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2024年4月10日 (水)

「第九百三十話」

「本日の料理は、卵とじ戦車。」
「先生!?何ですか!?これ!?」
「卵とじ戦車です。」
「まさかこれが今日の料理ですか!?」
「何をそんなに驚いてるんです?」
「いや、いやいやいや、これ驚かない人います!?」
「はい。」
「先生以外に!料理と仰いましたが、そもそも食べられないでしょ!」
「あら?どうして?」
「鉄だからですよ!戦車なんか食べられないでしょ!」
「貴方、卵とじは食べた事あるわよね?」
「はい。」
「じゃあ、問題ないじゃない。」
「問題しかないでしょ!この異様な空間に今、問題だけが存在してるんですよ!」
「騙されたと思って食べてご覧なさい。」
「騙されて終わりでしょ!」
「あのね?鋼鉄の戦車によって、卵がとてもフワッとなって美味しいのよ。」
「そっち?そっちの作用?卵とじにしたから戦車がマイルドになるとかじゃなくて?」
「何言ってるの。鋼鉄は鋼鉄よ。鋼鉄はどこまで行っても鋼鉄。」
「じゃあ、これは何だ!何の料理なんだ!」
「戦車の卵とじ。」
「そのこれが当たり前に存在するかのような目で見るのやめて下さい!」
「あのね。戦車の卵とじは、地域によっては、お祝い事の時に振る舞われる、とってもおめでたい料理なの。」
「何で簡単に戦車が手に入っちゃうんだよ!」
「今日はね。もう一品、用意してます。」
「助かります。」
「歩兵の卵とじ。」
「人じゃん!」
「歩兵ね。」
「人じゃん!」
「歩兵。」
「だから!歩兵は人じゃん!」
「歩兵は人。だが、全ての人が必ずしも歩兵とは限らない。」
「意味不明な事を昔の偉人が言った風にして言わないで下さい!」
「あのね?人間の歩兵によって、卵がとてもフワッとなって美味しいのよ。」
「人間の歩兵って、だから歩兵は人間でしょ!じゃあ、誰だっていいじゃないですか!ダメだけど!人を卵とじにするのは、ダメだけど!でも、誰だっていいじゃないですか!」
「ダメダメダメダメ!歩兵じゃなきゃ、このフワッと感は出せないの!」
「歩兵の何がそんなに卵をフワッとさせるんです!」
「さあ?そこまでは分からないわ。それに、料理は理屈じゃないの。時に料理って言うのは、有り得ない食材と有り得ない食材の有り得ない組み合わせでとんでもない奇跡を生み出すの。騙されたと思って食べてご覧なさい。」
「食べませんよ!」
「あのね。歩兵の卵とじは、地域によっては、雨を降らす儀式の時に振る舞われる、とっても伝統的な料理なの。」
「生け贄っつんだそれを!」
「今日はね。更にもう一品、用意してます。」
「大丈夫なんですか?」
「砂漠の卵とじ。」
「砂じゃん!」
「砂漠ね。」
「砂じゃん!」
「砂漠。」
「だから!全域を卵とじしてるんじゃないんだから、砂でしょ!」
「確かに、そうね。でも、この砂漠の卵とじを食べてもらうと分かると思うけど、砂漠を感じられるわ。」
「ジャリジャリするだけでしょ!口の中が不快感でいっぱいだよ!」
「砂漠をね。砂の砂漠によって、卵がとてもフワッとなって美味しいのよ。」
「じゃあもう、その辺の砂でもいいじゃないですか!」
「ダメダメ!砂漠の真ん中の砂じゃないとダメなの!」
「この卵とじの中の砂は砂漠の真ん中の砂なんですか!?」
「勿論そうよ。端っこでもダメ。真ん中寄りでもダメ。オアシス周辺なんて論外。正真正銘真ん中の砂よ。」
「先生は、料理以外にも冒険家をなさってるんですか?」
「料理一筋に決まってるでしょ。でもね。時には、冒険家のようにならないと、理想の料理を作る事は出来ないの。」
「一筋過ぎて、向こう側に行かれちゃったのかな?」
「騙されたと思って食べてご覧なさい。」
「嫌です!」
「そうしたら、なんと今日はね。特別にもう一品、用意してます。」
「流れ的に絶対にダメなヤツでしょ。」
「卵とじの卵とじ。」
「白いキャンパスに白い絵の具塗った作品みたくなってる!?」
「卵とじによって、卵がとてもフワッとなって美味しいのよ。」
「言ってる事もやってる事も狂気ですよ!」
「これが、卵とじの卵とじ、こっちが、卵とじの卵とじの卵とじ。」
「もう、そのうちダークマターとかも卵とじしそうな勢いだよ!」
「それはダメよ!」
「叱られた!?」

第九百三十話
「第九百三十話の卵とじ」

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