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2023年11月

2023年11月 1日 (水)

「第九百七話」

 或る日、便座に座るボクの視線の先のトイレットペーパーが、いつもより白く見えた。そして其の日、此の世界でボクだけが死んだ。

第九百七話
「ボクだけが死んだ日」


















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2023年11月 8日 (水)

「第九百八話」

「夕陽が綺麗だね。・・・・・・・・・って、アタシは誰に言ってんだって!」
「私にだろ?」
「え!?誰!?」
「誰って、目の前にいるだろ?」
「え?目の前は川だけど?」
「いやいやいや、それは下だろ?目の前は目の前だ。」
「まさか!?」
「どうも、女。」
「夕陽が喋った!?」
「そんなに驚かなくてもいいだろ?」
「驚くでしょ!ビックリ仰天でしょ!古より夕陽は喋らないモノだって言い伝えられてるんだから!自分の価値観で語らないでよ!」
「橋の上から夕陽を眺めて独り言とは、女!さては、フラれたな!」
「はあ?フラれてないし!フッたんだし!」
「強がるな、女。」
「デリケートな乙女心をえぐらないでくれる!デリカシーないのか!夕陽は!あと、女ってやめて!」
「私からしたら、人間など、男か女、ただそれだけだ。」
「あっそ!」
「何でフラれたんだ?」
「ゴシップ大好きオバサンか!いいでしょ!夕陽には、関係ないんだから、ほっといてよ!」
「その性格が問題か?」
「何で初めて会話した夕陽にアタシの性格が分かるのよ!」
「見るとまだ若いじゃないか。まだ、若いんだろ?若そうな格好してるけど、若いんだよな?」
「若いよ!高3だよ!」
「高3とか私はよく分からないが、若いならいいじゃないか。」
「何が?」
「フラれたって、いいじゃないか。」
「よくはないでしょ!フラれない方が断然いいに決まってる!てか、えぐられたくないとこをえぐるのやめてって言ってんじゃん!」
「女、一つ良い事を言おう。」
「そんな宣言するヤツ初めてだけど大丈夫?」
「私は、夕陽だぞ?」
「いや別に説得力ないけど?」
「世の中、いっぱいの人間が今日もどこかでフラれてる。どうだ?フラれて落ち込んでる気持ちなんか空の彼方へ飛んで行っただろ?」
「いや、全然?そりゃあ、今日もどこかでいっぱいの恋人達が別れてるかもしれないけど、それはそれじゃん。これはこれじゃん。」
「あっそ。」
「ぶっ飛ばすよ?」
「で?何でフラれたんだ?」
「絶対に言う訳ないでしょ!」
「よし、なら私の秘密と交換だ。」
「いや、いい。」
「私が秘密を教えたら、フラれた理由を教えてくれ。」
「嫌だって言ってるの分からない?」
「私は、不眠症だ。」
「何でそんなどうでもいい秘密にもならない秘密とアタシのフラれた理由が同等価値なんだ!」
「まさか相手の男に他に好きな人が出来たとか、しょうもない理由じゃないよな?」
「・・・・・・。」
「はっ!?」
「・・・・・・。」
「図星だ!?」
「・・・・・・。」
「女、そんなに私が正解した事が嬉しいのか!」
「悲しくて泣いてんだ!フラれた理由を当てられて正解者の為に泣くって、アタシは変態か!」
「女よ。」
「何よ!」
「泣くな。」
「お前が泣かしたんだろ!責任取れよな!」
「分かった、ならもう一つ良い事を言おう。」
「聞きたくない!」
「世の中、いっぱいの人間が明日もどこかでフラれる。」
「今日を明日にしただけで、内容一緒じゃん!てか、ほっといてって言ってんじゃん!何で話し掛けてくんの!」
「女にとってフラれた事が悪い事なら、それと引き換えに何か良い事があってもいいじゃないか。人生そんなに悪い事ばかりじゃない。私が良い事を与えようと話し掛けたんだ。」
「新しい彼氏でも紹介してくれんの?」
「いや、それよりも良い事だ。」
「それよりも!」
「そして、その良い事は、既に女の身に巻き起こってる。」
「な、何?一体アタシの身にどんな良い事が巻き起こってんの!?」
「夕陽と会話出来る。」
「しょうもなっ!それがフラれた事への良い事だとしたら、しょうもなっ!良い事を一つ無駄遣いしただけじゃん!」
「夕陽と会話出来るなんて光栄なんだぞ?」
「そんなの知らないよ!」
「何を!?夕陽と会話出来る人間がどれ程いるか分かるか?もしかしたら、人類初かもしれないんだぞ?自慢出来るんだぞ?」
「そんなの自慢したら回りからフラれて頭がおかしくなったって思われるだけじゃん!」
「そんな事を言うヤツは、堂々と胸を張ってぶん殴ればいい!」
「終わりだよ!そんな事したら、アタシの人生が終わるよ!てか、この状況が既にヤバいんだって!誰かに見られたら夕陽に向かって一方的に叫んでる高3なんだから!」
「大丈夫。私の声は、女以外にも聞こえてるから。」
「じゃあ、さっきの自慢話しにもならないじゃん!ちっとも光栄じゃないじゃん!アタシは!とってもとっても悲しいの!とってもとっても淋しいの!この世界で独りぼっちになっちゃったんじゃないかってぐらいなの!」
「・・・・・・。」
「何で!ねぇ?何で!アタシが何か悪い事した?ねぇ?他に好きな人が出来たって、どう言う事?意味分かんないよ!全然意味分かんない!どうして?どうしてなの?何でこんな辛い思いしないといけないの?」
「・・・・・・。」
「答えてよ!答えなさいよ!夕陽!」
「・・・もう一ついい事を言おう。」
「言ってみなさいよ!」
「女の足元で犬が小便してるぞ。」
「早く言え!」

第九百八話
「夜のはじめ頃物語」

「ちょっ!信じらんない!気付いてたんなら何でもっと早く教えてくんないのよ!何が良い事よ!本当にぶん殴るからね!」
「・・・・・・。」
「・・・夕陽?」
「あっ!コラ!こんなとこにいたのか!ダメじゃないか!」
「え?」
「え?」
「この犬の飼い主、ですか?」
「・・・・・・。」
「あのう?」
「え?あ、そうです。って、靴!」
「ああ、オシッコされちゃったみたい。」
「ごめんなさい!本当にごめんなさい!ボクがリードを放しちゃったのが悪いんだ!」
「別にわざとじゃないんだし、いいよ。可愛いね。名前、何て言うの?」
「夕陽。」
「え!?」
「この橋から見える夕陽が好きだから、ボクが付けたんだ。」
「・・・そうなんだ。いい名前だね。」
「キミ、もしかして高3?」
「そうだけど?キミも高3?」
「うん。あ、そうだ!こいつのお詫びしたいから、家まで来てよ!」
「え?本当に大丈夫だから。」
「ダメだよ!靴も洗わないと!ボクの家、理髪店の近くなんだ。ほら、角に公衆電話がある理髪店。知ってる?」
「うん、知ってる。」
「行こう!」
「え、ちょっと!・・・ありがとう、夕陽。」

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2023年11月15日 (水)

「第九百九話」

「ちょっといいか?」
「何?」
「大事な話があるんだ。」
「大事な話なら、夕御飯食べた後でゆっくりした方がいいんじゃないの?」
「そんな改まってじゃなくて、日常の流れで聞いて欲しい感じの大事な話なんだ。」
「ああ、なるほどね。オッケー。え、何?仕事関係の話?」
「いや、体関係の話だ。」
「え?この前の会社の健康診断の結果が悪かったの?」
「お前、指先からオシッコが出るようになったら、良いと思った事ないか?」
「ん?」
「お前、指先からオシッコが出るようになったら、良いと思った事ないか?」
「ない!ちょっと待って!嘘でしょ!嘘よね!まさか今のが大事な話じゃないよね!ねっ!」
「今のが大事な話だよ。便利だと思わないか?」
「続けないで!指先からオシッコが出るようになったら、良いと思った事ないか?の話!」
「だって考えてもみろよ。」
「だから何で続けんのって!続けないでって言ってんじゃん!指先からオシッコが出るようになったら、良いと思った事ないか?の話を!」
「わざわざトイレに行かなくていいんだぞ?」
「行けよ!トイレ!指先からオシッコが出るようになってもさ!」
「ピュッて簡単に済ませられるんだぞ?」
「ピュッて簡単に済ませるな!出てるのオシッコだぞ!」
「散歩とかしてる時にな?尿意に苛まれて苦悩してる時に限ってトイレが見付からない。そんな時、ピュッて簡単に済ませられるんだぞ?」
「指先汚くてしょうがないじゃん!いや、てか何で指先からオシッコが出るようになったら、良いと思った事ないか?の話を続けてんの?食事中にする話じゃないよね?やめてって再三言ってるよね?」
「オシッコした後は、もちろんウェットティッシュとかで拭くよ。だからな?こう言う食事中とか会議中とかな?映画館とかでもいいよ。指先からオシッコが出るようになったら、わざわざトイレに行かなくていいんだぞ?」
「おい!どこにすんのよ!食事中とか会議中に!その辺でピュッピュッ、ピュッピュッされたらたまったもんじゃないわよ!」
「そんなの指先からオシッコが出るようになった世界には、携帯用のオシッコ入れがあるに決まってるだろ?もしくは、吸収力抜群のそう言うヤツがあるだろ。」
「嫌だその世界!単純に嫌だ!」
「いや、お前分かってない!」
「お前だ!分かってないのは!」
「良く考えてみろよ!便利だろ!」
「便利を強調されても不潔でお下劣だろ!だったら、指先からオシッコが出るようになるより!指先から醤油が出るようになった方が便利でしょ!」
「お前、バカか?」
「お前にだけは言われたくないわ!」
「人体の構造上、指先から醤油が出る訳ないだろ!」
「オシッコもだろうが!」
「人体の構造上の話をしてるんだ!俺は!」
「え?何?何が起きてんの?何でこの旦那さんは、こんなに激怒出来んの?」
「家内がバカだからだ!」
「お前だ!バカは!何だ指先からオシッコが出るようになったら、良いと思った事ないか?って!バカそのものじゃん!偶然、夕御飯の食器の配置でバカを召喚しちゃったのかと思ったわよ!」
「お前、汚いとか言ってたけど、アレだぞ?尿道は、しまわれてるから全く汚くないんだぞ?指先がパカッて開いて尿道が出て来て、ピュッてするんだぞ?」
「まだする!?指先からオシッコが出るようになったら、良いと思った事ないか?の話をまだすんの!?指先が開閉式で尿道が中にあるとしてもオシッコ飛び散るだろ!出て来るぞ?オシッコ撒き散らすヤツとか!酔っ払いとか嫌がらせとかな!」
「死刑だよ。そこは、法改正でオシッコを撒き散らした者は、死刑だよ。」
「じゃあもう、人類絶滅だよ!」
「何でだよ!」
「指先からオシッコが出るようになった世界で子供がオシッコ撒き散らさずに成長出来るとは思えないからよ!」
「だからそこは、20歳とかになったら、指先からオシッコが出るように体が自然とそうなるんだよ。」
「ご都合主義じゃん!もう世界観が無理矢理指先からオシッコが出るように都合良く捩じ曲げられてんじゃん!」
「どうだ?指先からオシッコが出るようになったら、良いと思わないか?」
「いや、その世界観だと選択肢ないじゃん!もはや出てるじゃん!指先からオシッコ!いやもう、やめて!この心底無駄な時間!指先からオシッコが出るようになったら、良いと思ったから!やめて!」
「どの指先からオシッコが出るようになったら、良いと思う?」
「どこまで続けんの!?」
「ブッ!」
「え?」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「え何で?」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・屁をこいたの?」
「屁をこいた。」
「何で?」
「ちゃんと肛門からこいた。」
「いや、指先からこけるみたいな言い方やめて。」
「・・・ご馳走様でした。」
「・・・ご馳走様でした。」

第九百九話
「屁ッピーエンド」

「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・何?」
「ちょっと出たかも。」
「バカじゃないの。」

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2023年11月22日 (水)

「第九百十話」

 今回の仕事は、簡単な仕事だ。女の死体を愛車で森に運んで埋める。車とシャベルが扱えれば誰にでも出来る。安いバーボンみたいな仕事だ。
「・・・・・・。」
途中、どっかのアホが事件を起こしたのか検問所があったが、何の問題もない。そこを通過するなんて恋文を書くよりも簡単な事だ。
「・・・・・・。」
ただ一つ問題があるとすれば、女の死体が助手席に座ってる事だ。
「アタシを埋めるの?」
「そうだ。」
依頼主には、後で追加料金を請求するとして、さてと、女はどうする?そもそも疑問だが、女は本当に死んでたのか?
「おい。」
「何?」
「お前は、殺されたんじゃないのか?」
「殺されたわ。」
「だったらなぜ、助手席に座ってる?」
「トランクが窮屈だったから。」
途中のガソリンスタンドでトイレに行って戻って来てトランクが開いてた時には、女の死体が盗まれたんじゃないかってチビるかと思ったが、事態はそれよりも最悪だった。裸足でゴキブリを踏み付けるよりも最悪だ。
「それは、悪かったな。」
「いいの。アナタは、そう言う仕事をしただけだから。」
「別にいつも死体を運んでる訳じゃない。」
「そうなの?」
「当たり前だろ。今日みたいにお前が助手席に座ってなかったら、あの検問を簡単に通過するなんて無理だった。ハイリターンだがハイリスクな依頼は、年に数回だけだ。」
「じゃあ、今日はツイてたのね。」
ツイてた?トランクの死体が助手席に座ってるこの状況が本当にツイてるのか?ポーカーのそれとは訳が違う。この先に待ってる結末は、何一つ変わらない。俺は、女の死体を森に埋める。まあ、その後に追加料金を依頼者から貰う事を考えたら、ポーカーのそれみたいなもんだ。
「海が見たいの。」
「何?」
海だと?まったく、わがままな死体だ。だが、海に沈める。それはそれでいいのかもしれない。
「分かった。」
「優しいのね。」
「追加料金は依頼者持ちだかな。問題ない。」
「アタシは、どうやって殺されたの?知ってる?」
「毒殺したって聞いてる。」
「ああ、じゃあ、きっとあのワインね。」
「苦しかったか?」
「さあ?覚えてないわ。」
「そうか。それは、ツイてたな。」
「ツイてた?まあ、そうかもね。ツイてたかもね。」
そう言うと女は、ヘッドライトが照らす真っ直ぐで真っ暗な道を見ながら微笑んだ。それ以降、俺も女も口を開く事はなかった。沈黙の時間がどれぐらい続いたか?愛車は、海岸沿いのバイパスを走っていた。
「海。」
「ああ、海だ。満足か?」
「アタシを海に沈めるの?」
「そうだ。」
「そう。」
どこか悲しそうで妖艶な、どこか淋しそうで可憐な、そんな無表情な表情で女は窓の外の夜の海を見ていた。
「・・・腹が減ったな。」
「え?」
「丁度、この先にレストランがあるみたいだ。俺は、そこで何か腹に入れようと思う。」
「そう。アタシは、車で待ってるわ。」
「そうか。なら、逃げられても仕方ないな。」
「え?」
「・・・・・・。」
「・・・・・・逃げないわ。」
「・・・・・・そうか。」
「ありがとう。」
「・・・・・・。」
「でも、最後にワインが飲みたいわね。」
「・・・・・・。」
まったく、わがままな死体だ。

第九百十話
「わがままな死体」

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2023年11月29日 (水)

「第九百十一話」

 或る日、便座に座るワタシが読んでいる小説の文字が、いつもより黒く見えた。そして其の日、此の世界でワタシだけが生きた。

第九百十一話
「ワタシだけが生きた日」










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