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2023年10月

2023年10月 4日 (水)

「第九百三話」

「お前、こんなお洒落なバー、知ってたんだな。」

「探したんだよ。」

「わざわざ俺と来るのにか?」

「親友に完全犯罪の話をする時は、お洒落なバーでって決めてたからな。」

「何て?」

「俺、遂に完全犯罪を思い付いたんだよ!」

「お洒落なバーで大きな声で笑顔で言う台詞じゃないだろ!え?完全犯罪?遂にって、ちょいちょいそんな事を考えながら生きてたのかお前は!」

「楽にお金を稼ぐ方法と完全犯罪は、誰もが考えながら生きてるもんだろ?」

「暇な奴だけだよ!」

「勘違いしないで欲しいんだけど、別に誰かを殺したいって訳じゃないんだ。」

「誰も殺したくないのに完全犯罪を考えてるって、相当な暇人だぞ?」

「俺は、この完全犯罪で小説を書いて、楽にお金を稼ぐんだ!」

「小説家に怒られるぞ!」

「で、小説にする前に、親友のお前に俺の完全犯罪を聞いて欲しいんだ。」

「あそう。じゃあ、俺が小説になるかならないか判断するよ。」

「完全犯罪をするにはまず、凶器が凶器だってバレちゃいけないんだ。」

「なるほど。で?凶器に何を使うんだ?」

「バナナの皮だよ。」

「バナナの皮?バナナの皮をどう凶器に使うんだよ。」

「バナナの皮で、滑って転んで頭を地面に強打させて殺すんだよ!」

「お前、そんな方法でよく完全犯罪だとか小説で大金持ちだとか言えたな。」

「バナナの皮で滑って転んだら、誰もがそれは殺人だって疑わないだろ?」

「疑わないかもしれないけど、そもそもどうやってバナナの皮で滑って転ばせるんだよ。地面にバナナの皮が落ちてたら、普通は避けるだろ。」

「まあ、素人はそう考えるよな。」

「腹立つドヤ顔だな。」

「バナナの皮が一つ地面に落ちてたら、そりゃあ避けて歩くよ。だけど、通りがびっしりバナナの皮だらけだったらどうする?滑って転ばざるを得ないだろ?」

「お前、そんな考えでよくもドヤ顔出来たな?バナナの皮だらけの通りって何なんだよ!そんな仕掛けしてたら、殺人で逮捕される以前に、通りをバナナの皮だらけにした罪で逮捕されるだろ!そもそもバナナの皮だらけの通りを目の前にしたら、他の道を行くだろ!」

「それもそうだな。」

「俺に言われて気付く程度の頭で完全犯罪とか小説とか口にすんなよ!」

「バナナの皮は、一つまでか。」

「え?まだバナナの皮で完全犯罪しようとしてるのか?」

「せっかく完全犯罪の凶器が思い付いたんだから、それを使わない手はないだろ?」

「無理だって!言わないようにしてたけど、バナナの皮で人を殺すなんて無理だって!」

「おい、いいか?これは、実際に人を殺すんじゃなくて、小説の中での完全犯罪の話なんだぞ?」

「お前、その小説を読んでて、クライマックスで完全犯罪のトリックがバナナの皮って分かったら、小説投げ捨てるぞ!」

「いやいやいや、完全犯罪なんだから、最後の最後まで、凶器がバナナの皮だって事は分からないよ。」

「はあ?どう言う事だよ。」

「完全犯罪なんだから、犯罪にすらならないんだよ。主人公は、ラストでバナナの皮で滑って転んで頭を地面に強打して死ぬ。」

「嫌な終わり方!どっち道、投げ捨てるよ!え?てか、誰かが死んで、それを解決するような内容じゃないとしたら、そこに至るまではどんな内容の小説なんだよ。」

「親友をお洒落なバーに呼び出して、完全犯罪の話を聞かせる話だよ。」

「え?」


第九百三話

「警部、これは?うむ、酔っ払いがうっかりバナナの皮を踏んで滑って転んだ事故死、だな」

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2023年10月11日 (水)

「第九百四話」

「未来。」
「どうした?過去。」
「ここは、驚きの連続だな。」
「だろうな。ここは未来だからな。」
「未来は、こんな風になっているんだな。」
「ああ、そうだ。」
「ん?」
「どうした?過去。」
「俺からしたら、お前は未来。お前からしたら、俺は過去。俺からしたら、ここは未来。だが、お前からしたら、ここは現在。だったら俺は、お前を現在と呼ぶべきなんじゃないか?」
「なるほど、言われてみればそうだな。」
「なら、これからは、現在と呼ぶ事にしよう。」
「そう言えばまだ聞いてなかったが、過去は、ここへどうやって来たんだ?」
「部屋で寛いでいたんだ。飲み物がなくなったから、取りに行こうと立ち上がったら未来にいた。」
「現在、だろ?」
「ああ、そうだったな。自分で言い出したのに間違うとは、耳を削ぎ落として償おう。」
「え!?待て待て待て!過去!」
「ん?」
「お前がいた時代では、そんな事でそんな事をしなきゃいけなかったのかもしれないが!この時代では、そんな事でそんな事をしなくてもいい!」
「だが。」
「時代に従うんだ。別の時代で自分のいた時代の習慣を貫き通したって仕方がないだろ!混乱を招くだけだ!」
「言われてみれば、現在の言う通りだな。なら、この時代では、今みたいな間違いを犯したら、どう償えばいいんだ?」
「脇毛を抜いて、その脇毛を鼻の穴に入れてくしゃみを出す。それで許される。」
「何!?」
「どうした?過去。」
「神聖な脇毛を抜いて、邪悪な鼻の穴に入れるだと!?」
「過去の時代で脇毛が神聖な存在だとしても現在では、脇毛は脇毛だ。過去の時代で鼻の穴が邪悪な存在だとしても現在では、鼻の穴は鼻の穴だ。」
「それは分かっている!だが俺は、出来るのか?脇毛を鼻毛に絡ませるなんて本当に出来るのか?なあ、現在?」
「どうした?過去。」
「例えば、脇毛のない場合は、どうやって償うんだ?」
「その場合は、ごめんなさいと深く頭を下げて償えばいい。」
「現在?」
「どうした?過去。」
「脇毛がある場合も、ごめんなさいと深く頭を下げれば許されるのか?」
「許される。」
「ごめんなさい。」
「許す。」
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
「現在、俺は今の一連のやり取りで理解した。」
「何をだ?」
「時代が違えば習慣も違うのは、当然の事で、それは時代を越えてみなければ分からない細かな事もある。」
「それはつまり、アイデンティティの崩壊って事か?」
「そうだ、現在。俺は、現在に長居すればするほど、己を失う。それはつまり、俺が俺じゃなくなる。きっと最終的には、時代に馴染めず崩壊してしまうだろう。俺は、時代に殺される。」
「過去に戻るのか?」
「俺が助かる方法は、それしかない。だが、問題がある。」
「過去に戻る方法が分からない。」
「そうだ。そもそも気付けばこの現在にいた状態だ。何が起きたのか理解不能で、どうすれば戻れるのか皆目見当もつかない。」
「なら、片っ端から試してみるしかないんじゃないか?」
「片っ端から?」
「まずは、この現在に来た状況を再現すれば、戻れるかもしれない。何もしないで崩壊を待つよりは、片っ端から試してみよう!」
「現在!」
「過去!」
「ありがとう!」
「どういたしまして!」
「俺は、部屋で寛いでいた。飲み物がなくなったから、取りに行こうと立ち上がったら現在にいた。これを再現すればいいって事だな。」
「過去!?」
「ん?どうした?現在。」
「ごめんなさい。」
「なぜ、深く頭を下げて償う?」
「部屋で寛いで、飲み物がなくなり、取りに行こうと立ち上がる。」
「ああ、さっそく試みてみよう。」
「この時代に、部屋はない!」
「何!?」
「いや!だけど、別の方法で戻れるかもしれない!片っ端から試してみよう!」
「部屋がないって、なら脇毛部屋もないって事か!?」
「おい!過去!しっかりしろ!白目をむくにはまだ早い!この時代にも部屋が全くない訳じゃない!」
「それを聞いて黒目が帰って来たよ。」
「この時代にも僅かだが部屋、と言う存在が存在する。」
「現在は、その場所が分かるか?」
「分かる。」
「なら、連れて行ってくれ。」
「だが。」
「何か問題でもあるのか?まさか、一般人がそうそう立ち寄れる部屋ではないのか?」
「誰もが立ち寄れる。」
「よかった。案内してくれ。」
「その名も鼻毛部屋。おい!しっかりしろ!過去!おい!」

第九百四話
「明日は我が身」

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2023年10月18日 (水)

「第九百五話」

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!!んんんんんんんんんん!!ぬうおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!・・・・・・ん。」
「お、お疲れ様でした!?し、師匠!?それにしても何ですか今日の作品に立ち向かうその気迫!全身から溢れ出るその鬼気迫る覇気!」
「私は、この五十年、数多の作品を世に生み出して来た。」
「はい、師匠の作品は、どれもが最高傑作です。ですが、今日みたいな師匠は、今まで見た事がありません!一体師匠の身に何があったんですか!」
「・・・人間はいつの日か死を迎える。」
「まさか師匠!?死ぬんですか!?この前受けた無料の健康診断で何か死ぬ系のヤツが見付かったんですか!?だから、生きてる間に一つでも多くの作品を世に生み出そうと刹那なんですか!?」
「いや、この前の無料の健康診断の結果は健康そのものだった。」
「ほっ!いや、ほっとしてる場合じゃない!では、何で師匠はそんな風に作品作りを!」
「気付いたんだよ。」
「何にですか!」
「私は、この五十年、作品を生み出す為に作品を世に生み出して来た。」
「立派です!」
「明日に向かって。」
「立派です!」
「明日出来る事は明日やろう的な心構えで。」
「立派です!」
「今日はもう寝よう的な心構えで。」
「そうやって師匠が五十年間で生み出して来た作品は、最高傑作です!」
「今更ながら気付いたんだよ。いや、気付かされた。」
「何にですか!」
「人間は、今この瞬間にでも死ぬかもしれない。」
「はっ!?」
「そんな事が頭に過ってしまった夜の朝には、アトリエで必死になるだろ。」
「はっ!?」
「この身がいつ全機能停止になるか分からない以上、そりゃあ、アトリエで必死になるだろ。」
「師匠!そりゃあ、アトリエで必死になります。」
「踏ん張って踏ん張って、それでもダメでも踏ん張るだろ。踏ん張って踏ん張って、そりゃあ踏ん張らなきゃだろ。否、明日は来ないかもしれないんだからな。」
「師匠!」
「昨日の私が生み出す作品と今日の私が生み出す作品の何が違うのかは、正直私にも分からない。だが、私の中で何かが変わったのは確かだ。それが生み出す作品にいい影響を与えればいいがな。」
「号泣です!僕はもう師匠のそう言うとこに号泣です!」
「踏ん張って絞り出して、それでもダメでも踏ん張って絞り出して生み出す。私にはそれしか出来ないからな。」
「きっとこれまで以上に師匠の作品に勇気づけるられたり、励まされたりする人がいるはずです!」
「・・・だったら嬉しいな。」
「・・・だったら嬉しいですね、師匠。」
「さてと。」
「師匠?まだ作品を?今日はもう十分なのでは?」
「あいにくまだ、生きているもんだからな。」
「師匠!」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!!んんんんんんんんんん!!ぬうおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!どっせええええええええええい!!・・・・・・ん。」
「・・・さすがです!」

第九百五話
「ウンコアート」

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2023年10月25日 (水)

「第九百六話」

「こんな山は絶対に登りたくない!どんな山?」
「一歩目に死体が転がっている。」
「怖い。ダメ。」
「え?これさっきから何なんですか?」
「こんな山は絶対に登りたくない!どんな山?」
「ちょっと説明してくれませんか?」
「面白くない。ダメ。」
「いやいやいや、今のは答えた訳じゃないんですよ。質問してるんですよ。僕はこの山に登りたくて来たんですよ。で、登山料を支払おうと管理事務所に行ったら、ここに行って下さいって言われて来てる訳ですよ。」
「こんな山は絶対に登りたくない!どんな山?」
「いやだから、それ何なんですか?登山料払うんで、行っていいですか?いくらですか?」
「長い。ダメ。」
「いやだから、答えてないんですよ。ちょっと真面目にどう言う事だか説明して下さいよ。」
「はあ。分かるだろ?あのね?ここの登山料は、面白い回答なんだよ。だから、この山を登りたいなら、面白い回答してくれって事。」
「いや、全く理解出来ませんよ。何で面白い回答しないと登山出来ないんですか。登山と面白い回答は関係ないでしょ。いくらなんですか?登山料。」
「何でもかんでも金で解決出来ると思うなっ!!」
「・・・めちゃくちゃ怒るじゃないですか。」
「何でもかんでも金で解決出来ると思いやがってよ。カスがよ。」
「めちゃくちゃ罵倒されてる意味が分からないんですよ。」
「こんな山は絶対に登りたくない!どんな山?」
「一歩目に死体が転がっている。」
「怖い。ダメ。こんな山は絶対に登りたくない!どんな山?」
「えーと?」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・こんな山は絶対に登りたくない!どんな山?」
「えーと?」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・こんな山は絶対に登りたくない!どんな山?」
「えーと?」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・こんな山は絶対に登りたくない!どんな山?」
「一歩目に死体が転がっている。」
「ちょっと待て!コラ!お前、最初っからずーっとその回答してるけど何なんだよ!ダメって言われてんだからすんなよ!二度と!」
「一歩目に死体が転がっている山は、絶対に登りたくないでしょ!」
「だから!マジのヤツ回答すんなって言ってんだよ!面白いの回答しろって言った後もしてんだろそれ!何なんだよ!何度も何度もマジで!」
「思い付かないんですよ!面白い回答が思い付かない人だっているでしょ!面白い回答が思い付かなくてもこの山を登りたい人だっているでしょ!」
「いるよ!過去にそう言う人もな!でも、そう言う人も頑張って頑張って最後には面白い回答を捻り出してこの山を登ったよ!」
「僕は本当に思い付かないんですよ!」
「いや、いやいやいや、別にハイレベルの面白い回答を待ち望んでる訳じゃないんだよこっちもさ。俺が大笑いして地面を転げ回るような回答じゃなくてもいいんだからさ。何でもいいのよ。何でもいいから数打ちゃ当たるで回答してみろよ。なっ?」
「・・・数打ちゃ当たる?」
「こんな山は絶対に登りたくない!どんな山?」
「一歩目に死体が転がっている!」
「登りたくないのか!」
「登りたいですよ!僕は、この山を登る為に登山を始めたんですから!」
「そうか。こんな山は絶対に登りたくない!どんな山?」
「一歩目に腐乱死体が転がっている!」
「転がってる死体が腐乱して何が面白いんだよ!転がってる事態が面白くないって言ってんの!」
「じゃあ!お手本をお願いしますよ!」
「お手本?」
「こんな山は絶対に登りたくない!どんな山?」
「転がって来る巨大な岩から冒険家が逃げてる。」
「えー?一歩目にその潰された冒険家の死体が転がっている!」
「だから!死体やめろって言ってんだろ!しかも今のは俺の回答ありきの回答だろ!こんな山は絶対に登りたくない!どんな山?」
「一歩目に・・・えーと?」
「その一歩目にって言うのがまずダメなんじゃないか?入りを変えた方がいいんじゃないか?」
「なるほど。」
「こんな山は絶対に登りたくない!どんな山?」
「頂上に死体が転がっている。」
「もういい!行け!登れ!」

第九百六話
「そこに面白い回答があるから」

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