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2018年7月18日 (水)

「第六百三十一話」

「あれ?悲しくもないのに、涙が出て来た。」
「病気?」
「病気!?」
「だって、悲しくもないのに、涙が出て来たんでしょ?あ、もしかして嬉し涙?そっち系?」
「別に、嬉しくもない。」
「病気?」
「病気!?」
「だって、悲しくも嬉しくもないのに涙が出て来たんでしょ?これはもう、病気よ!病気!死ぬヤツよ!死ぬヤツ!」
「病気で、しかも死ぬヤツなの!?そうなの!?」
「ああ、悲しいわ。こっちが涙出て来ちゃうヤツだわ。」
「拝まないでよ!病気じゃないわよ!病気だとしても死ぬヤツじゃないわよ!だから本格的にブツブツ言いながら拝まないで!」
「じゃあ何?目にゴミが入った感じのヤツ?」
「別に何か入ったって違和感はないわ。ただただ、訳も分からずに涙が出て来たって感じよ。」
「なるほどね。」
「だから拝まないでって言ってるでしょ!あのね?例え死ぬヤツだったとしてよ?この涙が出るのがそう言う病気だったとしてよ?そうだったとしてよ?死んでもないのにその人を拝むのおかしいからね!人間としてどうかしてるからね!」
「何言ってるのよ!!」
「何でこのタイミングで物凄い激怒なの!?」
「死んでから拝んでたら、アタシがアンタの為に拝んでんのが分からないじゃない!」
「分からなくていいのよ!そう言うのは!そう言うのは、拝んでる側のエゴだから!」
「なら、今はそのエゴに酔わせて!」
「典型的な自分本位出して来ないでよ!」
「でも、さっきから流れてる涙、止まんないじゃない!」
「ちょっと本格的に病院行こうかしら?」
「行ったとこで、お金をドブに捨てるようなもんよ!だって既に手遅れなんですもん!」
「だから拝むのやめて!涙腺がぶっ壊れちゃっただけかもしれないじゃない!」
「涙腺崩壊病?」
「そんな病気があるのか知らないけど、あるんだとしたらそれよ!」
「涙癌なんじゃない?」
「涙癌?何でもかんでも癌ってつければいいってもんじゃないわよ?だとしたら全て流れ出てるんだからいいじゃない!トリッキーに解決じゃない!」
「何トリッキーな事言ってんのよ!」
「トリッキーな事言ってんのは、さっきっからアナタよ!」
「あらヤダ!」
「アナタの方こそ病気なんじゃないの?」
「何?アタシどんな病気なの?」
「何でちょっと嬉しそうなのよ!そうね?トリッキー病なんじゃない?」
「何その奇病!ヤダー!」
「だから何でそんな嬉しそうに言うのよ!」
「何億人に一人のヤツじゃん!」
「あるの!?トリッキー病って!?」
「トリッキー癌なの?アタシ!」
「いやもう、そうなんじゃない?そんなトリッキーな事言えてるから、そうなんじゃない?」
「透明人間にずっと目潰しされてんじゃないの?」
「急に何の話?」
「アナタの涙が止まらない話でしょ!」
「だとしたら、アナタとアタシのこの狭い空間に透明人間がいるって事になるわよ?どんだけペラペラなの?」
「じゃあ、やっぱり自分では気付いてないだけで、物凄く悲しいのよ!」
「そんな事ある?」
「あまりの物凄い悲しみで、何に物凄く悲しんでるのか記憶がぶっ飛んでんのよ!」
「そんな事ないと思うけど?」
「例えばそうね?」
「そんな事ないと思うけどって言ってるんだけど?」
「飼ってるアリが死んだとか?」
「飼ってないわよ、アリ!」
「お気に入りのハンガーが壊れちゃったとか?」
「それが記憶ぶっ飛ぶぐらいの悲しい出来事だったら、とっくにアタシは干からびてるわよ!」
「宇宙人に連れ去られて涙腺いじくり回されたとか?」
「それはもう、話が記憶ぶっ飛ぶ方だけに焦点当てちゃってんじゃない!」
「テロ!?」
「だったらアタシだけ涙が流れ続けてるのは変でしょ!」
「ピンポイントなんじゃない?」
「アタシは一体何者なの?」
「しがないOLでしょ?」
「しがないOLが何でピンポイントでテロの標的にされてんのよ!」
「それはアナタのお父さんが開発してる人類破壊兵器ロボが目当てなんでしょ!」
「もう誰がテロリズムなんだか分かんないじゃん!アタシのお父さんは、しがないサラリーマンだし!」
「じゃあ、アレじゃない?」
「何?」
「いや、アレじゃないか。」
「だから、何?」
「そうよね。アレだとしたら、アレになってないとアレだものね。違うわね。」
「何が?」
「ああ!アタシの勘違いだった!今のアレは忘れて忘れて!」
「アレが気になって気になって、とても忘れられそうもないわ!」
「ウンコ食べたからじゃない?」
「ウンコ食べると涙が止まらなくなるの?」
「そのウンコにたまたま涙が止まらなくなる成分が入ってたとか!」
「ならウンコじゃなくてもいいじゃない!そんなたまたまがあるなら!」
「でもほら、ウンコ拾い食いしてそうな顔してるじゃない!」
「どんな顔よ!ねぇ?今物凄い失礼な事を親友に言ってるの気付いてる?」
「でもアレよね?」
「聞いてる?物凄く失礼な事を親友に言った事への謝罪とかなしで話を先に進める?しかもまたアレ出て来たし!」
「確実に脳みそがおかしくなってるわよね!」
「何で次から次へと親友に失礼な事を言えちゃうの?脳みそおかしくなってんのは、アナタじゃない?」
「だって脳みその回路が異常をきたしてるから誤作動してるんでしょ?」
「人をアンドロイドみたいに言わないでよ!」
「なら!アナタが地球上の悲しみを一手に引き受けたって事ね!」
「何がどうなったら、そんな事になっちゃうのよ!」
「じゃあ、はい!」
「何?この錠剤?」
「ナミダトマールよ!体内の水分を全て吸収してくれるわ!」
「湿気取るヤツじゃん!」
「ならやっぱり死ぬヤツなんじゃん?」
「何か不思議とだんだん死ぬヤツかもって思って来たわよ。とりあえず病院行くわ。」
「行ってらっしゃい!」
「拝むな!」

第六百三十一話
「死なないヤツ」

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