2017年6月21日 (水)

「第五百七十五話」

「ブロロロロロロロ!!」
「ブロロロロロロロ!!」
俺達は今、美術館から名画を盗み、森の中をバイクで走ってる最中だ。
「どうやら追っ手は来てないみたいだな!」
「この森を抜けた所まで、あと少しだ!」
「そこに乗り物が?もうガソリンがもたない!こんなおんぼろバイクじゃ限界だ!」
「ああ!大丈夫!ちゃんと用意してある!さあ森を抜けるぞ!」
「ブロロロロロロロ!!」
「ブロロロロロロロ!!」
俺達が森を駆け抜け辿り着いたのは、大草原だった。
「大草原!?」
「乗り物は、こっちだ!」
「あ、ああ。」
「さあ!逃げるぞ!」
「え?」
「は?」
「え?」
「は?」
「え?」
「は?」
「乗り物って?え?」
「これだよ。」
「気球?」
「気球。」
「気球?」
「気球。」
「赤い気球?」
「青が良かったか?」
「色の問題点指摘してんじゃなくて!乗り物のチョイス自体を指摘したいんだ!え?ウソ、だよな?」
「ウソ?何が?」
「いやだから、気球で逃走って、ウソだよな?」
「この状況でウソなんかついてどうすんだよ!僕達は、名画を盗んだんだぞ!しかも名画中の名画をだ!だから物凄い数の警察が追って来てんだぞ!」
「いやなんか着々と気球のセッティングしてるけど、ウソなんだろ?」
「セッティングしてるのが分かってるなら少しは手伝えよな!」
「いや、いつの時代背景で逃走用の乗り物チョイスしてんだよ!てっきり小型飛行機とかかと思ったよ!」
「小型飛行機の免許なんか取れる訳がないだろ?」
「じゃあ、お前は一体あの期間、何の講習に出掛けてたんだよ!」
「もちろん気球の講習だよ。」
「いやいやいや、おかしい!おかし過ぎる!」
「大爆笑してないで手伝えよな!」
「大爆笑なんかしてないだろ!」
「おかし過ぎて逆に怒ってんだろ?」
「それを大爆笑って観点で捉えられるお前は凄いよ。ちょっと待てよ!ちょっと冷静になって考えてみろよ!気球だぞ?」
「赤い気球な。」
「色とかどうだっていいんだよ!気球だぞ?気球でどうやって逃げ切るんだよ!」
「上へ上へ逃げれば、有り得ないぐらいの数の警察から逃げ切れるだろ?」
「地上の警察はな!地上の有り得ないぐらいの数の警察からは逃げ切れるよ!」
「じゃあ、万々歳じゃないか。それ取って。」
「何で万々歳なんだよ!」
「有り得ないぐらいの数の警察は、指をくわえて僕達を見てるしかない。大爆笑で見返してやろ!」
「いやだから、お前の頭の中でどんな時代背景になってんだって!地上の有り得ないぐらいの数の警察が指をくわえて俺達を見てたって、有り得ないぐらいの数の上空の警察は、大爆笑で地上を見下ろしてる俺達を見て大爆笑だろ!」
「ヘリコプター的な?」
「ヘリコプター的なだよ!ヘリコプター的な存在分かってんじゃん!分かってて何で気球チョイス?」
「ちょっとそれ取って。」
「おいなあ?マジで気球がウソじゃないんだったら、とりあえずバイクで逃げれるとこまで逃げようぜ!その方がまだマシだ!空の上で逃げ場がない状況で蜂の巣にされるならな!」
「蜂の巣?蜂の巣なんかされないさ。よし!準備出来たぞ!」
「こ、これは!?」
「有り得ないぐらいの数の警察は、名画を傷付ける事は出来ない。だから、盗んだ名画全てを気球に貼り付けたんだ!」
「なるほど、ってなるほどじゃない!一旦、気球で上空に行くって事はだぞ!その後、地上に戻らなきゃなんだから、上空でマークされて地上で逮捕だろうが!」
「誰が地上に戻るって言った?」
「はあ?」
「宇宙に逃げれば無敵だ!そして気球初の宇宙到達で僕達の名前は歴史に刻まれる!」
「主旨がもう、おかし過ぎるだろ!」
「それに、宇宙へ持って行けばもう、僕達の絵は盗まれる事はない。」

第五百七十五話
「究極のトランクルーム」

「いや、大気圏でアウトだろ。」
「は?」
「え?」
「は?」
「え?」
「は?」
「え?」
「は?」
「え?」

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2017年6月14日 (水)

「第五百七十四話」

「殺す気でしょ?」
まさか、生きてる間にこんな言葉を口にするとは、思ってもみなかった。しかも、親友に対して・・・。そう、今日は朝から曇天で、時間の流れなんか分かったもんじゃない中、俺は新作のデザインを暗中模索してた。数年前、親友と立ち上げたデザイン事務所だったが、学生のノリと言うか飲みの席でもノリと言うか、んまあ現実なんてもんは酷いもんで、でもそんな袋小路の現実社会でも何とか自分達の道を切り開いて行こうと俺達は必死だった。今日だってそうだ。気付けば夜中になってるぐらい俺は、デザインを書いては捨て書いては捨て書いては捨て書いては捨てしてたら、背後に頭から爪先まで黒黒黒のファッションで、その親友が立っていた。だから俺は言ったんだ。
「殺す気でしょ?」
と。
「はあ?お前、何言ってんだよ。」
「いや、言うだろ。そんなあからさまな格好で後ろに立ってたら、言うだろ。殺す気でしょ?ってさ。今使わないで一体いつ使えばいい言葉なんだよってくらいにさ。」
「休みの日なのに事務所に明かりが点いてるからもしかしたらと思って来てみたら、お前がいたんだよ。」
「うんじゃあ、そのポケットからはみ出てるロープは?」
「だから、もしかしたらと思ってって言っただろ?」
「いやいやいや、お前のもしかしたらを俺が瞬時に理解出来る訳がないでしょ?人それぞれに人それぞれのもしかしたらがあるんだからさ。」
「もしかしたら、強盗じゃないかと思ったんだよ。」
「・・・いや、待て待て待て!待ってくれ!待ってくれ待ってくれ!」
「待ってるよ。」
「はあ!?」
「はあ!?って何だよ。」
「おかしいだろ!それ絶対おかしいだろ!強盗かと思ってポケットにロープで背後って、無理ない?無理無理無理!それは、無理!」
「何が無理なんだよ。」
「強盗だったら警察呼べばいいだろ?こんな距離まで俺だって分からない訳がないし!」
「デスクの上のライトだけじゃ分からないだろ?ゴソゴソしてたしさ。」
「いや確かにゴソゴソはしてたけど、え?お前何?警察呼ばないで強盗だったら殺してしまおうって考えたの?」
「その方が早いだろ?」
「何が?この場合、何が早いの?何と競争してんの?恐い恐い恐い!俺を殺す気じゃないんだったとしても誰か殺す気だったんじゃん!」
「強盗するような奴だぞ?殺されたって仕方ないし、殺されたって悲しむのは、その家族ぐらいだろ?そんなの世界の人口に比べたらゼロに等しい数だろ?」
「何だよその犯罪イコール死刑な発想は!何だよその不条理なルールブックは!」
「いや別にそうじゃないよ。」
「そうだろ!」
「俺達の事務所に強盗が入ったらの話で、他のとこに入った強盗は殺さないよ。ああ、強盗に入られて可哀想だなって思うぐらいだよ。」
「ああ、強盗に入られて可哀想だなって思うぐらいだよじゃない!そのまず、降りかかる火の粉を殺害で丸く収めようって発想がいかがなもんだろ!どうすんだよ!その死体!」
「その時は、お前に連絡して手伝ってもらおうと思った。」
「思うな!俺に訳の分からない犯罪の片棒を担がせるな!」
「山に埋めるか溶かすかブタの餌にすれば大丈夫だろ。」
「マフィアか!俺達は!」
「でも許せないだろ!強盗だぞ!大事なモンを盗んだんだぞ!俺達の大事なデザインを盗んだんだぞ!」
「ああ、やっぱり殺す気でしょ?お前、俺の事を殺す気でしょ?」
「何で?どうしてパートナーのお前を殺す必要があるんだよ。」
「だって、お前!そもそも咄嗟にそんな格好が出来るか?都合良くロープ用意出来るか?」
「咄嗟にこんな格好が出来る事だって、都合良くロープが用意出来る事だってあるだろ?」
「お前、気付いたんだろ?」
「気付いた?何に?」
「俺と奥さんとの関係についてさ。大事なモンを盗んだ俺に、気付いたんだろ?」
「・・・・・・・・・。」
「ごめん!本当にごめん!もう二度と奥さんとは会わないし連絡も取らない!誓うよ!だから、殺さないでくれ!」
「確かに、俺はお前と妻の関係に気付いた。確かに、俺は大事なモンを盗まれた。」
「頼む!殺さないでくれ!」
「もう遅い。」
「えっ?やめろ!頼む!やめてくれ!」
「だから、妻を殺した。」
「え?」
「俺から大事なモンを盗んだ妻をな。」
「・・・お前。」
それから俺達二人は、朝までデザインを創作し続けた。

第五百七十四話
「私を殺す気でしょ?」

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2017年6月 7日 (水)

「第五百七十三話」

「先輩?」
「任務中の私語は厳禁だ。」
「そんな事は分かってますよ。」
「トイレか?」
「そんなヘマはしませんよ。」
「だったら、任務に集中しろ。」
「先輩?集中しろって言ったって、僕等こうしてドアの前に立ってるだけですよね?何か話でもしてないと暇じゃないですか?」
「ただドアの前に立っている訳じゃない。部屋の中には、大統領が居る。私達の仕事は、大統領を警護する事だ。分かっているなら、私語は慎め。」
「いやいやいや、先輩?僕が言いたいのは、この国でこの仕事って成立するんですか?って言いたいんですよ。そう言う話ですよ。」
「大統領の命を命懸けで護る。それが任務だ。」
「先輩の言ってる事は、この国以外だったら当て嵌まるんですよ。立派な志ですよ。でも、この国で大統領の命を狙う者がいますか?そんな愚か者絶対いませんよ。」
「この世の中に絶対は存在しない。」
「そう言いますけど、よく言いますけど、この国で大統領の命を狙う者がいないのは、絶対です。」
「どうしてそう言い切れる。」
「え?だって、この国のシステムがそうじゃないですか。大統領の命を狙った者は、頭が爆発する。国民全ては生まれた時にそのチップを埋め込まれ、定期的に交換する。他の国から入国して来た者には、その場でチップが埋め込まれ、出国時にチップを抜き取られる。まあ、島国だから成せる業とでも言うんですか?完璧なシステムですよ。」
「そうだな。」
「いや先輩?そうだなじゃなくて、この完璧過ぎるシステムの中、なぜ大統領警護が必要なのか?ですよ。話はそこですよ。」
「このシステムも人間が作り出したモノだ。人間が作り出したモノには、必ず欠点があり弱点がある。」
「いやいやいや、そう言いますけどね。よく言いますけどね。このシステムは難攻不落過ぎるぐらい難攻不落ですよ。」
「なら、こう考えたらどうだ?」
「どう考えるんですか?」
「立ってるだけで、金が貰える。」
「ええーっ!いやまあ、実際そうなんですけど、何か先輩の口から聞きたくなかったなぁ!」
「おい、そろそろ本当に私語を慎め。」
「あそうだ!いい事を思い付きましたよ。」
「この状況で黙る事以外にいい事などないぞ?」
「本当に頭が爆発するか試してみません?」
「何!?」
「先輩は、見た事あります?大統領の命を狙ってる者の頭が爆発した瞬間を。」
「いや、ない。」
「こう、考えた事はありませんか?いや、こう考えたらこの状況の全てに説明が付く。」
「何を考えている?」
「嘘なんですよ。」
「嘘?何が嘘だと言うんだ?」
「この国のこのシステムがですよ。」
「バカな!?そんな飛躍し過ぎた考えがあるか!」
「そこですよ。まさにそこです。全ての人間が、この国のこのシステムを疑わない。でも、実際にはそんなシステムはなく、話だけが一人歩きしてる状況なんですよ。当たり前に塗り固められた嘘を信じてる。だから、警護が必要になる。だって、そんなシステムが存在しないなら万が一の場合は、マジで大統領の命は危険ですからね。」
「私もお前もチップが埋め込まれているだろ。」
「ええ、でも実際に爆発した人間は見た事がない。チップを埋め込むと言う作業をする事で、嘘が飛躍的に真実へと進化する。」
「突拍子しもない想像をするは自由だ。だが、お前が試そうとしている事は、罪だ。」
「ここで大統領の命を狙ったら、本当に僕の頭が爆発するのか?試してみる価値はあると思いませんか?」
「ない!」
「先輩だって、疑問に思ってたはずです。」
「私は疑問になど思った事などない!」
「この大統領警護の仕事をしてて、それは有り得ないですよ。でも、安心して下さい。僕が今からその疑問を解決してみせます。」
「おい!」
「先輩?なぜ銃を?大統領の命を狙ったら、頭が爆発するんですよ?銃なんか向けても意味はないはずです。先輩は、遠くから安全な場所から本当に僕が爆発するかを見届けてくれればいいんです。」
「やめろ。それ以上は、冗談の域を越える。」
「巻き込まれちゃいますよ?」
「やめろ。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・冗談ですよ。」
「・・・・・・・・・・。」
「だって、僕が大統領の命を本気で狙ってたら、今頃爆発してるはずじゃないですか。」
「・・・・・私語は慎め。」
「先輩?」
「これ以上は、上に報告するぞ。」
「このシステムって、大統領も例外じゃないですよね。」
「当たり前だ。」
「それって、大統領が自殺しようとしたら、どうなるんですか?やっぱり爆発するんですか?大統領が大統領の命を狙ってる訳だから、システムが起動しますよね?」
「トンチみたいな事を言っていないで任務に集中」
「ボンッ!!」
「先輩!?」
「まさか!?」

第五百七十三話
「それは自殺か暗殺か?」

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2017年5月31日 (水)

「第五百七十二話」

「こちら管制塔!何をしている!」
地球は、念願の平和を手にした。何の争いもない平和な地球を手に入れた。地球平和0005年のこのクソ暑い日に、何をしているはないだろ?だいたい想像はつくだろって話だ。
「こちら管制塔!忠告する!直ちにエンジンを止めろ!」
はいそうですかってエンジンを止めるバカなんている訳がないだろ。俺は待ってたんだよ。この時が来るのをずっと待ってんだ。
「こちら管制塔!聞いているのか!直ちにエンジンを止めろ!」
嫌でも聞いてるよ。ただ、会話がしたくないだけだ。地球が平和になろうがなるまいが俺には関係無い。
「こちら管制!?貴方は!?」
「私は、地球大統領だ。キミの要求は一体何だ?」
随分と早いご到着だな。要求?要求なんて無い。俺は、テロリストじゃない。そんなものは無い。あるとするなら、俺に話し掛けずに黙って見届けてくれ。
「要求を言ってくれないか?キミを捕まえたり殺したりはしない。それは、この私が約束しよう。」
今のこの平和な地球にとって俺は、かなりの危険因子だよな。だけど、俺をそこら辺の平和退屈主義者の奴等と一緒にしてもらったら困る。捕まったら、殺されないだろうが、平和学校に収容されるんだろ?ただ、そんなのはどうだっていい。物凄くどうだっていいんだ。そんな事より俺は、とっくの昔に気付いちまったんだよな。
「さあ、とりあえずロケットから降りて、ゆっくりと落ち着いて対話しようではないか。」
さてと、そろそろエンジンも温まって来た頃し、この地球という無人島から脱出しますか。じゃあな、出発!
「ま、待て!話を!や、やめろぉぉぉぉ!!」

第五百七十二話
「ロンサム」

「・・・行ってしまった。」
「地球大統領・・・。」
「彼の名は?」
「確か・・・ジョージだったかと。」
「・・・そうか。」

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2017年5月24日 (水)

「第五百七十一話」

「腰が痛いんです。」
「では、鼻を削ぎ落としましょう。」
「はい。いやいやいやいや!はいじゃない!はいじゃないです!何か医者と患者との話の流れで、ついつい肯定的な返事をしちゃったけど!はいじゃないです!」
「落ち着いて下さい。鼻を削ぎ落とすと言っても、単純に鼻を削ぎ落とすだけですから。」
「結果、鼻を削ぎ落とされるのに、単純も複雑もないでしょ!先生!僕は、腰が痛いと訴えてるんですよ?何で鼻を削ぎ落としましょう?」
「それは、単純で明快です。鼻を削ぎ落とせば、腰の痛みなど、吹っ飛びます。」
「鼻も吹っ飛びます!先生!診察室に入って一分もしないで鼻を削ぎ落としましょうって、おかしくないですか?」
「おかしければ、鼻で笑えばいいじゃないですか。」
「笑えないジョーク言うのやめてもらえます?だいたいですよ?鼻を削ぎ落としたって、根本的な解決にはなってないじゃないですか?」
「もう少し詳しく。」
「詳しく説明しなきゃダメな案件?だから、鼻を削ぎ落として腰の痛みを忘れさせたとしても腰の痛みを治療してもらわないと、僕の鼻は削ぎ落とされ損ですよね!」
「それは違いますね。」
「違う!?何で違うんです!」
「鼻を削ぎ落として痛みが鼻に集中してる時に腰の治療をするので、貴方の鼻は決して削ぎ落とされ損ではありません。」
「うん!削ぎ落とされ損ですよね!それ、削ぎ落とされ損ですよね!先生のその説明でより削ぎ落とされ損感が増しましたよね!アップしちゃいましたよね!」
「政治家になろうかな。」
「変な衝動に駆られないで下さい!弁が立つ的な話じゃないんで、これは!」
「ちょっとお待ち下さい。」
「どこへ行くんですか?」
「鼻削ぎ落としマシーンを取りに行って来るんですよ。」
「取りに行かないで下さい!僕は、鼻を削ぎ落とす気はありませんから!なので、これからも取りに行く素振りを見せないで下さい!絶対に!それはもう絶対にです!」
「鼻を削ぎ落とす気がない!?」
「当たり前じゃないですか。」
「だったら、一体どこを削ぎ落とす気なんですか!?」
「どこも削ぎ落とす気なんか無いですよ!何でどっか削ぎ落とす事は決定事項なんですか!そうじゃなくて、痛みを別の場所に移動させるんじゃなくて、腰を治療して下さいよ!」
「じゃあ、鼻にボーリングのタマを落としましょうか。」
「落としましょうかじゃないでしょ!落としましょうかじゃ!そんなの鼻を目掛けてるかもしれないけど、結果的に顔面陥没でしょ!」
「五階位の高さから。」
「いやもう陥没どころか死ぬでしょ!ボーリングのタマがめり込んで死ぬでしょ!」
「めり込んだらめり込んだで、顔書きますよ。ボーリングのタマに。」
「なぜそんな雪だるま的な事になるんですか!死ぬでしょって話ですよ!」
「今の医療をなめないでもらいたい!」
「そんなボーリングのタマ男として生きて行く人生に医療の進歩を持ち出すなら、腰の治療のみをしてくれればいいでしょうが!」
「さて、患者さんが怒り出したところで、診察を始めましょうかね。」
「何でわざわざ患者を怒らせる必要があるんですか!」
「ちょっと!暴れないで下さい!診察が出来ないじゃないですか!?」
「暴れてませんよ。仮に暴れたくても腰が痛くて暴れられませんよ。」
「地球を滅ぼしたくても爆弾が作れないのと一緒ですね。」
「違います!先生、大きな声を出しただけでも響いて痛むんですよ。」
「じゃあ、声帯を引き千切ってやりましょう!」
「いやだから、何でそんなに残虐行為をしたがるんですか。」
「ちょっと触りますんで、痛かったら痛いと言って下さいね。」
「やっと診察に漕ぎ着けたよ。って、先生?」
「痛いですか?」
「痛くないですよ。先生?」
「痛いですか?」
「何してるんですか?」
「腰を診察してるんですよ。痛いですか?」
「痛い訳がないじゃないですか!」
「えっ?腰が痛いのウソ!?」
「僕の腰を診察して下さい!先生が先生の腰を触ってて、僕が痛いっておかしいでしょ!」
「おかしければ、鼻で笑えばいいじゃないですか。」
「また鼻に戻るんですか!?」
「正直、私はね。鼻はいらないって考えなのだよ。いる?鼻!」
「いりますよ!鼻!鼻無かったらニオイとか分からないじゃないですか!」
「鼻血とか鼻水とか鼻糞とかのデメリットしかないと思うんだよね?別にニオイが分からなくてもいくない?」
「鼻血とか鼻水とか鼻糞とか分かりますけど、ニオイで危険を察知する事だってあるじゃないですか。必要ですよ。鼻は。」
「いやそんなのおでこが光ようになればいいじゃん!」
「なら、おでこが光ようになったら、その鼻いらない説を学会にでもなんでも論文で発表すればいいじゃないですか!」
「目に入ったモノを口にする人っているじゃないですか。」
「目に入ったモノを口にする人の話、どうでもいいです。」
「そう言う人とドライブすると大変だよね。この前ね。」
「いや何で?何でこの状況でこのタイミングで先生のこの前の目に入ったモノを口に出す人とのドライブの話を聞かなきゃなんないんですか?腰が!腰が痛いんですよ!僕!」
「その時ね。その目に入ったモノを口に出す友人が言うんだよ。目に入ったモノを口に出す人とのドライブって、疲れるよねってさ。」
「え?え、え?何なんですか?僕はそれを聞かされてどう言う反応をすれば正解なんですか?自分が見えてないんですね的な?そんな風な事を言えばいいんですか?」
「だから先生、その友人に言ってやったんだ。」
「何でスタンダップコメディーみたいに展開してんですか?」
「そうだね。ってさ。」
「普通!それは、普通の会話をわざわざスタンダップコメディー風に話しただけ!いる?いるんですか?この時間!何なんですか?この時間!この時間で診察出来たんじゃないですか!」
「診察は、既に終わってます。」
「えっ?いやいやいやいや、何もしてないじゃないですか!?」
「この診察室は、高性能で最先端の技術で作られているのです。」
「いや、眼鏡掛けてないでしょ。」
「なので患者さんが診察室に入って来た時点で、全ての診察が完了しているのです。」
「だから、眼鏡。」
「この意味不明な時間は、その診察結果がこれに転送されて来るまでの待ち時間なのです。」
「この時間を意味不明にしてるのは、先生ですよね?だったら、最初からそう言って下さいよ。」
「では、診察結果を発表します。」
「はい。」
「余命49年3ヶ月と22日5時間17分と6秒!」
「で?」
「長生きです。良かったですね。」
「ええまあ、長生きですけど、それで?」
「終わりですよ。」
「腰の痛みは?」
「どうせ長生きするんですから、この場合のその腰の痛みは、別にいいじゃないですか。」
「よくない!!」

第五百七十一話
「どう長生きするか」

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2017年5月17日 (水)

「第五百七十話」

「今日は、虹を渡るのであーる!」
「たたた隊長!?たたた隊長!?い、今何と?すかさず今何と?」
「今日は、虹を渡るのであーる!」
「たたた隊長!?虹を!?虹を渡るのであーるでありますか!?」
「何か問題でもあーるのであーるか?」
「単純に、どうやって?はてさて、どうやって虹を?虹を渡るんだ?って、思いました。いえ、思いました!」
「なぜ全く同じ文章をあえて一回否定しといてもう一度言ったのであーる?どうやって?どうやって虹を?どうやって虹を渡るのか?虹を渡るのに、どうやってもこうやってもないのであーる!虹は、渡りたい時に渡るものであーる!」
「そそそそんなバカな!?隊長がおっしゃってる虹とは、空に架かる虹ですよね!」
「うむであーる!」
「渡りたい時に渡ると言われても!そもそもの渡り方が分かりません!」
「分かれ!」
「分かりません!」
「分かれ!」
「分かりません!」
「分かれ!」
「分かりません!その分かれの無理強いやめて下さい!そこで分かったと答えても分かってませんから!」
「虹靴は、準備して来たか?」
「あーるは?虹靴!?ににに虹靴!?虹靴って何ですか?」
「虹靴とは、虹を渡る時に履く靴の事だ。」
「あーるは?虹を渡るのを今さっき聞いたので、持って来ていません!持って来ていませんと答えましたが、そもそもが虹靴と言うアイテム名を聞いたのも今さっきが初めてで、初めての事だらけで!」
「虹靴を履いて、虹手袋を装着する!」
「あーるは?ににに虹手袋!?ににに虹手袋とは!?」
「虹を渡るには虹手袋が虹靴以上に必要不可欠なのは、虹の入門書を読めば分かるだろ!」
「もう、あーるやめたんですね。」
「やめたよ!」
「そんな怒らなくても!?ゲンコツで怒らなくても!?ににに虹の入門書!?ににに虹の入門書って何ですか!?虹靴も虹手袋も虹の入門書も初耳です!」
「ははは初耳!?ははは初耳だと!?」
「僕の真似しないで下さい。」
「僕の真似って、驚いた時に冒頭の言葉を連呼するのは、キミが発案者じゃないだろ?」
「発案者じゃないですけど、二人しかいない会話で最初に使ったら、それはもう僕が発案したも同じですよ。」
「キミは、無茶苦茶言うな!お菓子売り場の子供か!玩具売り場の子供か!」
「隊長から虹を渡ると聞かされた大人です!28歳の大人です!」
「さてと、準備運動で体も温まった事だし、よし!渡ろう!」
「よし!渡ろう!じゃないですよ!よし!渡ろう!じゃないですよ!よし!渡ろう!じゃないですよ!」
「なぜ三回も言う?」
「物凄く大事な事だからです!」
「よし!渡ろう!」
「渡れるものなら渡ってみたいですけど!隊長!虹は、渡れません。」
「虹は、渡れない?」
「虹は、渡れません。」
「虹は、渡れない?」
「虹は、渡れません。」
「29年前には、この地球上に存在すらしてないキミが何を偉そうに言ってんだ!」
「無茶苦茶な人生の先輩風吹かせますね!?」
「吹かせられるなら吹かすのが先輩風ってもんだろ!それが人生ってもんだろ!」
「それはとても淋しい人生ですよ。それはとても哀しい人生ですよ。」
「人生は、常に淋しくて哀しいもんであーる!」
「あーる!?ここに来てまた、あーる!?さすがです!隊長!」
「ありがとう!隊長!」
「いや僕は隊長ではありません。」
「学級委員みたいな模範解答だなキミは!メガネでお下げかキミは!」
「古い!学級委員のイメージがただただ古い!」
「どうせ掛けるなら虹眼鏡を掛けろ!」
「ににに虹眼鏡!?ににに虹眼鏡とは!?虹靴、虹手袋、虹の入門書に続く第四のアイテム、虹眼鏡とは!?」
「虹眼鏡を掛けてないと虹が見えないだろ!」
「いや、虹はそんな眼鏡を掛けなくても見えますよね?」
「風景としての虹を見るのには、虹眼鏡を必要としない。がしかし!虹を渡るとなったら話は別だ!虹には、渡れるポイントと渡れないポイントとが存在する!その渡れないポイントが分かるのが虹眼鏡だ!虹から落ちて死にたいのか!!」
「もうキレ方がヤバい人じゃないですか!?」
「ナイフを首筋に突き付けてすまなかった。だが、キミがあまりにも虹をなめていたから、ついつい興奮してしまって、本当にすまない。」
「僕の方こそ、何が何だかよく分からないですけど、とにかくすみませんでした。」
「あとはそうだな?虹防護服は、持って来たか?」
「虹防護服?」
「何だ?得意の驚愕はやめたのか?」
「ええ、何かもう面倒臭いのでやめました。虹防護服って何ですか?」
「虹から発生するレインボチウムから人体を護る服だ。」
「レインボ?」
「レインボチウム!」
「って、何ですか?人体を護るって、どう言う事ですか?」
「よくは知らん!」
「知らん!?」
「その辺は、知らん顔しとけ!」
「知らん顔出来ませんよ!」
「知らん顔で知らんぷりしとけ!」
「いや、防護服まで装着しないと危険だって事ですよね!人体に悪影響だって事ですよね!死ぬって事ですよね!防護服まで装着して渡る価値が虹にあるんですか!」
「ある!!」
「断言した!?物凄く断言した!?こんな正しくした断言を見た事がない!?隊長!そこまでして渡る価値があるなら、その価値を教えて下さい!」
「虹を渡るとな。」
「はい。」
「虹を渡ったと自慢出来る!」
「はい。」
「うむ。」
「はい。」
「いやだから、うむ。」
「え?それだけ?虹を渡ったら、虹を渡ったって自慢出来る。ただただそれだけ?」
「ノートとジュースも貰えるぞ。」
「どう言うシステム!?と言うか隊長、とりあえず傘も差さずに雨上がりの虹を待つのやめません?どっか喫茶店とかに入りません?」
「どっちも無理!」

「何でですか!?」
「お金が無い!」
「変な虹グッズばっかり買ってるからだ!」
「うむ。」
「いやうむじゃなくて!」

第五百七十話
「雨上がりの虹を待つ雨の中にて」

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2017年5月10日 (水)

「第五百六十九話」

「先生、どうしたんですか?まさかのいっつも締め切り限界ギリギリアウトの先生からの呼び出しだなんて、もしかしていよいよアタシにプロポーズ?」
出版社の女。
「だから何で美人だけが取り柄のお前にプロポーズしなきゃなんないんだよ!」
物書きの男。
「美人だけがって言いますけど!美人ってかなり上級ツールですけど!ハイスペックツールですけど!伝説の武器レベルですけど!」
「美人はな。寿命が短い。」
「怒られますよ。」
「何に。」
「いや何かに絶対確実怒られますよ。で、それでアタシを呼び出した意図は何ですか?新作が書き上がってるって様子もないですけど?」
「いつもいつも、お前が小説のアイデアを持って来るだろ?やれ、恋愛小説を書けだのとかさ。」
「何でちょっと、いやかなり迷惑そうに言うんですか?出版社の立場から言えば当たり前の仕事してるだけですけど?」
「美人だったら何したっていいのか!!」
「どう言う怒られ方してるんですか?アタシは?」
「と、以前の俺ならツバキを撒き散らしながら怒鳴っていただろう。」
「いや今もそこそこでしたけど?だから先生、本題は何なんですか?」
「私は、泣ける作品を書こうと思う!」
「はあ。」
「泣ける作品を書こうと思う!」
「どぞ。」
「ケッ!」
「ケッ!って、実際に不愉快になる人、初めて見ましたよ。てか、きっと先生は、あまりにも無反応なアタシに不愉快なんですよね?」
「ケッ!」
「せっかく自ら売れる作品のアイディアを出したのに、あまりにも無反応なアタシに不愉快なんですよね?」
「ケッ!」
「当たり前じゃん!」
「ケッ!?」
「そんなの誰もがそう思ってそうしようとしてる普通の領域じゃん!むしろ今までよくぞそこに辿り着きませんでしたね!って話ですよ!」
「ド定番か。」
「ド定番中のド定番ですよ。」
「よし!そのド定番中のド定番と真っ向勝負しよう!」
「先生!いよいよやる気になってくれたんですね!」
「俺はいつでもやる気だったけど?」
「売れる作品に対してって意味ですよ。」
「語弊が凄いな、お前。」
「でもでも、先生?肝心なのは、作品の方向性じゃなくて、中身ですよ!特に先生の場合は!」
「顔が近い。」
「美人が顔近付けたら、喜びましょうよ。」
「くしゃみしていい?」
「有り得ないでしょ。この零距離でくしゃみは。」
「鼻糞飛ばしていい?」
「もっと有り得ないでしょ。」
「オナラしていい?」
「零距離ならむしろオナラが一番マシです。って、零距離で何がどうとかどうでもいいんですよ。」
「お前が早く離れないからだろ。そう、肝心なのは内容なんだよ。単純に、泣ける作品では面白くない。俺が書くんだから、オリジナリティが必要だ。」
「いやその先生のオリジナリティ、一回無しにしません?あれがかなりのネックなんですよね。」
「あのな?俺もバカじゃない。」
「そうなんですか!?」
「そうなの!?」
「先生まで驚愕しちゃったら、誰がこの現場を収集するんですか。」
「泣ける作品は、チョロい。」
「怒られますよ?」
「何に。」
「何かに絶対確実怒られますよ。チョロい訳ないじゃないですか!」
「だって、とりあえず誰かが死ねばいんだろ?」
「とりあえず誰かが死ねばいいってもんじゃないでしょ!」
「人は不思議だよ。」
「何ですか?急にシリアスモードになって。」
「死ぬ事からは回避不能なのに、生きてる事への奇跡を日々歓喜しない。」
「口説いてるんですか?」
「口説くかよ!どんな口説き文句だよ!ただ単純に、いい言葉を発しただけだよ!」
「いい言葉でした?」
「いい言葉でしたよ。」
「泣ける作品の内容とは?」
「余命の主人公とか、家族を殺された復讐劇とか、タマネギ切りまくってるとか、眼球殴るとか、そんなんじゃないんだよ!俺が書きたい泣ける作品ってのはさ!」
「良かったぁ。後半マジでヤバかったですもん。」
「読み手が全員泣ける作品を俺は書く!」
「いやいやいや、ちょっと先生?先生ちょっと?それはそれで不可能ですよ。人それぞれに泣けるツボがあるんですから、読んだ人全員ツボる泣ける作品は無謀です。無茶です。」
「お前、バカだろ?」
「アタシ、バカなの!?」
「えそうなの!?」
「いやだから、収集出来なくなるんでやめて下さい。だって、そんな読んだ人が全員泣くなんて、どう考えたって無理じゃないですか!」
「その無理じゃないですか!って言う事を思い付いたから、呼び出したんだろ?」
「マジですか?」
「マジですよ。」
「死んだ両親に誓えますか?」
「死んでないけどな。誓えるよ。」
「では、どぞ。」
「あのな?内容に拘るから全ての人を泣かす事が出来ないんだよ。」
「はい?」
「いいか?問題なのは、内容なんかよりも読ませ方なんだよ。」
「はい?読ませ方?」
「だから、この作品を読む為の読み方を冒頭に書くんだよ。」
「すいません。嫌な予感しかしないんですけど?因みに、一体先生は冒頭に何を書くつもりなんですか?」
「ふっふっふっ!これで泣ける作品の時代は大きく前進するだろよ!驚くなよ?こう書くんだ!!」

第五百六十九話
「常に足の小指を何かの角にぶつけながら読んで下さい」

「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・帰ります。」
「じゃあ!常に眼球を殴りながら読んで下さい、は?」
「また、来ます。」
「なら!アナタが一番泣ける作品を思い浮かべながら読んで下さい、は?」
「お邪魔しました。」
「これならどうだ!鼻毛を」
「バタン!!」

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2017年5月 3日 (水)

「第五百六十八話」

「お兄さん?何してるんですか?」
「警察のコスプレの人こそ、こんな所で何をしてるんですか?」
長閑な真っ直ぐで、果てしなく真っ直ぐな、左右には広大なトウモロシ畑がある道の真ん中で、男は落ちている傘を見下ろしていた。
「警察のコスプレの人じゃなくて、警察です。」
「じゃあ、警察のコスプレの人じゃない警察の人こそ、こんな所で何をしてるんですか?」
「危ないから、お兄さんを注意しようと思いましてね。」
「僕、危ないんですか?間もなく爆撃機が爆弾を投下でもするんですか?」
「それを警察が一人一人に懇切丁寧に注意を促してたら、終わっちゃいますよ。ではなくて、こんな道の真ん中に立ってたら、危ないですよ。と、注意しようと思いましてね。いくらここが長閑だと言ってもむしろその長閑につけ込んで、ドライバーはスピードを出すもんなんですよ。」
「警察のコスプレの人じゃない警察の人。」
「警察の人でいいでしょ。警察のコスプレの人じゃないいらないでしょ。」
「見て下さい。」
「傘ですね。」
「傘です。」
「誰かが落としたんでしょう。」
「誰かが落としたんだと思います。」
「ん?壊れてますね。」
「壊れてます。」
「なら、誰かが捨てたんでしょう。」
「誰かが捨てたんだと思います。」
「なるほど、それでお兄さんは、このまま傘が道の真ん中に落ちてると危険だから、拾って脇に置いとこうしたんですね?」
「違います。」
「違います!?じゃあ、本当に何をしてるんですか?」
「僕、傘が恐いじゃないですか。」
「知りませんよ。知りませんし、傘が恐いだなんて言う人に会った事ないですよ。」
「はじめまして。」
「はじめましてですけど、傘が恐いなら、むしろ近付かなければいいじゃないですか。」
「近付きたいじゃないですか。」
「ちょっともはや意味が不明なんですけど。」
「恐いもの見たさってあるじゃないですか。ジェットコースターに乗るとか、お化け屋敷に入るとか、釘を目玉にどれだけ近付けられるとか。」
「いやちょっと最後のは共感出来ません。つまりは、恐いもの見たさで傘に近付いていると。」
「そうです。」
「理由は分かりました。でもやはりここは危険です。ちょっと脇に行きましょう。」
「この状況でどうやって脇に行くんですか?」
「私が傘を移動させます。」
「よく持てますね。」
「普通ですよ。」
「よく持って移動出来ますね。」
「傘ってそう言うものですからね。」
「痛くないですか?」
「痛くないでしょ。」
「噛みません?」
「傘を何だと思ってるんですか?とりあえずここに置きますね。」
「急に開かないですよね?食べられないですよね?」
「急に開く事はあっても食べたりはしません。」
「恐いですね。」
「いえ、まったく。ところで、ずっと気になってたんですけど、なぜそこまで傘に恐怖心を抱いてるんですか?」
「傘って、武器ですよね。」
「武器ではないです。雨に濡れない為の道具です。」
「武器の中でも雨から身を守れる唯一の武器ですよね。」
「だから武器ではないです。」
「だって、傘で人を殴る事が出来るじゃないですか。傘で人を突き刺す事だって出来るじゃないですか。」
「いやそれは、武器として使おうと思えば使えるって話ですよね?そんな事を言ったら、包丁だってノートパソコンだってドライヤーだって、武器になっちゃうじゃないですか。」
「なりませんよ。」
「何で傘が武器だって言う人に鼻で笑われなきゃならないんですか。」
「傘の恐ろしさを知らないからですよ。包丁やノートパソコンやドライヤーは、使用しない人の方が多いでしょ?でも、傘はどうです?雨が降れば傘、日差しが照り付ければ傘、傘傘傘!老若男女、職業問わずにとにかくどいつもこいつも傘じゃないですか。傘傘傘じゃないですか!」
「いいじゃないですか。そう言う時の為の傘なんですから。」
「警察のコスプレの人じゃない警察の人はさ。」
「そんな風に呼ばれてた事、忘れてましたよ。」
「銃や刃物を持ち歩いてたら、取り締まりますよね?」
「取り締まりますよ。」
「傘はなんですか?警察公認の武器なんですか?」
「傘は傘だと警察も認識してますよ。」
「年間、どれだけの傘の事故や事件が起こってると思ってるんですか?」
「起こってるんですか?」
「もう集計するのもバカらしくなっちゃうくらい起こってますよ。」
「じゃあ、お兄さんは雨が降ったらどうしてるんですか?」
「こうしますよ。」
「傘差してんじゃないですか!」
「差してないじゃないですか。こうしてるだけですよ。」
「エアー?フリですか?傘を差してるフリなんですか?」
「これで十分でしょ。」
「不十分でしょ!ずぶ濡れじゃないですか!」
「なぜ、ずぶ濡れちゃいけないんでしょう?」
「風邪引いちゃいますよ?」
「お母さんみたいな事を言うんですね。実は、警察のコスプレの人じゃない警察の人じゃない僕のお母さんですか?」
「警察の人です。あのう?それじゃあ、私もう行きますね。」
「今の会話の中で密室トリックのヒントを得たから連続殺人事件を解決しに行くんですね。」
「見回りです。それと、雨が降った時には、ちゃんと傘差して下さいね。」
「やっぱりお母さん?」
「違います!」
自転車に乗り、果てしなく真っ直ぐ道を走り去る警察の背中が見えなくなるまで見た後、男は落ちてた傘を手に取り、トウモロシ畑に投げ込んだ。

第五百六十八話
「・・・・・・こらーっ!!」

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2017年4月26日 (水)

「第五百六十七話」

「バリバリバリバリ!!」
嵐の日の夜中、ボクは物凄い雷鳴によって目が覚めた。そして、次の瞬間、物凄い尿意に襲われた。夜中に一人でトイレに行くのは、普通の日だって恐いのに、でも朝起きてお漏らしを発見した時のママの怒りの雷の方がもっと恐いから、恐る恐るボクは、部屋を出てトイレに向かった。
「ガタン!」
すると、何やら一階の玄関の方から音がした。それはもう極限状態だったけど、人間はなぜかこう言う時に限って、その元を確かめるって行動に出ちゃうから仕方ない。恐る恐る階段を下りて行くと、それに比例して玄関に人影が浮かんで来る。
「ピカッ!!」
ボクが、誰だ!って叫ぶ直前に稲光が答えを教えてくれた。玄関に立っていたのは、ママだった。レインコート姿で右手に包丁、左手に女性らしき生首を髪の毛で持つママだった。これは夢?何してるのママ?とボクが問い質そうとしようとした時。
「何してるの?」
先にママから問い質された。
「目が覚めたらトイレに行きたくなって。」
「そう、なら早く行って来なさい。」
「うん。」
何だかこれ以上、この場で何かを聞ける雰囲気でもなくなったから、ボクは階段を上り、トイレに行った。オシッコを済ませて部屋に戻る前にもう一度、玄関を見に行ったけど、そこにはママの姿はなかった。きっと寝惚けて幻でも見てたんだろう。でなきゃ、ボクのママは殺人者って事になっちゃう。さあ、もう寝よう。こんな日は、寝てしまおう。
「ピカッ!!」
稲光で一瞬、ママが立ってた両サイドの床に赤い液体が見えたような気もしたけど、何よりも眠かったボクは、部屋に戻ってベッドに入って、寝た。そして、朝が訪れた。
「ママ?」
「何?」
ボクとママは向かい合って、いつものようにいつもの時間に朝食を食べてた。でも、どうしても夜中の出来事が気になって気になってボクは、口を開いた。
「物凄い嵐だったね。」
「そうね。」
「今日はこんなに晴れてて、まるでウソみたいだね。」
「そうね。」
「そう言えばね。ボク、夜中に物凄い雷鳴で目を覚ましちゃったんだ。」
「そうみたいね。」
ママのこの反応、やっぱり夜中の出来事は、寝惚けて幻を見てた訳じゃないんだ。
「それでね。その時、物凄くオシッコがしたくなったからトイレに行く事にしたんだ。」
「そうみたいね。」
「でね?その時、玄関の方から物音がしたからボク、見に行ったんだ。」
「そうよね。」
「ねぇ?ママ?」
「何?」
「ママは、殺人者?」
遂に聞いてしまった。もう、後戻りは出来ない。でも、きっとこのモヤモヤを胸にしまい込んで、この先の人生を生きて行くなんてボクには出来ない。何か理由があるはずだ。あの状況を納得させてくれる何か特別な理由があるはずなんだ。ママが、ボクのママが特別な理由もなく殺人者になる訳がないんだ。
「そうよ。ママは、殺人者よ。」
「何で!何でママは、殺人者なの!もしかして、あの女性はこの家に来た強盗なの?それをママが返り討ちにしてくれたの?」
「違うわ。あの女は、町の薬局で働いてる薬剤師よ。」
はっ!?確かに、言われてみればそうだ!?生首を思い出す作業なんかしたくもないけど、確かにママの言う通りだ!あの顔は、薬剤師の女性だ!
「ど、どうして!あの人、凄く優しい人じゃないか!」
「でもね。買い物をしてレジでもたつくママに対して、舌打ちをしたの。許せないでしょ?」
「・・・・・・ママ。」

第五百六十七話
「母98歳、息子77歳」

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2017年4月19日 (水)

「第五百六十六話」

 俺の目の前には、アイスコーヒーがあり、灰皿があり、水があり、伝票がある。そう、ここは喫茶店。なぜ、俺が喫茶店にいるのか?これから大事な商談があるからか?これから超大作を創作するからか?これからプロポーズするからか?いいや、どれも違う。俺が喫茶店にいる理由は、暇だからだ。暇で暇でしょうがないからだ。ただただ暇だからだ。とりあえず喫茶店に入ってアイスコーヒーでも飲んで時間を潰そうか感覚だ。だが、ただこうしてアイスコーヒーを飲んでるだけじゃ、暇は潰れない。暇は、そう簡単には潰せない。なら、どうするか?大事な商談をしようにも相手がいないし、そもそも商談そのものがない。なら、どうするか?超大作を創作しようにもそんな特筆した想像力を持ち合わせてない。なら、どうするか?プロポーズしようにも今日は指輪を持ってない。なら、どうするか?こう言った暇を潰すなら、妄想が一番だ。お金も掛からなければ、他人に迷惑を掛ける事もない。人間が出来る最大級の暇潰しだ。
「・・・・・・。」
さてと、妄想するって事にしたが、一体どう妄想しようか?例えば、この喫茶店に巨大なドラゴンが飛来したらどうだ?ドラゴンが天井を突き破り雄叫びを上げると、客達を次々に喰らい始める。逃げ惑う客達を長く太い尻尾で薙ぎ払い、天空に向かって火を吹いたかと思うと次の瞬間、俺はドラゴンと目が合う。このままでは、俺は喰い殺されるか焼き殺されるか尻尾で吹き飛ばされて殺されてしまう。他の客達には申し訳ないが、俺は死にたくない。なら、どうするか?この状況を打破するには、どうするか?
「・・・・・・。」
もちろん、答えは単純明快だ。お客様の中に、伝説の勇者がいれば大丈夫。それで安心。だがどうだ?店内を見渡しても店内はまさに地獄絵図状態で、とてもじゃないが伝説の勇者なんかいない。すると俺は、左側に気配を感じる。見るとそこには、メガネを掛けたジジイがレモンティーを飲んでる。見るからに伝説の勇者じゃないが、見る角度によっては、伝説の大魔法使いにも見えなくもない。これで俺は助かった。きっと、このジジイは、とんでもない大魔法でこのドラゴンを一撃で撃退してくれる。とんでもない大魔法でドラゴンを一撃出来るなら、なぜ店内がこんな地獄絵図になる前にやらないんだって怒りが湧いたが、今は伝説の大魔法使いに説教してる場合じゃない。さあ、何をしてる?とっととこのドラゴンを一撃で撃退してくれ!じゃないと俺がドラゴンに殺される。何を呑気にレモンティーを飲んでるんだ!って、俺がドラゴンから再び伝説の大魔法使いに顔を向けると同時にドラゴンも顔を向け、伝説の大魔法使いの頭にかぶり付いた。俺が次に見たのは、胸から下しか無い伝説の大魔法使いの姿だった。
「あのう?」
「はい。」
「伝説の大魔法使いですか?」
「違います。」
一旦、妄想の世界から現実の世界に戻り、隣のジジイに確認してみたが、隣のジジイは単なるジジイだった。俺は、隣のジジイ中のジジイを睨み付け、妄想の世界へ戻る事にした。
「・・・・・・。」
絶体絶命ってのは、きっとこう言う事なんだろう。俺が画家なら、絶体絶命ってタイトルで、きっとこの絵を描いてる。ドラゴンが天空に雄叫びを上げる。ああ、これで俺の人生も終わった。もっといろいろやりたかったが、これで俺の人生も終わりだ。大事な商談や超大作の創作やプロポーズとかやりたかったが、運命ってヤツは非情だ。
「・・・・・・・。」
死を覚悟して目を閉じた俺の耳に入って来た言葉は、意外なもんだった。

第五百六十六話
「ウチのドラゴンが大変申し訳ございません」

 目を開けると顔面蒼白のオバサンが、俺の目の前に立っていた。そして、深々とエプロン姿で頭を下げると、ドラゴンをペチペチ叩きながら、フライ返しでペチペチ叩きながら、ドラゴンに小言を言いながら、何度も何度も深々と頭を下げながら、ドラゴンの背に乗って喫茶店を出て行った。俺は、飲みかけのアイスコーヒーを一気に飲み干し、伝票を手に取り、隣のジジイの頭をひっぱたくフリをして、隣のジジイを睨み付けながら、レジへと向かった。

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