僕だって勝機ゼロの完全逆転不可能な状況下なら、その提案を飲める!だが、目の前でまだ逆転可能なゲームを放棄して新たにゲームを開始する事は出来ない!」
「だから!一体どんな逆転が可能だと言うのだ!私が死んだとしても変わらないのだぞ?」
「僕が死んだらどうだ?」
「何?」
「僕が死んだら、敗者死亡で勝負は無効になる!つまりそれは、ドロー!」
「そんな馬鹿な事があってたまるか!私が死のうがキミが死のうが、既に勝敗は明らかだろ!」
「それは、負け惜しみですか?」
「勝利宣言だ!」
「さあ、ゲームを再開しよう。」
「だから!」
「あれ?」
「どうした?」
「何かよく分からないけど、気分が悪くなってきた。あれ?何かよく分からないけど、心臓が止まりそう。」
「そうか。ならキミの死に免じて、このゲームはドローにしてやろう。」
「嬉しくないぃぃぃぃぃぃぃ!!」

第六百三十話
「人生チェックメイト」

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