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2023年9月

2023年9月 6日 (水)

「第八百九十九話」

「ああ、儚く散りたい。」
「お兄さんお兄さん!」
「はい?僕ちゃんですか?」
「そう!色々とキャラが渋滞してるそこのお兄さん!」
「儚く散りたい。」
「ちょっと!何で行くのお兄さん!」
「何ですか?僕ちゃん今、儚く散りたくて忙しいんです。」
「儚く散る前に、これを試してみなよ!」
「何ですか?これ?」
「よくぞ聞いてくれた!」
「この流れで、よくぞ聞かない人、いますか?」
「お兄さん!聞いて驚くなよ!このサプリメントは、何と!飲めば頭が良くなるサプリメントなんだ!」
「じゃあ、真っ先に貴方が飲んだ方がいいですよ?では、僕ちゃんは儚く散りたいので。」
「そんな四コマ漫画みたいな事言わないでさ!ちょっと待ってよ!今ね!これをこうして街中で無料で配ってんの!無料だよ!お金いらないんだよ!」
「間に合ってます。」
「間に合ってないでしょ!だって、こう言ったら失礼だけど、お兄さん頭悪そうだもん!」
「失礼を通り越してるよ。」
「儚く散りたいって言いながら、鼻水垂らして歩いてるお兄さん!」
「何ですか?」
「いらないの?」
「いりませんよ。そんな怪しいサプリメント。」
「怪しい?どこがどう怪しいの?」
「全部。」
「頭が良くなるんだよ?」
「頭が良くなってどうするんですか?」
「お兄さん!何言ってんの!」
「何言ってんのは、ずーっと貴方ですよ?」
「頭が良くなったら、何でも出来ちゃうんだよ?何でもだよ!」
「だから、だったら貴方が真っ先に飲むべきでしょ。貴方が飲んで頭が良くなって、僕ちゃんにそのお試し頭が良くなるサプリメントを受け取らせる事が出来たら信じますよ。」
「そんな昔話みたいな事言わないでさ!」
「真面な事しか言ってませんよ?」
「お兄さん!将来の夢とかないの?医者になりたいとか!弁護士になりたいとか!」
「儚く散りたいだけです。」
「博士になりたいとか!世界征服したいとか!」
「儚く散りたいだけです。」
「まだ誰も知らない未知の物質を発見したいとか!まだ誰も知らないを発見したくないの!」
「儚く散りたいだけです。」
「何だ!お前!」
「それは、こっちの台詞。」
「何なんだよ!お前は!」
「だから、こっちの台詞。」
「頭が良くなるサプリメントを無料で上げるって言ってんのにさ!鼻水どうにかしろよ!」
「サプリメントって事は、継続して飲み続けないとダメなんでしょ?一回の無料で上げるってとこが怪しいって言ってるんだ。その先が怪しいって言ってるんだ。」
「そりゃあ、サプリメントだから、継続して飲み続けないとダメだよ。」
「ほらね。」
「いや、だけどこのサプリメントは、一回飲めば五十年は頭が良くなるサプリメントなんだよ!お兄さん!」
「じゃあ、貴方はそのサプリメントを飲んで、丁度今日で五十年経つの?」
「そんなバーでするようなジョーク言わないでさ!お兄さん!サプリメントをどうぞ!」
「ああ、儚く散りたい。」
「無視しないで!無視してどっかへ行こうとしないで!」
「儚く散れる場所知りませんか?」
「あのさ?一緒だよ?お兄さんと俺、殆ど変わらないから!」
「何がです?」
「一般人からしたら、俺もお兄さんも変な人って事!何?儚く散りたいって!」
「儚く散りたいは、儚く散りたいですよ。サプリメント飲んだ方がいいですよ。」
「お兄さんは、死にたいって事?」
「死にたくないですよ。死にたい人間が、儚く散りたいって言いながら、街中を彷徨い歩きますか?歩きませんよ。」
「死に場所を探してるんじゃないの?」
「儚く散り場所なら探してますけど、死に場所は探してません。」
「何?儚く散り場所って!儚く散るって、死ぬって事だろ?」
「違いますよ。」
「どう違うんだよ!」
「分からないなら、そのサプリメントを飲んで頭を良くすればいいじゃないですか。」
「頭が良くなってもお兄さんの言ってる事は理解不能だよ!」
「じゃあ、そのサプリメントは嘘じゃん。」
「嘘じゃない!俺がケツの穴から生み出した最高傑作だ!」
「ウンコじゃないですか。自分のウンコを街中で配ってるって、ヤバいですね。」
「ウンコじゃない!サプリメントだ!俺がケツの穴から生み出した最高傑作!」
「ああ、儚く散りたい。」
「散れ!もう、さっさと散ってしまえ!」
「そんな簡単に儚く散れたら、五年も街を彷徨い歩き続けてませんよ。」
「どっちがヤバいんだよ!そうだ!このサプリメントを飲めば儚く散れるぞ!お兄さん!」
「ふっ。」
「鼻で笑われた!同等、もしくはそれ以下の人間に鼻で笑われた!」
「あっちの街路樹の真似してる人に聞いてみよ。」
「噴水のど真ん中で街路樹の真似してる奴なんかに聞いてどうすんだよ!」
「ふっ。」
「やめろそれ!鼻水揺らしながら鼻で笑うの!」
「これは、非常食です。」
「そんな未来の人みたいな事言わないでさ!お兄さん!頭が良くなるサプリメント飲んでみなよ!」
「あっちの落とし穴掘ってる役所の人に聞いてみよ。」
「大丈夫か?この街!」

第八百九十九話
「逆自転車オジサンが通りすがりに見た光景より」

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2023年9月13日 (水)

「第九百話」

「なあ?」
「何だよ。」
「なあ?って。」
「だから何だよ。」
「なあ?」
「聞いてんだろ!」
「じゃあ、まず立ち止まれよ!」
「何だよ。」
「あってるのか?」
「分かんない。」
「分かんない?課長に渡された地図持ってんのは、お前だろ?俺達どんだけ森を迷い歩き続けてんだよ。」
「地図は持ってるけど、駅と森と家しか書いてないんだよ。そもそも超迷いの森だぞ?ここは!迷わない方がおかしいだろ!むしろ迷ってる方が当たり前なんだよ!」
「俺達、迷ってんのか?」
「迷ってるよ!」
「超迷いの森で迷ってんのか?俺達!」
「そうだよ!」
「いつから迷ってんだよ!」
「そんなの愚問だろ。」
「愚答しろ!いつから迷ってんだよ!俺達!」
「超迷いの森に足を踏み入れたその瞬間からだよ!」
「はあ!?」
「超迷いの森なんだから、仕方ないだろ。一歩足を踏み入れたら迷う。それが超迷いの森だ。まあ、この森を抜ければ課長の家だ。頑張ろう。」
「人の家に遊びに行くのに頑張らないと行けないっておかしいだろ!」
「超迷いの森だからな。」
「しかし、課長も何でこんな場所に家を建てたんだ?」
「知るかよ。安かったんじゃないか?」
「安かったって、他に道はなかったのか?」
「知るかよ。近道なんじゃないか?」
「近道って、こんなに迷ってたら、遠回りした方が近道だろ!」
「俺に格言的な事を言うなよ!行くぞ!」
「おい!」
「何だよ!」
「おい!」
「何だよ!」
「おい!!」
「何だよ!!」
「止まれ!」
「どうしたんだよ!さっき休憩したばっかだろ?」
「違うよ!あ、あれ!」
「え?」
「死体じゃないか?」
「はあ?どれ?」
「あの服を着た白いのだよ!」
「ああ、死体だな。白骨化してるな。」
「おい!」
「何だよ。」
「何でそんなに冷静なんだよ!」
「え?」
「だから!白骨死体を目にして何でそんなに冷静なんだよ!お前は!」
「いや、これはパニックの向こう側だ。俺は今、パニックの向こう側にいる。だから早くお前も俺が到達したパニックの向こう側に来いよ。」
「確かに、パニックの向こう側だ。体は物凄い震えてる。」
「おい。」
「ん?」
「何してくれてんだよ。」
「何してくれてるって?」
「何で白骨死体なんか発見してくれてんだよ!」
「おっ、戻って来たか?」
「発見したとしても自分の中で揉み消せよな!俺に教えるなよ!恐怖を共有すんなよ!」
「いや、そんな現実を無視してこの森を迷い歩き続けるなんて無理だろ!」
「何が言いたい!」
「お前も分かってるだろ!」
「あの白骨死体が、俺達の未来の姿だって言いたいのか!」
「言葉にするとすれば、そうだな。」
「いいか?こうは考えられないか?あの白骨死体は、この超迷いの森で迷って死んだんじゃない。」
「じゃあ、何で死んだんだよ!」
「心臓麻痺!」
「たまたま死んだってのか?」
「ああ、心臓麻痺になったのが、たまたま超迷いの森だったってだけで、それがフルーツパーラーだったかもしれないし、サンバカーニバルだったかもしれない。」
「たまたま、か。」
「たまたま、だ。」
「たまたま、な。」
「そうだよ。そんな事より、早く課長の家に行くぞ。課長がバーベキューの用意して待ってる。」
「そうだな。課長がバーベキューの用意して待ってるな。」
「課長のバーベキューは、美味いからな。」
「バーベキューなんて誰が作っても一緒だろ。」
「いや、それが会社の大バーベキューパーティーパーティーの時に課長が焼いたのを食ったんだけど、違ったんだよ。他の人が焼いた肉や野菜は、誰が焼いても同じだったのに、課長が焼いた肉や野菜は凄く美味かったんだよ。」
「こんな場所に住んでるから、そんなスキルが身に付いたのか?」
「かもしれないな。」
「そうか、課長のバーベキューは、美味いのか。だったら、小馬鹿にしないで俺も参加すればよかったよ。大バーベキューパーティーパーティーに。」
「ああ、課長のバーベキューを食べたら、他のバーベキュー食べられなくなるぞ!」
「それは楽しみだな。」
「だろ?さあ、行こう。」
「ああ、そうだな。」
「何か、バーベキューの話してたら、腹が減って来たな。」
「なあ?」
「お前も腹減って来たろ?」
「なあ!」
「ん?」
「大丈夫なのか?」
「何がだよ。」
「このバーベキューの話による空腹感、大丈夫なのかって話だよ!」
「おいおいおい、ここは森だぞ?超迷いの森だぞ?」
「だからだよ!超迷いの森で、空腹って、その先に待ってるのは、死だろ!」
「雪山ならまだしも、ここは超迷いの森だ。安心しろ。食べ物なら沢山ある!」
「虫とか言うなよ?」
「虫とかな。」
「言うなって!」
「冗談だよ!木の実とかだよ!」
「てか、なあ?そう言えば、この森に入ってから生き物、見てなくないか?」
「ああ、確かに何にも見てないかもしれないな。」
「詰んでない?」
「何だよ詰むって?」
「この超迷いの森に入った時点で死亡フラグ立ってたんじゃない?」
「そんな訳ないだろ!」
「そんな訳あるだろ!現実を受け入れろよ!」
「現実を受け入れなきゃならないのは、お前の方だ!」
「受け入れてんだろ!俺は!」
「いいや、お前は、現実と言う幻影を見てる。」
「何を訳の分からない格言的な事を言ってんだよ!またパニックの向こう側にいんのか?いいか?俺達は、死ぬんだよ!」
「俺達は、死なない!絶対に死なない!」
「何で言い切れんだよ!」
「だって、課長が超迷いの森を通って毎日会社に出社してるからだよ。」
「・・・そうだな。」
「行こう。バーベキューが待ってる。」
「課長だろ?」
「アハハ!そうだな。」
「行くぞ。」
「おう。」

第九百話
「ここで白骨死体が課長ってすればホラーになるけど、ここで課長のバーベキューは不味かったってすればコメディーになる」

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2023年9月20日 (水)

「第九百一話」

「仕方ない。コーヒーを出してやろう。」
「そんなマスターいる!?喫茶店に来て、コーヒーを注文したら、仕方ないからコーヒーを出してやろうって言うマスターいる!?」
「いるだろ!」
「いないだろ!」
「もう何なんだよ!さっきっからお前は!」
「お前が何なんだよ、だよ!喫茶店のマスターになりたいから練習させてくれって言うから、こっちは付き合ってやってんのに、真面目にやらないなら、やらないからな!」
「真面目にやってるよ!真面目にやり過ぎてるよ!」
「どこがだよ!じゃあ、まず客が喫茶店に入って来たら、いらっしゃいませ、と言え!何だ無言で手招きして席を指差すって!バイトの先輩と後輩か!」
「寡黙で頑固なマスターをイメージしてんだよ。」
「喫茶店始めて数十年後にやれ!何で喫茶店始めたてからそれなんだよ!」
「いやでも、喫茶店始めて数十年後に急に寡黙で頑固なマスターになるっておかしくないか?」
「その数十年間の人生で紆余曲折あったんだ!だから、寡黙で頑固なマスターが出来上がるんだ!寡黙で頑固なマスターってのは、人生が創り出すもんなんだよ!だって、おかしいだろ?喫茶店では寡黙で頑固なマスター演じて、他ではウィー!ってやってんの!」
「ムヒョー!とはするけど、ウィー!とはしないよ。」
「より気持ち悪ぃよ!」
「分かったよ。じゃあ、もう一回喫茶店に入って来るとこからやってくれ。」
「ウィーン。」
「いらっしゃいませ。お客さん?」
「はい?」
「ウチは、わざわざ奇怪なジェスチャーをして、奇声を発しなくても自然と開く自動ドアを採用していますので、どうぞお好きな空いてる席へ。」
「自動ドアを表現したんだろ!現実の世界で誰がウィーンって、やんだよ!ウィーンって!よくあるだろ!見た事ないのか自動ドアのこう言う表現方法!」
「おい待て!」
「今度は何だよ!」
「ここは、現実の世界じゃないのか!魔王が姫をさらったゲームの世界なのか!?」
「だとしたら俺達は完全にどうでもいいモブキャラじゃねぇか!」
「姫と魔王。」
「何でお前が姫なんだよ!いや、俺が姫でもおかしいけどさ!え?何?真面目に喫茶店のマスターの練習やりたくないなら、俺帰るけど?」
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ。お好きな席へどうぞと言いましたが、喫茶店内にあるお好きな席へと言う意味です。お客さんの頭の中にある理想の椅子を注文されても困ります。どうぞ。」
「誰が喫茶店に来て理想の椅子を注文すんだよ!ここでいい?」
「そこは、常連さんの席なので申し訳ないのですが他の席をお願いします。」
「そうなの?じゃあ、ここは?」
「そこも常連さんの席なので申し訳ないのですが他の席をお願いします。」
「ここも?じゃあ、ここは?」
「そこも常連さんの席なので申し訳ないのですが他の席をお願いします。」
「ここは?」
「申し訳ないですが他の席をお願いします。」
「ここは?」
「他の席をお願いします。」
「ここは?」
「他をお願いします。」
「ここは?」
「他を。」
「おい!だったら一体どこへ座れって言うんだよ!」
「お店の中は、常連さんの席でいっぱいなので、外へ。」
「何が悲しくて、ガラ空きの店内の外の地面に座ってコーヒー飲まなきゃならないんだよ!」
「あ、でもそこの席の常連さんは一昨日死んだから、その席へどうぞ。」
「何か気分悪ぃな!おいちょっと待て!」
「何だよ。」
「練習やる気ないなら帰るぞ?マジで!」
「やる気まんまんだよ。」
「じゃあ!何なんだよ!常連の席って!」
「常連のお客さんは、大切にしなきゃだろ?」
「大切にし過ぎで一連が立ち入れないだろ!」
「椅子を持って来てくれたらどこでも大丈夫だよ。」
「そんな変なシステムの喫茶店じゃなくて、普通の喫茶店にしてくれよ!え?これで練習になってんのか?」
「なってないよ。だって、コーヒーを注文するまで至ってないじゃん。」
「急になかったシステムを次々と追加して来るから辿り着けないんだろ!」
「ご注文は?」
「じゃあ、コーヒー。」
「コーヒーですね?」
「はい。」
「コーヒーでいいんですね?」
「はい。」
「本当に、コーヒーをご注文されるんですね?」
「はい。」「本当の本当に」
「毒でも入ってんのか!何なんだよ!繰り返しの確認が異常だろ!」
「いやだって、コーヒーを出したら、注文と違うじゃねぇかって怒られたら嫌だからさ。」
「それ以前に怒られてんじゃねぇか!」
「ご注文は?」
「コーヒーで。」
「仕方ない。コーヒーを出してやろう。」
「一緒じゃねぇか!一切苦労が報われないな!俺史上一番の無駄な時間!」
「まあ、喫茶店はこれぐらいにして!」
「はあ?」
「じゃあ、次は花屋で練習しよっか!」
「いや、待て待て待て!そもそも、そもそも練習って何なんだよ!何の何の練習なんだよ!これは!」
「お前のお客さんとしての練習だよ。」
「俺の練習だったの!?」

第九百一話
「いらっしゃいませ」

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2023年9月27日 (水)

「第九百二話」

「あれ?さっき部屋掃除したばっかなのに何でゴミが落ちてんだ?ゴミ袋から落ちたのか?」
「ちょっと待て!」
「ゴミが喋った!?」
「俺は、ゴミじゃない!」
「えっ!?えっ!?えっ!?ゴミが喋ってる!?」
「落ち着け!俺は、ゴミじゃない!」
「ゴミでしょ!鼻かんだ後の丸めたティッシュじゃん!」
「鼻かんだ後の丸めたティッシュじゃない!」
「いやいやいや、この丸まり、この湿り気、完全に鼻かんだ後の丸めたティッシュじゃん!」
「完全に鼻かんだ後の丸めたティッシュみたいかもしれないけど、違う!」
「じゃあ、何なの?」
「勇者だ!」
「勇者!?」
「そうだ。」
「えっ!?えっ!?勇者!?えっ!?えっ!?」
「落ち着け!とにかく、手に掴んだ俺をゴミ箱に捨てようとしないで、とりあえずテーブルの上に置いて話をしよう!」
「嫌だよ!テーブルに鼻水付いちゃうじゃん!」
「付かないから!」
「いや、付くでしょ!結構な湿り気だよ?」
「だから、それは再現度の高い呪いなんだよ!鼻水に限りなく近い呪いがなせる所業なんだよ!」
「マジで何を言ってんのか分かんないんだけど?」
「だから!俺は、大魔王の呪いで鼻をかんで丸めたティッシュにされたんたんだよ!」
「え?完全に負けたって事?」
「いや、負けたは負けたけど、別に完全には負けてないよ!」
「ゴミにされて、捨てられそうになってんだから、完全に負けてんじゃん!え?じゃあ、この世界は、終わるって事?大魔王によって支配されるって事じゃん!人間は皆殺しって事じゃん!」
「そんな事は俺がさせない!」
「ゴミが何言ってんの?」
「ゴミじゃない!勇者だ!いいから、とりあえず俺をテーブルの上に置け!」
「テーブルが汚れるから嫌だって!」
「じゃあ、床でもいいから置け!置いて話を聞け!」
「ポイ。」
「投げ捨てるな!勇者だぞ!」
「今は、ゴミじゃん。」
「限りなくゴミに見える勇者だ!」
「言ってて悲しくない?それで?話って?」
「とりあえず座れ。・・・いいか?まず、おかしいと思わなかったか?」
「何が?」
「掃除したはずなのに、部屋に丸めたティッシュが床に落ちてた事だ。」
「ああ、思ったけど、気付かないうちにゴミ袋から落ちたかもしれないから、それは解決した。」
「解決するな!俺は、大魔王にトドメの一撃を食らわす時に隙が生じて、呪いで鼻をかんで丸めたティッシュにされて、この空間に飛ばされて今に至る!」
「じゃあ、大魔王は?」
「そうだ!瀕死だ!こうして俺をゴミにして、回復する時間を作ったんだ!だから、俺は早く呪いを解いて大魔王にトドメの一撃を食らわせに戻らなきゃならない!」
「ちょっと待って!」
「何だ?」
「本当に勇者なの!」
「最初からそう言ってるだろ!」
「鼻をかんで丸めたティッシュが訳の分からない意思を持った訳じゃなくて?」
「違う!そっちじゃなくて!勇者の方だ!」
「だとしたらだよ?何で僕の家に?」
「それは完全に偶然だ。大魔王も瀕死だったから思い描いた正確な位置に俺を飛ばせなかったんだろう。本来なら、大海原や火口に飛ばしてたら、その時点で俺は死んでたからな。運が良かったと言えば運が良かった。」
「じゃあ、まだこの世界は終わらないって事?」
「ああ、終わらせてたまるか!」
「じゃあ!」
「お、おいおいおい!俺を掴んで何しようとしてんだ!」
「窓の外に投げようとしてんだよ!」
「待て待て待て待て!この世界をお前の手で終わらせる気か!」
「そんな訳ないだろ!」
「じゃあ、何で俺を窓の外に投げ捨てようとする!」
「投げ捨てようとしてるんじゃなくて、大魔王の所に飛ばそうとしてるんだよ!」
「何で鼻をかんで丸めたティッシュの状態のまま俺を大魔王の所に届けんだよ!そもそも鼻をかんだ丸めたティッシュの飛行距離なんてたかが知れてるだろ!だいたい大魔王の場所だって知らないだろ!」
「そこは、自動的に行くのかなって?」
「自動的に行ったとして、こんな状態の俺が大魔王にトドメの一撃を食らわせられないだろ!」
「じゃあ、やっぱり詰んだじゃん!この世界は終わりじゃん!」
「終わらない!」
「だって、僕は呪いを解けないし、呪いを解ける知り合いもいないし!」
「そうだろうな。」
「あ!勇者なら呪いを解ける知り合いがいるって事か!」
「呪いを解ける知り合いはいる。」
「分かった!僕がその人の所まで届ければいいんだね!」
「いや、残念だが、この呪いは大魔王本人が死なない限りは解けないだろう。」
「じゃあ、やっぱり詰んだじゃん!この世界は終わりじゃん!」
「終わらない!」
「何でだよ!大魔王が死ななきゃ解けない呪いをかけられてたら、誰が大魔王にトドメの一撃を食らわせるんだよ!」
「お前だ。」
「僕!?」
「呪いは解けないが、俺の勇者としての力を継承させる事は出来る。」
「え?でも、そんな事したら勇者は?どうなるの?」
「死ぬ。だが、そんな事は、どうだっていい。この世界が救えるなら、冒険に出たあの日からこの命は捨ててる。」
「・・・勇者。」
「青年、時間がない。この世界をお前に託した!」
「どうすれば、どうすれば勇者としての力を継承出来るの?」
「丸めたティッシュを広げて中の液体を飲めばいい!」
「汚っ!!」

第九百二話
「王道」

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