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2023年12月

2023年12月 6日 (水)

「第九百十二話」

「おはよう。」
「・・・はあ、おはよ。」
「どうしたの?顔色悪いけど。」
「そりゃあ、顔色だって悪くなる!」
「何、急に!?どうかしたの?」
「朝が、朝が繰り返されてんだよ!」

第九百十二話
「朝が繰り返される」

「・・・・・・。」
「・・・・・・寝惚けてるの?」
「毎回毎回、お前はそれしか言えないのか!ホントに!まったく!何なんだよ!」
「ちょっと、落ち着いてよ。」
「落ち着いてられるかよ!どうせお前は!この状況を説明してよって言うんだろ?」
「ええ。そうよ?この状況を説明して?」
「どうすればいいんだよ!」
「説明すればいいの!」
「何でお前を殺しても朝が繰り返されるんだよ!昼になるにはもう、絶対にそれだと思ったのに!何でなんだよ!俺は一体何をすればこの朝が繰り返されるから抜け出せるんだよ!」
「え?」
「くそっ!」
「はい?」
「ああーっ!もう!」
「ちょっと待って?」
「何だよ。」
「ちょちょちょちょちょ!」
「ちょちょちょちょちょ、じゃないんだよ!」
「ちょちょちょちょちょ、でしょ!」
「ちょちょちょちょちょ、してて朝が繰り返されなきゃいいよ?だけど、ちょちょちょちょちょ、って言ってたって朝は繰り返されるんだよ!」
「ちょっと待ってってば!」
「どうしたらいいんだ!」
「聞き間違いじゃなかったら、今アナタはアタシを殺したって言った?」
「そうだよ。そしたら朝がもう繰り返される事がないと思ってな!」
「何やってんだお前は!」
「く、苦しい。首を絞めんな。」
「アタシを殺す前にお前が死ね!」
「や、やめろって!」
「はあ、はあ、はあ。」
「そんなのは、二回目の朝の時にもうやったよ。」
「はあ?もうやった?二回目の朝で自死って狂ってんの?」
「大体、こう言うのから抜け出すのは、そう言う事しなきゃだろ?躊躇ってる暇も後回しにしてる暇もないだろ?俺は今すぐにでも朝が繰り返すのを終わらせたかったんだよ。」
「いや、だからって二回目にって、狂い散らかし過ぎでしょ。ねぇ?詳しく説明して?朝が繰り返すって何なの?」
「・・・・・・。」
「お願い!」
「分かった。今回で祝千回目と言う事で説明してやる。」
「千回目!?」
「いつもなら、いい加減しつこく言い寄るお前をぶん殴ってるとこだけどな。」
「何て事してくれてんのよ!」
「どうせ覚えてないんだし、俺の精神状態だってもう崩壊寸前なんだよ!そんな事したって、お前は毎回毎回、笑顔で、おはよう、って俺に向かって朝の挨拶をする。」
「アタシ、絶対に覚えてるのよ!忘れるな忘れるな忘れるな!こんな奴とは絶対に離婚よ!」
「無駄だ。きっと今回もお前は、繰り返された朝で笑顔で朝の挨拶をする。」
「その冷静な態度がムカつくわね!何なのよこの温度差!」
「当たり前だろ?これが同じ朝を千回繰り返してる者と初めての者との差だ。」
「意味不明な理論をドヤ顔で展開してムカついて仕方ないけど、説明して!朝が繰り返すって何?」
「朝が繰り返すってのは、そのままの意味だ。朝が繰り返されてるんだ。8時に目が覚める。正午になると同時に俺はまた、ベッドで目が覚める。朝が繰り返される。昼にならないんだ。」
「何で?」
「そんなの知るかよ!」
「落ち着いて、何か抜け出す方法が絶対にあるはずよ!」
「おい、誰に何を言ってんだ?俺は、同じ朝を千回も繰り返してる、同じ朝を繰り返すプロだぞ?」
「だから?何?」
「どんだけあらゆる方法を試したと思ってんだ!」
「そう、あらゆる方法を試しきってのアタシを殺したって事ね。そうか。だったら、許して上げる。」
「何言ってんだ?」
「だってそうでしょ?アナタは、最後の最後まで、アタシを殺すって選択肢を残して置いた。ありとあらゆる方法を試して、試して試して試して、万策尽きてとうとう最後の最後で最愛の妻、つまりアタシを殺した。」
「・・・・・・。」
「それって、アタシを大切にしてたからって事でしょ?アタシを心の底から愛してたからって事でしょ?」
「・・・・・・。」
「ありがとね。」
「・・・・・・。」
「辛かったよね?一緒に考えよ!朝が繰り返されない方法を!」
「いや、三回目の朝にお前は殺してる。」
「はあ?」
「で、殺し方が間違ってたのかなって思って、十回目、五十回目、百回目、百十一回目、二百回目、二百二十二回目、三百回目、と方法を変えて殺してるけど、やっぱり朝は繰り返された。」
「何回殺してくれてんだあああああ!!」
「く、苦しい。や、やめろ。」
「順番で言うと千回目でまたアタシを殺そうとしてんだろ!」
「く、苦しいって。」
「だったらアタシが殺して上げるよ!これなんじゃない?この方法が正解だったんだじゃない?」
「やめろっての!」
「はあ、はあ、はあ。」
「それは、四回目にやられた。」
「・・・やるわね、アタシ。」
「腕伸ばして親指立ててグッドじゃねぇよ。ったく。」

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2023年12月13日 (水)

「第九百十三話」

「博士。」
「おお、どうしたんだ?そんな神妙な面持ちで。恋の悩みか?」
「違います。」
「はて?なら、どうしたんだ?」
「必殺技の件で博士にお話があります。」

第九百十三話
「正義の味方!稲光光線銃!」

「ふむ、必殺技と言うのは、ビームの事か?」
「はい。」
「ビームの調子が悪いのか?」
「調子は、すこぶる快調です。」
「はて?なら、どうしたんだ?」
「長いんです!」
「長い?」
「はい!長いんです!ビームが悪に届くまで、長いんです!」
「しかしだな?必殺技のビームの威力は絶大だ。」
「はい!絶大です!まさに一撃必殺です!どんな悪もビームで一撃必殺です!」
「だったら、仕方ないのは分かるだろ?それだけ絶大にするには、時間が掛かるんだ。」
「あの博士、ちょっと話の容量を得ていないようなので、改めてビームについて詳しく抗議していいでしょうか?」
「ふむ。」
「いいですか?博士の求める一撃必殺と言う事は理解出来ます。」
「どんな悪も稲光光線銃のビームの前には太刀打ち出来ない!まさに!まさに一撃必殺!この地球の弥の明後日の為に!」
「はい。で、そのビームが長いって言うのがですね。悪に届くまで約十五分掛かるんです。約十五分って言うのは、ビームを放つのに約十五分、つまりは、ビーム発射までに約十五分掛かる訳ではなく。ちょっとずつ、ちょっとずつビームが出て、悪に届く仕様で、約十五分を要する一撃必殺技なんですよ。逆に言えば、約十五分掛けてじっくり放たなければならない。博士!もっと短く出来ないんですか!」
「出来ん!」
「即答!?いや、威力を弱めて、ビィィィィィム!って感じで、悪まで一瞬のビームにならないんですか?」
「なるかならないかで言えば、理論上はなる。」
「でしたら博士!」
「稲光光線銃よ。そんな威力の弱いビームを悪に放って一体どうするんだ?」
「威力は弱いかもしれませんが、それでもそのビームを数発悪に当てれば成敗出来ます!」
「そんなビームでこの地球の弥の明後日が守れるか!」
「守れます!守ってみせます!博士!」
「稲光光線銃!」
「その稲光光線銃って名前もどうなんでしょうか?俺は別に稲光を使う事もなければ、光線銃を使う事もない!ビームは、指先から出てるんです!」
「名前については、単純にかっちょいいからだ。正義の味方は、かっちょいい名前でなければならないからな。」
「かっちょいい?」
「かっちょいいの概念は人それぞれだから、私とお前とで意見が分かれるのは仕方のない事だ。しかし、博士は私だ!稲光光線銃と言う名を変えるつもりはない!」
「んまあ、名前についてはいいでしょう。いいとしましょう。しかし、ビームについては、改良して欲しいんです!」
「・・・・・・。」
「博士!」
「・・・分かった。」
「ありがとうございます!」
「約三分だ。」
「はい?」
「正確には、二分五十二秒。それが限界だ。限界ギリギリだ。それ以上は、一撃必殺のビームの威力が損なわれてしまう。」
「約十五分が約十二分になっただけ。」
「稲光光線銃よ。この二分五十二秒は、単なる二分五十二秒ではない。」
「俺にしたら単なる二分五十二秒ですよ。腕のプルプルは何一つ変わりないですよ。」
「今出来るこの世界の科学の粋を集めた二分五十二秒だ!」
「博士は、分かってない!俺は、悪が察してビームを待つあの姿を見ながら、ビームを放ち続けてる事が耐えられないんですよ!」
「ビー!ビー!ビー!ビー!」
「緊急出動だだ!稲光光線銃!」
「こんな時に!」
「行け!稲光光線銃!」
「ぐぬぬぬぬぬ!」
「稲光光線銃っ!!」
「了解っ!!」

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2023年12月20日 (水)

「第九百十四話」

「どこまで話したっけ?ああ、そうだ!だから俺は、その女性にこう言ったんだ。ん?ちょっとすまない。マスター!ラム酒をもう一杯くれないか?」
「はいよ。飲み過ぎじゃないか?」
「飲ませるのが仕事だろ?」
「ほらよ。」
「ありがとう。どこまで話したっけ?ああ、そうだ!だから俺は、その女性にこう言ったんだ。ん?マスター!」
「何だよ。」
「チャーハンじゃないか!」

第九百十四話
「ネタバレ注意」

「悪かったな。」
「ラム酒とマスター自慢のチャーハン、どんな間違いなんだよ!どうやったら間違えるんだよ!宜しく頼むぜ。」
「ほらよ。」
「ありがとう。それで?どこまで話したっけ?ああ、そうだ!だから俺は、その女性にこう言ったんだ。マスター!」
「何だよ。」
「チャーハンだって!チャーハンなんだって!え?嫌がらせかなんかしてる?」
「お前に嫌がらせして何が楽しい。」
「ラム酒!頼むぜ!」
「ほらよ。」
「チャーハン!もう今はマスターの一連の動きを一部始終見させてもらったよ!グラスにラム酒を注ぐ気が微塵も感じられなかったよ!即チャーハンだったからな!」
「悪かったな。」
「思ってないだろ!悪かったって!悪かったって思ってる人間が取る行動じゃなかったもんな!何か?そんなに俺にチャーハン食べさせたいのか?」
「お前にチャーハン食べさせて何が楽しい。」
「楽しいんじゃないかなぁ!今までの経緯を考えると相当楽しいんじゃないかなぁ!」
「つまらないジョークなんか言ってないで、黙ってチャーハンでも食ってろ。」
「食べさせたいんじゃん!分かった!食うよ!だから、ラム酒のお代わりもくれよ!」
「はいよ。」
「ホント頼むぜ!」
「ほらよ。」
「チャーハンとチャーハン!何なんだよこの皿のチャーハンとグラスのチャーハンは!知らぬ間に俺はチャーハン大食いチャレンジに巻き込まれたのか?ラム酒を飲みたいんだよ!ラム酒を飲みながらさっきこのバーで知り合って意気投合した彼に話の続きをしたいんだよ!俺は!ラム酒ないの?」
「あるよ。」
「じゃあ!ラム酒くれよ!」
「ほらよ。」
「うん、ラム酒だ。ラム酒だな。これは、どっからどう見てもラム酒だ。やっとありがとう。待たせたね。それで?どこまで話したっけ?ああ、そうだ!だから俺は、その女性にこう言ったんだ。」
「ほらよ。」
「チャーハンはいい!チャーハンはいらない!もうこれ何人前のチャーハンなんだよ!一人前ですら完食出来る自信がないぐらいなんだから!」
「つまらないジョークなんか言ってないで、黙ってチャーハンでも食ってろ。」
「言いながらまたチャーハン出すなっての!つまらないジョークやってんのはマスターの方だろ!何なんだよこれ!食べ盛りの運動部じゃないんだよ!」
「ほらよ。」
「聞いてんのか!マスター!止まらないな、チャーハン!」
「あちらのお客様からだ。」
「どっからが?」
「二回目のチャーハンからだよ。」
「じゃあ!最初のチャーハンは、マスターじゃねぇか!」
「ほらよ。」
「待て待て待て!」
「あちらのお客様からだ。」
「おい待て!何で他の客達は次から次へと俺にチャーハンおごってくれんだよ!」
「それは知らん。」
「知らないだろうな!なぜなら、これらは全てマスターの独断でやってる事だからだ!見てる限り一度もマスターと他の客とで、あちらのお客さんにチャーハンを、ってやり取りがないからな!むしろ俺がこの目の前のチャーハンを他の客に振る舞いたいよ!」
「それで?お前は、女性になんて言ったんだ?そろそろ、こちらのお客様に教えてやったらどうだ?」
「だから俺は、その女性にこう言ったんだ。それじゃあ、まるでチャーハンだらけのテーブルみたいじゃないか、ってな。」
「・・・・・・・・・。」
「いや、こうなるだろ!なっちゃうだろ!こう言う空気に!どうしてくれるんだよ、マスター!」
「悪かったな。」
「まだ出す!?チャーハン!」

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2023年12月27日 (水)

「第九百十五話」

「何してんの!?何で、ずーっと入口のとこで突っ立ったままなの!入らなきゃ!入って来なきゃ!出て来ちゃってるから!アタシ、出て来ちゃってるからさ!何で、ずーっと入口のとこで突っ立っちゃってるの!普通アレだよ?入って探索してのアタシ、って流れなのよ!もう、じれったくてしょうがなくって出て来ちゃってるのよ!え?どうしたの?大丈夫なの?もう、朝になっちゃうからさ!やんなっちゃうって出て来ちゃったのよ!アタシが!アタシの方から!本来の形じゃない形で出て来ちゃったの!え?何で?何で、ずーっと入口のとこで突っ立ったままなの!入って探索しなきゃ!ちょっとホント教えて欲しい!窓からずーっと見てた!アタシ、ずーっと見てたの!何で、ずーっと入口のとこで突っ立ったままなのって、ずーっと窓から見てた!ねぇ?何で?」
「怖いんで。」

第九百十五話
「最恐の廃ホテル」

「そりゃあ、怖いよ!最恐って言われてるんだもん!来た人全員がもれなくアタシを見てるんだもん!音だけ!とか、声だけ!とか、じゃなくて!見てるんだもん!え?それが目的で来たんだよね?」
「はい。」
「じゃあ、何で、ずーっと入口のとこで突っ立ったままなの?」
「来たけど入口のとこで怖くなっちゃったんです。」
「じゃあ、帰らないと!」
「物凄く怖くなっちゃったんです。」
「だから、帰らないと!」
「いやでも、やっぱり入りたいって気持ちもあって、でも、やっぱり怖いから無理で、どうしようどうしようって考えてる間にこんな時間になっちゃいました。」
「怖っ!アタシよりアンタの方が怖いわ!」
「すいません。」
「いや、謝られても!謝られてもよ!出て来ちゃってるから!」
「はい。」
「いや、はいじゃなくて!と言うか、これは怖くないの?この状況は怖くないの?」
「はい。」
「いや、はいじゃなくて!何で怖くないのよ!幽霊を目の前にしてるじゃない!」
「中じゃないんで、大丈夫です。」
「え?そう言う問題!?じゃなくない?中で見ようが、外で見ようが、そう言う問題じゃなくない?じゃなくなき?見ちゃってるんだよ?幽霊、がっつり見ちゃってるんだよ?」
「入ってないんで、大丈夫です。」
「いやだから、その理論が意味分かんないんだって!じゃあ、今アンタの目の前にいるアタシは何なの?」
「噂されてる601号室で自殺した女性の幽霊。」
「そう!その噂の幽霊です!」
「でも、良かったです。」
「何が?」
「入ってない状態で見てるって事は、入ったら絶対見ちゃうじゃないですか。だから、良かったです。入らなくて。」
「だから、その理論何なの?見ちゃってるは、見ちゃってるじゃない!」
「中で見るのと外で見るのとでは、大違いです。」
「伝統工芸の体験教室じゃないんだから!」
「中で見てたら、走って逃げて、その途中で転んで大怪我してたかもしれなかったって考えたら、本当に良かったです。英断でした。」
「何が英断?」
「入口で突っ立ったままで良かったんだなって、踏み入れちゃダメなとこは、やっぱり踏み入れちゃダメなんだなって、廃ホテルに一歩踏み出さなかった自分の英断を褒めたいです。」
「いやだから!出て来ちゃってんだって!そのずーっと入口のとこで突っ立ったままが逆効果だったんだって!廃ホテルに入ろうが入るまいが出て来ちゃったからさ!その一歩の英断、意味ないんだって!だって、はい!出て来ちゃってるんだもん!」
「はい。」
「いやだから、はいじゃなくて!はいじゃないんだって!はいって何なの?はい、おかしいでしょ!」
「頭痛い。」
「そりゃあ、痛いでしょ!こんな近くに出ちゃってるから!頭も痛くなるでしょ!ちょっと遅いけどね!」
「風邪かなぁ?」
「微妙だけどね!長時間、こんな場所に突っ立ってたから、その可能性もなきにしもあらずだけどね!でも、普通はアタシが原因だけどね!」
「寒い。」
「こんな近くに出ちゃってるからね!そりゃあ、寒いでしょ!寒くもなるでしょ!それもちょっと遅いけどね!」
「風邪かなぁ?」
「その可能性もなきにしもあらずだけどね!アタシじゃないかなぁ?それもアタシが原因なんじゃないかなぁ?アタシが出て来ちゃってるからなんじゃないかなぁ?違う?アタシは、アタシが原因だと思うよ?」
「あ、熱ある。」
「じゃあ、風邪だ!」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・帰りますね。」
「お大事に・・・。」

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