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2019年5月15日 (水)

「第六百七十四話」

「何か、臭くない?」
「こう言う状況なんだ。仕方ないだろ?」

第六百七十四話
「オレもゾンビだし、オマエもゾンビだし」

「いや、ボクが言いたいのは、そう言った腐敗の臭の事じゃなくて、ウンコの臭の話だよ。」
「こう言う状況なんだ。仕方ないだろ?」
「何が仕方ないんだ!何がこう言う状況なんだ!どう言う状況だ!部屋でウンコを垂れ流す状況って!」
「別にいいだろ?ゾンビだし!」
「ゾンビだからって、やっていい事と悪い事があるだろ!」
「オマエさぁ?ムチャクチャウンコだらけの部屋でウンコしたら怒るか?」
「ここは!ムチャクチャウンコだらけの部屋なんかではない!」
「いやでも、オレもゾンビだし、オマエもゾンビだし、そもそもムチャクチャ臭い部屋だし。」
「ボクが言いたいのは!そう言う事じゃない!ボクら、見た目はゾンビだけど、頭の中までゾンビじゃないだろ?」
「頭の中?」
「そう!価値観や倫理観や道徳観は人間のままだ!」
「そうそうそう!それな!それって不思議だよな!ゾンビになったら、ただただ生きた血肉を貪りたいって衝動に駆られるのかと思ったら、違うのな!心配して損したよ!」
「この状況も十分に心配だけど?何ですんなり受け入れてる?」
「だって、考えようによっては、不死身の体を手に入れたんだぜ?こう言う人間になったってだけの事だろ?」
「ボクは、そんな風には考えられない。そして、仮にそんな風に自分を受け入れたとしても!部屋でウンコを垂れ流さない!」
「分かったよ。もう、部屋でウンコを垂れ流しません!」
「しなくていい宣言だけどね!」
「え?」
「どうしての?」
「ほら!」
「ほらー!勢いよく手を挙げて宣言なんてするから右腕がとれたー!だから言ってんじゃん!ボクらはゾンビなんだよ!不死身の体を手に入れた人間じゃなくて!単なるゾンビ!」
「でも痛くない!」
「ゾンビだからね!きっと、こんな感じで朽ち果てて行くんだよ!」
「いや、そうとは限らないかもしれないぞ?」
「また何か変な事を言うつもりだろ?」
「もしかしたら、新しく腕が生えて来るかもしれないぞ!」
「有り得ないでしょ!ゾンビなんだから!屍的な存在なんだから!」
「なら、とれた右腕をこうして、こうしてこうしてこうしたら、くっつく!」
「いや、ボトッて落ちてんじゃん!だから!屍的な存在に新たに生を宿す力はない!」
「まあ、右腕がなくてもまだ左腕があるから、いっか!」
「いっかじゃない!いいかい?このままの状態をキープして生きて行くなら、物凄く慎重に生活して行かなきゃならないんだよ?」
「それはつまり!おもいっきり走ったり!おもいっきり投げたり!おもいっきり滑り込んだり!もう二度とホームランが打てないって事か!」
「何で野球に全てを捧げて生きてる設定?」
「いやでも、まさかこんな風になるとはなぁ?」
「何、急にしみじみと窓の外を見て。」
「いやだってさ。オレ達は、ほら!そうだった訳だろ?」
「まあ、確かにゾンビ退治をしてたけど、それこそ仕方ない事なんじゃないか?」
「オマエがゾンビに噛まれて、オレを噛むからこうなったんだっけ?」
「何でだ!大量のゾンビに囲まれて、同時に噛まれて、必死でこの家まで逃げて来たんじゃん!」
「そうだっけ?」
「どんな現実のねじ曲げだよ!」
「寂しいのかもな。」
「寂しい?寂しいからって現実をねじ曲げていい訳ないよね?」
「いやいや、そうじゃなくてさ。ゾンビだよ。」
「はあ?ゾンビが寂しいって何で?」
「ゾンビってのは、寂しがり屋さんだからこうして仲間を増やそうとしてるのかもな。」
「斬新な発想だな!でも、そうだとしたら、それはあまりにも迷惑な話だ!」
「でも、人類全てがゾンビになったら、それはそれで、迷惑な話じゃないだろ?」
「有り得ないね!ゾンビになりたくないから、ボクらみたいなのがいる。ボクらがそれを証明してるだろ?人間は、ゾンビを駆逐しようとしてる!」
「だったら、どうだ?」
「また何か変な事を言うんだろ?」
「ゾンビは、思ってるより悪い奴じゃないぞ!って事を人間に説明すればいんでないか?」
「はあ?どうやって?」
「オレは、次の大統領選挙に立候補しようと思う!」
「即射殺だよ!」
「先ずは、人間がたくさん集まる場所で演説してみようと思う!」
「即射殺だって!」
「でもオマエ、このままじゃ本当のゾンビが理解されないまま、ただただ駆逐されて行くだけだぞ!」
「何て演説するんだよ。」
「え?」
「だから、大衆に何を訴えるんだ?」
「みんなでゾンビになろう!」
「即射殺だよ!」
「オレはそうは思わないな。話し合えば人間とも共存が可能なんじゃないか?」
「もう、普通に人間とか言っちゃってるもんね。無理無理!誰が好き好んで、こんな朽ち果てて行くだけの屍的な存在になりたいんだよ!」
「でも不死身だぞ!」
「不死身であって!不死ではない!」
「オマエ!」
「何!」
「何、カッコイイ台詞言ってんだよ!」
「どこに食い付いてんだよ!」
「とにかく!オレは今すぐ人間に食い付きたい!」
「いやまあ、それはボクもそうだけどさ。」
「「え!?」」

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