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2024年3月

2024年3月 6日 (水)

「第九百二十五話」

「これは、伝説の手袋、だな。」
「伝説の手袋って?」
「驚いた。伝説の手袋が本当に存在していたとはな。」
「伝説の手袋って?」
「まさか、伝説の手袋が自分の街のこんな普通の道に落ちているとはな。」
「伝説の手袋って?」
「これは、夢ではないだろうな?」
「それは、僕の台詞です。」
「うむ、見れば見る程、文献で読んだ伝説の手袋の特徴と同じだ。」
「よくある素材のよくある色なのに?伝説の手袋って?」
「伝説の手袋の右だ。」
「誰かが落とした手袋の片方じゃなくて?伝説の手袋の右って?」
「伝説の手袋の右が存在すると言う事は、やはり伝説の手袋の左も存在すると言う事か。」
「でしょうね。手袋の形をしてるって事は、右も左も合わせて作りますからね。これ、とりあえず移動させた方がいいかもですね。こんな道の真ん中だと誰かに踏まちゃいますからね。」
「触るなっ!!」
「何っ!?」
「伝説の手袋に触るんじゃない!!」
「何で!?」
「知らないのか!!」
「知りませんよ!知らないから何度も何度も僕は、伝説の手袋って?って聞いてたじゃないですか!」
「死にたいのか!!」
「死ぬの!?この道の真ん中に落ちてる手袋の右に触ったら死ぬの!?触っただけで死ぬの!?手袋なのに!?」
「それが伝説の手袋だ。」
「伝説の手袋って?」
「正確には、それが伝説の手袋の右だ。」
「伝説の手袋の右って?」
「これは、どこかの何かの機関に報告すれば、勲章ものだな。」
「どこの何の機関?いやいやいや、死ぬって?伝説的な何かなら死なないでしょ。触ったら死ぬって言うなら、何か枝のようなもので移動させれば大丈夫ですよね?とにかくこのままだと誰かに踏まれちゃいますから。」
「やめろ!!」
「何で!?」
「死にたいのか!!」
「死にたくはないです!!」
「間接的に触れても死ぬぞ!!」
「どう言う仕組み!?」
「それが伝説の手袋だ。」
「伝説の手袋って?」
「正確には、それが伝説の手袋の右だ。」
「左が気になる!その左が気になる言い回しやめて下さい!」
「左か・・・。」
「え?」
「こんな時、伝説の手袋の左があったら良かったのにと、言わざるを得ない。」
「あったら何だって言うんですか!伝説の手袋の左があったらこの状況、何か変化するんですか!」
「伝説の手袋の左をつけた左手でのみ、伝説の手袋の右を拾う事が可能となる。」
「伝説の手袋って?」
「それが伝説の手袋だ。」
「使い道が見出せない!」
「伝説の何かなど、殆どが使い道を見出せない代物だろ。」
「いや、伝説の何かを殆ど知らないのでよく分からないです。なら、とにかく伝説の手袋の左ってのがあれば、この伝説の手袋の右を拾えるって事なんですね?」
「そうだ。」
「何か、初めて会話が成立した気がしてならない。もしかしたら、近くに手袋の左も落ちてるかもしれないので、探しましょう。」
「探すのは構わない。だが、もし伝説の手袋の左が落ちていたら気を付けるんだ。」
「なぜです?」
「触ったら死ぬからだ。」
「そんな詰んだ手袋あります!?右も左も触ったら死ぬって!」
「伝説の手袋の右をつけた右手でのみ、伝説の手袋の左を拾う事が可能となる。」
「右を触るのに左を装着しなきゃなんないのに、どうやって左を装着すればいいんですか!手袋として破綻してるでしょ!」
「伝説の何かなど、殆どが破綻している代物だろ。」
「はあ!?いやでも、現実に道の真ん中に手袋の右が落ちてるって事はですよ!落とした誰かがいるって事です!つまり、その誰かは生きてるって事ですよね!なら、その伝説は捩じ曲げられて伝承された伝説なのでは!」
「伝説の何かなど、殆どが捩じ曲げられて伝承されている代物だ。」
「何言ってんだよ!今まで散々伝説の手袋がどうのこうのって言ってた時間は何だったんだよ的な事を言ってんだ!触るから!とにかくこのままだと誰かに踏まれるから!」
「死にたいのか!!」
「その急に大きな声出すのやめろ!捩じ曲げられた伝承なら、死なないだろ!」
「もう一度捩じ曲げられていたとしたら?」
「もう一度捩じ曲げられていたとしたらって?」
「伝説の手袋の捩じ曲げられた伝承が更に捩じ曲げられていた伝承だとしたら、やはり触ると死ぬぞ!」
「どう言う事?」
「つまり、最初に死なないと捩じ曲げられた伝承をもう一度死ぬ伝承に捩じ曲げたとしたら、やはり元々は死ぬと言う事だと言う事だ!」
「じゃあもうゴミだ!手袋の形をした単なるゴミだ!」
「それは違う!!」
「胸ぐら!?」
「すまない。取り乱してしまった。」
「取り乱した人、初めて見ました。」
「伝説の手袋は、決してゴミなどではない。伝説の手袋は、それはそれは、とてもとても、暖かい代物だと言われている。」

第九百二十五話
「伝説の手袋って?」

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2024年3月13日 (水)

「第九百二十六話」

「残念ですが、治療の施しようがありません。」
「そんな、じゃあ、俺はもう死ぬのを待つしかないのかよ!先生!」
「大変申し上げにくいのですが、その通りです。」
「先生!何かないのかよ!」
「何か、と言いますと?」
「そんなのどんな病気でも完治させる薬に決まってんだろ!」
「そんな薬があれば、すぐにでも処方していますよ。」
「どんな病気でも完治させる薬がないなんておかしいだろ!」
「おかしくありませんよ。」
「だって毎日毎日、医学が進歩してってんのに!いまだにどんな病気でも完治させる薬が開発されないのって!どう考えてもおかしいだろ!なあ?先生!本当はあるんだろ!そう言う薬!頼む!処方してくれよ!金ならいくらでも出す!」
「お金、の問題ではありません。これは、そんな薬などない、と言う話です。」
「嘘だ!先生は、嘘を言ってる!」
「何を根拠に私が嘘を吐いていると?」
「何だか分からないが、俺は子供の頃から嘘を吐く人間が分かるんだよ!」
「ご自分の現状を目の当たりにして、混乱しているのでは?」
「いいや、逆だ。いや、確かに最初は混乱してた。だが、薬の話をして、先生が嘘の答えをした時点で、俺は冷静になった。」
「とにかく、痛みを和らげる薬は処方します。」
「先生?そんなんじゃないんだよ。俺が処方して欲しい薬は、そんな薬じゃないんだよ。俺が処方して欲しい薬は、どんな病気でも完治させる薬なんだよ。」
「これは、物凄く無駄な時間です。アナタに残された時間は、僅かなんですよ?こんな所で、ありもしない薬の処方を懇願している暇があるのなら、その貴重な時間を有効に活用して下さい。」
「ああ、もちろんだよ。だから俺はその時間を最も有効に活用してんじゃないか。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・あるんだよな?」
「警備の人間を呼びましょうか?」
「先生?何が先生をそうさせてんだ?」
「おっしゃる意味が分かり兼ねますが?」
「何で、どんな病気でも完治させる薬が存在してるのに、そうまでして隠そうとする?先生は、医者だろ?医者なら、目の前で病気に苦しむ人間がいたら、救いたいって思うのが普通だろ?なのに何でなんだよ!何で素直にどんな病気でも完治させる薬を処方してくれないんだよ!」
「・・・・・・。」
「なあ!先生!」
「そんな薬がないからですよ。」
「もう嘘はやめろよ!」
「嘘ではありません。」
「なあ?先生?」
「・・・・・・。」
「俺、生きたいんだよ。」
「・・・・・・。」
「俺、もっと生きてたいんだよ。頼むよ。」
「・・・・・・。」
「頼む・・・。」
「・・・分かりました。処方します。」
「え?」
「ここに、5000錠の入った瓶があります。」
「こ、これがどんな病気でも完治させる薬!?」
「そうです。」
「ありがとう!本当にありがとう!先生!」
「私の手を握って歓喜するのは、病気が完治してからにして下さい。」
「そ、そうだな!」
「アナタには、これから4999錠、飲んで貰います。」
「なっ!?1錠じゃないのかよ!?」
「医学は、日々進歩している。それは、間違いではありません。ただ、これが現時点での医学の限界です。」
「わ、分かった!4999錠飲んで病気が完治するなら今の俺に飲まない選択肢はない!」
「ただ、飲む前に1つだけ注意点がありますので、よく考えてから判断して下さい。」
「注意点?分かった。分かったよ!だから、早く言ってくれ!」
「5000錠の中の1錠は、毒薬です。」
「それは一体どう言う事だよ!」
「言ったでしょ?これが現時点での医学の限界だと。どんな病気でも完治させる薬を製造するには、5000錠単位で製造しなければならない。しかし、どうしてかその中の1錠だけが、どう分析しても見分けがつかない毒薬になってしまうのです。体内に入れば即死してしまう毒薬に。」
「・・・・・・。」
「嘘は言っていません。」
「ああ、分かってる。」
「どうしますか?飲みますか?」
「・・・・・・。」
「やめますか?」
「・・・・・・。」

第九百二十六話
「どんな病気でも完治させる薬?」

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2024年3月20日 (水)

「第九百二十七話」

「全ての生命には、魂があるって言うだろ?」
「ああ、聞くな。」
「その中にはさ。植物も含まれるって事だろ?」
「生きてるからな。」
「でも、人参の幽霊を見たって話聞いた事ないよな?」
「人参の幽霊?」
「生まれ変わりってあるだろ?」
「話が飛び飛びだな。人参の幽霊の話はいいのか?」
「まあ、聞いてくれよ。時間はたくさんあるんだしさ。」
「生まれ変わりな。そう言う話もあるな。俺は、死んだら終わりだって考えだけどな。」
「じゃあ、もしも生まれ変わりがあったら、ラッキーじゃん!」
「ラッキー?」
「だってそうだろ?僕なんか生まれ変わりがあるもんだと思ってるから、あの世で案内の人に手続きの話をされても、ああこんな感じかって思うぐらいだけどさ。元々、生まれ変わりなんてないって思ってるなら、死んで目の前に案内の人が生まれ変わりの書類一式を持って来たら、ラッキー!生まれ変われるんだ!ってなるじゃん。」
「ポジティブ思考の極みだな。」
「で、話は当然、じゃあ、あの世は死んだ生命で溢れかえってんじゃん!あの世って一体どんだけ広大な敷地なんだよ!って、なるじゃん。」
「いやもう、ついて行けないぞ、話に。」
「だって、全ての生命に魂があるなら、そうなるだろ?一日にどんだけ生命が失われてる?それはそれはもう、膨大だよ!」
「じゃあ、生まれ変わりに面倒臭いお役所仕事的な手続きなんか存在しないんじゃないか?」
「と、言うと?」
「だから、死んだらそく生まれ変わる。人参が死んだらすぐに人参に生まれ変わる。そうすれば、あの世は個室サイズで済む。」
「いや、生まれ変わりのシステムは、面倒臭いお役所仕事的な手続きだよ。もう、生まれ変わりを待つ魂で大行列だよ。」
「何で知ってんだよ!」
「で、考えたんだよ。そもそも人参一本に一つの魂なのかな?ってさ。」
「言ってる意味が分からないし、さっきっから何の話を聞かされてんのかなんだよ。」
「人参は、一本に一つの魂じゃなくて、人参全体で一つの魂なんじゃないか?ってさ。それだったら、あの世も魂で溢れかえったりしないで済むだろ?」
「何であの世寄りの発想なんだよ!そんな人参全体で一つの魂だって理論を展開するなら、人間だって人間全体で一つの魂って事になるだろ!」
「そうだよ。」
「凄い展開をさも当たり前かのように言い放つなよ!」
「でも、そうだからさ。」
「そうじゃないだろ!」
「そうじゃないって何で分かるんだよ!あの世に行った事もないのに。」
「それは、俺の台詞だ!」
「一種一魂、がこの世のルール。」
「聞いた事もない言語を造り出すな!」
「だから、広大なあの世も実際目の当たりにしたら、ガラガラだよ。」
「広大は広大なのかよ!」
「それどころか、生命はまだ、あの世に行った事すらないのかもしれない!」
「絶滅した恐竜はあるんじゃないのか?」
「じゃあ、あの世は今、恐竜時代って事か。」
「いやだとしたら、生まれ変わりの手続きにどんだけの時間掛かってんだよ!」
「お役所仕事的な手続きだからね。」
「生まれ変わらす気ないだろ!」
「いや、そうとは限らない。」
「はあ?限るだろ。恐竜なんか見た事ないだろ。」
「ほら、覚えてない?子供の頃、よく遊んだ公園!」
「恐竜の滑り台ある公園か。尻尾の部分が滑るとこになってる恐竜の滑り台な。」
「そう!」
「おいまさか、恐竜が生まれ変わって恐竜の滑り台になったって言うのか?何で生まれ変わったら魂のない物体になんだよ!」
「ある意味それは、次の段階なのかもしれない。」
「次の段階?」
「魂ある生命の進化!」
「もう言ってる事がこえーよ!」
「魂がなければ余程の事がない限り死なない。そうか、そうだったのか!」
「何を納得してんだ?てか、何が納得出来てんだ?」
「僕は、生まれ変わったら、やっぱり僕になりたい!」
「ワガママ野郎の此畜生じゃねぇか!てか、出たのか?ウンコ?」
「もうちょいで、出そうなんだ。魂の抜け殻が。」
「ウンコに別名つけんな!もう先にテント戻るぞ?」
「怖いから!ダメだって!ドアの前で待ってて!」
「じゃあ、ウンコに集中しろ!」
「ラジャー!」

第九百二十七話
「夜中のキャンプ場での催しモノ」

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2024年3月27日 (水)

「第九百二十八話」

「と言う歴史があり、この場所は今現在でもその流れを汲むと言う訳だ。この小学校の近くに、歴史の教科書に出て来るような場所があるなんて、お前達ツイてるな。」
「先生。」
「お、学級委員長。大便ならして来ていいぞ。」
「あ違います。」
「何が違うんだ。」
「大便したくありません。」
「何を言ってるんだ。」
「あ大便したくありませんと言いました。」
「だから何を言ってるんだ。大便したそうな顔してるじゃないか。」
「あしてません。」
「だったらどうした?」
「今の先生の説明に質問があります。」
「やっぱりじゃないか。」
「何がですか?」
「大便じゃないか。」
「あ違います。」
「そう言うのいいから、早く大便して来なさい。」
「したくありません。」
「いいか?学級委員長。授業中に大便に行く事は、恥ずかしい事じゃないんだ。むしろそれは、誇らしい事なんだ。世の中にはな。大便がしたくても出来ない人達がいる。いいか?みんな!大便をする時はな!大便が出来る事を感謝しながら大便をするんだぞ!ほら、学級委員長。早く行ってこい!漏らしたらそれこそ事だぞ?」
「さっきの先生の説明では、昔はこの辺りで大きな戦があったって言ってましたけど。」
「学級委員長。」
「はい。」
「いいから。」
「何がですか?」
「無理して質問を絞り出して大便を誤魔化さなくても先生分かってるから。絞り出すなら、無理な質問じゃなくて大便をトイレで絞り出しなさい。大丈夫。先生のクラスには、授業中に大便に行った者を笑ったりする生徒はいない!それが先生の自慢だ!自慢の生徒だ!」
「行きたくないんです。便意もないんです。」
「分かってる。先生には、学級委員長の便意がないのは本意でない事を。」
「その戦で」
「そんな昔の戦の話をしてどうする!」
「どうするって!?」
「どっかの誰かが起こしたよく分からない戦の話なんか今はどうだっていい!」
「そんな事言っていいんですか!?」
「今は自分の戦の事だけを考えろ!目の前の腸の中のお前と大便との戦を!」
「排便をそんな風に捉えた事ないですよ。」
「いいか?お前は今、自分が思ってる以上に時間をロスしてる。それによって、何が起こっているか分かるか?」
「何が起こってるんですか?」
「どんどん大便を漏らす確率が上がってるって事だ。この言葉を学級委員長、お前に送ろう。肛門の筋肉を過信するな!」
「さっきからずっと先生は何を言ってるんですか!」
「頭で思い描いた排便図を信用するな!例え家にいようが漏らしてしまう時がある!それが大便の恐ろしさだ!それが肛門の筋肉の裏切りだ!」
「さっきからずっと先生は何を言ってるんですか!」
「無事にトイレで排便出来るまで、絶対に気と肛門の筋肉を緩めるんじゃない!」
「さっきから!ずっと先生は!何を言ってるんですか!」
「そして!」
「何で一番前の席の僕の言葉がこんなにも届いてない!?」
「トイレを出てそこで初めて笑え!」
「何で笑うんです?」
「大便との勝負に勝った自分を誉めろ!」
「比喩?先生は、何かを大便に例えて僕らに何かを教えてくれてんの?でも、それらの何かが何なのかも分かんないから、この熱弁っぷりは単にマジでヤバい人なだけだ。」
「大便委員長!」
「大便委員長になっちゃった!?」
「ただし、大便との勝負に勝った余韻に浸るのは、その一瞬だけにしとくんだ!なぜならそれは、次の戦いが既に始まっているからだ!」
「何か、大便の話を聞いてたら、本当にしたくなってきた。先生、トイレ行ってきます。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・先生?」
「・・・・・・。」
「何で今まであんなに一方的に喋ってたのに目を瞑って沈黙?」
「・・・・・・。」
「トイレ行ってきますよ?」
「・・・・・・。」
「先生?」
「・・・・・・。」
「いいんですよね?」
「・・・・・・。」
「先」
「行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「びっくりして漏れるわっ!」

第九百二十八話
「代弁者」

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