2017年3月29日 (水)

「第五百六十三話」

 事件現場ってのは、何回経験しても慣れるもんじゃない。刑事の俺が言うんだから間違いない。特に殺人事件ともなれば、なおさらだ。同僚の中には、慣れたって言うヤツもいるが、俺に言わせれば、こんな悪魔の仕業みたいな現場に慣れるなんて、殺人鬼と同じ脳味噌だ。女性の顔に無数のナイフを突き刺して立ち去る殺人鬼とな。
「ん?」
俺は、無惨に横たわる女性の左肩の地面に何かを発見した。小さな血痕だ。不思議とどうやら発見したのは俺だけで、他の人間は誰も発見していない。
「ん?」
視野を広げてみると、その血痕はどこかへ続いていた。俺は考えた。きっと犯人は、女性を襲っている最中に怪我をしたのでは?と。不思議と俺は、その血痕から目が離せなくなっていた。不思議と足が動き、俺は血痕を追った。

第五百六十三話
「血痕を追って」

 俺は、どこかの森にいた。
「なんて事だ。」
そこには、顔に無数のナイフを突き刺された熊の親子が無惨に横たわっていた。きっと、アイツだ。人間の女性だけでは飽き足らず、熊の親子まで殺すとは、凶暴なヤツだ。こんな凶暴なヤツを野放しにしといたら、次は一体誰が犠牲になるか分かったもんじゃない。それが俺の最愛の人間かもしれないって思ったら、憤りがおさえきれなくなった。
「ここは?」
気付くと俺は、見知らぬ町に辿り着いていた。ここでもし、アイツがまた犯行を行ったら?嫌な予感しかしなかった。そして俺が発見したのは、壊れたタクシーだった。幸いにもドライバーはいなかったが、これもきっとアイツだ。アイツの仕業に間違いない。何よりもの証拠に、この血痕だ。対象がエスカレートしている。もはやアイツは、生き物では快楽を得られなくなっているのかもしれない。
「何だと!?」
俺が血痕を追って辿り着いた裏路地の光景は、この世に終焉があるのだとしたらきっと、それがこの光景だ。
「何がどうなってる!?」
俺は、恐る恐るその終焉の裏路地を一歩一歩踏み進んだ。破壊による破壊。まるで爆撃機が爆撃した後のような吐き気のする裏路地。幸いにも死体を目にせずに裏路地を抜ける事が出来たのが救いだ。いや、もしかしたら、無数の無惨な死体を目にしていたのかもしれないが、俺の無意識がそれらの認識を拒絶したのかもしれない。とにかく、このままアイツを野放しにしていたら、とんでもない事になってしまう。だが、俺はここで思った。こんな裏路地の光景を作り出せる相手と対峙した時、俺はそんな殺人鬼を逮捕出来るんだろうか?こんなモンスターを俺一人でどうにか出来るんだろうか?いや、違う。それは、違うぞ。刑事には、返り討ちにされると分かっていてもやらなきゃいけない時がある。
「こんなモノ!!」
俺は、巨大なビルが粉々にぶっ壊されてる中心で、愛用の銃を投げ捨てた。あれが一体何の役に立つと言うんだ?冷たい視線を銃に送りながら、俺は恐怖に震えていた。そう、なぜなら血痕はここで終わっているからだ。いる。アイツは、ここにいる。どこかで銃を投げ捨てた俺を見て嘲笑ってるに違いない。来い。来い来い来い来い来い。
「姿を見せろー!!!」
俺の声がこだましてから、半日が経つだろうか?俺はまだ、生きている。アイツは、姿を見せない。それから暫くして、同僚からの連絡で、あの女性の死体の数キロ先で、顔に無数のナイフを突き刺されたリスの死体が発見された。俺は、考えた。粉々の巨大なビルの瓦礫の上に座って考えた。これまでの追跡劇を一つ一つ思い浮かべながら、考えた。そして一つの仮説が浮かんだ。
「え!?逆なの!?」
夜のビル群に俺の声がこだました。

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2017年3月22日 (水)

「第五百六十二話」

「ピンポーン!」
「ガチャッ!」
「おう!」
「おう!入れ入れ!悪かったな。こんな雪の日にわざわざ呼び出したりしちゃってさ。入れ入れ!」
「いや、別にいいけど、しかし寒いな。」
「だと思って、用意しといたよ。」
「何これ?」
「マグマ汁!これ飲んで温まってくれ!」
「トマトジュースだろ?」
「マグマ汁だよ!」
「マグマ汁って何だよ。だとしたら、何でコップが平気なんだよ!」
「四の五の言わずに飲め飲め。」
「トマトジュースじゃん!」
「よし!体が温まったところで本題に入ろうか。」
「キンキンのトマトジュース飲んで温まるかよ!本題ってのは?」
「来週、アイツの結婚式だろ?」
「そうだな。」
「そこで、僕達は友人代表のスピーチするだろ?スピーチ!」
「その打ち合わせか?でも、スピーチなら打ち合わせは前日でもいんじゃないか?もしくは、当日でもいんじゃないか?最悪、打ち合わせなんかいらないんじゃないか?って、言ってなかったか?」
「スピーチ、やめようと思う。」
「はあ!?今さら何言ってんだよ!」
「スピーチやめて、マジックしようと思う!」
「マジック!?んまあ、確かにアイツからは、自由に何やってもいいって言われてるけどさ。」
「思ったんだよ!スピーチじゃ、つまらないってさ!」
「スピーチの言い出しっぺ、お前だからな。何かした方がいんじゃないかって言った俺に対して、めちゃくちゃキレて面倒臭いって言い放ったのお前だからな。」
「昨日、偶然テレビでマジックと言うモノを観て、思ったんだよ。これをやれば結婚式がさらに盛り上がるってさ!」
「まあ、確かにスピーチよりもマジックの方が盛り上がるは盛り上がるだろうけどさ。」
「だろ!まあ、マグマ汁飲みながら、続きを聞いてくれ。」
「マグマ汁いらないよ。」
「ハワイ産の最高級マグマなのにか!?」
「がっつりトマト味でしたけど?で、マジックやるって言っても何のマジックすんだよ。」
「もちろん!胴体切断マジックに決まってるだろ!」
「胴体切断マジック!?随分と難易度が高くないか?」
「つまり、それだけ結婚式が盛り上がるって事だろ?」
「んまあ、そりゃあそうだけどさ。え?そもそもだけど出来んの?」
「出来るって?」
「マジックだよ。マジック!」
「これを見よ!」
「チェーンソー!?」
「胴体切断のマジックを思い付いて、すぐに購入した!」
「チェーンソーを!?」
「やるなら派手な方がいいと思ったからさ!」
「そうかもしれないけど、マジックだろ?胴体切断マジックでチェーンソー使ってるとこ見た事ないけど?昨日のテレビではチェーンソーだったのか?」
「いや、こんな鉄の刃だった。」
「横になって箱に入ってってヤツだろ?」
「そうそう。よく知ってるな!」
「一番オーソドックスな胴体切断マジックだからな。」
「でも、こっちの方が派手だろ?」
「派手だけをピックアップするならな。」
「お前がスピーチしてる時に、僕がチェーンソーで胴体切断するから!こりゃあ、みんな驚くぞ!」
「待て待て待て!そりゃあ、みんな驚くよ!戦慄だよ!スピーチしてる人をいきなりチェーンソーで真っ二つにしちゃうんだからさ!しかも縦にな!縦に!」
「楽しみだな!」
「公開処刑じゃん!」
「マジックだよ!」
「胴体切断マジックってのは、胴体切断して、くっついてこそだぞ!縦にチェーンソーで真っ二つにされて、どうやって元に戻るんだよ!タネと仕掛けは!」
「タネと仕掛け?いやだって、マジシャンがタネも仕掛けもありませんって宣言してたけど?」
「鵜呑みもいいとこだろ!何で友人の結婚式に出席して、俺はチェーンソーで真っ二つにされて死ななきゃならないんだよ!」
「やってみなきゃ分からないだろ!」
「何をやってみなきゃ分からないんだよ!」
「僕にマジックの才能があるかもしれないじゃないか!」
「ああ言う事が才能で出来るからマジシャンしてんじゃねぇから!テクニックだよ!テクニック!そしてむしろ、お前の理論でいくとマジックの才能があるかもなのは真っ二つにされて自力で元に戻らなきゃな俺だろ!」
「自分を信じて!」
「信じられるか!」
「人には必ず眠ってる才能があるんだ!」
「だとしたら大博打だな!」
「もしかしたら、お前にはヘソで茶を沸かす才能が眠ってるかもしれないじゃないか!」
「だったらだったで!ヘソで茶を沸かすよ!何でチェーンソーで真っ二つにされてんだ俺は!縦に!」
「ぶっつけ本番で不安なら、ちょっと今から練習するか!」
「一緒!ぶっつけ本番だろうが練習だろうが、結果は一緒!式場が血の海になるか、お前の部屋が血の海になるかの違い!」
「大違いだな!」
「俺が死ぬのは一緒!」
「首が一回転とかしないのか?」
「痛い痛い痛い!するかよ!」
「お前、何も出来ないのかよ!」
「チェーンソーで真っ二つと首一回転で言われたくない言葉だよ!お前だって出来ないだろ!」
「その二つは無理だけど、小指で鼻をほじったり、小指で耳をほじったりは、出来る!」
「それなら俺も出来るよ!ほら!ほら!」
「あ、じゃあ、それをやるか!」
「何してんだよ俺達は!友人代表でみんなの前で俺達二人は何してんだよ!」
「僕がお前の鼻をほじるから、お前が僕の耳をほじってくれよ!」
「それを見せられて、みんなはどんなリアクションすればいいんだよ!」
「スタンディングオベーション!」
「何で拍手喝采?」
「そりゃあ、お互いの穴の中から鳩が出て来るからじゃないか!」
「物理的に不可能だろ!こんな小さな穴から鳩が出て来るの!いやもう、マジックなんて無理なんだから、普通に今まで通りのスピーチでいいじゃん!」
「盛り上がらないだろ?」
「別に盛り上げなくていいんだよ。俺達が主役じゃないんだから!」
「じゃあ、主役の二人をチェーンソーで真っ二つにしよう!」
「蜘蛛の子を散らすように、みんな式場から出て行くだけだよ!あっという間に式場は特殊部隊に包囲されてるだけだよ!」
「消失マジックってのも昨日観たんだよ!」
「消失マジックだ?」
「お前がスピーチしてる時に、僕が頭からこの何でも溶ける液体をかける!」
「だから元に戻れないっつってんだろ!何で俺をこの世から消そうとすんだよ!もっと小物類でいいだろ?」
「じゃあ、前の席の紳士から腕時計を借りて、この何でも溶ける液体をかける。」
「怒られちゃう!ただただ怒られちゃう!で、さっきからのそれは単なるトマトジュース!なっ?場の空気が最悪になるだけだから、無難にスピーチにしとこうぜ!」
「瞬間移動のマジックも観たんだよ!」
「だんだんその昨日のマジシャンに俺は腹立って来たね!」
「これはイケる!これは、胴体切断マジックや消失マジックよりも遙かに簡単!」
「そうでもないだろ?」
「お前の双子の弟を使えば簡単!」
「俺が双子じゃないんだから無理だろ!」
「双子になれよ。」
「どんな無理難題だよ!お父さんとお母さんに土下座して頼み込んでも無理だよ!」
「よし!やっぱり今からこのチェーンソーで!」
「バカなの!」
「いやでも、せっかく買ったんだから使わないとさ。」
「その時が来たらでいいだろ!無理から使う代物じゃないから!チェーンソーって!」
「あっ!じゃあ、ケーキ入刀の時!」
「ケーキまみれだよ!もうスピーチでいいし!当日、絶対にチェーンソーを持って行くなよ!」
「はいはい、フリね!フリ!」
「フリじゃねぇよ!」
「じゃあ、あれか!俺だけチェーンソー持ってるのが羨ましいんだ!」
「何でそうなるんだよ!」
「結局、そうなんだろ?そう言う事なんだろ?」
「どんな結論付けなんだよ!羨ましくねぇよ!」
「結局お前は、そう言うとこがあるんだよなぁ。結局なんだよ。結局。」
「結局結局うっせ!」
「よし!今からお前のチェーンソーを買いに行こう!」
「だから何でそうなる?」

第五百六十二話
「結局、二人でチェーンソーを使ってスピーチをしました」

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2017年3月15日 (水)

「第五百六十一話」

 短編小説を二作品書き終えた俺は、いつもの喫茶店からそろそろ自宅へ帰ろうと、席を立とうと腰を上げたまさにその時だった。
「立たないで、そのままゆっくり、ゆっくりと座って。」
「えっ!?」
「これ、分かるわよね?」
女は、俺の額に銃を突き付けると俺のスピードに合わせて向かいの席に腰を下ろし、銃口はそのままで銃をテーブルの下へ。
「どう言う事だ?」
「単刀直入に言うわ。もう一つ作品を書いて。」
「何だって!?」
「アナタ、短編小説家なんでしょ?」
「なぜ分かった!?」
「この喫茶店の常連で人間観察が趣味のアタシなら、そんな事は簡単に分かるの。」
「俺のファンか?」
「ファンじゃないわ。」
「ファンじゃないのかよ!」
「ええ、ファンじゃないわ。」
「ファンじゃないのに何でもう一つ作品を書けなんて無茶な要求してくるんだよ!」
「無茶な要求ではないと思うけど?短編小説家なんでしょ?だったら、もう一つ作品を書くなんて、簡単でしょ?」
「人間観察が趣味なら分かるよな?俺は既に今日、この喫茶店で作品を二つ書いてるんだよ!もう一つ短編小説を書けって言われてもすぐには無理だ!」
「待つわ。」
「待たれたって困る!」
「なぜ?」
「今日はもう、書けないからだ!」
「なぜ?」
「だから!既に二つ作品を書いてるって言ってるだろ!今日はもう、書きたくないんだよ!これから家でゴロゴロしたいんだよ!」
「分からない?」
そう言うと女は再び俺の額に銃を突き付けた。
「バカなのか?お前は!」
「アタシは、バカなのかもしれない。だけど、異常者じゃない。」
「人の頭に銃を突き付けといて異常者じゃないはないだろ。」
「もっと言うなら、アタシ以上にバカは、アナタよ。」
「はあ!?何で俺がバカなんだよ。」
「銃を突き付けられてるのよ?分からないの?死ぬのよ?もう一つ短編小説を書かなきゃ死んじゃうのよ?これは、理不尽で不条理なゲームのようなもの。タイムリミットは、そうね?このお店の閉店時間まで。短編小説家なら、十分な時間でしょ?」
「なめてんのか?今から閉店時間までは、10時間ある。だから短編小説なら、それで書けると?」
「ええ、そうよ。」
「ふざけるな!このお店に作品を書くだけの意気込みで来てるなら十分な時間だ!だが、今の俺は、それをさっきの二作品で消化してんだよ!一から構造を練る段階じゃあ、短編小説だってな!十時間あっても足りやしないんだよ!」
「そうなの?」
「お前だって、小説を読むならそこんとこ何となく分かるだろ!」
「漫画は読むけど、小説は読まないから、そこんとこ何となくでも分からないわ。」
「読まないのかよ!」
「ええ、読まないわ。」
「俺のファンじゃないにしても小説は読むからこんな事してんじゃないのかよ!」
「ごめんなさい。」
「おい!謝るなら、こんな理不尽で不条理なゲームのような事すんなよ!」
「頑張れ!」
「あのな?頑張ってどうにかなるもんじゃないんだよ!短編小説を書くにはな!閃きが必要なんだよ!」
「閃け!」
「そんな事で閃けるんだったら、もっと短編小説を量産してらぁ!」
「さあて、こんな会話をしてる最中にも時間は過ぎて行ってるのよ?」
「書けば終わるのか?」
「書けば終わるわ。」
「面白いとか面白くないとか、内容は関係ないんだな?」
「面白いとか面白くないとか、内容は関係ないわ。ただ!」
「ただ?」
「アナタのプライドがそれを許すならの話だけどね。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「なるほど、お前思ったより厄介だな。」
「そう、アタシは厄介なの。」
「設定を厄介にし過ぎたな。」
「後悔してももう遅くない?」
「とりあえず、寝る!」
「それもありかもね。」

第五百六十一話
「ストイック???」

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2017年3月 8日 (水)

「第五百六十話」

「王様!」
「ん?少し痩せたか」
「ええまあ、それよりも王様!城に侵入者が!」
「ヤバくないか?それって、かなりヤバくないか?」
「はい、ヤバいです!」
「私の命とか狙ってるんじゃないか?」
「おそらくは、狙っているかと!」
「ヤバくないか?それって、かなりヤバくないか?」
「はい、ヤバいです。」
「凄くヤバいよな?」
「はい、ヤバいです。」
「めちゃくちゃヤバいよな?」
「はい、ヤバいです。」
「え?何してんの?」
「何してると仰いますと?」
「いやだから、王様の命を狙ってる可能性大の侵入者が城にいるってのに、こんなにヤバい状況だってのに、大臣はここで一体何してんのって話だよ。」
「ああ!」
「ああ!って!ああ!って呑気に気が付いてる場合じゃなくない?」
「一刻も早く王様に現状をご報告しないと、と思いまして!」
「じゃあ、分かった。うん、分かった。現状は分かったから、一刻も早くその侵入者をどうにかしようよ。」
「どうにかします!」
「うん。」
「はい!」
「うん。」
「どうにかします!」

「うん。」
「はい!」
「はい!じゃなくて!元気いっぱいの、はい!じゃなくて!だから何してんの?何で王様の部屋に入り浸ってんの?」
「入り浸っている訳ではありません!王様の身に何かあったらいけないと思って、傍で護衛をと!」
「うん、それは分かるけど、その気持ちは分かるけど、一刻も早く侵入者を見つけ出して、とっちめる方が、王様の護衛より優先順位が上じゃない?」
「なるほど!」
「納得してないでさ。あからさまにグーをパーに叩き付けて納得してないでさ。行きなよ。迷路みたいな構造の城だけど、迷って侵入者が餓死するかもしれないけど、運よく偶然この部屋へ辿り着くって可能性だってあるんだしさ!」
「侵入者が餓死する方に、私の全財産!」
「そう言う事じゃなくて!金持ちの道楽じゃなくて!だから、何なの!何で行かないの!」
「行きますよ!」
「めちゃくちゃ!めちゃくちゃキレてんじゃん!何でめちゃくちゃキレてんだよ!」
「王様がワガママばっか言うからでしょうが!」
「いつ私がワガママを口にした!一体どのタイミングでワガママを口にした!」
「ん?って、最初に言いましたよね?」
「ん?って言うのが、ワガママだったら、たいていの事は、ワガママになっちゃうだろ!」
「でも!あのタイミングで、ん?は、ないです!」
「じゃあ、分かった。うん、分かったよ。初めからやり直そう。それで、私がワガママを口にしなかったら、侵入者をとっちめに行ってくれるな?」
「はい!」
「じゃあ、最初からやり直そうじゃないか。」
「王様!」
「何だ?」
「やはりワガママです!」
「さじ加減じゃん!もうそれって、大臣のさじ加減じゃん!行ってくれよ!さっさと侵入者をとっちめてくれよ!」
「槍で、とっちめればいいですか?」
「槍でも何でもいいから、早く行ってくれよ。頼むよ。」
「かしこまりました!」
「うん。」
「はい!」
「だから!元気いっぱいの、はい!って言っといて、何で行かないんだよ!」
「槍がありません!」
「槍でも何でもって言ってるだろ!」
「王様!」
「何だよ!」
「王様!」
「何だよ!」
「呼んだだけです!」
「恋人同士かよ!もういい!私が行く!」
「じゃあ、お供します!」
「何なんだよ!お前は!」
「大臣です!」
「胸張って誇らしげに、大臣です!じゃないだろ!」

第五百六十話
「餓死城」

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2017年3月 1日 (水)

「第五百五十九話」

「先生。」
アタシは、病院のベッドの上にいる。もう、きっとここが住まいって言ってしまってもいい。そう、終の住処と言ってしまっても。
「先生、アタシもうそろそろ死ぬよね。」
先生は、いつものように顔色一つ変えない。アタシの脈をとったり心臓の音を聞いたり、無言だ。自分の死期とかって、なんだかんだで分からないもんなんだろうって思ってた。でも、そんなこんなで、分かってしまうもんなんだなって分かった。
「先生、明日もアタシ、目を覚ますかな?もしかしたら、このまま今日眠ってしまったら、死んじゃうんじゃないかな?」
窓の外の満月を見ながら先生にそう語り掛けた時だった。
「痛い!?」
アタシの左腕に激痛が走った。痛みの方に目を向けると、先生が注射していた。
「注射?」
先生は、笑って頷いた。いつもの笑顔だ。いつもの安心する笑顔だ。
「どうして注射なんかするの?」
先生は、笑って頷いた。
「先生?」
アタシの意識が薄れていく。眠気じゃない。これは眠気とは絶対に違う。ああ、きっと先生は、アタシが苦しまないようにって、きっと死なないように殺してくれるんだなって、次に目覚めた時には、天国でありますようにって、アタシは祈った。

第五百五十九話
「今日と明日の誤差なし、故に今日死んでもよし」

「ここは?」
「天国、ではありません。病院ですよ。」
「ここが病院!?」
「驚くのも無理はありません。アナタは、約一億年眠っていましたからね。」
「一億年!?」
お医者さんの話では、一億年前のあの笑顔の先生は、アタシを冷凍保存し、治療法が確立された未来へと希望を込めて託したらしい。その結果アタシの病気は、見事に完治していた。
「なんか、全然ピンと来ません。」
「それはそうです。アナタは目覚めたばかりなんですからね。」
そして、一億年後のお医者さんの話を最後まで聞くと、どうやら地球は明日、確実に滅亡するらしい。

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2017年2月22日 (水)

「第五百五十八話」

沼。
「どうだ?伝説は釣れたか?」
「伝説?いや、釣れるのは、沼スライムばっかりです。」
「それは、残念だな。まあ、この沼は、沼スライムの巣だからな。隣、いいか?」
「どうりで沼スライムしか釣れないと思った。ええ、構いませんよ。だけど、それはそれで、何か考え事をするには、丁度いい。」
「旅で行き詰まったのか?」
「そんなとこです。で、さっきの話なんですけど。こんな沼スライムしか釣れない沼に、伝説の主みたいなのがいるって言うんですか?」
「私も昔からの言い伝えでしか聞いた事しかないが、この沼には主が存在するらしい。沼スライムが巣を作るのもその主がいるからだと言う説もある。この沼は、深い。とてもとても深い沼で、底まで調査出来てない。もしかしたら、伝説の主よりも伝説が存在してるかもしれない。」
「なるほど。だとしたらこの沼は考え事をするには、逆に不都合な場所だったかもしれないですね。」
「そうかもな。だが、伝説は伝説。本当のところが謎だから成立してる。この沼は、単に沼スライムにとって環境の良い沼なだけなのかもしれない。この沼にはなぜか、コブリンやドワーフやエルフも近付きたがらない。不思議な場所と言ったら不思議な場所だ。」
「もしかしたら、沼の底には、ドラゴンが眠っているとか?」
「はっはっはっ!面白い事を言うな!」
「だってほら、ドラゴンの寝息は、魔除けだって言うじゃないですか。」
「そうかもしれないな。底に辿り着いた者がいない以上、同時にそれはドラゴンがいない事も証明されてない事になるからな。」
「何か、ドラゴンがもしも釣れちゃったらって考えたら、ドキドキしてきちゃいました!」
「はっはっはっ!人間とは実に想像力豊かで面白い生き物だな!」
「ん?」
「何だ?」
「いや、何でもないです。」
「ジジイの体から魔物の香りがしたか?はっはっはっ!お前さんは、鼻がいいようだな。」
「この匂いを混乱させる森でもアナタの匂いをしっかりと感じ取れます。でもまあ、僕には、アナタが誰で、何者かなんて関係ないです。単なる見知らぬ釣り仲間ですからね。」
「そうだな。だが、私にも分かるぞ?お前さんが、剣の腕も魔法の腕も他の人間とは比べものにならないって事はな。まあ、だがそれも単なる釣り仲間には、関係ない事か。」
「ですね。」
「ところで、最近城では何か事件でもあったのか?」
「どうしてです?ん、また沼スライムか。」
「こんな森にいたって遠い城の話は耳に入って来る。逆を言うなら、こんな森にまで入って来る事だ。余程の事じゃないだろ。」
「姫様がさらわれたんです。」
「何!?」
「だから、城は大騒ぎなんです。」
「そんな事が起きてたのか。誰が姫をさらったって言うんだ?」
「大魔王。」
「大魔王!?」
「はい、あれは人間の仕業じゃないです。香りでピンと来ました。これは、魔物の仕業だってね。しかも最上級の魔物。と言ったら、大魔王でしょ?」
「いやしかし、本当に大魔王なんて存在が、存在するのか?」
「それは分からないです。」
「分からない?」
「この沼の底にドラゴンが存在してるかもしれない確率と同じぐらいですかね?もしかしたら、最上級の魔物の香りを使った人間の仕業かもしれないし、鬼の仕業かもしれないし、ゴーストの仕業かもしれない。姫様の自作自演の可能性だって有り得る。」
「なるほどな。」
「また、沼スライム。」
「で、お前さんは、大魔王の仕業の線で姫を捜索してるって訳か。」
「はい。」
「なぜ?」
「なぜって、だってそうだとしたら、ドキドキしてワクワクするじゃないですか!」
「はっはっはっ!今分かったよ。人間が面白いんじゃない。お前さんが面白い人間なんだな。」
「そうですか?あ、また沼スライム!」
「はっはっはっ!」
「はっはっはって笑ってますけどね。お爺さんもさっきから沼スライムばっかですよ。」
「そうだな!やはり、この沼にドラゴンが眠ってるなら、古代樹の実を使わなければならないかもな。」
「古代樹の実?」
「昔から、ドラゴンの好物とされてる実だ。」
「そうなんですか!?」
「ああ、そう言う言い伝えだ。」
「そっか。グリフォンの羽じゃあ、やっぱりダメなのか。」
「何!?グリフォンの羽だと!?お前さん、まさか!?」
「この森に来る途中で倒して手に入れたんです。」
「グリフォンを一人で倒す腕前か。それなら、いけるかもしれないな。」
「いける?」
「お前さん、古代樹の実を手に入れたいか?」
「お爺さん!場所知ってるんですか!」
「一段と目を輝かせたな。ああ、知ってるも何もこの先の洞窟の奥深くある。」
「本当ですか!」
「ああ、本当だ。だが、そこには強大な力を持つ魔物が存在する。それでも行くか?」
「当たり前じゃないですか!」
「お前さんなら、そう言うと思ったよ。なら、案内しよう。」
「え、いいですよ。地図さえもらえれば、僕一人で行きます。」
「いや、あの洞窟は複雑だ。私が同行した方が安全だろう。」
「でも、大丈夫ですか?」
「私の心配をしてくれるのか?だったら無用だ。自分の身は自分で守れる。
・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・みたいですね!」
「では、行こうか。」
「はい!」

第五百五十八話
「勇者と大魔王」

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2017年2月15日 (水)

「第五百五十七話」

「これの絵を見てくれ。」
「これは、何かのキャラクターですか?」
「そう、キャラクターだ。鼻血丸。」
「はなぢまる?」
「そう、鼻血丸!」
「だから、鼻血が有り得ないぐらい出てるキャラクターなんですか?で、この鼻血丸ってキャラクターは一体何なんですか?」
「いろいろな地域で、町おこしや村おこしの一環でキャラクターを作ってるだろ?」
「はい。え?まさかこの村のキャラクターが鼻血丸なんですか!?」
「何もない村だからな。」
「いやまあ、確かに特産物や観光名所も何もない村ですが、だからって何でその村のキャラクターが鼻血丸なんですか?」
「鼻血って、全世界共通だろ?この村に特産物や観光名所がないんだったら、そう言うもんをキャラクターにしてしまおうと思ってな。」
「いや何かそれってもう、根本的に何か間違ってません?こう言うキャラクターって、町おこし村おこしの為に作るんですよ?全世界共通だったら、村おこしにならないじゃないですか。このキャラクターを作ったとして、一体村の何をPRするんですか?」
「お前、いつからそんなに夢のない大人になったんだ?」
「夢がない大人って、鼻血丸で村おこしが夢見過ぎなんですよ。そもそも何もない村にキャラクターで人を呼んでどうするんです?村に来た人が全員がっかりして帰って行くだけじゃないですか。」
「鼻血丸の夢はな。世界平和だ。」
「いや、キャラクターの設定とか聞いてませんから!」
「嫌いな食べ物は、チョコレートだ。」
「何か、古典的ですね。」
「好きな食べ物は、ホワイトチョコレートだ。」
「何で?」
「リアルだろ?」
「リアルですけど、何で?」
「好きな鼻をぶつけたい壁は、赤い壁。」
「好きな鼻をぶつけたい壁って?」
「嫌いな鼻をぶつけたい壁は、白い壁。」
「血が目立っちゃうからね。そう言う話じゃないんですよ!キャラクター自体が却下の方向なんですから、設定とかいいんですよ!」
「好きな病院は、耳鼻咽喉科。」
「どんなキャラクターなんですか!」
「嫌いな病院は、歯医者さん。」
「いやだから、そもそもがその病院で好きとかってキャラクター設定が特殊過ぎますから!」
「鼻血丸の夢はな。世界平和だ。」
「それさっき聞きましたから、とりあえず鼻血丸は、置いときましょうよ。」
「お前は、この村が地図上から消滅してもいいのか!」
「急に何ですか!?僕は別にそうは言ってませんよ。でも、村の特産物や観光名所と関係のないキャラクターっておかしいでしょって話じゃないですか。だったら、キャラクターなんかじゃなくて、特産物を作ったり、観光名所を発見した方がいいじゃないですか!」
「分かった!なら、今日からこの村では、全員が四六時中鼻血を出す!それでどうだ!」
「死んじゃう!何で鼻血丸の方に村人全員を寄せなきゃならないんですか!だいたいね!村人全員が鼻血を四六時中出してる村なんて、不気味で誰も来ませんよ!」
「鼻血祭りとかやろうぜ!」
「学生みたいなノリでとんでもない祭りの開催の提案しないで下さいよ!」
「毎週水曜日に開催しようぜ!」
「だから死んじゃう!村が地図上から消滅する前に村人が村から消滅しちゃう!」
「好きな栄養素は、鉄分だ。」
「そうでしょうよ!だから、そう言うの細かく掘り下げないでいいんですよ!」
「嫌いな栄養素は、特になし。」
「栄養素ですからね。プロフィールで特になし使ったらダメでしょ。」
「夢は」
「世界平和!」
「と、地球温暖化。」
「絶対そんな夢持ってるキャラクターが世の中で認められる訳がない!」
「次のページを見てみろ。」
「次のページ?何ですか?この女の子のキャラクターは?」
「第二案だ!」
「名前は?」

第五百五十七話
「お金ちゃん」

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2017年2月 8日 (水)

「第五百五十六話」

「ジャングルってのはな。危険だ。だから、細心の注意を払え。」
「分かりました、隊長。」
「いや、お前分かってない。」

「分かってますよ。」
「いや、お前分かってないよ。」
「分かってますよ。」
「お前の分かってるは、どうせ凡人の分かってるレベルだろ?」
「そんな事ありません!」
「そんな事はある!目を見れば分かる!」
「隊長!私は、ちゃんとジャングルの危険を分かってます!」
「よし、そこまで言うんだったらテストしよう。」
「望むところです。お願いします。」
「ジャングルに足を踏み入れる前で良かったよ。これがジャングル内だったらって思うと、ゾッとするよ。よしなら、テスト開始だ!」
「はい!」
「お前がジャングルを歩いている。そしたら、突然ゴリラが目の前に現れた。どうする?」
「目の前にゴリラですか?その場合は、対ゴリラ銃で撃退します。」
「ほらな?」
「ほらな?って、正解ではないんですか?」
「それが凡人レベルだって言ってんだ!」
「しかし、対ゴリラ銃はジャングル探検隊に本部から支給されたモノですよ?これが正解ではないと言うなら、何が正解だって言うんですか!」
「いいか?ゴリラは、敵じゃない。だから、むやみに対ゴリラ銃で撃退すればいいってもんじゃない!」
「しかし、対ゴリラ銃を使用しなかったら、我々が殺されてしまいますよ?」
「殺さないよ!敵じゃないって言ってんじゃん!ゴリラは!もう、その考えがヤバいんだよ!」
「だったら、目の前にゴリラが現れたら、隊長ならどうするんです?どうするのが一番いいんですか!」
「スッと手を出して、握手だよ。」
「潰れちゃうよ!ゴリラと握手なんかしたら手が潰れちゃう!それこそ絶対にやってはダメな行動ではありませんか!」
「あのな?ゴリラが、どうして突然目の前に現れたかを想像してみろよ。友達が欲しいからに決まってるだろ!広いジャングルで寂しいからだろ!」
「そんなパターン分かりませんよ!」
「そう言うの分かってやれよ!そう言うの分からないんだったら、ジャングル探検隊やめちまえよ!」
「いやしかし、だとしてもそこでゴリラと握手なんかしたら、その先の探険に支障がありますよ!」
「その為の対ゴリラ握手用グローブがあるんだろ?」
「何で対ゴリラ握手用グローブなんか持ってるんですか!?」
「ジャングルの危険を分かってるからだ!友達になりたいゴリラに銃を向けたら、それこそ逆上して殺されるだろ!これで分かっただろ?自分の危機感の甘さってヤツが!お前は、基地に残って事務でもしてろ。」
「待って下さい!もう一問テストして下さい!」
「何?」
「お願いします!」
「俺もゴリラじゃない。大の男が頭を下げて懇願してる姿を見せられたら、もう一回テストしない訳にはいかないな。」
「ありがとうございます!」
「いいから、頭を上げろ。」
「はい!」
「では、テストを開始する!」
「お願いします!」
「お前がジャングルの水場で休憩をしていると、見た事もない植物が目の前にある事に気付いた。さて、どうする?」
「それは簡単な問題です。見た事もない植物を発見したら、この対見た事もない植物検査キットを使います。」
「やはり使うと思っていたよ。」
「ありがとうございます。」
「感謝の言葉を述べてどうする!不正解だ!」
「不正解!?いや、しかし見た事もない植物を見たらまずは、この見た事もない植物検査キットを使用しろと、ジャングル探検隊本部から支給されてるではありませんか!」
「見た事もない植物が、本当に見た事もない植物かどうかをまずは調べるのが当たり前だろ!」
「ええ、それは分かってます!ジャングルで見た事もない植物は、とても危険だと教えられてますから!なので、まずは見た事もない植物図鑑で、その見た事もない植物が本当に見た事もない植物なのかを調べたうえでの見た事もない植物検査キットを使用します。」
「さすがだな。」
「ありがとうございます!」
「だから、誉めてねぇよ!さすがだなってのは、さすが凡人レベルのジャングル危機管理能力だなって意味だよ!」
「ちょっと待って下さい!隊長!今のは、ジャングル探検隊学校で教わった見た事もない植物への対処法です!」
「ジャングル探検隊学校で教わった事が全てだと思うな!」
「いやむしろ、ジャングル探検第一歩を踏み出そうとしてる時に、こんなにも隊長に叱られるんなら、全て教えて欲しかったです!」
「見た事もない植物検査キットに頼ってたら、お前、死ぬぞ?」
「全ての見た事もない植物に対応してるこの見た事もない植物検査キットを使用して死ぬ訳がないじゃありませんか!」
「それだよ!いいか?おい!いいか?見た事もない植物検査キットは、あくまで見た事もない植物に対して万能だ。」
「ええ、ですから!」
「見た事ある植物には無用の産物だ!」
「それはそうです。見た事もない植物検査キットなので、見た事ある植物には、効果ありません。あのう?すいません。ここまで聞いても隊長が何を仰りたいのかが分かりません。」
「だから頭っから、俺はお前がジャングルの危険を分かってないって言ってんだ!いいか?その見た事もない植物が、猛毒見た事もない植物モドキだとしたら、お前は即死だ!いいや、お前だけじゃない!隊は全滅だ!」
「猛毒見た事もない植物モドキ!?そんな植物の話は聞かされてません!」
「だから!学校で教わった事が全てだと思うなと言ってるだろ!自分で調べろ!ここは、未開のジャングルだぞ?何が起きても不思議じゃない!猛毒見た事もない植物モドキが生息しててもおかしくない!なぜその考えに至らない!」
「お言葉を返すようですが、隊長は、そんな存在するかどうだか分からない想像上の植物への対策が出来てるって言うのですか?」
「当たり前だろ!」
「嘘だー!」
「これだ。」
「ゴーグル?」
「対見た事もない植物が見た事もない植物モドキなのかチェックゴーグルだ!」
「チェックゴーグル!?」
「略すな!」
「対見た事もない植物が見た事もない植物モドキなのかチェックゴーグル!?」
「そうだ!このゴーグルがあれば隊を全滅させる事はない!」
「もっと略した!?隊長のジャングルに対しての危機管理能力は分かりました。私が凡人レベルだって言うのも分かりました。」
「そうだな。」
「ですが、隊長!そんな一つ一つの危険に、ましてや想像上の危険に対処する道具をリュックに詰め込む事は出来ませんよ!リュックパンパンレベルじゃありません!」
「そうだな。」
「そうですよ!」
「だから、行けないって事だよ。」
「はい?」
「それだけ未開のジャングルには、危険がてんこ盛りって訳だから、行けないって事だよ。」
「行けないって!行かないんですか!?」
「行かないとは言ってない。行けないってって言ってるんだよ。」
「行くんですか?」
「そんな時の為のこれだよ!」
「嘘でしょ!?」

第五百五十六話
「対未開のジャングル偽造報告書作成機」

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2017年2月 1日 (水)

「第五百五十五話」

「ここは?」
「肘!」
「ここは?」
「肘!」
「じゃあ、ここは?」
「肘!」
「この地球は、いつまでこうして、緑豊かな地球でいられるんだろう?ここは?」
「肘!」
「いつになったら、世界各地で人々が殺し合いをやめるんだろう?ここは?」
「肘!」
「いつになったら、世界に本当の平和が訪れるんだろう?そもそも何が一体平和なんだろう?もしかしたら、僕らはそれが明確に分かっていないから、いつまで経っても世界が平和にならないんだろうか?ここは?」
「肘!」
「病に苦しむ人、生まれた環境に苦しむ人、理不尽で不条理に突然やって来る大切な人との永遠の別れに苦しむ人、怒りでも悲しみでも他のどの感情でもない無感情でない感情に襲われて、暗黒を歩き出す人に光はあるんだろうか?ここは?」
「肘!」
「幸せな人を羨みそして妬む、だけど幸せな人は、悪じゃない。だが、幸せは一方で不幸を呼ぶのも確かなのかもしれない。でも、幸せは一方で幸せを呼ぶのも確かなのかもしれない。ここは?」
「肘!」
「死にたいけど死ねない。死にたくないけど死ぬ。そんな矛盾だらけの解明不可能な予測不能な死の仕組み。人は死ぬから一生懸命に生きていられるのか?人は死ぬから今日を明日に繋げようと必死に生きているのか?死なないと人はどうなるんだろう?人は人じゃなくなってしまうんだろうか?人が人として完成する日は、来るんだろうか?だとしたら、未完成の僕等は人なんだろうか?人は、人を何を持って人だと認識してるんだろうか?人が生んだのだから人だと、そう判断してるんだろうか?もし仮に思考が人を形成しているんだとしたら?人との定義を価値観だとしたら?そんな時代がいつの日にかやって来たとしたら?人は人じゃない人を、人じゃないと思って接する事が出来るんだろうか?ここは?」
「肘!」
「キミは、神を信じているかい?ここは?」
「肘!」
「僕は、神を信じちゃいない。ここは?」
「肘!」
「それは、なぜか?それは、極々簡単な答えだよ。当たり前過ぎて驚くような簡単な答えだよ。ここは?」
「肘!」
「出会った事がない。僕は、神の姿を見た事もなければ、神の声を聞いた事すらない。だけど、こんな僕でも神に祈る事がある。こんな神を心の底から信じちゃいない僕でもだ。そう、だからきっと、神はそんな存在なんだろう。ここは?」
「肘!」
「願っても願っても結果は分かりきってる。それでも見えない存在の神に、触れる事の出来ない神に、願い続ける。ここは?」
「肘!」
「或いは、神が人の願いを全て叶えてくれる存在だとしたら、どこかで誰かがいつもいつも、こう願ってるのかもしれない?ここは?」
「肘!」
「人が、お願いした全ての願いを、どうか叶えないで下さい、と。だとしたら、神は本当に存在してるのかもしれない。ここは?」
「肘!」
「ここは?」
「肘!」
「ここは?」
「肘!」
「ここは?」
「肘!」
「さあ、今日もとりあえず生きてるから、生きてみよう。ここは?」
「肘!」
「そして、明日もとりあえず生きてたら、生きてみよう。ここは?」
「肘!」
「その時間が普遍的で概念的で孤独感に満ち溢れてたとしても無駄に足掻いて、生きてみよう。気付けなかった大切な事に気付けるかもしれない。偉大な何かを成し遂げられるかもしれない。最後にはその全てが無駄に終わるかもしれないけど、この地球の生命活動が終わるまで、とにかく無駄に足掻いて生きてみよう。ここは?」
「肘!」

第五百五十五話
「零回零回クイズ」

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2017年1月25日 (水)

「第五百五十四話」

「ニャー!」
朝起きると俺は、猫になっていた。
「ニャー!」
そう、大好きなあの女性が大好きな猫になりたいと思って日々を暮らしていたら、ある朝起きると俺は、猫になっていた。
「ニャー!」
嬉しかった。人間の俺では、絶対にあの女性は振り向いてくれないが、猫の俺はきっと気に入ってくれる。俺は、あの女性と一生一緒に同じ時間を過ごせる。
「ニャー!」
そんなこの先の幸せ過ぎる運命を想像しただけで嬉し過ぎて死にそうだ。
「ニャー!」
猫になってしまったから、あの女性とはもう二度と会話をする事は出来なくなったが、それを失って得るモノは、あまりにもデカ過ぎた。
「ニャー!」
こんな自宅でずっと歓喜に沸いてる場合じゃない!早速、あの女性の家に行って俺を飼って貰おうじゃないか!俺は、家を飛び出し、三軒先のあの女性の家まで屋根と塀を利用して向かった。
「ニャー!」
よし!大好きなあの女性が居る二階の窓が丁度開いてる!あそこからそれとなく忍び込もう。そして、猛アピールして飼って貰おう!俺は、軽快なステップでいとも容易く窓から大好きなあの女性の部屋へ入った。
「ニャッ!?」
そこで目にした光景は、大好きなあの女性が部屋のドアノブを使って、首吊り自殺している姿だった。

第五百五十四話
「現実」

そして俺は今、あの部屋を後にして路頭に迷いながら不意にトラックに跳ね飛ばされ電信柱に頭を強打し、雨上がりの虹を見て、猫になりたいって願った事を後悔しながら、息を引き取り掛けている。
「ニャ、ニャー・・・・・・・・・。」

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