« 2019年2月 | トップページ | 2019年4月 »

2019年3月

2019年3月 6日 (水)

「第六百六十四話」

「ワシ、王様やめる!」
「はあ!?」
「じゃあ、大臣!あとは任せた!」
「ちょちょちょ、ちょっと待って下さい、王様!」
「だから、ワシはもう王様ではない。じゃあ!」
「ちょっと待って下さい、王様!待って下さい、王様!」
「だから、もう王様ではないんだから、王様と呼ぶな。」
「では、何とお呼びすればいいのですか?」
「ジジイ、だな。」
「ジジイ!?王様をそんな風にお呼びする事は出来ません!」
「あっそ!じゃあな、大臣。」
「ちょっと待って下さい、王様!待って下さい!待って下さい!待って下さい、ジジイ!」
「何かな?」
「あのう?これ、かなりヤバくないですか?」
「ヤバい?何がだ?」
「王様の事を大臣である私がジジイなどとお呼びして。」
「まあ、王様をジジイって呼んでる大臣は、ヤバいな。」
「ですよね。」
「即ギロチンだな。」
「ですよね!」
「でも、ワシは王様ではない!ジジイだ!何の問題もない!安心しろ。それと、敬語も禁止な。」
「王様!?」
「ん?」
「ジジイ!?」
「そう!」
「敬語も禁止は無理です!」
「ん?」
「む、無理、だ。」
「そう!」
「でも、ジジイ?なぜ急に王様をやめるなんて言い出したんです?」
「んんん?」
「言い出したんだ?」
「うん。飽きた。」
「飽きた!?」
「そう。飽きた。」
「飽きたって、あの?あの飽きた!?」
「飽きたにいろいろあるのか?」
「ないけど、飽きたって何ですか?」
「敬語!」
「いや、ジジイ?立場的に王様と大臣じゃないにしても、目上の人と会話をする時には、多少の敬語は混じるのでは?それは勘弁して下さい。」
「ダメ!」
「分かった!」
「とにかくワシは、飽きたんだ。」
「もっと具体的に教えてくれないか?」
「王冠!」
「王冠!?」
「そう。王冠。」
「王冠って、あの?あの王冠!?」
「あの王冠以外に、他にこの国に王冠が存在するのか?」
「王冠に飽きたって、どう言う事?だったら、ジジイ!王冠を被らないでいればいい!そう言う王様がいてもいいと思う!」
「何かちょっとカタコト感があるな。」
「そこはご愛敬!」
「いいか?王冠を被らない王様なんて、白がない虹みたいなもんだぞ?」
「いや、元々虹に白はない!白単色の珍しいのはあるけど、オーソドックスな虹に白はない!」
「そう言う事だ!じゃあ!」
「だから、ジジイ!ちょっと待て!」
「何だ!」
「そもそも、じゃあってどっか行こうとするけど、ジジイはどこに行こうとしてる?」
「街だよ。街。まずは街に行かなきゃ何も始まらないだろ?」
「何を始めるんだ?」
「とりあえずは、住む場所を確保しなきゃだな。さすがに野宿は勘弁だ。シジイの体には応える。」
「いや、ちょっと待って下さい!そもそもこの国の国民は全員王様の顔を知っているんですよ?いきなり街になんて行ったらパニックになりますよ!」
「もう!おもいっきし敬語だな!」
「なりますよ!敬語に!」
「あのな?その辺も大丈夫だ。」
「何が?何が大丈夫?どう言う感じで大丈夫なのか説明!」
「大臣の方がよっぽどパニックじゃないか。」
「王様が王様やめるって突然言い出してパニックにならない大臣はいない!それで?それで何がどう大丈夫?」
「いいか?国民なんてのは、所詮は王冠を被ってる王様の顔しか知らない。王冠を被ってないワシなんて、単なるジジイとしか認識しない。」
「そんな訳ない!」
「まあ、あとは王様のそっくりさんとか何とか言って誤魔化せば大丈夫だ。ああ、それを生業に生活して行くってのもありだな!」
「なしだ!ジジイ!ジジイはそれでいいかもしれないけど!城はどうするんだ!王様不在の城はどうするればいいんだ!」
「何か適当に誰かやればいいだろ?当番制でもいいしな。」
「そんな飼育係みたいに出来るか!」
「じゃあ!頑張れ!」
「頑張れない!頑張れない!大体、来週末の仮面舞踏会はどうするんだ!そんなのニセ王様で乗り切れない!」
「いや大臣?仮面舞踏会だからこそ、乗り切れるんじゃないか?」
「そうか!って、そうか!じゃない!そう言う問題じゃない!」
「いいか?飽きたんだ!ワシは、とことん飽きたんだ!」
「飽きた飽きたって、王様は王様です!死ぬまで王様なんです!王様って言うのはそう言う事なんです!飽きるとか飽きないとかの概念は捨て去って下さい!それを王冠が飽きたって事でやめるとは!」
「王冠だけの問題ではない。むしろ王冠は、王様をやめる理由の1パーセントにも満たない。」
「なぜ1パーセントにも満たない理由を最初に?だったら、本当の理由をお教え下さい!」
「だって、ワシが王様になって何十年も経つけど全然だろ?」
「全然、とは?」
「待っても待っても来ないだろ?」
「来ない?何がですか?」
「今日は来るかな?明日は来るかな?そんな毎日はもう飽き飽きなんだよ!うんざりなんだよ!」
「王様?王様は、一体何を待っているんですか?」
「勇者だよ!」
「そう言う世界観でやってませんから!」

第六百六十四話
「求む、勇者」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年3月13日 (水)

「第六百六十五話」

 深夜の中年夫婦の寝室。
「・・・・・・。」
「パパ?」
「ん?起こしちゃったか。」
「都度、起きてたわよ。」
「そうか。それは、すまん。」
「パパ?」
「何だ?」
「どんだけトイレ行くんだ!おやすみなさいから今まで、結構な回数行ってるけど?大丈夫?お腹壊したの?」
「いや、腹は下してない。」
「じゃあ、何?酔っ払ってる訳でもないのにこの回数っておかしくない?」
「そうか?」
「そうよ!病気なんじゃないの?」
「嫌な事言うなぁ。人事だと思って何でもかんでも一番最初に病気って言うなよな。そう言う世の中の風習嫌いだぞ!」
「いやでも、この回数の尋常じゃないトイレは病気を疑われても仕方ないでしょ!朝一番で泌尿器科に行った方がいいよ!てか、行くべきね!」
「だから、病気扱いすんなって言ってんだろ!」
「病気じゃない?これが病気じゃなかったら、何が病気なの?夜中にこんなにこんなにこんなにトイレに行く人が病気じゃないなら、世の中から病気診断の夜中に頻繁にトイレに行く人の項目が消滅するわよ!」
「何を面白い事を言ってんだよ。」
「言ってないわよ!パパの事が心配だから言ってるんでしょ!」
「ありがとう。でも、ママ?本当に何でもないから安心して寝ててくれ。」
「こんな尋常じゃないくらい頻繁に隣でガサゴソされて眠れる訳ないじゃん!だって、朝までまだ数時間あるし、その間も尋常じゃないくらいガサゴソするんでしょ?」
「するかもな。」
「絶対!病院行ってよね!」
「行かないって言ってるだろ!」
「何で!」
「何でって病気じゃないからだ!」
「そんな自己診断で納得出来る訳ないでしょ!ちゃんとお医者さんに診てもらって、それでも病気じゃないって診断が出たなら納得するわよ!だからとにかく病院に行って!」
「嫌だね!」
「何でよ!普通に考えて夜中こんなにトイレに行くって、普通じゃないでしょ!」
「だから、大丈夫だ!」
「大丈夫な訳ないじゃん!」
「大丈夫なんだ!」
「だから何がどう大丈夫なのよ!」
「大丈夫は大丈夫だから大丈夫なんだ!」
「はあ!?」
「と言う事で、トイレに行ってくる!」
「ん?ねぇ?」
「何だよ!」
「あのさぁ?」
「何!」
「本当にトイレに行ってるの?」
「え?」
「トイレじゃなくて、本当は別の何かをしてるんじゃないの?もしそうだとしたら、さっきから病気を強く否定してるのにも納得よ。でも、そこで別の疑問も同時に生じる。そうそれは、一体何してんの?」
「はあ!?何してるって、トイレに行ってるんだから、二択だろ!」
「本当にトイレに行ってるならね!でも、本当はトイレに行ってないんだとしたら、多択よ!」
「何だそれ!」
「ねぇ?何してるの?」
「だから!二択だって言ってんだろ!」
「オシッコかウンコかの話をしてるんじゃないの!」
「オシッコかウンコの話をしてるんだろ!」
「なら、朝一番で泌尿器科に行って私は夜中に有り得ない回数のオシッコかウンコが出るんですって申告しなさいよ!」
「病気じゃないのに病院なんか行かないって何度も行ってんだろ!」
「じゃあ!一体何してんだ!」
「オシッコかウンコだ!もしくは、オシッコとウンコだ!」
「だから!例えオシッコかウンコ、はたまたオシッコとウンコだとしても!この回数は異常だって言ってんの!で、それを泌尿器科の先生に伝えて、それで検査して何でないですよって診断が出たら!ああ、そう言う事もあるんだなって、私も納得するわよ!喫茶店でその話題で小一時間盛り上がるわよ!だから!行って!泌尿器科!」
「行かない!泌尿器科!俺は絶対に行かないぞ!泌尿器科!そんなおばさん連中の話題にされてたまるか!」
「だから!そこでパパが頑なに拒絶するから本当はトイレに行ってないんじゃないのって話になるのよ!本当はどこで何してんのって話になるんじゃない!」
「お前、おかしいんじゃないのか?」
「夜中に尋常じゃないくらい頻繁にトイレに行く人に言われたくない!」
「分かった!」
「病院行ってくれるのね!」
「病院には行かない!」
「何も分かってないじゃない!」
「だから!次からトイレに行く時は、ママを起こさないように細心の注意を払う!それで文句ないだろ?」
「いや、あるわよ!」
「何でだよ!」
「あるでしょ!とにかくこう言う現状を目の当たりにしちゃってんだから!時既に遅しでしょ!もはや病院に行ってくれなきゃ私は納得出来ないわよ!」
「何で普通にトイレ行ってオシッコかウンコ、もしくはオシッコとウンコしてるのに病院行かなきゃいけないんだ!」
「回数の問題だ!あと、もう本当にトイレに行ってるのかを疑い出しちゃってんだからね!」
「いや、トイレに決まってんだろ!逆にトイレじゃなかったら何なんだって言うんだよ!」
「浮気よ!」
「お前、頭大丈夫か?」
「私の頭の心配より!自分の膀胱と腸の心配でもしたら!」
「浮気なんかしてる訳ないだろ!」
「どうだか!」
「じゃあ、何か?俺は、頻繁にトイレに行くフリをして、浮気相手に会いに行ってるって言うのか?」
「そう疑われても仕方のない回数でしょ!」
「それこそ有り得ないだろ!」
「どうしてよ!」
「俺が夜中に頻繁にトイレに行くフリして浮気してるんだとしたらだぞ!その浮気相手はこの家の中にいるって事になるだろ!」
「家の中に浮気相手がいんの!?」
「いるかよ!」
「じゃあ!どこにいんの!」
「何で俺が浮気してる体で話が進んでんだよ!」
「じゃあ、何?トイレで物凄く楽しい事でも巻き起こってんの?パレード?パレードなの!パレードなのね!パレードを独り占めしてんのね!」
「何の話だ!」
「じゃあ、朝一番で泌尿器科に行きましょ!」
「行かないって言ってるだろ!緊張してるだけだ!」
「緊張?何に?」
「娘の結婚式にだろ!」
「じゃあ、朝一番で泌尿器科に絶対行こう!!」
「何でだ!」
「あの娘よ!」
「あの娘だよ?」
「あのよ!」
「あのだよ?」
死ぬよ?」
「死ぬかよ!」

第六百六十五話
「その娘、婚活連戦連敗中」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2019年3月20日 (水)

「第六百六十六話」

「それで?話ってのは?」
「実は・・・。」
「うん。」
「実は・・・。」
「うん。」
「やっぱ何でもない!」
「はあ!?何でもないって、大事な話があるからって喫茶店に呼び出したんだろ?」
「そうなんだけどさ。」
「だったら話してみろよ。」
「実は・・・。」
「うん。」
「実は・・・。」
「うん。」
「やっぱ何でもない!」
「無限か!無限に続けるつもりか!これを!だったら帰るぞ?」
「いや!話す!話すよ!」
「頼むぞ。」
「実はな。」
「うん。」
「失恋したんだよ。」
「え?」
「やっぱ何でもない!今の聞かなかった事にしてくれ!してない!失恋なんかしてない!」
「いやそれは無理だろ!がっつり聞いちゃったから!失恋?失恋って言ったよな!」
「そんなに傷をえぐるように何度も言うなよ!精神的におかしくさせたいのかよ!」
「させたくねぇよ!でも言うよ!言うだろ!言っちゃうだろ!だって失恋って事はだぞ!それ以前に恋愛があったって事になるだろ!熱愛があったって事になるだろ!」
「そうだよ。それがなくて急に失恋なんて言ってたら、俺は精神的におかしくなる前から狂人だよ。」
「いやいやいや、だから、そこだよ!」
「狂人!?」
「違うよ!そもそも俺は、お前に彼女がいたなんて知らなかったぞ!」
「あれ?言ってなかったっけ?」
「言ってねぇよ!お前、彼女いたのかよ!」
「うん。いた。」
「彼女いたのかよ!」
「いたよ。だから、それはもう過去の話だからえぐらないでくれよ。」
「いやいやいや、えぐるつもりはないけど、ちょっとショックだわ。彼女いたの知らなかったのショックだわ。」
「言ってなかったのは悪かったよ。でも今は、そこじゃなくて、慰めて欲しいんだよ。ハッピーな気分にさせて欲しいんだよ。」
「じゃあ、サーカスでも見に行けばいいだろ!」
「いやまあ、丁度運良く来てるけど!」
「来てんの!?」
「そう言うんじゃなくてさ!髭の団長にじゃなくて、俺は親友にハッピーな気分にさせてもらいたいの!」
「その親友に彼女がいた事を隠してたくせに?失恋したらハッピーな気分にさせて欲しい?ちょっとお前、それはあまりにも都合が良い話ってもんじゃないか?」
「次からは彼女が出来たらいの一番に報告するよ!」
「今回その報告しなかったくせに?次からは報告する?そんなの信じられるかよ!」
「それはもう信じてもらうしかない!頼む!本当に次からはちゃんと報告するから!な?だから今は失恋してズタズタに傷付いた俺の心を癒やしてくれ!」
「マジで次報告しなかったら、絶交だからな!」
「分かった!約束する!だから早く失恋で傷付いた俺の心を癒やしてくれ!」
「で、どんな彼女だったんだ?その別れた彼女ってのはさ。」
「そこを聞くか!今一番思い出したくない過去をえぐるか!」
「いやだって、俺にしてみたら興味があるのはそこからじゃん!どうやって出会って、どうやって別れたんだよ。」
「丸ごとえぐる!?情緒不安定な思い出を!?」
「いやだから、こうなるぜ!って話だよ。彼女出来た事を親友に言わなかったら、こんな風になっちゃうぜ!」
「図書館で出会って、図書館で別れたんだよ。」
「それ彼女か?向かいの席に座った女性を疑似彼女にしてただけじゃないのか?」
「何だ!疑似彼女って!その間には三年って月日があるんだよ!」
「三年!?お前ちょっと待て!三年もの間!俺に彼女がいた事を隠してたのか!」
「隠してた訳じゃなくて、言うタイミングがなかったんだよ。」
「あるだろ!三年ぶりって訳じゃないんだぞ!って、お前は図書館で何してたんだよ!そんなタイプじゃないだろ!」
「いやそこは、どうでもいいだろ。そもそも図書館にはよく行くよ。」
「よく!?初めて知ったよ!?」
「ちょっと星座について調べようと思ってさ。」
「星座!?お前、星座とかに興味あんの!?初めて知ったよ!?」
「いやまあ、星座と言うか宇宙に興味があるんだよ。じゃなきゃロケット作らないだろ?」
「ロケット作ってんの!?そんな仕事してたの!?」
「まあ、作ってるって言ってもまだ仕事し始めて日も浅いけどな。言ってなかったっけ?」
「言ってねぇよ!お前、さっきっから初耳のオンパレードだな!俺は、果たして本当にお前の親友なのかその自信が揺らいでるぞ!」
「親友だからって俺の事を何でもかんでも知ってなきゃいけないって話でもないだろ?」
「何でもかんでも知ってなきゃって言うか!何もかも知らない気がして来てもはや怖いぞ!」
「でな。別れ話を出会った図書館で切り出された訳だよ。」
「うん。」
「その理由が最悪中の最悪なんだよ。」
「うん。」
「四つ子の一番下の弟が好きになっちゃったんだと!もう最悪中の最悪だろ!」
「最悪中の最悪だよ!」
「そうだろ!」
「お前、四つ子だったのかよ!?」
「言ってなかったっけ?」
「言ってねぇよ中の言ってねぇよ!だよ!」
「とにかくそう言う訳で、ハッピーな気分にさせて欲しいんだよ。」
「いやもうこんな大パニックの最中そんなの無理だろ!」
「マジで?」
「マジだ!」
「どうにかこうにかでも?」
「にっちもさっちもだ!」
「本当に無理か?」
「本当に無理だ!」
「そうか。親友の力でどうにかこの難局を乗り越えられると思ったんだけどな。」
「いやもう、親友なのか?俺達?」
「激痛が伴うから使いたくなかったんだけど仕方ない。彼女と出会う前に戻るか。」
「戻る?」
「じゃあ!また三年ぐらい前で会おう!」
「はあ?」
「あ!その時はなるべくちゃんと説明するから!」
「ええーっ!?消えた!?どうなってんだ?って、えっ!?てか、全体的に消え始めてないか?どうなっ」

第六百六十六話
「親友はタイムトラベラー」

| | コメント (0)

2019年3月27日 (水)

「第六百六十七話」

「こいつも・・・。」
場において、時間を止められる能力は最強だと誰かが言った。
「こいつも・・・。」
確か、そう。凄く頭の良い奴が。だがどうだ?本当に最強なのか?まあ、これはこれで最強だと言われれば最強なのかもしれない。
「こいつも・・・。」
ただそれは、俺は死なないってだけで、戦争が起こってる事態に何ら変わりはない。そもそもの前提が、戦場において、って時点で何かがおかしい。
「こいつも・・・。」
こうして戦場を、時間を止めてゆっくり歩けば、殺された奴、殺す奴、これから死ぬ奴、だらけだ。ここに花を売り歩く少女はいない。
「こいつも・・・。」
いい加減、この青空を見てると吐き気がする。戦場において、時間を止められる能力が最強なのは、一方通行な考えで、まるで幼稚な発想だ。ある意味で最強であり、ある意味で最悪だ。これから俺は、敵の一番偉い奴を殺す。戦争は終わる。だが、俺の方が勝ったから何だ?って話だ。俺はただ、次の戦争への火種を起こしただけだ。
「こいつも・・・。」
こいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつもこいつも!
「誰も救えない。」
俺は戦場を駆け抜け、一番偉い奴がいる建物に入り、一番偉い奴の横に立ち、銃を握らせ、銃口をくわえさせ、銃の引き金を引かせた。時間が動き出せば、銃弾が発射され、一番偉い奴は死ぬ。そして、この戦争は終わる。
「これで少しは、世界平和に近付いたか?」
いや、この世界が平和になる事はない。なぜなら世界は、平和にならない仕組みで設計されてるからだ。全人類がそう言う病に冒されてるからだ。
「結局、人は争い事を好む生き物、か。」
俺一人、この状況下で時間を止められたって、無力でしかない。そう、最悪だ。
「それでも誰かの小さな世界は平和に出来たと信じよう。」
建物を離れ、いつものように俺は俺の中のスイッチを入れる。
「ん?」
俺は、俺の中のスイッチを入れる。
「あれ?」

第六百六十七話
「そして時間は動き出さない」

これはこれで、もしかしたら世界が平和になったのか?

| | コメント (0)

« 2019年2月 | トップページ | 2019年4月 »