2006年6月21日 (水)

「第一話」

 春休みを目前としたある晴れた日の朝の事。いつものように僕が目覚めると部屋には、黒いタキシードにシルクハット姿でステッキを持ったおじさんがステップを踏んでいた。僕は、その異様にリズミカルな音に起こされたのだった。寝ぼけ眼を擦りながら、この非現実的な出来事をどうにか受け入れようと、立ち向かう決意をした。そして、このおじさんを何とかしてお父さんだと思おうとした。でも、正直無理だった。お父さんだと思えば思うほど、お父さんを嫌いになっていく自分が嫌いになっていくのが分かったからだ。
「おじさん・・・・・・誰?」
僕は、勇気を出してファーストコンタクトを試みた。
「おじさんは、おばさんなんだよ。」
えっ!?どっからどう見てもおじさんじゃん!なぜ嘘をつく?てか何だか曖昧な言い回しだなぁ。おじさんなの?おばさんなの?いやいや
「おじさんでしょ?」
振り返った!?さも、自分じゃありませんよ。何処におじさん何ているの?ってな具合でキョロキョロしてる!しょうがない。おじさんの言ってる事に合わせるか・・・・・・・・・。
「おばさん?」
振り返った!さも、自分じゃありませんよ。何処におばさん何ているの?ってな具合でキョロキョロしてる!ってどっちだよ!
「おじさん?」
「ん?」
見た!今度は、こっちをしっかりと見た!あまりにしっかり見すぎて顔がプルプルしてる!本当に何なんだよこの人。
「どうして僕の部屋にいるの?」
「それを聞いてどうするんだ?」
聞くでしょ。普通聞くでしょ。話の取っ掛かりとしてまず聞くでしょ。
「不自然だ。」
あんただよ!むしろあんたの存在の方がだよ!
「僕に何か用ですか?」
「ワッハッハッハッハッ。ワーッハッハッハッ!」
笑った!?本域で笑った!?これが大人笑いかぁ。って関心している場合じゃない。横に揺れだしたし、涙流し出したし、声裏返り始めたし、そして疲れてステッキにもたれ掛かって休憩してるし!
「用があるから来たんじゃないか。ボーイ。」
確かにボーイですけども、小学五年生ですけども、もうすぐ六年生ですけども、なんかムカツク!なんだかイラッとする!
「用って?」
「ないっちゃぁない!」
あるっちゃぁあるんかい!むしろこっちを使えよ!あぁ、なんかだんだん面倒臭くなってきた。
「帰って下さい。」
「ボーイ。ボーイに一つ聞きたい事がある。」
無視か!
「ボーイには、夢があるかい?」
「えっ!?」
何だよ突然真面目な顔付きになって。
「おじ・・・・・・。」
やっぱおじさんじゃん。
「いや、ジェントルマンにはね。」
いいよ言い直さなくって。それっぽいカッコしてますけど、あんまいないよ。自分の事を自分でジェントルマンって言う人。
「夢があったんだよ。」
いいよ別に。聞きたくないですよ。
「ボーイは、知ってるかなぁ。ペイロット。」
パイロットでしょ。
「いいぞ。ペイロットっていうのは。」
パイロットね。
「大空をさぁ。バーン!と、男の夢と浪漫を持って行くんだよ。」
パイロットじゃん。
「そいで言うんだよなぁ。アテンションプリーズってさ。」
スチュワーデスだ。そいつぁ、スチュワーデスだ。まてよ?もしかしたらこの人の中では、スチュワーデス=ペイロットなのかなぁ?だからあんなにペイロット、ペイロットって連呼してたのかなぁ?きっとそうだ!そうに違いない!
「あっ!パイロットか!」
違うんかい!!単なる言い間違いかい!少しでもおじさんよりに思考した自分の脳が憎い!
「おっと、ジェントルメンばっかり語ってしまっていたね。」
複数形!?どっからどう見ても一人なんですけど?光の屈折やら、その他諸々を利用したところで、やっぱり僕には、一人にしか見えないんですけど?
「ボーイの将来の夢は何なんだい?」
僕?こう聞かれると何だか恥ずかしいなぁ。
「・・・・・・・・・学者。」
「えっ?」
聞いてろよ!どんだけ距離あんだよ!両耳に手を当てる事かよ!
「学者!」
「えっ!」
聞こえんだろこの距離なら!どんだけ金持ちなんだよ僕の家!そんなに広かないよ。四畳半だよ。
「が・く・しゃ!」
「ペイロット?」
違う!
「違うよ。学者さん。」
「よ学者さん?」
どこ切っちゃってんだよ。誰だよそいつ!わざとだな。わざとやってんだな。
「そうそう。よ学者です。よ学者さん。」
「ジェントルマンもボーイの時代には、よ学者さんを夢見たものだよ。」
いるんだ!?そんな学者さんがいるんだ。名前のニュアンス的に中国とかあっちの方の人なのかなぁ?余とか於とか書くのかなぁ?だいぶ昔の人っぽい感じはしますね。
「学者かぁ。」
がっかりだよ。深読みしてがっかりだよ。考えに費やした僕の時間をどうか返して下さい。
「本当にもう帰って下さい。」
「やだ!」
子供かよ。
「警察呼ぶよ。」
「やだ!」
子供かよ!プイって!ジェントルマンがやる事じゃないでしょ。子供っつうか乙女かよ!
「乙女じゃない!」
何で会話出来ちゃうんだよ!テレパシー?超能力者なの?
「乙女じゃない!」
偶然かい!適当かい!
「時にボーイ。」
「はい?」
「冒険は、好きかな?」
「冒険?」
何だよ唐突だなぁ。話の展開が分からないよ。
「そうだ。大冒険だ。」
微妙にタッチが変わったじゃん。ほんの一、二秒で世界規模になっちゃったよ?
「した事ないから分からないよ。」
「ジェントルマンもだ。」
何なのこれ?何の問い掛けだったの?この人は、何がしたいの?
「あれは、ジェントルマンがジャングルに行った時だったかなぁ・・・・・・。」
した事ないんじゃないの?天井見ながら回想に入ろうとしてるけど大丈夫なの?
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
話さないんかい!何も話さないんかい!
「プッ。」
笑った!何かを思い出して笑ってる!いやだからジャングルの話をしろよ!
「あのシミ顔みたい。」
それかよ!笑った理由それかよ!しかもさらりと嫌な事に気付いてくれたなぁ。今夜寝る時、気になって恐くて寝れないじゃん!トイレ行けないじゃん!そいでジャングルなしかい!話さないんかい!何なのこの人?物凄く疲れるんですけど。
「僕これから学校行くんで帰って下さい。用も無いみたいだし。」
「怒るな!!」
怒られた!?
「怒ってないですよ。」
ってそっちかい。天井のシミの方ね。僕かと思いましたと。って何それ?しゃべるのそのシミは?で、さっき笑ったの、もしやにらめっこだったの?そのシミとにらめっこしてたんですか?朝の段階でそれだったら夜中は、動きだしちゃうんじゃないの?大丈夫なの?
「大丈夫だ!」
だから何で会話が出来ちゃうんだよ。よし!試してみよう。おじさん!後ろに包丁を持っておじさんを刺そうとしてる男の人が立ってるよ!
「大丈夫だ!」
今にも襲い掛かろうと包丁を振り上げたよ!
「大丈夫だ!」
刺されたよ!
「大丈夫だ!」
んな事あるかぁ!!
「大丈夫だ!」
もはや口癖かい!単なる口癖なんかい!
「時にボーイ。」
二度目。
「小腹が空いたな。」
知るかよ!じゃあとっとと帰れよ!自分の家に。
「今日のブレイクファーストは、何かなぁ。」
ブレックファーストね。何か最初の休憩OR最初に壊れたみたいになっちゃってるよ。
「ブロークンファーストは、何かなぁ。」
壊れたよ?何か壊れちゃったよ?いいの?
「楽しみだなぁボーイ。」
何そのギラギラした眼差しは?家!?さっきっから僕の家の朝ご飯の事を言ってたわけ?お断りだよ。こんなわけの分からない人、お断りだよ。
「時にボーイ。」
三度目。
「おじ・・・ジェントルマンは・・・・・・。」
いいよ言い直さなくったって。気にしてるのあんただけだよ。
「そろそろ帰ろうかな。」
待ってましたよ。万々歳だよ。いつもならとっくに顔洗って、歯を磨いて、朝ご飯の並んだテーブルについている時間だよ。
「バハァイ。」
軽いなぁ。のりが軽い。
「ガチャッ。」
「バタン。」
やっと帰った。一安心とかホッとしたって、この事を言うんだな。うん。
「ガチャッ。」
「シルクハットがなんちゃらって言ってたろ。」
言ってねぇよ!てか戻ってくんなよ!で!何で白いタキシードに着替えてんの?もうわけが分からないよ!いい加減にしてよ!!

「ジリリリリリリ!!」
夢!?
「リリリリリリリ!!」
夢だ!
「リリリカチッ!」
夢だったんだ。とても嫌な夢だったなぁ。よし!顔でも洗ってスッキリしよ!
「!!」
「時にボーイ。」
「おじさん!?」

第一話
「少年とジェントルマン」

| | コメント (8) | トラックバック (1)

2006年6月28日 (水)

「第二話」

「ん!?んん!?んんんん!?んぬ!んぬ!んぬぬ!むむむ!?むむむむ!?むむむむむむむ!?むぅぅぅぅぅ!!ふんっ!ふんっ!ふんっ!ぬんっ!ぬんっ!ぬんっ!ぬぅぅぅぅぅぅぅうぉぉぉぉぉぉ!!くくくくくく!!はいぃぃぃぃぃ!はいっ!はいっ!はいっ!はいっ!はいぃぃぃぃぃ!どぉりゃぁぁぁぁ!!ん!ん!ん!ん!んんんん!はぁぁぁぁぁ!!ふんっ!ふふんっ!ふふんっ!ぐうぉぉぉぉぉぉ!ぐうぉっ!!うんぐ!うんぐ!うんぐ!うぅぅぅぅぅぅんぐぅぅぅぅぅぅぅ!!うぐっ!うぐっ!うぐっ!うぐぐぐ!うぐぐぐぐ!うぐぐぐぐぐぐぐぐ!!はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。おし!!ふんりゃぁぁ!きっ!きっ!ききっ!!うぅぅぅぅぅんっ!!はぐぅ!はぎゃっ!!ふんにゅっっっ!!ちっちっ!ほりゃぁぁぁ!あぁぁぁぁ!いぃぃぃぃ!うぅぅぅぅぅ!えいっ!!えいっ!!えいっ!えいえいっ!!おぉぉぉぉ!なんぐっ!なんぐっ!ぎゅるるぅぅぅぅ!ちょい!ちょちょい!ちょちょちょい!ほいちょい!はうぅぅぅぅぅ!!おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!どぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ふぐっ!!ふぐっ!へげぇぇぇぇぇぇ!ほげぇぇぇぇぇぇ!!はぅ!はぅ!はぅ!にょほ!にょほほ!にょほほほ!にょほほほほほほほほほほ!!はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。むぎぎぎぎぎぎ!!くそっ!くそっ!くっっっっっそぉぉぉぉぉぉ!!こんにゃろっ!!こんにゃろぉぉぉぉ!こぉぉぉんにゃろぉぉぉぉ!!でぇぇぇいっっっ!ちくしょっ!ちくしょっ!ちくしょっ!ちくしょぉぉ!ちっっっくしょぉぉぉ!なんでだ!なんでだ!なんでだ!なんでだ!なぁぁぁぁんでなんだぁぁぁぁよ!どぉぉぉぉしてなんだぁぁぁぁよ!;なぜなんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!のぉぉぉぉぉぉぉぉ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くっそやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!まけてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!どすこいっ!どすこいっ!どすこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。うし!どっせぇぇぇぇぇいっ!!ふんぐ!ふんぐ!ふんぐぐぐぐ!!ていっ!ていっ!はいぃぃぃぃぃぃ!!せいっ!せいっ!せいっ!なぁぁぁぁぁ!ぬうぉぉぉぉぉ!かぁぁぁぁぁ!とりゃぁぁぁぁぁぁぁ!へやっぁぁぁぁ!おりゃっぁぁぁぁ!こりゃっぁぁぁぁぁ!そりゃっ!!こなくぅぅぅぅぅぅそぉぉぉぉぉぉ!いぃぃぃぃぃっっっっけぇぇぇぇぇ!!これでもか!これでもか!!こぉぉぉぉぉぉれぇぇぇぇぇぇでぇぇぇぇぇもぉぉぉぉぉぉぉかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ぬぅぅぅぅぅぅおぉぉぉぉぉぉ!!おぉぉぉぉぉぉけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!ばっかやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!もぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、げほっ、げほっ、げほっ、げほっ、げほっ、げほっ、おえぇぇぇぇぇぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。こぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!ひゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっいぃぃぃぃぃ!!」

「パチン!!」

第二話
「割り箸を割る男!!」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月 5日 (水)

「第三話」

 推理小説や推理ドラマなんかでよくあるだろ?クライマックスシーンで洋館の大広間みたいな所に生き残った奴等を集めて、探偵が犯人を当てるってのが。まさに今がそれだよ。で、この事件の犯人は俺だ。華麗でパーフェクトでアーティスティックなマーダー・ショーの真犯人は俺だよ。さぁ、探偵さん。犯人を暴いてみやがれ!!
「この事件の犯人は・・・・・・・・・あなたです!!」
「!?」
この馬鹿野郎、俺の隣にいる奴を指差しやがった。とんだ迷探偵だぜ。この呑気に鼻ほじくってる奴が犯人だって?笑っちまうぜ。今だって、自分が言われてるなんて気付きもせず鼻ほじくってやがる。点と線で描けるような面しやがってよ。おいおい早く気付いてやれよ。迷探偵さんの右腕がプルップルプルップル震えてんじゃねぇか。
「この事件の犯人は・・・・・・・・・あなたです!!」
「!?」
言い直したぞおい!って鼻糞を食ってる場合じゃないんじゃないの?お前が疑われてんだぞ?ほら、また迷探偵さんの右腕がプルップルプルップル震えてんじゃねぇか。
「!!」
あっ!気が付いた!って、酸っぱかったのかよ!酸っぱかったのかよ!どんな鼻糞だ!!
「この事件の犯人は・・・・・・・・・あなたです!!」
お前もお前で別の言い方があんだろ?回りもいちいちさも初めて聞いたかのようなリアクションしてんじゃねぇよ。鼻糞もういいんじゃねぇか?そんなに収穫出来るもんじゃねぇと思うぞ。迷探偵さんの左腕がプルップルプルップル震えてっぞ。
「!!」
あっ!気が付いた!って、頭が痛くなったのかよ!頭が痛くなったのかよ!どんだけキーンと冷えてんだ?その鼻糞は!お前の鼻の穴の中がすげーよ。
「あなたは、まず」
お前が鼻糞に夢中になってっから、迷探偵がついに無視して事件の全貌を話し始めちゃったぞ。
「最初の被害者でありますこの洋館のオーナー。彼は、事故死です!」
「!?」
待ておい!殺したぞ!俺は、ちゃんと殺したぞ!第一の殺人としてド派手に演出したぞ。ほら、この大広間にあるどデカイ絵画に貼り付けといたじゃねぇか。どんだけ不自然な事故死なんだよ!
「でも探偵さん?そうすると、あの手紙は、いったい何だったんですか?」
よし!メイドA。なかなかナイスな質問をした。あれは、第二の殺人への布石とも言える、渾身の犯行予告文だ。これから始まるマー
「ダイイングメッセージです。」
おい!!手紙二通にダイイングメッセージ書く奴がどこにいんだよ!つーかおめぇ事故死って言わなかったか?だからあれは、これから始まるマーダー・シ
「なるほど。」
なるほどじゃねぇよメイドA!何納得してんだよ!お前は、もういいや。こんな時に掃除してねぇでメイドBもなんか気の利いた質問をこの迷探偵にぶつけてやれ。
「他に汚れている所はございますか?」
あぁ、確かに気の利いた一言だよ。意味がちげーんだよ!!意味が!
「そして次に起き」
話し進めてんじゃねぇよ迷探偵!不思議だらけだろこの空間。
「すいません!」
おっ!?どうした?偶然この洋館にやって来た意味あり気でまったく事件と関連性がなかった中年男。
「トイレ行ってきていいでしょうか?」
済ましてこいよな!大事な話があるって呼ばれて来たんだろ?どんだけ緊張感無いんだよ!
「そう言えば主人もあの時トイレへ。そして主人は・・・・・・うっ。」
いいとこに話し持ってくじゃねぇか。泣くな!二人目の被害者の妻。
「トイレが詰まって大変だったあれか!」
そうだよ警部。あれこそが時間差殺人だよ。お前に解けるか?迷探偵!
「皆さんは、勘違いをしています。」
何!?こいつ解けたのか?そうだよ。お前らが二人目の被害者だと思ってる男は、実は、三人目の被害者なんだよ。あの水漏れは、発見を早めるための仕掛けだよ。腐っても探偵、か。
「あれは、彼が近年稀にみるどデカイうんこをしたせいです。」
「まさか!!」
まさか!!じゃねぇだろ警部。んなわけねぇだろ!見たろ?頭部を殴られてたろ?頭から血が流れてたろ?この探偵、単なる馬鹿じゃねぇのか?
「しかし、彼は、頭部を殴られ死んでいたぞ?」
そうだよ警部。あんたの言う通りだよ。
「あれは・・・・・・・・・。」
どうした迷探偵?言葉が詰まってるぞ?
「ゲフッ。」
ゲップかよ!
「びっくりしたのです。自分があまりにどデカイうんこをした事に。」
はぁ?何言ってやがるんだこいつ?
「そして、ズッコケてしまったのです。その時、タンクに頭をぶつけた。」
「なるほど。そして、その拍子にレバーが回り、うんこが詰まったわけですな?」
「その通りです警部。つまり、彼は殺されたのではなく、結果自殺したのです!」
なんで自殺なんだよ!何だ結果自殺ってよ!これこそ事故死じゃねぇか!って、俺が殺したんだよ!
「探偵さん?」
どうした盲目の少女?お前の父親が真の第二の被害者なんだよ。自分の父親についての質問かい?
「そのうんこは、どのくらいのどデカさなんでしょうか?」
どこに興味抱いてんだよ!
「このくらいです。」
説明してんじゃねぇよ迷探偵!両手で大きさ表現したって、こいつには見えねぇんだよ。
「私は、これくらいだと思います。」
見えてんだろ!お前、見えてんだろ!目、見えてんだろ!
「皆さん!いい加減にして下さい!!」
そうだ怒れ!!怒るんだ妻!自分の旦那が馬鹿にされてるんだぞ!
「わたくしの主人です!これぐらいのうんこは、するはずです!」
おい!!何を張り合ってんだよ!!だいたいさっきっからお前ら、うんこ、うんこってうるせぇよ!いったい何の集まりだこれは!そんな話をするために集まったのか?
「僕のは、これくらい!」
聞いてねぇよ鼻糞野郎!!見せんじゃねぇよ!
「まぁまぁ皆さん。うんこの話は、これぐらいにしといて。」
てめぇが言い出しっぺだろうが!くそ迷探偵!
「その後二人殺されて、最後に殺害されたのが、この洋館の前の持ち主です。」
何省略しちゃってんだよ!何か、なかったみたいになってねぇか?面倒臭いのか?ちゃんと謎解きしろよ!四人目の被害者の二重密室殺人の謎解きしろよ!あれはなぁ
「彼女は、寿命です!」
元も子もねぇ事言ってんじゃねぇよ!確かにベッドで眠るように死んでたけどよ。毒だよ毒!あのばばぁは、毒殺してやったんだよ。この迷探偵、思い付きで喋ってんじゃねぇか?
「つまりです。この洋館で起きた数々の連続した死は、殺人ではないのです。全てが偶然に引き起こされたものだったのです!」
おいこら!何をもっともらしく力説してんだ?勝手に幕を下ろそうとしてんじゃねぇよ!だったら何で最初に鼻糞野郎を犯人扱いしたんだよ!
「よかった。」
待てメイドA。納得してんじゃねぇよ!
「一件落着ですな。」
一件落着ですな。じゃねぇよ警部!ちょっと待てよ!こいつは、省略しやがったが三人目の被害者、本当は、二人目の被害者なんだけどな。そいつは、バラバラに体を切断されてたんだぞ?誰がどう見たって殺人だろ!
「ホッとしました。」
待て妻!お前の旦那、うんこで自殺した事にされてんだぞ?いいのか?あんたそれでいいのか?
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
今だに、うんこの大きさを両手で表現しながら考えてんじゃねぇよ少女!
「もう、トイレに行ってきてもいいでしょうか?」
行け!お前は行ってこい!で、戻ってくんな!
「他に汚れている所は、ございますか?」
してろ!お前は、ずーっとお掃除やってろメイドB!このひろーい洋館の隅々までやってろ!で、てめぇは、そうやって一生鼻糞をほじって自給自足してろ!
「それでは皆さん。」
待てよおい!帰るんじゃないだろうな?
「帰りましょうか。」
待て迷探偵!待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て
「待て!!」
「ん?どうしました?この洋館のオーナーの息子さん。」
「俺だよ!」
「何がですか?」
「五人を殺したのは、この俺だよ!!」
「何を言い出すのです。」
「だから!この洋館で起きた連続殺人の真犯人は、俺だって事だよ!分かったか迷探偵!!」
「そのお言葉頂戴しましたよ。」
「!?」
「あなたは、とてもプライドの高い人。無視される事がなによりもの屈辱。プライドが傷付けられる。だから、自分から自供して頂くため、ここにいる皆さんにお芝居を演じてもらったのです!」
「何だって!?」
「以上です警部。」
「いやぁ、いつもながらお見事だったよ。」
「偶然ですよ。単なる偶然です。皆さんもご協力ありがとうございました。」
「・・・・・・やられた・・・・・・。」

第三話
「名探偵」

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年7月12日 (水)

「第四話」

 このラブホテルの屋上がベストポジションと決めてから三時間が経過し、やっとターゲットが現れた。今回のターゲットは、あのオープンカフェのオープンプレイスで優雅にコーヒーを堪能している老紳士だ。なんでも国家機密を保持しているらしいのだが、私には、まったく関係の無い事だ。依頼人の理由とターゲットの原因には干渉しない。それが私のルールだ。もう、トラブルに巻き込まれるのは、ごめんだ。約束の報酬が頂ければそれでいい。完璧にターゲットの息の根を止める。それがヒットマンとしての私の仕事だ。
「あいつ、またコーヒーのおかわりをしたぜ。」
さて、この男はいったい何者なのだ?
「あーあ、あんなに砂糖を入れちまって、あれじゃあ、コーヒーがまずくなっちまうよ。あそこのコーヒー飲んだ事あるかい?美味いんだぜ。今度飲んでみなよ。あっ!見てみなよ。また、カップの中に入れ歯を落としてるぜ。でもって、またバッグからスペアーの入れ歯を出して装着して、そんでもってまたコーヒーのおかわりを頼んでるよ。あのじいさん、いったいいつになったらコーヒーを飲むんだ?そもそも、コーヒーを飲むだけなら入れ歯を装着する必要ないんじゃないか?まったく、何しに来たんだか?」
それは私も同感だ。と同時に私の中では、君も同等だよ。いったい君は、ここに何をしに来たのだ?ライフルを持ち、うつ伏せになり、スコープから老紳士を見ている。これではまるで君もヒットマンで、彼を狙っているみたいではないか。三時間前から気さくに話し掛けてくれてはいるが・・・・・・・・・仕方ない。いつまでも無視をしているわけにはいかなくなってきたようだな。もしも、この男のターゲットと私のターゲットが同じだとしたら・・・・・・・・・。
「君に尋ねたい事があるのだが?」
「んっ?やっと口を開いてくれたようだな。」
「君は、ここで何をしているのだ?」
「見れば分かるだろ?殺し・・・・・・・・・だよ。」
やはり・・・・・・・・・。
「あんたは?デートの待ち合わせってわけでもなさそうだけど?」
「君のターゲットは、誰なんだね?」
「おっとっとっと。それは、言えないね。守秘義務ってもんがあってさ。あんたが先に言ってくれたら言ってもいいけど?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
やはり、ターゲットはあの老紳士か。
「ほらな。あんたも言えないだろ?まあ、あれだよ。そんなに考えたってしょうがないさ。時間が来ればいずれ分かる事なんだし、それまで楽しくやろうよ。相棒みたいなもんなんだからさ。」
相棒だと?ふざけるな!私は、今まで一人で依頼をこなしてきた。これからだってそうだ。
「あっ!見てみなよ。あのじいさん、横を通った美女に話し掛けてるぜ。素通りされてやんの。そりゃそうだ。あっ!くしゃみで入れ歯が飛んで女のお尻に噛み付いた!あーあ、そりゃ殴られるよ。何考えてんだか?」
それは君の事だ。いったい何を考えている?
「あんたはこの仕事、何年やってるんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「また、だんまりかい?どうせもう二度と会う事は無いんだし、記念に少しお喋りしたって、罰は当たらないだろ?」
「五十年だ。」
「こいつはたまげた。」
「物心ついた時からこの仕事をしている。」
「じゃあ、もしかして、殺し屋一家ってやつかい?」
「そうだ。」
「俺なんてまだまだ、これだけだよ。」
「そうか、十年か。」
まあ、ヒットマンとしては、これからって時だな。
「一年だよ。」
何!?一年だと!?ルーキーじゃないか!
「いったいあのじいさんは、あそこで何をしているの・・・・・・・・・か?」
突然何を言い出すのだ?
「誰かを待っているのか?ただ、午後のひとときをコーヒーで満喫しているだけなのか?それとも、もっと大きな何かを秘めているのか?」
「なぜそんな事を聞くのだね?」
「暇つぶしだよ。そこに意味なんて無いさ。ふと、思っただけだよ。」
「私は、あんまり他人の人生には興味が無い。彼が何をしてきて、何をして、何をするかなど、あまりにも関係の無い事だ。」
「なるほどね。だったら俺の考えを聞いてくれよ。いったいあのじいさんは、あそこで何をしているの・・・・・・・・・か?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
何が可笑しい?なぜ私を見て笑う?
「・・・・・・・・・きっと誰かに殺されるのを待っている。」
これで決まりだな。このルーキーのターゲットもあの老紳士のようだ。
「なんてね。」
今更わざとらしく惚けても無駄だよ。
「そうかもしれんな。」
「ん?興味無かったんじゃないの?」
馬鹿にしているのか?
「人に命を狙われてるのは、どんな気持ちか考えた事があるかね?」
「さあね。場合によるさ。特に俺らみたいな奴に狙われてたら、それに気付く事なんて無いと思うね。ほら、あのじいさんのように。」
若いな。人は、命をターゲットされた時。無意識にシグナルを発するのだよ。私は、何度も経験がある。引き金を引く瞬間、スコープを覗く私の目とターゲットの目が合う時が・・・・・・・・・気付くものなのだよ。人は・・・・・・・・・。
「さあ、もう無駄話は終わりにしよう。帰って美味しいコーヒーが飲みたくなってきたよ。」
「あのじいさんをあんたに殺させるわけには、いかないんだよね。」
「何!?」
「知ってるかい?依頼人は、直接ターゲットを始末した人間だけに報酬を支払うって?」
なるほど。ここにヒットマンが二人。そして、ターゲットが一人。私と君の勝負って事か。
「ギャンブルは、あんまり得意ではないのだが、嫌いではない。」
「何言ってんだか?この仕事自体がギャンブルみたいなもんじゃないか。」
「そうかもしれんな。」
「まあ、勝負はすでに決まってるけど。」
「ほほう、ずいぶんと自信があるようだな。」
「自信?確信だよ。」
若いな。だが、その心意気は立派だ。しかし、若いからこそ必要な時があるのだよ。敗北が・・・・・・・・・。
「そろそろ決めようじゃないか。」
「カチャッ。」
「決めよう?決まってるって言ってるだろ?」
「カチャッ。」
初めてだな。スコープを覗く人間の横でスコープを覗き、ターゲットを狙うのは・・・・・・・・・。
「あれは!?」
「気付いたかい?」
「ああ、あの円盤は、いったい何なのだね?」
「ありゃ、UFOだ。」
なんと!?あれがUFOなのか!実際、この目で見るのは初めてだが、随分と小さいものなのだな。蝶ぐらいの大きさと言ったところか。
「あのじいさん、まったく気付いてないぜ。」
老紳士の頭の上をクルクル回っている。その回り方は、実に不規則だ。何かしてるようにも見えるのだが・・・・・・・・・。
「あれはいったい!?」
何なのだ?老紳士の頭の上に、摩訶不思議な模様が作り出されたではないか!
「ミステリーサークルだよ。髪の毛でミステリーサークルを作ったんだ。」
あれがミステリーサークル!聞いた事はあったが、これまた見るのは初めての事だ。
「なあ、UFOの窓を見てみなよ。」
振っている!?全身灰色の大きな目の宇宙人?が二人で手を振っている!我々になのか?あっ!?
「行っちまった。」
「ああ、行ってしまったみたいだな。」
老紳士よ。優雅にコーヒーの香りを堪能している場合ではないぞ。凄い事になってしまっているのだぞ?自分の頭のてっぺんが!
「なあ、あのじいさんって双子だったか?」
「そんな話は、聞いていない。どうしたのだ?」
「だったら、じいさんの後に立っている、じいさんそっくりのあのじいさんは、誰なんだ?」
いつの間に!?本当にそっくりだ。しかし、無表情でどことなく生気を感じられない。何者だ?まさか!?新手のヒットマンか?
「あれってまさか!」
「知っているのか?」
「ドッペルゲンガー!」
ドッペ・・・・・・・・・?ドッペン・・・・・・・・・?なに?
「何だって?」
「ドッペルゲンガーだよ。もう一人の自分だよ。自分の死期が迫っていると姿を現すって言われてる現象だよ。」
「つまり何だと言うのだね?」
「簡単に言うと出会ったら死ぬ!あのじいさんが、もし振り向いてあいつと対面した時、あのじいさんは死ぬ!!」
そう言えば、そんな現象を聞いた事がある。我々に命を狙われているからこそ出て来たのか?いずれにせよまずい。老紳士よ。絶対に振り向いてはいけな・・・・・・・・・ん?ドッペルゲンガーが床に置いてある老紳士のバッグをあさり出し、スペアーの入れ歯を取り出して装着した!帰るのか?帰ってしまうのか?そうか、帰るのだな。いったい何をしに来たのだ!
「どうやら、あれを取りに来ただけのようだぜ。」
「そのようだな。」
まあ、何はともあれ一安心だ。何!!!
「な、何だあれは!?」
「えっ?」
「頭上を見たまえ!」
「おいおいおい。宇宙人、ドッペルゲンガーの次は、黒いマントに大きな鎌を持ったガイコツかよ!」
「いいのだな?あれはあれでいいのだな?」
「いいんじゃないか?あれは、誰がどう見たってあれだろ?」
死神!どうなっているのだ?お迎えか?それとも我々に殺される老紳士を待っているのか?しかし、老紳士を自ら迎えに来たと言うのならば・・・・・・・・・。まずい!これでは、私が直接殺す事にはならないではないか。
「おいおいおい!鎌を大きく振りかぶったぞ!!」
殺す気だな!死神に手柄を譲るほど、私は若くはない!どうやら!
「今のようだな!」
「ターン!ターン!」
「待ってました。」
同時?いや、私の方が幾分早かったようだな。ん?死神がいない。どうやら、諦めて帰ってしまったようだ。
「ピューン!」
「ピューン!」
「カンッ!」
「ヒュンッ!」
ん?なに!?ルーキーの弾と私の弾がぶつかった!!ぶつかった?ぶつけたのか?私の弾がそれて壁に当たった。偶然なのか?これがもし必然ならば、私は、ルーキーをなめていた事になる。何にせよ次で分かる事だな。
「引き分けのようだな。しかし次は、今回のようにはいかないぞ。」
「引き分け?何言ってるんだ?俺の勝ちだよ。問題!あんたの弾は、壁。さて、俺の弾は、どこに行ったの・・・・・・・・・か?」
「何を言っ・・・・・・・・・!?」
血!?
「そう。あんたの眉間の奥深くだよ。真上の死神がお待ちかねだぜ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ば・・・・・・かな・・・・・・。はじ・・・・・・・・・めから・・・・・・このわた
「ガクッ。」
「任務完了・・・・・・・・・と。」
「ピロリロリロ、ピロリロリロ、ピロリロリロ。」
「ピッ。」
「はふほふほふひ。」
「入れ歯付けてくんないと何言ってるか分からないんですけど?」
「カポッ。」
「すまんすまん。ご苦労さん。これでわしも命を狙われながら、コーヒーを飲まずにすみそうじゃ。そうそう、約束の報酬だが、コーヒーの味を満喫した後で振り込んでおくとしよう。」
「よろしく。」
「ピッ。」

第四話
「ターゲット」

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年7月19日 (水)

「第五話」

雨降ってる。
でも
濡れない。
でも
傘ない。
宿るところも
大きな葉っぱもない。
でも
濡れない。
不思議?
不思議じゃないよ。
曇り?
曇りじゃないよ。
雨は
ちゃんと降ってる。
音は
ちゃんと聞こえる。
ざあざあ
ざあざあ
降ってる。
ざあざあ
ざあざあ
聞こえる。
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
と。
でも
濡れない。
でも
傘ない。
でも
濡れない。
でも
傘ない。
でも
濡れない。
不思議?
不思議じゃないよ。
偽り?
偽りじゃないよ。
空が
青くても
雲が
白くても
風が
淡くても
雨は
ちゃんと降ってる。
でも
濡れない。
夢?
夢なんかじゃないよ。
だって
ボクが
雨だから。
今日は
ボクが
雨だから。

第五話
「rainypain」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年7月26日 (水)

「第六話」

 いつもの夕方。窓から見えるいつもの町並み。
「ごはんよー。」
そして、いつものママの呼び声。
「はーい。」
いつものように私は答える。そして、調度やり終えたばかりの算数の宿題を机の中にしまい込み、急いで自分の部屋を出た。それから、今日の夕ご飯は何だろう?ってウキウキワクワクしながら階段を駆け下りて台所に向かった。
「今日のごはんは、なーにかなぁ?」
「ガチャッ。」
自然と出た喜びの言葉と同時に台所のドアを開けると、食卓には、パパ、ママ、お姉ちゃん、そして、熊。熊!?熊がいる!?なんで?どうして熊がいるの?しかも、大きい!本格的な熊がいる!なぜ?いつもなら私の横にお姉ちゃん、私の前にパパ、その横にママって感じで食卓を囲んでるはずなのに、私とお姉ちゃんの間に熊!?が座ってる。もしかして、夢?ヤダヤダ!もしこれが夢で、目の前にいる熊が嘘だったら、私が一生懸命やり終えた算数の宿題も嘘になっちゃう。そんなのダメダメ。
「何やってるの?早く座りなさい。」
「う、うん。」
ママ?どうしてそんなに普通でいられるの?ま、まあ、と、とりあえず座ろう。うん。せ、狭い!そりゃそうだよ。普通は、二人並んで座る幅なんだもん。熊がいたらこうなるよね。私、半分出てるもん。お姉ちゃんも半分出てるもん。
「よし。みんな揃ったな。それじゃあ、いただきます。」
「いただきます。」
「いただきます。」
みんなどうしてそんなに普通にしてられるの?
「い、いただ」
「ガォー!!」
「!!」
ほ、吠えた!吠えたよ。隣の大きな熊が吠えたよ。なに?いただきますって事?とてもじゃないけど怖くて横見れないよ。だ、大丈夫なんだよね?私、食べられないよね?いただきますって、私の事じゃないよね?
「パ、パパ?」
「何だ?」
「く、熊がいるよ?」
「あぁ、熊がいるな。」
ちょ、ちょっとそれだけ?おかわりしてないで聞いてよ。パパ、もっとゆっくり噛んで食べないと、消化に悪いよ。ってそんな心配してる場合じゃなかった。そしてママ、いつも思うけど、それは盛りすぎだよ。それじゃあ、昔話だよ。だったら始めからその量で出してあげれば?っていけないいけない、今はそんな事を考えてる場合じゃなかったよ。それよりも今は、このく
「ガォー!!」
「!!」
な、なになに?いったいどうしたの?あぁそっかぁ、熊もおかわりね。ってちょっと!!あんたちゃんと器用にお茶碗とお箸を使ったわけ?すごいよ!あんた、たいした熊だよ。ってなに感心してんのよ。だからママ、それじゃあ、盛りすぎだよ。
「ママ?」
「おかわり?」
いやいや、私は、そんなに食べれませんよ。育ち盛りと言えども、そんなに食べれませんよ。
「そうじゃなくって、熊だよ?」
「熊ね。」
ママー。違うよ。熊って事は、分かってるんだってば。鮭の骨を取ってる場合じゃないんだってば。
「おねえ・・・・・・・・・。」
み、見えない・・・・・・・・・。熊が邪魔でお姉ちゃんがまったく見えない。いるよね?そこにいるんだよね?食べられてないんだよね?
「ママ!私ピーマン嫌いだって言ってるじゃん!」
いたぁ。良かった。お姉ちゃん、ちゃんといたよ。
「好き嫌いするんじゃない。何でも食べなきゃ健康でいれないぞ。」
「いくらパパがそんな事言ったって、食べれない物は、食べれないの!」
うんうん。分かる。分かるよお姉ちゃん。だって私もピーマン苦手だもん。パパは、好きみたいだけどね。だって苦いんだもん。
「熊を見なさい。何でもモリモリ食べてるじゃないか。」
「熊と私を一緒にしないでよね!」
おかしい。おかしいよ今の会話。パパもお姉ちゃんもごく自然に熊を会話の中に織り交ぜてたよ。この熊いったい何者?そうだ!私は、重要な事に気付いてなかった。それは、この熊が本物なのかって事。さ、触ってみようかな?ここは、勇気を出して触ってみようかな?うん!触ってみよう!ゆーっくり、ゆーっくりと、熊に気付かれないように慎重に慎重にと。
「ツン。ツンツン。」
この感触は、間違いないよ。本物だ!
「!!」
気付かれてる!見てるよ。こっち見てるよ。私の事じっと見てるよ。どうしようどうしよう。ツンで止めときゃよかったんだよ。ツンツンいらなかったんだよ。行けるんじゃないか。ツンが出来たんだからツンツンまで行けるんじゃないかと思っちゃったのがいけなかったんだよ。先生も言ってたじゃん。調子に乗り過ぎるところがあるって。馬鹿私!私馬鹿!はっ!
「ググゥ。」
頭撫でたよ。この熊、私の頭を撫でてるよ。本当にいったいこの熊は、何なのよ!うん!ここは、真っ正面から聞いてみよう。先生も言ってた。疑問に思った事は、どんどん質問しなさい。聞く事よりも聞かない事の方が恥ずかしいって。頑張れ私!私頑張れ!
「パパ?この隣にいる大きな熊は、なに?」
「ああ、気付いたか。その熊は




「はぁ。」
二人の男が机を向かい合わせにして、黙々と執筆活動をしていた。
「どうしたんだいN氏?溜め息なんかついて。」
「P氏。何だか行き詰まっちゃったよ。」
「今回の話の事かい?設定に無理があったんじゃないのかい?」
「そんな事はないさ。何処にでもいるような家族。その日常の一家団らんの夕飯の食卓風景の中に熊がいる。発想としては、面白いじゃないか。」
「確かに面白いかもしれない。でも、それだけでは話が広がらないのではないかい?」
「途中までは、上手い事いってたんだよ。」
「オチがなかなか見つからないとか?」
「そう、そこなんだよ。重要なのは、オチなんだよ。ここまできて読んでる人間の発想の上をいくオチが考えつかないんだよ。」
「例えば今、頭の中に思い描いているオチを聞かせてくれないかい?」
「熊が一家を食べてごちそうさま。どう?」
「ちょっと、角度が急すぎないかい?展開的にも無理があると思うな。」
「一周回ってやっぱりこれは、夢でした。」
「この話に夢オチは、合わないよ。現実だから熊が引き立って面白さが出る。夢だったら何だか、がっかりしてしまうよ。」
「だよねぇ。うーん。P氏ならどうする?」
「そうだなぁ。僕なら熊に喋らすかな?」
「P氏っぽいね。」
「それなら、一家の方が熊の家に住み着いてた。ってオチはどうだい?」
「それも考えたんだけどさ。それこそP氏っぽくなっちゃうからボツにしたよ。あくまで僕的な作風で書きたいからさ。うーん。なんかない?」
「N氏らしさなら、次々に動物達がやって来るってのはどうだい?」
「なるほどね。来るって言ってもいろんな動物達じゃなくって、全部熊。いろんな種類のが来て、その熊達をいちいち女の子が詳しく説明する。」
「よさそうだね。」
「でもなぁ。図鑑とかで熊を調べないといけないし、意外と伝わりにくそうだなぁ。」
「N氏は、面倒臭がりだからね。駄目かぁ。」
「駄目だね。そもそも、それでいくとオチが中身に負けそうな気がする。」
「ありえるね。これ鮭って熊が獲ったの?」
「そう!さすがP氏!後々何かに使おうと思って布石で置いといたんだ。」
「じゃあ、設定もあったって事かい?お父さんと熊の出会いとか。」
「やるねP氏!一番最初は、お父さんが熊を拾って来た事にしようと思ったんだよ。それで、御礼に鮭をもらった。それが夕飯のおかずとして出された。」
「それいいと思うよ。」
「いまいちなんだよね。想像したら熊が捨ててあるなんて面白いんだけどね。読み手の頭の中に絵が浮かばないかなと思ってさ。」
「熊が体育座りでダンボールに窮屈そうに縮こまって入っている所とか。」
「ダンボールには、かわいがって下さい。人なつっこいです。なんて書いてあったりね。」
「熊出没注意!とかも書いてあったり。」
「うーん。想像するだけで面白いんだけどなぁ。」
「どうだいN氏。こうやって考えてるのも楽しいけど、この話の結末、そろそろ考えついたのでは?」
「結末ねぇ。結末、結末。結末かぁ。うーん・・・・・・・・・・・・あっ!これだ!よし!これで行こう!!」
男は、生き生きとした表情で、物語の結末を書き出した。

第六話
「第六話」 

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2006年8月 2日 (水)

「第七話」

 ここに、二人の男がいる。会話は、朝からなされている。晴天の中。
「ハンバーグ。」
「ハンバーグ?グ、グ、グ、グラタン!あっ!」
「おいおい。」
「強いなぁ。」
「俺が強いんじゃなくて、お前が弱いんだよ。今日まで俺に一度として勝ってないだろ。・・・・・・・・・あれ?だいぶ爪伸びてるなぁ。」
「えっ?」
「ほら。」
「本当だ。切れば?」
「そん時が来たら、そうするよ。」
「そうだなぁ。俺も髪の毛切りに行きたいしなぁ。あっ!そう言えば、花屋のさっちゃん。来月、結婚だってな。」
「ああ、知ってるよ。」
「お前、確かずっと好きだったよな。」
「・・・・・・・・・むかしな。」
「むかし?嘘つけ!今だって好きなくせに。」
「うっせぇ!」
「告白したのか?」
「・・・・・・・・・してない。」
「なーんだよ。してないのかよぉ。待ってたんじゃないの?さっちゃん。」
「まさか!?で、でたらめな事言うなよ。」
「でたらめ?でたらめじゃないよ。俺からしてみれば、何でお前とさっちゃんが結婚しないんだろうなぁ?って感じだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「奪っちゃう?」
「奪う?」
「式当日にさぁ、花嫁を奪うんだよ。今まさに!二人が誓いのキッスをする瞬間!お前がドアを勢いよく開けて、花嫁に駆け寄る!そして、腕を掴みドアの方へと走り出す!なんか古い映画のワンシーンみたいだけど、ロマンチックじゃない?で、二人が教会の外に出ると、車が用意されてんのよ。もちろん!運転手は、俺ね。」
「何でお前いんの?」
「いいじゃんいいじゃん。お前の人生のビッグイベントに参加したいじゃない。俺はねぇ、世界中の人々がお前ら二人の結婚を認めなくても、お前とさっちゃんの結婚を認める!神様が反対しても俺が賛成する!」
「たまに羨ましくなるよ。お前のその性格。」
「あはは。なっ!いいアイディアだろ?絶対上手くいくって!」
「式に間に合えばな。」
「そっかぁ・・・・・・・・・まっ!だけどあれだ。女は、星の数ほどいるって言うだろ?男ならあんまりくよくよするなよ。」
「してないっての!お前が頭の中で勝手にさせてるだけだろ!」
「あはは。わりぃわりぃ。しかし良かったなぁ。」
「何が?」
「えっ?ほら、晴れて良かったなぁって事。」
「ああ、天気な。」
「そうそう。だって雨とか風とか嫌じゃん。」
「まあな。」
「お天道様が拝める日が一番だよ。」
「お前は、百姓か?一昨日だったっけか?物凄い天気だったの。」
「ああ、あれは、凄まじかったよ。まるで、台風が二つ同時に上陸したみたいだったよ。この時期にだよ?まったく!困っちゃうってんだよ!」
「だから、百姓かって!それに、時期は関係ないだろ?時期は!確かにありえない天気だったけどな。」
「なあなあ。」
「ん?」
「もしかしてお前って今日、誕生日?」
「・・・・・・・・・そう言えば、今日は十七日?」
「そうだよ!」
「お前、よくそんな事を覚えてたなぁ。」
「あれからずっと数えてたからね。任せなさい。」
「お前に任せたらロクな事にならないのは、身を持って体験してるからな。遠慮しときます。」
「それを言うなって。今は、仲良く元気にやってるじゃないか。」
「・・・・・・・・・やれやれ。」
「おめでとう!」
「いいよ別に。思い出したかのように言いやがって。それに、そんなにおめでたくもないっての。」
「照れんなって。こういうのは、縁起もんなんだからさ。とりあえず、素直に言葉だけでも受け取っておけって。プレゼントは、後々あげれたらちゃんとお前の欲しいものをあげるからさ。なっ。」
「はいはい。期待しないで待っとくよ。」
「そうそう。ポジティブ、ポジティブ。人間、ネガティブになっちゃあ、おしまいだよ?いかなる時にもポジティブ!苦しい時こそポジティブ!あれっ?と思ったらポジティブ!」
「なんか薬みたいになっちゃってるぞ。」
「なっ!だから、さっちゃんの事は、気にしない気にしない。」
「なっ!じゃねぇよ!さちの事は、これっぽっちも気にしてないっての。」
「またまたー。」
「はぁー。」
「ほら気にしてる!」
「今の溜め息は、そんなんじゃないよ。」
「じゃあ、なに?どしたん?」
「何て言うかさぁ。俺は、今日でまた、一つ歳をとったわけだろ?なのに、いったい何をしてんだか。と、思ってさ。」
「何もしてない。」
「うっせぇ!何もしてないじゃなくて、何も出来ないんだよ!」
「しょうがないよ。人間それぞれ立場ってもんがあんだからさ。他人が何をしようと、俺らは、俺らだよ。今出来る事を一生懸命にやればいいじゃない。むしろ、今やってる事は、今しか出来ないのかもしれないんだしさ。例えそれが、しりとりだとしても!そのしりとりを一生懸命にやってれば、きっといつか!いつの日か!いつの日にか!!ああ、あの時しりとりしといて良かったなって日が必ず来るよ。来るはず!」
「そんな日来なくっていんだよ!」
「それにしても暇だなぁ。まいったなぁ。なあ、俺らの長い人生の中でも、これほど暇な時間って無いんじゃない?そう思うと何だかこの時間も貴重に思えてくるよな。」
「お前だけだよ。」
「おいおい。ポジティブ、ポジティブ。」
「はいはい・・・・・・・・・。俺らの人生、長いかどうかも分かんないだろ?」
「またまたー。お前の悪い癖だよ?何でもマイナス思考になっちゃうとこ。」
「そう言えばお前。親父さんと仲直りしたのか?」
「何だよ急に。気持ちがブルーになるような話題すんなよな。」
「店継ぐの継がないので大喧嘩したろ?」
「したよ!しちゃ悪いの?するだろ!あの場合するのが普通だろ!して当たり前!しなきゃ損!」
「いっつも、この話題になると怒り出すよな。」
「あったりめぇよ。」
「なぜ江戸っ子?」
「だいたい何で長男だからって親の後を継がなきゃならんのよ!おかしくない?人権侵害だ!差別だ!もっと世の中の長男に自由を!of the people. by the people. for the people.」
「なぜリンカーン?まあな、お前の気持ちも分かるよ。でも、親父さんの気持ちも分からないでもないけどな。」
「何だお前!親父派か!親父派閥の人間か!親父国務長官か!親父書記長か!親父後援会会長か!親父マニアか!おや」
「うっせぇよ!親父国務長官とか親父書記長って何だよ!俺は、お前派でも親父さん派でもねぇよ!」
「お前が親父寄りに意見するからだろ!」
「してないって言ってんだろ!二人の言ってる事は、どっちが間違ってるってわけじゃなくって、どっちも正解だって事だよ。お前がこの先、人生をどう歩もうが、それは間違いじゃないってだけの話だよ。」
「いい事言うねぇ。この眼鏡の人。」
「かけてねぇよ!」
「眼鏡風味な人。」
「どんな味だ!」
「眼鏡。」
「もはや人じゃなくなってんじゃんかよ!」
「じゃあさあ。」
「ん?」
「今のこの現状も間違いじゃないって事?」
「ある意味な。」

第七話
「雪山遭難九日目の昼」

「あっ!!」
「どしたん?」
「・・・・・・・・・見間違えか。」
「・・・・・・・・・それにしても・・・・・・・・・暇だなぁ。」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年8月 9日 (水)

「第八話」

ジェット兄さんが
ジェットに飛んでいる
ジェット兄さんが
今夜も飛んでいる
真ん丸お月様
目掛けて飛んでいる
しょぼくれ笑顔で
惚けて飛んでいる
スピーディーに
それはスピーディーに
スピーディーに
まさにスピーディーに
ジェット兄さんが
ジェットに飛んでいる
ジェット兄さんが
夜空を飛んでいる

ジェット兄さんは
そんなにジェットじゃない
ジェット兄さんは
それほどジェットじゃない
とか言う人も
中にはいるけれど
とか言わない人も
稀にいるけれど
アグレッシブに
それはアグレッシブに
アグレッシブに
とてもアグレッシブに
ジェット兄さんは
思いのほかジェット
ジェット兄さんは
予想外にジェット

ジェット兄さんの
ジェットのひみつは
ジェット兄さんの
そこんとこのあれは
誰も知らない
ジェットが知ってる
誰も知らない
あるかも分からない
ミステリアスに
それはミステリアスに
ミステリアスに
ここはミステリアスに
ジェット兄さんの
ジェットのひみつは
ジェット兄さんの
日記に書いてある

ジェット兄さん
ヒューンと飛んでく
ジェット兄さん
ビューンと飛んでく

ジェット兄さんも
疲れる時がある
ジェット兄さんも
止まる時がある
ハンカチ片手に
汗を拭きながら
常連顔して
喫茶店に入る
ノーコメントで
それはノーコメントで
ノーコメントで
軽くノーコメントで
ジェット兄さんも
アイスコーヒーを飲む
チョコレートパフェも
ぺろりとたいらげる

ジェット兄さんを
見ているだけじゃなく
ジェット兄さんと
一緒に飛んでみたい
追い着きたいな
追い着けるかな
追い越したいな
追い越せるかな
タイムイズマネーだ
それはタイムイズマネーだ
タイムイズマネーだ
世の中タイムイズマネーだ
ジェット兄さんを
待ってるだけじゃなく
ジェット兄さんと
ジェットに飛んでみたい

ジェット兄さん
僕の兄さん
ジェット兄さん
自慢の兄さん
ジェット兄さん
訳あり兄さん
ジェット兄さん
たぶん兄さん

ジェット兄さんが
ジェットに飛んでいる
ジェット兄さんが
今宵も飛んでいる

第八話
「ジェット弟」

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2006年8月16日 (水)

「第九話」

 私は、毎日、家と家から電車で九駅行った所の駅近くにある公園を往復する生活を送っている。
「にゃー。」
もちろん、好きでこんな生活をしているわけじゃない。原因は、会社を解雇された事にある。会社が経営難に陥り、大規模な経費削減と言う名目で、社員を集団リストラしたと言うわけだ。勤続二十七年と八ヶ月と十六日の私も例外ではなかった。この事実を家族に打ち明けられるはずもなく、気が付けば半年以上もの時間が経過していた。貰った退職金を取り崩し、なんとかそれを給料として毎月妻に渡してはいるが、そろそろそれも限界に近付いてきている。もってあと、二、三回がいいところだろう。最初の段階で無理にでも打ち明ければよかったと、今になって後悔している。思い返せば家族のため、会社のためと言って一生懸命に働いてきた二十七年と八ヶ月と十六日。
「にゃー。」
こうやって、公園のベンチに座り、ゆっくりとした時間の流れの中で、改めて自分の人生を見つめ直すと浮かんでくる。果たして本当にそうだったのだろうか?家族や会社を理由に私は、私自身から逃げていたのではないのだろうか?本当に自分がやりたかった事を諦め、妥協した人生を家族や会社のせいにして生きてきただけではないのだろうか?そう考えると本当の被害者は、そんな私の偽りの人生に巻き込まれた家族なのではなかろうか?
「にゃー。」
だからと言って、一度として家族と過ごした日々を不幸だと思った事などない。初めて子供が生まれた時の喜びは、私の人生の中で、もっとも幸せな時間であった。二人目、三人目の時も同様だ。それは、比べられるものじゃない。三人とも、私の愛すべき子供達だ。宝物だ。私は、この子達に出会えただけで、今の人生に感謝している。満足している。そして、こんな私を一生懸命に支えてくれた妻には、感謝してもしきれない。ありきたりだが、「ありがとう。」と言う言葉しか出てこない。愛すべき家族を持てた。この選択が、間違いだとは思ってない。
「にゃー。」
だけど私は、いったい何をしてるんだ?公園のベンチに朝から夕方まで座り続け、毎度顔を合わせる黒猫に餌を与え、今では、すっかり私になついている。
「にゃー。」
こんな事をするために私は、働いていたのか?こんな惨めな姿を見せるために子供達を授かったのか?こんな想いをさせるために妻と一緒に人生を歩む事を誓ったのか?今の自分では、到底答えの見つからない支離滅裂な自問自答をこうやって、半年以上も続けている。偽りの人生?よくそんな事を言えたもんだ。今までの二十七年と八ヶ月と十六日は、私の人生だ。後悔などない。しかし、正直疲れてしまった。この無意味な半年間を過ごし、こんな自分が嫌になった。
「にゃー。」
そしてまさか、自分が自殺を考える日がやって来るとは、思いもしなかった。しかし、こんな生き恥を曝してこれからの人生を生きて行くのならば、せめて最期ぐらい自分らしく生きよう。自ら幕を下ろそう。誰に迷惑をかけようが、誰が何と言おうが、この選択肢が間違ってるとしてもだ。私の人生だ。これは、私の人生だ。そして、これが私の人生なのだ。
「にゃー。」
公園の遊具で無邪気に遊ぶ野球帽の少年とその仲間達よ。こんな大人になってはいけない。死を考えながら生きてはいけない。希望を持って生きなさい。いつまでも夢を持ち続けなさい。人を信じる人になりなさい。そして、友を大切にしなさい。
「にゃー。」
私は、いったい何を言っているのだろう。私が言える立場ではない。未来がある君達に、未来のない私が言える事など一つもない。
「にゃー。」
「よしよし。すまんな。もう、お前に餌を上げられなくなってしまったよ。この公園にも、もう二度と来る事はないが、達者でな。」
「にゃー。」
「しかし、お前は、いいな。何の悩みも抱えてなさそうだし、自由で気ままで、のんびりと毎日を幸せに暮らせる人生で、まったく羨ましいよ。」
「それは、こっちのセリフだ。」
黒猫は、私を睨み付けてそう言うと、ベンチから軽やかに飛び降り、お尻を突き出すようにして身体を伸ばしながら欠伸を一つした。それから姿勢を正し、尻尾を真っ直ぐ突き立てると、ゆっくり歩き出した。そして、ゆっくりと公園を去って行った。

 あれから一ヶ月が経ち、今日も私は、いつもの公園のいつものベンチに座っている。いつもと変わらぬ空間。昨日と変わらない今日。今日と同じ明日。明日と同等の昨日。ただ一つ変わったと言えば、あの日以来、黒猫の姿を見なくなったと言う事だけだった。
「それでも地球は、いつも通りに回る・・・・・・か。」
そう呟きながらふと目をやると、いつかの野球帽の少年がいた。ブランコに揺られながら吹く、少年のオカリナの音色に耳を傾けつつ私は、ベンチの上に仰向けになり、考えるのをやめ、空だけを眺める事にした。

第九話
「FATHER」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年8月23日 (水)

「第十話」

 夏休みを目前としたある晴れた日の少し蒸し暑い朝の事。いつものように私が目覚めると部屋には、黒いタキシードに黒いシルクハット姿でステッキを持ったおじさんがスッテプを踏んでいた。私は、その異様にコズミカルな音に起こされた。私は、寝ぼけ眼を擦りながら、この目の前の非現実的な出来事をどうにか受け入れようと、ステッキを蹴っ飛ばした。
「ハウッ!」
おじさんは、よろめいて倒れそうになったけど、持ち堪えた。
「おじさん誰?」
私は、勇気を出して、
「ハウッ!」
もう一度、ステッキを蹴っ飛ばしてみた。
「いやはや、パワフルなガールだ。」
ガール?確かにガールだよ。間違ってないよ。六年生だからね。
「おじさんは、どうして私の部屋にいるの?」
「おじさん?おじさんじゃないんだよ。ジェントルマンなんだよ。」
「私に何か用?」
「ワッハッハッハッハ。ワーッハッハッハ!」
大人笑いね。大人は、みんなこうやって笑う。そして大人達は、このおじさんのように、横に揺れ出して、涙流し出して、声を裏返して、そして疲れてステッキにもたれ掛かって休憩をする。
「ハウッ!」
なわけないよ。
「用があるから来たんじゃないか。ガール。」
「用って?」
「ひ・み・ハウッ!」
「用って?」
「ガール。ガールには、夢があるかい?」
「お金持ちになる事。」
「おじ・・・・・・いや、ジェントルマンには、夢があったんだよ。」
「何?」
「ガールは、知ってるかなぁ。マジチャン。」
「知らない。」
「いいぞ。マジチャンって言うのは。」
「ふーん。」
「人々に驚きと感動を与えるのだよ。」
「へー。よさそうだね。」
「鳩を出したり、体を半分にしたり。」
「マジシャンじゃん。」
「ハウッ!そして、最後にこう言うんだ。アテンションプリーズ。」
「それは、スチュワーデスじゃん。」
「ハウッ!おっと、ジェントルメンばっかり語ってしまっていたね。」
「マンね。」
「ガールの将来の夢は、なんなんだい?」
「だから、お金持ちになる事だって言ったよ!」
「スルッ。」
「チッチッチッ。ガール、そう何回もステッキを蹴っ飛ばされるわけにはいかないんだハウッ!なかなかやるじゃないかガール。今度、大会に出場するといい。そんなガールには、特別にこのステッキにまつわる不思議で愉快なお話を聞かせてあげよう。」
「何?」
「実は、このステッキ、普通のステッキに見えるが、喋るんだよ。」
「うそよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「うそ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「う・そ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「時にガール。」
「うそじゃん。」
「ハウッ!」
「何しに来たの?何かしに来たんでしょ?」
「歌を聞かせよう。
黄金を目指せー
黄金を目指せー
仲間を増やせばいいんだよ
仲間を増やせばいいんだよ
黄金を目指せー
黄金を目指せー」
「それだけ?」
「そうだとも。」
「その繰り返し?」
「もちろんだとも。
黄金を目指せー
黄金をハウッ!」
「もういいよ。」
「ガール。途中で止めるとは、酷いじゃないか。」
「だって目指してばっかりだったんだもん。」
「時にガール。」
「何?」
「冒険は、好きかな?」
「だから黄金の歌?」
「そうだ。だから大冒険だ。どうだい?」
「嫌いじゃないよ。」
「おじさんもだ。」
「ジェントルマンでしょ。」
「そうだ。ジェントルマンもだ。」
「した事あんの?」
「ない!」
「じゃ何で大冒険の話なんかしたの?」
「してない!」
「帰って!」
「帰らない!」
「帰って!!」
「やだー!はいっ!
黄金を目指せー
黄金を目指せー
仲間を増やせばいいんだよ
仲間を増やせばいいんだよ
黄金を目指せー
黄金を目指せー」
「やっぱり目指してばっかりじゃん。」
「時にガール。」
「何?」
「時にガール!」
「何!」
「続きを考えてくれ。」
「は?」
「歌の続きを考えてくれ。」
「何でよ。自分の歌じゃん。」
「もはやこの歌は、ジェントルマンとガールの二人の歌だ。」
「いやよ。」
「なぜだガール。」
「面倒臭いし、意味分かんないし。」
「面倒臭いかもしれないが、意味は、分かるはずだ。
黄金を目指せー
黄金を目指せー」
「仲間を増やせばいいんでしょ?」
「そうだ。黄金を目指すには、多くの仲間が必要なんだ。分かるかガール?」
「なんとなく。」
「大冒険には、危険がつきものだ。黄金を目指すとなれば、それは普通の何倍もの危険がつきまとうのだよ。しかし!仲間がいれば、危険などなんのそのなのだよ。仲間は、多ければ多いほどいい。分かるかガール?黄金を目指すには、多くの仲間が必要なのだ!」
「ジェントルマンは、黄金を目指してんだ。」
「特に目指してない!」
「テイッ!」
「ハウッ!チョップか。チョップなんだなガール。ステッキを折るつもりでのチョップなんだな。」
「帰って!!でないと本当にステッキ折るよ。」
「分かったガール。チョップをされてしまってはしょうがない。君を仲間にするのは、このジェントルマン、諦めよう。」
「目指してなかったんじゃないの?」
「じゃ、バハァイ。」
「ガチャッ。」
「バン。」
「何でこんなに朝から疲れなきゃいけないわけ?」
「カチャッ。」
「ガチャガチャ。」
「鍵か?鍵を掛けたのだなガール。」
「ガチャガチャ。」
「ガール!開けてくれないか?ガール!」
「ドンドンドン!」
「話は、まだこれからなんだガール!」
「ガチャガチャ。」
「鍵を開けてくれガール!もう一度だけ部屋に入れてくれガール!」
「ドンドンドン!」
「このままでは、終われないんだガール!話が終わらないんだよガール!」
「ドンドンドン!」
「聞いているのか?そうか。そうだったのか。聞きたかったのだな?このシルクハットにまつわる不思議で愉快なお話が聞きたかったのだな?してあげようじゃないかガール。してあげるから開けてくれよガール。実は、このシルクハットは、喋るんだよ。」
「ガチャガチャ。」
「ドンドンドン!」
「ガール!約束が違うじゃないかガール!もう一度だけ言うぞガール。ジェントルマンがもう一度、ガールの部屋に入らない事には、話が終わらないんだ。分かったかなガール?」
「ガチャガチャ。」
「分かってくれよガール!そうか。そうだったのか。歌だな?あの歌を聞きたいのだな?いいだろうガール。歌おうじゃないかガール。ガールのために心を込めて歌おうじゃないか。
黄金を目指せー
黄金を目指せー
仲間を増やせばいいんだよ
仲間を増やせばいいんだよ
黄金を目指せー
黄金を目指せー」
「ガチャガチャ。」
「まあ、あれだなガール。ガールは、頑固者だな。それは、けして悪い事ではない。むしろいい事だ。しかしだなガール。」
「ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ。」
「この場合は違うぞガール!今は、素直にならなくてはいけない時だ!心を開放するんだガール!心だけでなく、ドアも開放するんだガール!」
「ガチャガチャ。」
「ガァァァァァル!!」

「うるさいなぁ。まっ、ほっとけばそのうち諦めて帰るよね。」
そう言って私は、ドアの上に掛かってる時計を見た。
「いっけなーい!遅刻しちゃうよ。」
私は、大急ぎで洋服に着替えようと、ドアとは真逆にあるクローゼットの方に向きを変えた。
「時にガール。」
「ジェントルマン!?」

第十話
「少女とジェントルマン」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年8月30日 (水)

「第十一話」

 仕事を終え、家のドアの前に着き、腕時計を見た時には、すでに午後十一時を過ぎていた。玄関のドアを開け、疲れた体に鞭を打ち、私は、スーツから部屋着へと着替えるため、真っ直ぐ寝室に向かった。ドアを開けると、そこには、疲れきった表情でベットに座り込んでいる私がいた。
「おう!」
私は、私に気付くと右手を上げて私に対し、気軽に挨拶を交わしてきた。
「お、おう・・・・・・・・・?」
私も右手を上げて私に挨拶を返した。これは、いったい何なんであろうか?あそこにいるのは、確かに私だ。ここにいるのも私だ。
「誰ですか?」
あまりの出来事に私は、思わず敬語で私に質問をしてしまった。
「誰って・・・・・・そりゃ私に決まってるじゃないか。」
決まっていた。この、私にそっくりな私は、どうやら私のようだ。それはもう、決まっていた。だったら、決まっているのであったら、それを踏まえて今一度、質問をしよう。
「なぜ私がいるのだ?」
「なぜって言われても・・・・・・私にも分からない。」
私の言う事は、確かに当たっている。なぜなら、私にも分からないからだ。私が分からない事を私が分かるはずもない。もし、私が私なら、同じような事を言ったであろう。
「まあ、少し落ち着いたらどうだ?」
確かに私の言う通り、私は慌てていた。慌てていたと言うより、パニックになっていた。パニックになっていたと言うより、慌てていた。そう、こんな有り様だった。だから、あえて問おうじゃないか私よ。パニックで慌てていながらも問おうじゃないか。
「なぜそんなに悠長にしていられるのだ?」
「悠長にって言われても・・・・・・慌ててたってしょうがないじゃないか。」
うん。それは、一理ある。納得だ。素直に納得だ。中々いい事を言うじゃないか私。さすが私。私じゃなければここまでナイスな事は、言わないだろう。ナイス私。私ナイス。だが、私は、私の言うように、落ち着く事など出来ない。
「慌ててもしょうがないかもしれない。がしかし、この事態は、慌てるのが普通じゃないのか?」
「分からないのか?慌てて問題が解決するのか?」
しない。するわけがない。した所を見た事がない。いい事言いまくりじゃないか私よ。よし!ここは、私の言う通り、少し冷静になろうじゃないか。
「分かった。まず初めに聞きたい。聞きたいと言うか、確かめたいのだが、そっちの私は、私だよな?」
「私は、私だ。」
「私も、私だ。」
そうか。やはり私達は、私なのだな。そっくりさんじゃなく、私なのだな。だったら考えるまでもなく次の質問をぶつけるまでだ。
「そっちの私は、この事態をどう思う?」
「分からない。分からないが、何かとてつもない事が起きているのは、確かな事実だ。」
「うむ。」
「同じ人間が存在するなんて、まるでフィクションじゃないか。」
なるほど・・・・・・・・・フィクションか・・・・・・・・・。ん?フィクション?フィクション、フィクション。そうか!
「フィクションじゃないのか?これ自体、フィクションなのでは?いやむしろ、フィクションでいいじゃないか。しっくりくるじゃないか!」
どうだ私!ずばりだろ私!
「フィクション?フィクションだったらこれは、夢って事か?」
「えっ!?」
夢?そうか!フィクション=夢と言う事か。気付きもしなかったぞ私。何て鋭い発想だ。鋭すぎて痛いぞ私。ん?つまりどう言う事なんだ?よし!ここは、冷静に分かったフリをして答えておこう。
「だろうな。」
「どっちの夢だ?」
は?
「私の夢なのか?それとも・・・・・・・・・私の夢なのか?」
そう言う事か。ん?
「私の夢だとしたら?」
「私が夢の住人と言う事になるな。つまり、そっちの私が作り出した幻。」
なるほど。
「じゃあそれで!」
「おいおい。勝手な事を言うんじゃない。私は、ちゃんと存在している。それならもし、私の夢ならば、逆にそっちの私の方が夢の住人だぞ。」
それは、困る。
「私は、現実だよ。」
「証拠は?」
証拠?そんなものあるわけないじゃないか。つねればいいのか?実際、私には、見えないだろうが、私は、さっきっからお尻をつねっている。ちねりまくっている。痛い!痛いぞ私。これが、この痛みが証拠として提出出来るのなら、私は、私だ。しかし、この証拠は、あまりにも幼稚すぎる。すぐに却下されるだろう。いや、もはやそれ以前に却下だ。
「無いんだな?」
ああ、無いよ。無いさ。しかし、証拠など関係ないじゃないか私!どっからどう見ても、あんなとこをそんな風に見たとしても、私は、私じゃないか。だいたい、だいたいだ。夢と現実なんて、感覚で分かる事だ。そもそも、そもそもがだ。これが夢でこれが現実だなんて、いちいち考えながら毎日を過ごしている人間がどこにいる。そんな奴は、いないぞ私。だから言おう。勇気を出して堂々と言おうじゃないか!
「しょ、証拠なんてものは、無い。」
「私もだ。そっちの私にこれが現実だと納得させる証拠など無い。逆に、これが夢じゃないと言う証拠もない。しかし、これは夢なんかではない。到底、理屈では説明など出来ない不条理な現実。納得するしない関係なく不愉快に侵入して来た現実。目で見た事実をそのまま受け入れなくてはならない恐怖感。紛れもなく安易に今の現実がこれなのだよ。」
ふむふむ。何だかわけが分からなくなってきたぞ。しかしだ。
「悪い事じゃないんじゃないか?」
「どう言う事だ?」
「素直にこの現実を受け入れて、有効利用すればいいじゃないか。」
「有効利用?」
「だって、考えようによっちゃあ、楽じゃないか。仕事だって、毎日行く必要がなくなるし、今までやりたくてやれなかった事だって出来る。これからもっと自由に人生が歩めるって事じゃないか。」
私は、何ていい事を言うんだ。自分で自分を抱きしめてやりたいよまったく。こんないい提案を私も否定できまい。
「馬鹿な事を・・・・・・・・・。」
ば、馬鹿?
「なぜだ私。」
「同じ人間が同じ世界の同一空間に同時に存在するなど、倫理的に許される事じゃない。有り得ては、ならない事なのだ。」
随分と気難しい事を言うのだな私よ。もっとお気楽でいいじゃないか。エンジョイしようじゃないか。ん?まてよ・・・・・・・・・これは、いろいろな事が出来るぞ。例えば、完全犯罪だって夢じゃないぞ!完璧なアリバイ工作が出来る!いける!これは上手い事やればいけるぞ!絶対やれるぞ完全犯罪!って私は、いったい何を考えているのだ。
「ましてや、そっちの私が良からぬ事を考えないとも言えんからな。」
ドキッ!
「もし、別の私が何か悪さでもしてみろ。何もしていない私にまで、迷惑がかかる。私自身がした罪ならば罰を受けよう。しかし、身に覚えのない罪で罰を受けるなど馬鹿らしい。つまり・・・・・・・・・。」
ん?つまり何だ?何が言いたいんだ?勿体振ってないで聞かせてくれよ私。気になるじゃないか。
「いらないのだよ。」
えっ?いらない?
「私の平穏な生活を邪魔する私など、必要がないのだよ。」
何を言っているのか私は、さっぱりだぞ私。
「分からないか?本当なら今私が言った事なんて考える必要すらない事なのだよ。そんなややこしい過程を踏まずとも、最初から答えは出ている。」
分からない。私の言わんとしている事がまったく理解出来ない。
「何が言いたい。」
「一人が消えなければならない。こんな馬鹿げた事態など、絵空事の世界だけで十分だ。現実世界では、決して有り得てはいけない事なのだよ。」
妙な雰囲気になってきたぞ。何かが妙だ。こいつは、本当に私なのか?私に変装した誰かなのか?だったらまずい!慌ててはいけない。落ち着くんだ。とにかく、何かとてつもなく妙な予感がする。ここにいてはいけないと、私の何かが感じとっている。一秒でも早くこの場を立ち去らなくては、大変な事になる。こんな時は・・・・・・・・・散歩だ!
「ちょっと気分転換に散歩でもしてくるよ。」
もっと冷静になろう。頭の中を一回空っぽにしてから、もう一度あらゆる観点と角度と視点から注意深くじっくり考え直そう。今の私の頭では、きっと簡単な算数の問題すら解けないだろう。
「じゃあ。」
よし。このまま、このままだ。このままゆっくり歩いて玄関に向かおう。
「カチャッ!」
ん?何か後ろの方で音がしたぞ?何だ?何なんだ今の寝室内に響く不協和音は?よし。ゆっくりだ。ゆっくりと振り向いて確かめようじゃないか。・・・・・・・・・銃!?
「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「バン!バン!バン!」
「ドサッ!」
撃ち殺された私が、黒い塵となって消えていく。いったいこの光景を何回、目にした事か。朝から続くこの不可解な現象。ふと、腕時計を見るたびに考えてしまう。もし、時計の針が午前0時を回った瞬間、また日曜日の朝がやって来たらどうしようか?と。私が焦燥感にかられながら、ベットに座っていると
「ガチャ。」
また、私が帰って来た。そして私は、ゆっくりとこう呟く。
「終わるのか?」
そして、心の中でこうも呟く。「果たして私自身、本当の私なのだろうか?」と。

第十一話
「黒い日曜日」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年9月 6日 (水)

「第十二話」

 その日は、水飴のような空色だった。大きなエビフライの雲が一つあり、他は、綿菓子のようだった。何の変哲も無い、いつもの空模様だった。気になると言えば、あの大きなエビフライには、プリッとしたエビが入っているのか?それとも、近所のファミリーレストランのように、ころもだらけなのか?それくらいだった。何が言いたいのかと言うと、まったくもって、いつもだって事。
 でも、一つだけいつもじゃない事と言えば、空を見ながらうたた寝中に、目覚まし代わりのチャイムが鳴り、玄関の扉を開けると、そこには、ミライジンが立っていた事だった。何でもミライからやって来たらしく、名前をコマツと言うらしい。しかも、ミライでは、全員がコマツと言う名前らしい。だったら、どうやって区別を付けているのか気になったけど、あえて聞かなかった。なんとなく聞くのが恐かったからだ。
 車は、やっぱり空を飛んでいるらしく、ピントのズレたぼやけた写真を数枚見せられた。でも、何が車で何が雲なのかまったくもって分からなかった。けど、なんとなく数回頷いてみたりしといた。
 思った通りコマツは、タイムマシーンで来たみたいだ。見せてくれなかったけど、タイムマシーンの一部だって言って、ネジを見せてくれた。そのネジは、かなり大事な役割を担っているらしく、ネジ自体がタイムマシーンと言っても過言ではないらしい。触りたかったけど、触らしてくれなかったから、やっぱり本物なのかなと思った。白い三本線の緑のジャージもそれようのスーツなのかなと思ったけど、そこには触れなかったし、触れたくなかった。
 何でここに来たのか尋ねると、コマツは、偉い人に言われて来たと言った。偉い人って?
 どんな用で来たのか尋ねると、コマツは、極秘と言った。極秘って?
 サンタクロースは、いるのか尋ねると、コマツは、いる!と激烈な勢いで答えた。タンコブできた。なんで?
 コマツの頭の上に付いてるアンテナみたいなのを触ろうとしたら、頭の中に引っ込んだ。それを23回繰り返したら、次やったら24回じゃんと言って、コマツは、再び右手を振り下ろした。タンコブの上にタンコブができた。物凄く痛かった。しばらく呼吸ができなかった。上にできたタンコブは、最初のタンコブが持ち上がったのか?それとも最初のタンコブの上にタンコブができたのか?どっちなんだ?ってコマツに聞いたら、くだらない事でうじうじするなとゲンコツされた。確かにくだらないけど、うじうじはしていなかった。タンコブが3段になっている所を写真に撮って欲しかったけど、コマツに撮らせると、ピントがズレてぼやけるのでやめた。無念だった。武士だったら腹を切ってるし、主婦だったら大根切ってるし、課長だったら部下の首を切ってるし、船長だったら面舵いっぱいだ。
 コマツにミライの世界について聞いてみる事にした。そもそもいつぐらい先のミライからやって来たのか?コマツが言うには、ブラックコーヒーがアメリカンコーヒーに変わるには、十分過ぎるほどの量の砂糖とミルクらしい。砂糖が年月で、ミルクはミルクだそうだ。じゃあ、アメリカンコーヒーがミライなのか聞くと、勢いあまって左右の門柱に頭をぶつけるぐらい、首を振った。意味分かんないよって言ったら、ミライとは、そんなものだとコマツが言った。
 そんな事より、コマツってホクロが多いねって言ったとたん。ブワァーって顔中ホクロだらけになって、数種類の幾何学模様と何かの設計図が浮かび上がり、次の瞬間には、ホクロが一つも無かった。ミライジンは、こんな事もできるとコマツは、誇らしげに言ってたけど、羨ましくなかったし、とても気持ちが悪かった。ゲボが出そうなくらい気持ちが悪かった。
 宇宙旅行ができるか聞いてみると、コマツに鼻で笑われた。そんなの日常茶飯事だと、3回ぐらいカミながら言った。冥王星がオススメだと言ってきたから、証拠は?って聞き返した。すると、ポケットからタバコを取り出して、ライターで火を付けて吸い出した。コマツ曰く、冥王星産のタバコで、木星限定シリアルナンバー入りライターらしい。どう見ても、地球産のタバコだし、地球産のライターだった。
 コマツの左腕を見ると、腕時計のような、無線機のような物を付けていたので、何なのか聞いてみると、コマツは、おもむろに青いボタンの方を押した。そしたら、パカって上が開き、コマツは、右手に持っていたタバコをその中で消した。携帯灰皿だった。なっ!みたいな顔をコマツはしてたけど、何でそんなに自慢げにしていられるのかが不思議でしょうがなかった。
 正義の巨大ロボットは、作られたのかワクワクしながら聞くと、正義じゃないけど作られたと答えたから、悪なのって聞くと、家政婦だと言った。一家に一台とも言った。ミライの家は、大きいんだねと言ったら、この時代とあんまり変わらないなんて言うもんだから、巨大じゃないじゃないかって少し怒り口調で言うと、合体タイプだって言った。だいたいが5体からなる合体ロボットなんだって、お金持ちになると、その合体ロボットを複数所有するから、家政婦が数え切れないぐらいいるんだって、なんか少しだけミライっていいなと思えた。
 本題に入ろうかってコマツが真顔で言ってきた。今更?って思ったけど言わなかった。コマツは、今までにない緊張した面持ちで、こう切り出した。トイレ貸して!ってね。うんいいよ!って言うと、コマツは、一目散にトイレに駆け込んだ。そんなに我慢してたんなら最初に言えばいいのにと思った。しばらくして、トイレから戻って来たコマツは、満面の笑みでありがとうと言ったが、あまりの気味の悪さにこっちがトイレに行きたくなった。コマツが言うには、長い時間旅行だったので、寝ながら来たら寝冷えしてしまったらしい。
 そして、コマツは、たまたま家の前を通り掛かったタクシーを呼び止め、僕に手を振りながら去って行った。いったい何だったんだろうと考えてみても分かるはずもなかった。でも、コマツがタクシーで帰る姿を見て、なんだかミライも平和なんだなって、妙に安心した。この不思議な体験を今日の夏休みの絵日記に書こうと思い、握りこぶしでガッツポーズを決めようとした僕は、握りこぶしをした右手に、ネジを持っている事に気が付いた。
「これって、コマツが言ってたタイムマシーンの大事なネジだ。コマツ大丈夫かなぁ。」
僕は、大きなエビフライの雲を見ながら呟いた。

第十二話
「ミライジンコマツ」

「ピピーッ!ピピーッ!ピピーッ!ピピーッ!」
左腕の機械からの音に反応して、コマツは、それを口元に持っていき、赤いボタンを押した。すると、アンテナが飛び出した。
「コマツです。」
「上手くいったか?」
「はい。」
「じゃあネジは?」
「はい。コマツさんの言った通り、小学生時代の博士に渡しました。それと、多くのヒントと共に、シナプス増幅剤を脳に直接3回。」
「博士なら分かってくれるはずだ。」
「小学生でも博士は、博士なんですね。すごい好奇心と豊かな発想の持ち主でしたよ。」
「私も会ってみたかったものだ。」
「教科書で見るのとは、大違いでしたけどね。」
「とにかくよくやってくれた。これであの発明は、予定よりかなり早い時代に完成する事になる。我々人類が、唯一生き残ったコマツと言う一人の人間のクローンであると言うのも避けられる。」
「冥王星の異常接近による木星大爆発、防げるでしょうか?」
「博士の発明があの時代に完成されていれば必ず成功する!君の働きは、歴史上に残る事はけしてないが、私が我々コマツを代表して感謝しよう。ありがとうコマツ君。」
「当たり前の事をしただけです。恥ずかしいからやめて下さいよ。」
「はっはっはっ。コマツ君らしいな。さあ、任務が完了したのなら長居は無用だ。コマツ君!」
「分かりました。」
そう言うとコマツは、もう一度赤いボタンを押し、通信を切った。
「さて、ミライに帰りますか。コマツさん。」
タクシーの運転手がバックミラーごしに言った。
「お願いします。コマツさん。」
タクシーは、空を飛び、大きなエビフライの雲の中に消えていった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年9月13日 (水)

「第十三話」

 全体を塀で囲まれた建造物。その裏手にひっそりと存在する出入り口。そこには、制服を着た二人の男が立っていた。炎天下の中、蝉達の鳴き声が絶え間無く鳴り響き、暑さを倍増させていた。
「あぢー!」
「夏だからな。」
「それを踏まえてあぢー!」
「確かに暑い。」
「冬がこのぐらいだったらいいのにー。」
「でも、冬がこんな感じだったらお前は、何て言うんだよ。」
「あぢー!」
「だろ?なら我慢するしかないって事だよ。」
「あのなぁ、俺はなぁ、そりゃもう、物凄く!お前が考えてるよりも、物凄く我慢してんだよ!我慢して我慢して我慢したうえでの!あぢー!!」
「やめい!!俺まで暑くなる!」
「はいはい・・・・・・・・・。」
「やる気出せよな。こんなダラダラしてるとこを所長にでも見られたら、二、三時間の小言と十枚以上の始末書だぞ。」
「わーったよー。やればいいんだろ?やればー。で?今日は、何で俺らがここに呼ばれてるわけ?」
「お前なぁ。ちゃんと渡された書類を読めよな。ここに俺らがいるって事はだよ?だいたい検討がつくだろ?」
「ここってあれだろ?新しく入所して来る受刑者を迎え入れるとこだろ?」
「そうだよ!」
「で?」
「馬鹿かお前は!そこまで分かってて聞くなよ!ダラダラすんなって!」
「あのなぁ、どんな奴が来ようが、この暑さは、変わらないんだよ?あぢー!だからさぁ、これから来る奴がどんなんだろうと、まっっったく!興味なし!あぢー!そいつがこの暑さをなんとかしてくれるわけでもあるまいし。」
「そうでもないぞ?これからやって来る男の事を知ったら、恐怖で暑さなんて吹っ飛んじまうぞ。」
「そりゃーありがたいねぇ。で?どんな奴?」
「犯罪史上もっとも残忍な殺人犯!」
「ほっほー。あぢー!続けて続けて。」
「あまりに残虐で、あまりに残酷。付いたあだ名が史上最凶の殺人鬼!」
「最強?」
「最凶!」
「あそう。あぢー!で?何で最凶なの?」
「捕まるまでに何人殺したと思う?」
「うーん。百。」
「おしい!百八人。」
「煩悩?あぢー!」
「本当にお前は、たまに鋭い事を言うよな。人を自分の煩悩として、一人殺害する度に自分の中の煩悩が断じられたって言う話みたいだぞ。」
「1ポイント獲得。でもさぁ、連続殺人鬼なんて今までだっていたじゃん。」
「殺した人数だけじゃないんだよ。とにかく殺した後の行動が残虐で残酷なんだよ。残虐で残酷と言うか異常!もはや人じゃない。」
「人なんだろ?」
「例えだよ例え!」
「知ってるよ。」
「どんなんだと思う?」
「そうだなー。目玉を刳り貫いて、手の平にくっつける!」
「妖怪か!」
「うんじゃーねー。四十九人の目玉を刳り貫いて、五十人目の体中にくっつける!」
「妖怪か!」
「だったらねー。目玉を」
「目玉もういいだろ!何でそうやってお前は、妖怪にしたがる?」
「だってさぁ、あぢー!んだもん。」
「暑さ関係ないだろ。」
「関係あんだろ!暑さ=妖怪だろ!」
「どんな根拠だ!」
「知らん!」
「逆切れか!」
「じゃあなんだってんだよ。勿体振らずに教えてくれりゃーいいじゃん。」
「人食い!」
「人食い?」
「殺した人間をありとあらゆる料理に変えて食べるんだよ。」
「連続殺人鬼でカニバリズムなんて、もはや珍しくもなんともないじゃん。殺人シェフなんて、今時流行んないっての。それにしてもあぢー!」
「んなもん。いつの時代だって流行ってないよ!百八人だぞ?」
「そんなの俺だって、今までに食ったもんを人間に換算すればそんぐらいいってるっての。あぢー!てかそれ以上は、食ってるね!人生何度も悟っちゃてるよ!」
「またお前は、訳の分からん理論を言い出しやがって。」
「あぢー!んだから言わしてくれよ。せめて、訳の分からん理論ぐらい言わしてくれよ。」
「意味が分からん。」
「あぢー!すまんすまん。で?なになに?食うって全部?」
「全部だよ。」
「老若男女?」
「そう。」
「骨も?」
「そうだよ。全部だよ。」
「おかしくない?」
「何が?」
「あぢー!」
「何が?」
「あぢー!」
「だから何がだよ!」
「ん?だってさぁ、丸ごと食べちゃうんだろ?それって証拠なんて残らないじゃん。完全犯罪じゃん。あぢー!あぢー!と言うかもはや、なぢー!だな。」
「なぢー!って何なんだよ!」
「なぢー!ってのは、あぢー!の比較級だよ。で、最上級があちー!だよ。」
「じゃあ、お前たいして暑くないんじゃん!」
「まあまあ、細かい事は、気にしない気にしない。で?その完全犯罪を解いたのは?どこのどいつだ?何探偵だ?」
「食あたりだよ。」
「そんな名前の探偵聞いた事ないなぁ?ショク・ア・タリ?」
「誰だそいつ!そもそもお前は、どんだけ探偵に詳しいんだよ!」
「ホームズに金田一。」
「実在しない奴らじゃんかよ!」
「あとは・・・・・・・・・ショク・ア・タリかな。」
「知ったかか!聞いた事ないんだろ!探偵じゃなくって病気だ!病気!ショク・ア・タリじゃなくて食あたり!」
「へ?」
「百八人目の犠牲者を食って、腹をこわしたんだよ。で、病院に行って検査をしたら、胃カメラで胃を見てた医者と犠牲者の目玉とが合っちゃったんだよ。そして、事件が発覚したってわけだよ。」
「やっぱ目玉じゃん。」
「たまたまだよ。」
「くだらない事を言うねぇ。さびー!」
「そういうつもりで言ったんじゃないよ!」
「でもさぁ。」
「何だよ。」
「それでも腑に落ちないんだけど。」
「どこが?」
「一人を殺害して食ったのは分かるよ。でも、あと百七人を食ったって証拠が無いじゃん。そいつが嘘をついてっかもしんないじゃん。」
「リスト。」
「リスト?」
「取り調べ中に、そいつが次々と自分が食した人間の名前と特徴を挙げてったんだよ。で、リストを作って、それを基に調べてみると、リストに載ってる全員がある日突然、行方不明になってんだよ。そのリストと完璧に一致したってわけだよ。」
「で?信じちゃったってわけか。」
「それとな。料理を作ってる一部始終が録画されたディスクが自宅から発見されたんだよ。」
「だいたいそいつは、人間をどう料理したんだよ。あぢー!」
「焼いたり煮たり生だったり、まあそれこそいろいろなんじゃないか?」
「もっと詳しく分からないのかよ。」
「分からん。」
「ステーキとか?」
「かもな。」
「寿司とか?」
「ああ。」
「なんとか風なんちゃらかんちゃらとか?」
「分からないなら言うなよ!」
「ボイルドエッグ?」
「ゆで卵じゃん!材料卵オンリーじゃん!」
「じゃあ何だよ!」
「ああ、そうだ。なんでも、そのディスクを最初から最後まで見た人間が、ここをやられちゃって、今じゃ病院のベットの上らしいんだよ。内容が相当なもんだったんだろうな。それ以来、誰もそのディスクを見てないらしい。だから、あんまり詳しく分からないんだよ。」
「ソフトボイルドエッグ風人間の頭部?」
「話し聞いてたか?半熟卵関係ないし、分かんないって言ってんだろ!」
「頭部をコツーンとスプーンで割って、中の」
「やめい!!気持ち悪い!見れるよ!お前ならきっと普通に見れるよ!」
「ふーん。なるほどねぇ。最凶ねぇ。」
「何だよ。あんまり納得してないみたいだな。」
「してないよ。あぢー!もっと、暑さが吹っ飛ぶぐらいの怖い話なのかと思ったら、全然だったよ。相変わらずあぢー!しな。」
「想像したら十分に暑さ吹っ飛ぶぐらいの怖い話だろ?お前の頭の中がそいつ寄りなだけだよ。」
「あぢー!俺には、この暑さの方が怖いよ。」
「はいはいそうですか。」
「大食漢でモンスターみたいな男だろうが、今や捕まってこれから檻の中。怖くもなんともないね。しかし、あぢー!」
「やれやれ。」
「プップー!!」
男達の前に、一台の乗用車がやって来て止まった。
「来たみたいだぞ。」
「はいはい。あぢー!のにご苦労様だねぇ。」
「ガチャッ。」
そして、後部座席のドアが開いた。
「ほら、出て来るぞ!」
「あぢー!さてさて、どんな奴なのかな?」
すると、そこからがっしりとした体格の男が出て来た。
「なぢー!あいつか?」
「制服着てんだろ!あの人は、護送を担当してた人だよ。」
「バタン!」
しばらくして、後部座席のドアがその男の手によって閉められた。そこには、がっしりとした体格の男の横に立つ、史上最凶の殺人鬼の姿があった。
「!!」
「!!」
制服を着た二人の男は、目を大きく見開き、驚いた様子であった。実際に史上最凶の殺人鬼を目の当たりにして、その全身から放たれる狂気に満ち溢れた鋭い殺気に畏怖したのか?はたまた、残虐で残酷なモンスターを目の前にして、その冷酷な野獣が放つ眼光により、体の自由を奪われてしまったのか?
そして次の瞬間、男達は、声を揃えてこう言った。

第十三話
「ちっさ!!」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年9月20日 (水)

「第十四話」

「ねぇ魔人。」
「あははは。」
「ねぇ!」
「あははは。」
「ねぇってば!」
「ん?」
「ちょっと!」
「ん?」
「聞いてんの?」
「あははは。」
「ま・じ・ん!!」
「お・ん・な!!」
「テレビ見るのやめてこっち向きなさいよ!」
「ん?」
「ん?じゃない!あんたここに来て、三日間ずっと通販のテレビ番組なんか見てるけど、何がそんなに面白いわけ?」
「あははは。」
「ちょっと!人の話を聞きなさいよ!」
「プチン。」
「あー。いいとこだったのにー。」
「あのさぁ。あなた魔人なんでしょ?」
「そう!まじん!」
「はいはい。そんな自信満々にアピールしなくていいから。毎日、毎日、朝から夜までずーっと通販番組なんか見てないで、何か出来ないの?」
「?」
「魔人なんだからさぁ。魔人らしい事いろいろ出来んでしょ?そうだ!変身!例えば何かに変身するとか出来ないの?」
「できる。まじんだもん。かんたんかんたん。」
「うっそー!ちょっとやってみせてよ。うーん。じゃー、猫に変身して!」
「にゃー。」
「ちょっと。」
「つぎいぬ。わん。」
「魔人!」
「つぎくるま。ぶーん!ぷっぷー!」
「ま・じ・ん!!」
「お・ん・な!!」
「あんたねぇ。それってただ声出してるだけじゃない。変身じゃなくって、完成度のチョー低いモノマネじゃない!」
「だめ?」
「ダメに決まってるでしょ!だったらあんた、たくあんに変身してみなさいよ!たくあんに!」
「うーん・・・・・・・・・。」
「ほーらほーら、やれるもんならやってみなさいよ。たくあん。」
「うーん・・・・・・・・・。」
「どうしたの魔人?簡単なんでしょ?早く変身してみせてよ。それとも、ごめんなさいって謝る?嘘をついてごめんなさ」
「ボン!」
「何で出来るのよ!」
「ボン!」
「まじんできるっていった。うそつかない。」
「牛。」
「もー。」
「馬。」
「ひひーん。」
「たくあん。」
「ボン!」
「何でたくあんだけ変身すんのよ!」
「ボン!」
「まじんそれにしかへんしんできない。」
「その事実がびっくりよ!くだらないとこで、運を使っちゃったじゃない!何なの?魔人の好物がたくあんとかなの?」
「ちがう。まじんのこうぶつにんげん。」
「えっ?」
「にんげんのおんな。」
「!?」
「あははは。じょーだんじょーだん。」
「あんたが言うと冗談にならないのよ!ぜんっぜん!笑えないわよ!」
「うけたうけた!」
「うけてないわよ!むかつくわねぇ!」
「じゃー、てれびみてもいい?」
「ダーメ!なんかやってからにしなさい。変身がダメだからー。」
「だめじゃない。まじん、へんしんできた。」
「たくあんじゃない!あんなのに変身したとこで、何の役にも立たないじゃない!そうねぇ?魔法とか出来ないの?」
「できるできる。」
「それを早く言いなさいよ。あっ、でもちょっと待ってよ。また、しょーもない魔法なんじゃないでしょうねぇ?」
「ちがうちがう。まじん、まほうは、くらすでいちばんだった。」
「クラス?何やら興味をそそられるワードが出て来たけど、まぁその話は、今度でいいわ。今は、魔法よ。一番なら、チョー得意なんじゃない!」
「まかせろ。」
「なになに?炎を出したりとか?怪我を治したりとか?あー!まさかまさか、何か召喚出来ちゃったりするわけ?」
「おんな。まじんばかにしてもらっちゃーこまる。まじん、もーっとすごいことできちゃう。」
「えっ!何よ!何が出来ちゃうのよ!お金を増やしちゃうとか?」
「あのねー。」
「なになに?」
「えいとねー。」
「もー。勿体振ってないで教えなさいよ。このっこのっ。」
「じばく!」
「へー、じばくかぁ。やるねー魔人!自爆ね。それは、ちょっとすごいかも。えっ?自爆?」
「いくよー。」
「待って魔人!」
「なにおんな?」
「その自爆って、どのぐらいの威力があるの?」
「ほしなくなる。」
「星って?この星?地球の事?」
「そう。いくよー。」
「ちょ、ちょっと待って魔人!魔法いいや。やらなくってもいいや。」
「えんりょするな。」
「遠慮じゃないわよ!だいたい、ほら、そんな事したら魔人まで消えて無くなっちゃうじゃない。」
「へーきへーき。じばくっていっても、まじんがばくはつするんじゃなくて、まじんのまわりをばくはつさせるから、あんしんあんしん。それにまじん、ばりあでたすかる。しんぱいしなくていい。」
「何よそれ!自爆じゃなくって、他爆じゃない!それに!魔人は、助かるかもしれないけど、あたしが助からないじゃない!何が安心よ!」
「だったらおんなも、ばりあのなかにいれてやる。」
「いいわよ。あたしだけ生き残ったって、楽しくないわよ。そりゃー、大地震が来てくれないかなぁとか、宇宙人が攻めて来ないかなぁとか、一回この世界がリセットされればいいのにって考えた事あるわよ。もちろんあたしは、生き残るって設定でね。でも、実際にその状況になったらすっごい困るわけよ。だから、他爆しなくっていいの。」
「わがままだなぁ。」
「わがままでいいわよ!あたしのわがままで地球が救われたなら、全人類があたしに感謝すべきよ。」
「じゃー、みていい?」
「ダメだって言ってるじゃない。」
「えー。」
「それより、聞いてなかったけどさぁ。魔人は、何でここに来たの?」
「たまたま。」
「たまたまで洗濯しようと思って開けたら中にいないでよね!びっくりするじゃない!ってか、びっくりしたわよ!何なの?あたしの洗濯機と魔人のいる世界が繋がってるわけ?」
「ボン!」
「どのタイミングでたくあんに変身してんのよ!」
「ボン!」
「何なのよ。そうだ!魔人のいた世界について話してよ。やっぱりあれ?大魔王がいたりするわけ?」
「あははは。」
「何で笑うのよ。」
「あははは。おんな、てれびのみすぎ、そんなのいないいない。」
「そうなんだぁ。ぜーったいにいると思ったんだけどなぁ。大魔王。」
「だいまじんがいる。」
「一緒じゃない!大魔王だろうが大魔神だろうが、同じじゃない!」
「ちがうちがう。だいまおうとだいまじん。まーったくちがう!」
「何が違うのよ!」
「それきいちゃう?」
「聞いちゃうわよ。」
「これ、はなすとながくなるけどいい?」
「どれくらい?」
「まるふつか。」
「やめて。」
「ざんねん。」
「そんなどーでもいい話を丸二日もされたら、たまったもんじゃないわよ。大魔王だろうが大魔神だろうが、あたしには、どっちでもいいわよ。」
「よくない!やっぱりはなす!そもそもだい」
「分かったわよ!大魔神でしょ!大魔王じゃなくって、大魔神なんでしょ!ぜんっぜん!違うわ!」
「そう。わかってもらえてうれしい。」
「はぁー、疲れた。魔人と話すと疲れるわ。あんたこっそり、あたしの生気とかを吸い取ったりしてんじゃないの?」
「ばれた?」
「何してんのよ!!」
「あははは。じょーだんじょーだん。おんな、またひっかかった。」
「腹立つー。うっすら引っ掛かってる自分にも腹立つわ。」
「あははは。」
「笑うな!まったくもう!ところで、魔人のお父さんて何やってるの?」
「まじん。」
「知ってるわよ!」
「おんな!とーちゃんのことしってるのか!」
「違う違う。そう言う意味じゃなくって、まじ」
「ピーンポーン!」
「はーい。」
「はーい。」
「あんたは、返事しなくっていいの。ちょっと待ってなさいよ。戻って来たらお父さんの話の続きするんだからそのまま座ってなさいよ。テレビ見ちゃダメだからね。」
「わかってる。」
「タッタッタッタッタッ。」
「おんないった。いまのうちにてれびみよ。」
「まじーん!!」
「みてないよー!!」
「タッタッタッタッタッ!」
「注文したわね魔人?」
「へ?」
「これよ!これ電話で注文したでしょ!」
「だんぼーる?」
「ただのダンボールじゃないわよ。聞いて驚きなさい!なんと中には!チョー便利調理器具6点セット!プラスまな板が2枚!も入ってるのよ!」
「やったー!」
「やったー!じゃない!」
「わーい!」
「わーい!じゃない!」
「ほんとにきた!」
「来るわよ!来るに決まってるでしょ!そう言うシステムなんだから!」
「うれしー!」
「嬉しくなーい!」
「はやくあけよ。」
「ふっふっふっ。」
「どうしたおんな?なんでわらう?わかった!おんなもうれしいんだ!」
「魔人もまだまだ甘いわね。そっちが勝手に通販の電話注文を使うなら、こっちにも作戦があるわ!」
「?」
「ふっふっふっ。せいぜい今の内に別れを惜しんどくといいわ。」
「おんな、ちょっとこわい。」
「いい?こんなもんは!すぐに!早急に!即時!即刻!すぐさま返品よ!!」
「ピーンポーン!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「ま・じ・ん?」
「お・ん・な?」
「まさか、他にも注文しちゃってないわよね?」
「しちゃった。」
「いっぱいしちゃってないわよね?」
「いっぱいいっぱいしちゃった。」
「そう。しちゃったの。そっかぁ。しちゃったのかぁ。そうだよねぇ。しちゃうよねぇ。見てると欲しくなっちゃうもんねぇ。」
「そうそう。」
「あははは。」
「あははは。」
「バカ魔人!!」
「ばかいらない。ただのまじんでいい。」

第十四話
「女と魔人」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年9月27日 (水)

「第十五話」

「ポッポー!」
「行けー!!」
わしは、機関車の運転士をやっとるかっちょいい男の中の男だ。だから皆からは、敬意を込めてこう呼ばれとる。「キャプテン!」とな。機関車の運転において、この西部中を見渡したとて、このわしの右に出るもんなんぞおらん。そして、このじゃじゃ馬を乗りこなせるのも、わしぐらいなもんだ。この雄大な荒野を乗客を乗せて、こいつと走るのがわしの毎日の日課であり、楽しみでもある。しかしだ!その楽しみを邪魔するもんが時折おるってのが、玉に瑕だ。
「キャプテン!!」
「どうだ!奴等も追い付いて来れんだろ!」
「追って来てます!」
「しつこい奴等だ!」
わしらの旅を邪魔するもんの一つに、列車強盗がおる。しかも、数分前からわしとじゃじゃ馬は、奴等と追い掛けっこをしとる。奴等め!わしの楽しみを邪魔しおって!乗客乗員の安全とわしのプライドに賭けて、負ける訳にはいかん!否、追い付かせる訳にはいかん!
「もっと石炭を入れんか!」
「分かりました!」
奴等がいくら列車強盗と言えども、所詮、乗りもんは馬だ!ええぞええぞ。どんどんスピードが上がってきとる。にゃっはっはっ!
「ポッポー!」
これならこのじゃじゃ馬に何者も追い付いて来れまい!ましてや、奴等の馬なんぞ、絶対に無理だ!
「キャプテン!!」
「よーし!このまま次の駅に向かうぞ!」
「キャプテン!!」
「わーった、わーった!焦る気持ちはあるだろうが、祝杯を挙げるなら駅に着いてからだ!」
「駄目です!」
「おいおい!ここでか?いくらなんでも、ここで祝杯は無理だろう!なんたってバーボンが無い!」
「追い付かれます!」
「なにー!!」
本当か?本当に追い付かれそうなのか?この若造が、わしをびっくりさせようとしとるんじゃないだろうな?驚かせてわしのリアクションを見て楽しむ魂胆じゃないだろうな?若い奴等の考えてる事は、分からんからな。どれどれ?確かめてみるかな。わざと大きなリアクションでもとってやるとするか。
「なんだとー!!」
本当だ!本当に追い付かれそうだ!あれ馬か?
「奴等が乗っとるあれ、馬じゃない可能性があるかもしれんな!」
「馬です!」
馬か!そうか!だったら話が早い!
「全速力だー!!」
「はい!」
見ておれ!わしを本気にさせた事を後悔させてやるわい!
「ポッポー!」
そして!じゃじゃ馬を甘く見た事を思い知れ!この列車強盗どもめ!
「にゃっはっはっ!さすがの列車強盗も、これで追い付いて来れまい!」
これで追い付いて来るならば、そいつは嘘だ!
「来てます!」
「うそだー!!」
「本当です!」
あっ、本当だ!しかし、最近の馬ってのも凄いもんだな。フルスロットルの機関車に追い付くんだからな。たいしたもんだ。って、
「ふざけるなー!!」
「キャプテン?」
「おい若造!何で馬が!馬ごときが!機関車に追い付こうとしとるんだ!」
「分かりません!」
「わしにも分かりません!」
いかんいかん。ついカッとなっちまった。こう言う時こそ、冷静にいこうじゃないか。キャプテンとして、冷静に指示を仰がんといかん!
「ワープ!」
「出来ません!」
落ち着け、落ち着くんだわし!
「飛行モードに切り替えるんだ!」
「なりません!」
「なれ!!」
「なれません!」
「そこの赤いレバーを引くんだ!!」
「見当たりません!」
「付けとけ!!」
なんて無茶苦茶言うんだわし!落ち着け、本当に落ち着けわし!
「ポッポー!」
よし!落ち着いた!
「こうなったら限界ギリギリまでスピードを出す!」
「分かりました!!」
頼むぞ!踏ん張っとくれよじゃじゃ馬!
「ポッポー!」
おーし!きたきたきたー!このボジィに響き渡る振動!ハァトゥに伝わる躍動!若い頃を思い出すわい。あの頃は、こんな無茶ばかりしとったもんだ。
「キャプテン!!」
「何だ!!今、思い出に浸っとるとこだ!!」
「浸らないで下さい!!」
「お前がわしの思い出に浸るタイミングまで仕切るな!!」
「追い付かれます!!」
「だったら!!猶の事!!思い出に浸らせてくれ!!ほっといてくれ!!現実逃避させてくれ!!」
「させられません!!」
「そう来ると思って次の手を用意しとる!!」
「何ですか!!」
「例のお助けロボを呼べ!!」
「キャプテン!!」
「何だ!!」
「真面目にお願いします!!」
「うむ!!」
さて、どうしたもんか?これ以上のスピードアップは、じゃじゃ馬を破壊しかねん。
「おい!」
「はい!」
「おい!!」
「はい!!」
「おい!!!」
「はい!!!」
だが、男には、やらんといかん時があるってなもんだ!!
「さらにスピードを上げるぞ!!」
「無理です!!」
「そんな事は、承知の上だ!!じゃじゃ馬を信じるんだ!!いいか若造!!男に」
「もう!!石炭がありません!!」
「なんてこった!!」
「どうしたらいいんですか!!キャプテン!!」
どーするもこーするも、あーするもそーするもないだろうが!
「ポッポー!」
「何をやってるんですか!!」
「考えとるんだ!!」
考えろ!考えるんだわし!考えて考えて考えまくるんだわし!
「その辺にあるもんを燃やせー!!」
「キャプテン!!」
「何だ!!」
「もうやりました!!」
「なんだってー!!」
すっぽんぽんじゃないか!偉いぞ若造!!立派だ!!今のすっぽんぽんのお前を笑う奴がおったら、その前を隠しとるスコップで、わしがそいつを殴り飛ばしてやる!
「ポッポー!」
この汽笛は、わしとじゃじゃ馬からの敬意の汽笛だ!取っておくんだ若造!
「プシュー。」
まあ、現実ってのは、こんなもんだな。そりゃ、止まるってもんだ。石炭で動いとるんだもん。若造の作業着とパンツで動いとる訳じゃないもん。
「シュー。」
じゃじゃ馬よ。ようここまで走り続けて皆の命を守ってくれたな。よう頑張った。後の事は、このわしに任せておけばええ。お前は、ここでゆっくり休んどれ。
「キャプテン!!」
「声デカイんだよ。もう走っとらんのだから、普通のトーンで聞こえるよ。」
「どうするんですか?」
愚問だ若造!勿の論でこうするまでだ!
「シールド全開!」
「完備してません!」
「レーザー砲の発射を許可する!」
「されても困ります!」
「こうなったら秘密兵器の」
「囲まれてます!!」
「なにをー!」
あっ、囲まれとる。完全に囲まれとるよ。まったくもって、逃げ道なんぞ見当たらんほどに、見事なまでに、囲まれとるよ。
「キャプテン。ここは、奴等の言う通りにしましょう。そうすれば、命だけは助かるはずです。」
「若造。」
「はい。」
「補償は、あるのか?」
「・・・・・・・・・ありません。ありませんけど」
「ばかもん!!乗客の命がかかっとるだ!そんな補償も出来んような事が出来るか!」
「すいません。だけど」
「見てみろ。荒野のサンセットだ。まったく、美しいってもんじゃないか。」
「キャプテン?」
「行くぞ!」
「行くって、いったいどこへです?」
「決まっとるだろ!外へだよ。」
「外に出て行くんですか?」
「当たり前だ!」
「どうするつもりなんですか?」
「戦う!」
「戦うって、武器なんて無いじゃないですか!」
「にゃっはっはっ!武器ならここにある!」
「カード?ですか?」
「男ならポーカーで勝負だ!!」
「それこそ、補償が無いどころの話じゃないじゃないですか!そんな提案をしに外へ出て行ったら、一番最初にキャプテンが殺されますよ!」
「ばっかもーん!お前は!わしが殺されたとこを一度でも見た事があるのか?無いだろ!」
「一度で十分ですよ。」
「さあ、行くぞ!」
「ガチャッ。」
「キャプテン!待って下さい!殺されちゃいますって!キャプテン!!」
さあ、列車強盗ども!目にもの見せてくれるわい!にゃっはっはっ!
「さーてと、リーダーは、どいつだー!!」
「俺だー!!」
「やめましょうよキャプテン。絶対に殺されちゃいますって!」
「うるさい!お前は、黙ってそいつで大事な部分でも隠しとれ!貴様かー!だったらわしとこいつで勝負しろー!!」
「もうどうなっても知りませんよ。」
「奇遇だなぁ。俺もこいつで勝負をつけようと思っていたとこだ!!」
「んな馬鹿な!」
「にゃっはっはっ!だったら話が早いわい!」
吠え面かくなよ列車強盗どもめ!返り討ちにしてくれるわい!!
「ルールは、ファイブカードスタッド!!勝負だ!運転士!!」
「運転士?わしゃキャプテンだ!さあ、来い!列車強盗!!」

第十五話
「サンライズポーカー」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年10月 4日 (水)

「第十六話」

我輩には、人には言えないような
物凄くとんでもない変な癖がある。

その、人には言えないような
物凄くとんでもない変な癖と言うのは

「我輩には、人には言えないような
物凄くとんでもない変な癖がある。」

と、必ず文頭で書いてしまう癖である。

第十六話
「癖だからしょうがない」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年10月11日 (水)

「第十七話」

 説明しよう。ここは、どこにでもあるような喫茶店である。そして、この一見どこにでもいるような若い男。しかし、彼には、人には言えない秘密があるのだ。秘密が何だかは、とても気になるとこだろうが、大丈夫である。それは、何行か先で分かる事なのだ。
「カランコロン。」
説明しよう。喫茶店のドアが開き、怪人カマキリ男が入って来たのである。そして、さっきの若い男の真向かいの席に座ったのだ。
「遅くなってごめん。」
「別にいいよ。」
「いやー、この辺なかなか駐車場が見当たらなくってさ。参ったよ。」
「あそう。」
「いらっしゃいませ。ご注文お決まりでしたらお伺い致します。」
「えーと、それ何?」
「アイスコーヒー。」
「あっじゃあ、俺も同じので。」
「かしこまりました。少々お待ち下さいませ。」
「いやー、この辺なかなか駐車場が見当たらなくってさ。参ったよ。」
「さっき聞いたよ。」
「言った?」
「言ったよ。」
「言ったか。」
「で?」
「で?って?」
「何でこんな所に呼び出したわけ?」
「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ。」
「ああ、すんません。いやほら、今日これから戦うじゃん。」
「そうだよ。何か問題でも?」
「うーん・・・・・・問題と言うか何と言うか。どうだろう?」
「何が?」
「いやほら、戦いだけが全てだろうか?」
「そう言う問題じゃないと思うけど?」
「分かる!分かってる!おたくが正義のヒーローエグゼクティブマンで、俺が悪の怪人カマキリ男だって事だろ?」
説明しよう。そう!怪人カマキリ男の言う通り!この若い男こそが、悪の怪人軍団と戦う正義のヒーロー!エグゼクティブマンなのである!そして、先程の秘密と言うのがこの事だったのだ。
「分かってるならいいじゃん。」
「いい?うーん・・・・・・いくはないんだよ。」
「いくよ。」
「待てって!落ち着けってエグゼクティブマン。」
「でも、ちびっ子達が待ってるから。」
「よーく分かる!怪人をやっつけて、ちびっ子達と遊んであげるその正義のヒーローの使命!分かるわぁ。」
「ならいいじゃん。」
「いくないんだよ。」
「お前悪さしただろ。」
「したと言うか。させられたと言うか。ほら、上の者がやれって言うからさぁ。仕方なくやったんだよね。」
「うん。まーでもそれは、しょうがないよ。さっ、やろうよ。」
「ちょっと待てって!エグゼクティブマン!」
「なに?」
「あれだろ?どうせあのエグ何とか光線?」
「エグゼクティブ光線の事?」
説明しよう。エグゼクティブ光線とは、ご存知!エグゼクティブマンの必殺技中の必殺技である。十本の指全てから放たれる光線で、どんな凶悪な怪人をも倒してきたのだ。
「そう!それ!どうせ今日もそれで決着をつけるんだろ?」
「そうだよ。」
「痛いじゃん。」
「痛いよ。」
「激痛じゃん。」
「うん。でも、それもしょうがないよ。」
「その光線から出てる有害な何かとか、もっと環境問題に目を向けろよ!」
「博士が作ったんだから、そんなもの出てるわけないだろ!」
説明しよう。博士とは、事故で家族を失い、一人生き残った重体の彼に改造手術を施し、正義のヒーローエグゼクティブマンとして蘇らせ、この地球を心から愛する人物であり、エグゼクティブマンにとっては、育ての親なのだ。そして、エグゼクティブマンと共に、悪の怪人達と日々戦っているのである。今は、怪人イノシシ男の時に負った怪我により、最寄の整形外科に通院する日々でもある。
「戦うよ。」
「待てって!俺の話を聞いてくれって!」
「聞いてるよ。」
「だいたいさぁ。俺なんてこのカマだけだよ?」
「でも、そう言う怪人なんだからしょうがないよ。」
「カマと光線だよ?ないわぁ。ない!いや、なにもね。やられたくないって言ってんじゃないんだよ。」
「ならいいじゃん。」
「あいつ死にたくないんじゃないかとか、意気地無しだとかって言う人間がいるかもしれないよ。でも俺は言うね。そんな人間に言うね。やられるのなんて恐くない!」
「エーグーゼークーティーブー!こ」
「待てって!早いって!エグゼクティブマン!」
「止めないでよ!」
「止めるよ!そりゃ必死で止めるよ!」
「やられたくないんじゃん。」
「そーじゃない!そーじゃないよエグゼクティブマン!何て言ったらいいのかなぁ?もっと痛くないのってないの?」
「エグゼクティブタイフーン!」
説明しよう。エグゼクティブタイフーンとは、エグゼクティブマン自身が回転して強風を巻き起こし、怪人を銀河の果てまで飛ばしてしまうのである。過去に一度、怪人ポニー男の時に使用している必殺技である。
「寂しくなるなぁ。他には?」
「エグゼクティブレインボー!」
説明しよう。エグゼクティブレインボーとは、エグゼクティブマンの武器、エグゼクティブバズーカの別名である。七色の光線が発射されるため、そう呼ばれているのである。エグゼクティブレインボーをくらった怪人は、木っ端微塵になり、地球上に少しの肉片すら残す事なく消えて逝く運命なのだ。ちなみに、怪人ポリバケツ男と怪人ミジンコ男の時に使用している必殺技である。
「それ痛いじゃん!」
「一瞬だよ。」
「他のないの?」
「エグゼクティブファイヤー!」
説明しよう。エグゼクティブファイヤーとは、熱い!とにかく熱い!めちゃくちゃ熱い!のである。
「熱いじゃん!熱いのは、痛いのより苦手なんだよね。」
「エグゼクティブ毒!」
説明しよう。毒である。
「苦しいじゃん!苦しいのは、痛いのより熱いのより苦手なんだよね。」
「やっぱりやられたくないだけじゃん。」
「聞いてくれエグゼクティブマン。」
「なんで急にシリアスになるわけ?」
「本当の事を言おう。いや!君には、それを聞く権利がある!」
「本当の事?」
「なぜ、俺がこんなに戦いを拒んでいるのか?」
「うん。」
「本当は、戦いたいんだ!今すぐにでも、エグゼクティブマン!君に倒されたいんだ!だけど・・・・・・・・・。」
「いくぞ!!カマキリ男!!」
「早いよ!だけどって言ったよ?最後まで話を聞けって!そんなんじゃ、正義のヒーローエグゼクティブマンが聞いて呆れるよ。」
「ごめん。」
「戦えない理由があるんだ。」
「戦えない理由?」
「実は、俺のこのカマ。左の方が調子悪いんだよ。ほら見て。ここまでしか曲がらないの。あたたたた。なっ?あたたたた。」
「なっ?て言われても、さっきまで痛がってなかったけど?」
「ついつい強がっちゃうんだよなぁ。そう言うとこあるんだ俺。」
「まあ、それはそれって事で。いくよ?」
「いかないよ!分かってないなぁ。エグゼクティブマンよ。」
「何が?」
「いいかい?こんな手負いの怪人と戦ってるとこをちびっ子達が見たらどう思うと思うのさ。」
「頑張れエグゼクティブマン!」
「頑張る必要性がないだろ!」
「負けるなエグゼクティブマン!」
「負けるかよ!そうじゃなくって!いい?ちびっ子達は、こう思うんだよ。あっ!エグゼクティブマンが弱い者いじめをしてる!ってね。」
「してないよ!」
「してない!確かにしてないんだよ。」
「ならいいじゃん。」
「エグゼクティブマン的にはな。だが!ちびっ子達の目線になって考えてみろよ!どう見てもエグゼクティブマンが怪人カマキリ男をいじめてるようにしか映らないだろ?」
「そうかなぁ?」
「そうですよ!ちびっ子達なめちゃ駄目ですよ。彼等の瞳は、純粋そのものですよ。」
「どんなキャラだよ。だったら、どうすればいいわけ?」
「今度の月曜って暇?」
「暇だけど?」
「よし!その時に決着をつけようじゃないか!」
「えっ!?今日じゃないの?でもまあ、ちびっ子達に誤解されるのも嫌だし・・・・・・・・・分かったよ。」
「じゃ、月曜日にとりあえずまたここで。」
「ここ?ここで戦うの?喫茶店だよ?」
「いいんだよ。とりあえずここに集合って事だよ。いい?分かった?」
「わ、分かったよ。」
「じゃ、今日は俺が。」
「いいよ。自分のは、自分で払うよ。」
「いいんだって!俺が呼び出したんだからさ。」
「いいって。」
「いいのいいの。しまって、しまって!エグゼクティブ財布しまって!」
説明しよう。エグゼク
「無いからそんなもん!勝手に変なアイテム増やさないでよ。これは、ただの財布だから。自分で払うよ。」
「違う違う。今日は、本当にそんなんじゃないから。」
「自分で出すって。」
「いい加減怒るよエグゼクティブマン!カマ出ちゃうよ!」
「わ、分かったよ。ごちそうさま。」
「御礼なんかしなくっていいから、俺の方こそありがとう。じゃ、来週の月曜日にここで。ごめんね今日は。」
「別にいいよ。」
「あっ、ゆっくりしてっていいから。それじゃあ!わっはっはっはっはっ!必ず貴様の息の根を止めてやるからな!!さらばだ!エグゼクティブマン!!カマカマー!!」
「行っちゃったよ。何だったんだろう?来週の月曜日かぁ・・・・・・・・・。すいませーん!御冷下さーい!」
地球の平和とちびっ子達の未来を守るため、今日もエグゼクティブマンは、悪と戦う!頑張れエグゼクティブマン!負けるなエグゼクティブマン!戦え!我等のエグゼクティブマン!!

第十七話
「エグゼクティブマン」

「すいません。領収書下さい。前株で悪の怪人軍団でお願いします。」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年10月18日 (水)

「第十八話」

「お父さん!」
「何だ母さん。そんなに慌てて?それより、新聞取ってきてくれたか?」
「それどころじゃないのよお父さん!」
「何がだ母さん。」
「それがね!大変なのよ!」
「何が大変なんだ?」
「聞いて下さいなお父さん!」
「聞いてるよ母さん。」
「私が新聞を取りに玄関のドアを開けたの。そしたら、郵便受けのところにいたんですよ。」
「何がいたんだ?」
「ちょっと変わった人がですよ。」
「母さん。」
「何です?」
「話がさっぱりなんだが。」
「だからね。私が新聞を取りに玄関のドアを開けたの。そしたら、郵便受けのところにちょっと変わった人がいたんですよ。」
「だから母さん。」
「何です?」
「さっぱりなんだよ。」
「もう!あのね。私が・・・・・・・・・。お父さん来て下さい!」
「ちょ、母さん。母さんは、力があるんだからそんなに引っ張ったら背広が破れちゃうじゃないか。」
「破けたら縫いますから。それより、その細い目を大きく見開いて、ちょっと変わった人を見て下さいよ。」
「おいおい母さん。細い目はないだろ。この細い目と母さんは、何十年間一緒に生活していると思ってるんだ?かれこれ三十」
「その話は、また今度ゆっくりと聞きますから!いいですか?開けますよ?心の準備をして下さいよお父さん!」
「心の準備って母さん。そんなに一大事なのか?母さんが口で説明してくれればいいじゃないか。」
「それを上手く説明できるなら、わざわざお父さんをこんなところまで連れて来ませんよ。」
「こんなところって、玄関じゃないか。だいたいちょっと変わった人、ちょっと変わった人って言うが、何がどうちょっと変わっているんだ?母さん。」
「だから説明できないんですって!いいから自分の目で確かめて下さい。」
「ガラガラガラ。」
「まったく母さんは、朝から大騒ぎなんだから。だいたいそんな人・・・・・・・・・!?な、何だ!何なんだあのちょっと変わった人は!?」
「だから言ったじゃありませんか。」
「母さん。」
「何ですか?」
「あんなにちょっと変わった人を見たのは、わし生まれて初めてだ。」
「私もです。」
「何であんなにちょっと変わっているんだ?」
「さあ?」
「聞いてみよう。」
「やめといた方がいいですよお父さん。」
「母さんは、気にならないのか?」
「そりゃあ、何であんなにちょっと変わっているのか気になりますけど。」
「だったら聞いてみようじゃないか!」
「気を付けて下さいよお父さん。」
「分かってる。あ、あのう、つかぬ事お伺い致しますが、あなたはどうしてそんなにちょっと変わっていらっしゃるのですか?」
「お父さん!」
「母さん!」
「見ました今の?」
「見たよ。何なんだ今のちょっと変わったリアクションは!?」
「何なんでしょう。今のちょっと変わったリアクション!?」
「母さん!」
「何ですか?」
「触ってみよう!」
「ちょっとお父さん。それはどうかと思いますよ?ちょっと変わった病気とかもらったらどうするんです?まだ家のローンも残っているのに。」
「大丈夫だ。こう見えても会社の健康診断では、トップクラスだったんだからな。」
「頭の方もトップクラスだったら、今頃部長になっていて、ローンも払い終えているんですけどね。」
「母さん!それを言ったらおしまいだよ?ん!?」
「どうかしました?」
「何かちょっと変わった匂いがしないか?」
「言われてみれば、ちょっと変わった匂いがしますね。もしかして!」
「そう思うか母さん。」
「そう考えてらっしゃるんですねお父さんも。」
「このちょっと変わった匂いは、あのちょっと変わった人から漂っているに違いない!母さん!」
「はい?」
「わしは、もう我慢できんぞ!触る!」
「あっ!お父さん危ないですよ!ちょっと変わった事をされるかもしれませんよ!」
「な、何だ!?このちょっと変わった感触は!?母さんも触ってみなさい!」
「私は、遠慮しときますよ。」
「いいから触ってみなさい。その段々腹が引っ込むかもしれないぞ?」
「お父さん!お腹の事は、関係ないでしょ!このお腹あってのお父さんじゃありませんか!」
「訳の分からん事を言ってないで早く触りなさい。」
「分かりましたよ。はっ!?何ですかこのちょっと変わった感触!?」
「だろ?触ってみる価値あっただろ?」
「ありました。ありました。」
「母さんが買ってる奇抜な洋服より、よっぽど価値があるってもんだ!」
「聞き捨てなりませんよお父さん!私の服装に何か文句があるんですか?」
「そんな事言ってないだろ?」
「言ったも同然です!」
「おいおい母さん。何もそんなに怒らんでもいいじゃないか。ん?今の聞いたか母さん。」
「聞きました。聞きましたよお父さん。」
「今のちょっと変わった言葉を言ったのは、母さんじゃないよな?」
「はい。お父さんでもないんですよね?今のちょっと変わった声でちょっと変わった言葉を言ったのって。」
「て事はだよ母さん。」
「て事はですよお父さん。」
「ちょっと変わった人が喋ったのか!」
「それしか考えられませんよ!」
「これはもう、祝うしかないな母さん!乾杯しかないだろ母さん!酒だ!酒を持ってきてくれ!我が家で一番高い酒を頼むぞ!」
「お父さん?お言葉ですが、お酒、お酒って事あるごとに言いますけど、いったいそのお酒にいくらかかっているのかご存知ですか?お父さんの安月給でただでさえ毎月やり繰りしていくの大変なんですからね。ですから、お父さんがお酒をもっと控えてくださると、火の車の家計もだいぶ助かるんですけどね。」
「母さん。」
「何です?」
「酒の事をどう言われようがいいとしよう。わしも反省せねばと思ったよ。だが、給料の事を持ち出すんじゃないよ!これでも汗水流して一生懸命働いているんだよ!それを言うに事欠いて安月給はないだろ!!」
「お父さん!」
「何だ!」
「後ろ!」
「後ろが何だ!」
「いいから振り向いてみて下さい!」
「そんな事を言って、話をごまかそうったってそうはいかんぞ!って何なんだこのちょっと変わったダンスは!?どうしてちょっと変わった人は、ちょっと変わったダンスをしているんだ!?」
「分かりませんよ。分かりませんけど・・・・・・・・・。」
「けど何だ母さん。」
「ちょっと変わった人だからじゃありませんか?」
「なるほど。確かに母さんの言う通り、ちょっと変わった人だからだな。」
「それにほら、ちょっと変わった人がちょっと変わったダンスをしながら、ちょっと変わった鼻歌を歌っていますよ。」
「本当だ!!ちょっと変わった人がちょっと変わったダンスをしながら、ちょっと変わった鼻歌を歌って、ちょっと変わった決めのポーズをしている!?はっ!なんてこった!」
「どうしました?」
「わしは、馬鹿だ!」
「知ってます。」
「母さん?」
「冗談ですよ。それより、何なんですか?」
「写真だよ!」
「写真?お父さんの昔の浮気現場のですか?」
「母さん?そりゃもう数え切れないほど謝ったじゃないか。」
「冗談ですって。」
「その話は、冗談にならないからやめてくれ。」
「はいはい。それで?写真がどうしたんです?」
「おお!そうだった!こんなチャンスを写真に撮らないでどうするんだ母さん!」
「そうですよお父さん!あのちょっと変わった人とちょっと変わった記念写真を撮りましょうよ!」
「そうと決まればカメラだ母さん!カメラを持ってくるんだ!」
「すぐ取ってき・・・・・・・・・。」
「どうした母さん?」
「お父さん!」
「どうしたんだ母さん!早くしないとちょっと変わった人が帰ってしまうじゃないか!」
「帰っていきます。」
「何!?何てこった。ちょっと変わった人が帰っていってしまう。」
「残念ですね。」
「残念だ。」
「撮りたかったですね。ちょっと変わった記念写真。」
「撮りたかったな。ちょっと変わった記念写真。」
「お父さん?」
「何だ母さん?」
「それにしても見て下さいよ。あの歩き方を。」
「ああ。ちょっと変わっているな。」
「ちょっと変わっていますね。」
「なあ、母さん?」
「何ですかお父さん?」
「それにしても、ちょっと変わった人だったな。」
「そうですね。」

第十八話
「想像力トレーニング」

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年10月25日 (水)

「第十九話」

 俺は、近所に新しく出来た中華屋に来ていた。もちろん俺が注文したのは、ラーメンだ。俺と言ったらラーメン。ラーメンと言ったら俺。と言われるほど、三度の飯よりラーメン好きの俺が中華屋に来てラーメンを注文しないと言うのは、ミンミンゼミと言われながらヒグラシのように鳴く、ツクツクボウシみたいに不自然でおかしな事だ。
「お待たせしました。」
そう言って大将が運んで来たのは、オムライスだった。なぜ?どうして?いや待てよ。これをオムライスと断言するのは、まだ早いかもしれないぞ。これは、中華料理界に革命を起こそうと大将が長年考えに考え、考え貫いた結果、作り出された新しいラーメンなのかも知れないぞ。疑う前に確かめろ!俺の座右の銘が心の中で熱く叫んだ。
「大将これって?」
俺は、恐る恐るケチャップのかかった黄色い物体を指差しながら尋ねた。ラーメンの概念を根底から覆そうとしている中華料理界の革命児の顔を脳裏に焼き付けようと、人間の身体の構造上、自然と閉じようとする瞼に必死に抵抗しながら。
「オムライスでございます。」
俺の中で何かが音を立てて崩れていった。それは、とても重要な何かだった。なんでだ!なんでオムライスなんだ!俺は、ラーメンを注文したんだぞ?焼きそばや中華丼が運ばれて来るならまだ分かる!なぜオムライスなんだ!どうして中華屋にオムライスがあるんだ!!もしや?
「天津丼?」
「オムライスでございます。」
「餃子?」
「オムライスでございます。」
俺の期待は、ボロ雑巾のようにされて投げ返された。何かとてつもなく異臭を放つボロ雑巾だった。中華屋に来てラーメン頼んだらオムライスが出てくるなんて・・・・・・・・・。世の中ってのは、どんだけ理不尽なんだ!ラーメンとオムライス。オムライスとラーメン。まさかとは思うが、大将の聞き間違いと言う最後の望みを託し、俺は再度注文をしてみる事を心に誓うと共に、大きな声ではっきりと言う試みを決意した。
「ラーメン下さい!」
「ございません。」
大将の答えは、俺の今までの人生観を覆す発言だった。ラーメンがない!中華屋なのにラーメンがない!どんな中華屋だ!!俺の魂の雄叫びが胃の中でこだましていた。ないならないで、どうして最初に言わないんだ大将!そうか!俺の言い方が悪かったのかもしれない。大声出しちゃったから大将にしてみれば、このお客さん怒っちゃったの?風に感じてしまったのかもしれない。ビビッてしまって、ついついあんな発言をしてしまったのかもしれない。よーし。ここはもっと自然に、お客らしく注文しよう。
「いやー大将。最近やっと涼しくなってきたね。」
「はい。そうでございますね。」
「過ごしやすくなってきたね。」
「はい。そうでございますね。」
「ラーメン下さい。」
「ございません。」
くそ!駄目か!いやいや、まだ諦めるのは早いぞ!だったら注文のしかた自体を変えてやる!
「ラーメン下ちゃい。」
「ございません。」
「クダサイラーメン。」
「ございません。」
「ペプロポポポン。」
「ございません。」
赤ちゃんも外人さんも宇宙人も大将には、通用しないって事なのか!俺のボキャブラリを超えている。負けるな!負けるな俺!ございますと言わせるんだ!そう言わせるように大将を誘導するんだ!
「この店は、トイレってあるの?」
「ございます。」
「会計の時に一万円札出しても、全部お釣りが千円札にならないように、ちゃんと五千円札も用意してあるの?」
「ございます。」
「ラーメン下さい。」
「ございません。」
「中華屋には普通、中華料理があるよね?」
「ございます。」
「ラーメン下さい。」
「ございません。」
「ラーメン下さい!」
「ございません!」
頑固者か!!大将の八割以上が頑固で出来ているのか!!こんな中華屋の大将が存在していいのか!!それ以前にこんな中華屋が存在していいのか!!近隣住民からの反対運動やら中華料理界からの勧告とかないのか!!ここまで来るとこの大将には、常識が通じない。そう思った俺は、とんでもない非常識な質問をぶつけてやろうと考えた。もしかしたら今の俺の顔を鏡で見ると、悪魔のような微笑みを浮かべているのかもしれない。ぶつけてやる。質問をぶつけてやるぞ。中華料理の神がいるのなら、間違いなく俺に罰が下るであろう悪魔の質問をな!
「大将は、ラーメンって食べ物を知ってる?」
「存じております。」
なら作れ!すぐ作れ!そして、中華料理の神に懺悔しろ!!
「ラーメン下さい。」
「ございません。」
悪魔だ!この大将こそ悪魔だったんだ!おお神よ。中華料理の神よ。我を守りたまえ。そして、この悪魔の大将を悔い改めさせ、ラーメンを作らせたまえ。
「ラーメン下さい。」
「ございません。」
恐いもの知らずか!神すら駄目って事なのか?神ですらこの大将をどうする事も出来ないと言うのか!神をも恐れない、悪魔の大将だったんだ!!そして、俺に残された道は、この呪いのオムライスを食べると言う選択肢だけなのか!どうなってしまうんだ?この呪いのオムライスを口にした俺は、いったいどうなってしまうと言うんだ?大将の僕となり、一生この中華屋でタダ働きさせられてしまうのか?それとも、俺もオムライスにされてしまうのか?そう言えば!店にいる客は、俺だけだ!
「大将?今日は、他に客はいないの?」
「当店に本日ご来店された方は、お客様で二人目になります。」
やっぱりか!!このオムライスは、俺の前にやって来た客だったんだ!純粋に中華料理を食べに来ただけの穢れなき清き心の持ち主だったのに、悪魔の大将の魔の手にかかり、オムライスにされてしまったんだ!そして俺も、オムライスにされてしまうんだ!なんて事だ。こんな運命だなんて!俺は、ただラーメンが食いたかっただけだったんだ。あんまりだ。しかし、運命に逆らう事が果たして出来るのだろうか?生まれた時から運命が決まっているのなら、それを変える事なんて出来やしない。俺は、オムライスになる運命だったと言う事か。しかし!俺は、捩じ曲げてやるぞ!そんな運命を捩じ曲げてやる!運命なんてくそ喰らえだ!
「ラーメン下さい。」
「ございません。」
その瞬間。俺は、何かを悟った。運命とは、時に残酷なもんで、それを受け入れる事が出来るかで、その人間の価値が決まるものなんだ。だったら!だったら受け入れてやろうじゃないか!俺の生き様を見せてやろうじゃないか!俺は、震える右手でスプーンを掴んだ。そして、大将を睨み付けながらこう言った。
「いただきます。」
俺は、頭の中で走馬灯のように駆け巡る今までの人生を噛み締めると共に、震える右手で口の中に入れたオムライスを噛み締めていた。これからオムライスになる俺を、不適な笑みで嘲り笑っているかのように、悪魔の微笑みを浮かべている悪魔の大将の顔を見ながら。
「うっ!」
「お客様?どうかなさいましたか?」
「美味い!!」
なんて美味いオムライスなんだ!この卵のふわっふわっ感!そして、ケチャップご飯の絶妙な味付け!二つが一つになった時の神懸り的なこの美味さ!究極のオムライス!キング・オブ・オムライス!いや、神のオムライスだ!俺は、我を忘れてオムライスに夢中になった。俺のスプーンを持つ右手は、止まる事なく、気が付けばあっと言う間にオムライスをぺろりと平らげてしまっていた。
「美味かったよ大将!ごちそうさま!」
「ありがとうございます。」
そう言った時の大将が見せた微笑みは、まるで仏のようであった。深々と頭を下げる大将の姿は、俺には眩しく神々しく見え、とてもじゃないが凝視する事が出来なかった。ふと気が付けば、頬には熱い何かが伝っていた。
そして、感動に打ち拉がれながら会計を済ませ、五千円札の混じったお釣りを受け取り店を出た俺は、店の看板を改めて見て笑った。どうでもいいじゃないか。そう思った。それは、何だかとても清々しい気分だった。それから俺は、またこの店にラーメンを食べに来ようと、固く心に誓った。

第十九話
「中華屋にて・・・・・・・・・」

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年11月 1日 (水)

「第二十話」

登場人物
ジョニー
グラハム捜査官
ヴェネッサ捜査官
ダイバー
ニールマン保安官
ファイファー医師
ローディス町長
教祖エンジェル
ザンベンカン神父

1:00PM
「バリバリバリ!!」
「ザァァァァァァァァァァァ!!」
この小さな町では、雷が鳴り響くと共に傘を差しても意味がないほど酷い雨が七日間も降り続いていた。普段ならそれなりに人も出歩いているようだが、今はゴーストタウンと化していた。そんな中、五十代半ばの男性が運転し、二十代後半の女性が助手席に乗る一台のクラシックカーが走っていた。
「どうして私達がこんな田舎町まで来なくちゃならないの?」
「しょうがないだろ?六日で六人が殺されとるんだ。地元警察だけじゃお手上げなんだよ。」
「だからって何も本当に私達がこんな田舎町まで来る事ないじゃない。」
「まあ、いいじゃないかヴェネッサ。バカンスだと思えば楽しいだろ?」
「グラハム?あなたのバカンスに着いてって、今まで楽しかったって事がある?」
「そんな事言いながらも、今回の事件のプロファイリングもちゃーんとしとるんだろ?」
「当たり前じゃない!だいたいあなたは、いつも無計画過ぎるのよ。」
「で?いったいどんな奴なんだ?」
「まず間違いなく男性ね。二十代後半から三十代後半。とても頭がいいわ。唯一残されていた足跡からも分かるように、細身で長身。何かに対しての復讐かもしれないわ。」
「復讐?なぜ?」
「さあ?」
「さあ?っておい。」
「だってこれは、私の勘だから・・・・・・・・・。でも、復讐あるいは・・・・・・・・・戒めなのかもしれない。」
「戒め・・・・・・・・・か。」
「バリバリバリ!!」
相変わらず雨は、激しく降り続き、止む気配などまったくなかった。

5:00PM
「やれやれ。犯行現場を五ヶ所回って手掛かりゼロか。参ったのぅ。」
「そんなの分かりきっていた事じゃない。この雨よ?全て流されてるわよ。おそらく犯人は、狙っていたのよ。ハリケーンが直撃するこの時期を。」
「クソヤローが!!」
「ねぇ。犯人をそう呼ぶのやめてって言ってるでしょ?」
「クソヤローをクソヤローと言って何が悪い!こいつは、赤ん坊まで殺しとるんだぞ!」
「私だって許せないわよ。けど、汚い言葉使いは、好きじゃないの。」
「そうかいそうかい。おっと、見えて来たぞ。赤ん坊が殺された病院が。」
「ちょっと待ってよ!何であいつがいるのよ!」
「あいつ?」
「ほら!病院の入口の所よ!」
そう言ってヴェネッサが指差した先には、レインコートを頭からかぶった男が激しい雨に打たれながら二人の乗る車に向かって、両手を大きく振っている姿があった。
「ああ、ダイバーの事か。」
「どうしてここに?」
「どうやら捜査に協力したいと長官に直談判したらしい。」
「知ってたのね!」
「知っとったよ。」
「なぜ教えてくれなかったのよ!」
「言ったとこで、お前さんの怒りを買うだけだろ?それに、わしだってあいつの事は好かん。だが、長官命令には、逆らえんだろ?」
「ダイバー。所謂、超能力捜査官。犯人の心の中に潜り込み、被害者を見つけ出す。」
「付いたあだ名がダイバーか・・・・・・・・・。」
「でもなぜ?ダイバーは、主に行方不明の被害者の捜索を担当しているはずよ?今回のケースは、六人とも発見されているわ。」
「分からんよ。新しい力でも目覚めたんじゃないか?」
「ダイバーと一緒に仕事だなんて、最悪だわ。」
「そう言えば、お前さんの言っとったプロファイリングに当て嵌まるんじゃないか?頭がいい部分を除いてはだがな。」
「そうね。案外ダイバーが犯人かもね。」
「なっはっはっはっはっはっ。だったら」
「グラハム!!」
「馬鹿な!!」
激しく左右に振られているワイパーの先に見えたのは、先程まで両手を振って立っていたダイバーが、地面に倒れている姿だった。

8:30PM
病室の中には、ベットに横たわるダイバーと、そこから少し離れた所で会話をしているグラハムとヴェネッサの姿があった。
「ドクターファイファーが言うには、外傷などは、まったく見られないし、心臓発作や何か持病があるわけでもない。精密検査をした結果も健康体そのものなんでしょ?」
「やれやれだな。」
「グラハム?まさかダイバーが襲われたって言うんじゃないでしょうね?」
「ダイバーは、間違いなく今回の事件の犯人に襲われた。犯人は・・・・・・・・・。」
「ちょっとやめてよグラハム。だいたいドクターは、見た感じ五十代よ?私のプロファイリングに当て嵌まらないわ。」
「おいおい。お前さんのプロファイリングが絶対とは限らんだろ?それに、被害者六人全員が、ここ最近ファイファーの診断を受けとるんだ。」
「それだけでドクターを犯人扱いするのは難しいんじゃない?ドクターが怪しいって言うなら、あの保安官だって怪しいわ。」
「ニールマンか。」
「彼がこの町の保安官として就任して来た日から、今回の事件が起こっているのよ?」
「教団の方はどうだ?」
「教祖エンジェル?」
「二日目の被害者は、教団内の信者なんだろ?」
「教祖エンジェルは女よ?だったら、ザンベンカン神父の方が怪しいわ。最近、教団とよくぶつかり合っていたみたいだしね。」
「町長はどうだ?」
「町長?ローディス町長?どうして町長が殺人なんてしなくちゃいけないわけ?」
「町長選挙の時、何やらえらくもめとったらしいじゃないか。それに、その時のもう一人の立候補者が五日目の被害者。」
「グラハム?こんな小さな町よ?どんな些細な出来事でも、何かと何かを無理矢理にでも繋げる事が出来てしまうわ。それに、今までの人物の中に私のプロファイリングに当て嵌まる人物はいないわ。」
「たまにその自信が羨ましくなるわい。それじゃあ、ここは任せたぞ。」
「えっ?何よ。どこ行くのよ。」
「どこって?捜査に決まっとるだろ?お前さんは、ダイバーの側にいてやってくれ。またこやつが狙われんとも限らんからな。」
「嫌よ!私も行くわ!」
「ここをがら空きにして何か起こってみろ。それこそえらい事だぞ?キャリアに傷が付くぞ?」
「キャリアなんて関係ないわ!私は、ダイバーと一緒にいなきゃいけないこの状況が嫌なだけよ!それに」
「ヴェネッサ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「任せたぞ。」
「分かったわよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「どうしたの?早く行ったら?」
「のぅヴェネッサ?わしは、こういった小さな町で怪事件が起こるとたまに思っちまうんだよ。もしかしたら町ぐるみの犯行で、それを町民全員で隠しとるんじゃないかってな。」
「・・・・・・・・・。考え過ぎよ。そんな事ありえないわ!」
「なっはっはっはっ。行ってくる。」
「グラハム!」
「ん?」
「気を付けてね。」
「分かっとるよ。」
グラハムは、振り向かずに軽く右手を上げながら病室を出て行った。

11:45PM
「ん?いけない!いつの間にか眠ってしまっていたわ。えっ!?ダイバーがいない!?」
「隣だよヴェネッサ。」
「驚かさないでよ!!」
「シー。奴がここに向かって来てるんだ。」
「奴って?」
「犯人だよ。」
「どうしてそんな事が分かるのよ。」
「困るなヴェネッサ。僕の力を忘れちゃったのかい?僕は、ダイバーだよ?犯人の心の中にダイブしたのさ。」
「犯人は、誰なの?」
「グラハムだよ。」
「まさか!グラハムが犯人なわけないじゃない!」
「ジョークさ。ヴェネッサー、君のプロファイリングで分からないの?僕だよ。」
「えっ!?」
「ぼーく!この怪事件の犯人は、僕だよ。」
「笑えないジョークは、やめなさいよね。」
「ジョークなんかじゃないさ。それは、君も分かっているんだろ?だから、これを探している。」
「いつの間に!」
「君が気持ち良さそうに眠っている間にね。こっそり拝借させてもらったんだよ。ふーん。実際に持ってみると意外と重たいもんなんだね。銃って。」
「なぜなの?どうしてこんな事件を起こしたの?」
「原因は、君達さ。」
「私とグラハムが?」
「僕がどんなに超能力捜査で結果を出しても、君達二人は、頑なにそれを認めようとしなかった。」
「認めていたわ。ただ、信じていなかっただけよ。」
「同じ事さ。知ってるかい?君達は、君達が思っているよりも、周りに影響力があるんだよ?だから、僕がいくら結果を出しても、君達が認めてくれない限り、周りも認めようとしなかった。いつまで経っても僕は、ペテン師扱いさ。僕にしてみたら君達二人は、究極に目障りなんだよ!!だから、君達二人を殺す事にしたのさ。」
「私達が狙いなら、なぜこの町の人達を殺す必要があったのよ!」
「ヴェネッサー。もっと頭を使いなよ。餌だよ。えーさ。怪事件なら怪事件なほど、君達が食らい付くと思ったからね。」
「で、私達が捜査に乗り出した所を見計らって、自ら長官に協力すると申し出たのね。」
「正解。」
「だったらどうして赤ちゃんまで殺す必要があったのよ!五人目の被害者が発見された時点で私達は、ここに来るのが決まっていたのよ!」
「簡単さヴェネッサ。雨が降っていたからだよ。せっかく雨に擬えた殺人事件なんだからさ。途中でやめられないだろ?」
「・・・ソ・・・・・・ヤ・・・・・・。」
「ん?何て言ったんだい?」
「このクソヤロォォォォォォォ!!」
「君は、そのクソヤローに殺されるんだよ?後の事は、僕に任せておいてよ。ちゃーんと事件を解決しとくからさ。」
「カチッ。」
「グラハムが犯人なわけないじゃない!」
「カチッ。」
「このテープに録音した君の声。これを使って、グラハムを犯人に仕立てて、その事実を知った君は、銃で頭をぶち抜いて自殺。こんな小さな町なんて、簡単に騙せるよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「安心しなよ。すぐにじいさんもあの世に行くからさ。これで、やーっと僕の華々しい人生が幕を開けるよ。それじゃあヴェネッサ。さよう」
「バタンッ!」
「バン!バン!バン!」
「ドサッ。」
「ヴェネッサ!!」
「グラハム!?どうしてここに?」
「何だか妙な胸騒ぎがしてな。ここに向かっとる途中で病室の方からお前さんの大声が聞こえたんで、犯人と一緒におるって分かったんだよ。まさか、ダイバーが犯人だったとは・・・・・・・・・。」
「グラハム?これで分かったでしょ?私のプロファイリングの正確さが。」
「なっはっはっ。言ったろヴェネッサ。このクソヤローは、頭が悪いと。お前さんのプロファイリングもまだまだだな。」
「ちょっと?犯人をそう呼ぶのやめてって言ってるでしょ!」
「やれやれ。おっ!いつの間にか、雨が止んどるぞ。真ん丸お月さんだ。」
「ふぅ。本当にやれやれね。」
「そうだ!!」
「な、なに!?」
「そう言えばさっき、長官が電話で言っとったんだがな。謎の」
「聞きたくない!どうせ、くだらない事でしょ!」
「くだらなくなんかないぞ。謎の」
「聞きたくないって言ってるでしょ!」
「聞いて損はせんから。今度は、大都会のど真ん中だぞ?そこにな」
「嫌よ!私は、絶対に行きませんからね!!」
「お、おい?どこ行くんだヴェネッサ!おい!ヴェネッサ!オフィスビルの中で謎の」
ヴェネッサの後を追うようにして、グラハムも病室を出て行った。
12:07AM

第二十話
「ところでジョニーは?」

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年11月 8日 (水)

「第二十一話」

ぽろろ~ん

そらがぁ
あおくてぇ
きもちがよくってぇ

くもがぁ
たかくてぇ
きぶんがよくってぇ

なーんもかんもがぁ
どーでもよくってぇ

どーんなもんだとぉ
むねをはってみてぇ

へいわだね へいわだね

ぽろろ~ん

とりがぁ
さえずってぇ
ゆうがにはばたいてぇ

あめがぁ
ふってきてぇ
すがすがしくってぇ

どーでもいいことぉ
どーでもよくってぇ

めーんどくさいことぉ
ほっぽりだしってぇ

じゆうだね じゆうだね

ぽろ~ん ぽろ~ん
ぽろ~ん ぽろ~ん

みたくないせかい

ききたくないうわさ

においたくないしゃかい

くちにしたくないニュース

きらいだね きらいだね

ぽろろろろ~ん

にじがぁ
かかってぇ
こころがおどってぇ

ゆめがぁ
かなってぇ
だれかがわらってぇ

なーんかそんなこともぉ
どーでもよくってぇ

ここーにいるだけでぇ
しあわせなんだなぁ

へいわだし じゆうだし

ここがいい なんかいい

ここがすき なんかすき

そーんなかんじでぇ
まいにちがすぎていくぅ

ぽろろ~ん

第二十一話
「井の中の蛙
  あえて大海を知らず」

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2006年11月15日 (水)

「第二十二話」

「王様です。」
王様が言った。
「知ってるよ。」
チビ・ハゲ・デブの三人の大臣が言った。
「ひま。」
王様が言った。
「それでは王様。チェスでもいたしましょう。」
チビ大臣が言った。
「昨日もそれ言ってたよ?君ベタ。」
王様が言った。
「すいません。」
ベタ大臣が言った。
「だったら王様。女性でも呼んで盛り上がりましょう。」
ハゲ大臣が言った。
「そんなんしたら王妃に叱られちゃうよ?君はエロだな。」
王様が言った。
「すいません。」
エロ大臣が言った。
「ならば王様。他国から美味しい食べ物を取り寄せましょう。」
デブ大臣が言った。
「君が食べたいだけじゃん。だから、いつまで経ってもそんなんなんだよ。」
王様が言った。
「すいません。」
デブ大臣が言った。
「王冠重い。」
王様が言った。
「それでは王様。ガラスで作り直しましょう。」
ベタ大臣が言った。
「いやそれって、見た目軽そうだけど、なんやかんやで今より重くなる可能性大じゃん。君頭悪いよ。」
王様が言った。
「すいません。」
バカ大臣が言った。
「だったら王様。最高級和紙で作り直しましょう。」
エロ大臣が言った。
「風吹いたら飛んじゃうよ?見る人が見れば最高級和紙って分かるけどさぁ。あんま伝わんないんじゃないの?和風じゃなくって、洋風がいいんだよね。」
王様が言った。
「すいません。」
和風大臣が言った。
「ならば王様。クッキーで作ると言うのはどうでしょう。」
デブ大臣が言った。
「洋風だけどさぁ。お菓子じゃん。だからそれってとどのつまり君が単に食べたいだけなんでしょ?」
王様が言った。
「すいません。」
デブ大臣が言った。
「マント暑苦しい。」
王様が言った。
「それでは王様。国の科学力を駆使いたしまして、涼しいマントを作らせましょう。」
バカ大臣が言った。
「そりゃいつの日にかは、出来るかもしんないよ?そんな夢のようなマント。でも、現在の段階で何とかして欲しいんだよね。」
王様が言った。
「すいません。」
未来大臣が言った。
「だったら王様。女性に大きなうちわを持たせ、両側から扇がせましょう。」
和風大臣が言った。
「ほらまた女の人出て来ちゃったよ?んな事したら王妃に叱られちゃうって言ったよ?それに、そんな光景テレビでしか見た事ないっつーの。」
王様が言った。
「すいません。」
TV大臣が言った。
「ならば王様。湯葉で作りましょうか。」
デブ大臣が言った。
「食べ物もうよくない?一旦さぁ食べ物から離れられないかなぁ?いつ見てもしわしわじゃん。」
王様が言った。
「すいません。」
デブ大臣が言った。
「ヒゲやだ。」
王様が言った。
「それでは王様。全部剃ってしまって、描いてみてはどうでしょう。」
未来大臣が言った。
「どう見ても変だろ。それ変態だよ。」
王様が言った。
「すいません。」
変態大臣が言った。
「だったら王様。クリスマスツリーの飾り付けのように、きらびやかにファッショナブルにいろんな装飾を施してみてはどうでしょう。」
TV大臣が言った。
「重い。それにさぁ。コードの範囲しか活動出来ないじゃん。」
王様が言った。
「すいません。」
重力大臣が言った。
「ならば王様。ヒゲを全部剃り、代わりにわたあめを付けてみてはどうでしょう。」
デブ大臣が言った。
「顔ベッタベタ。」
王様が言った。
「すいません。」
デブ大臣が言った。
「お城の色いや。」
王様が言った。
「それでは王様。いろいろな色を混ぜ合わせて塗り直しましょう。」
変態大臣が言った。
「君知ってた?それやると黒が出来上がっちゃうんだよ?だったら最初から黒で塗ればいいじゃん。」
王様が言った。
「すいません。」
暗黒大臣が言った。
「だったら王様。黒で塗り直しましょう。」
重力大臣が言った。
「それ王様の意見だよ?なんか自分で考え出したみたいに言っちゃってないかい?てか、黒がいいなんて一言も言ってませんよ。」
王様が言った。
「すいません。」
漆黒大臣が言った。
「ならば王様。お城をのりで巻いてみてはどうでしょう。」
デブ大臣が言った。
「だから、それも黒だし食べ物だしさぁ。」
王様が言った。
「すいません。」
デブ大臣が言った。
「会議出たくない。」
王様が言った。
「それでは王様。王様は、今後会議に出席しなくてもいいと言うのはどうでしょう。」
暗黒大臣が言った。
「それマズイでしょ。王様いないのかなりマズイでしょ。」
王様が言った。
「すいません。」
粉薬大臣が言った。
「だったら王様。出ても出なくてもいいと言うのはどうでしょう。」
漆黒大臣が言った。
「なんか省かれてる感が否めないなぁ。」
王様が言った。
「すいません。」
毒蛇大臣が言った。
「ならば王様。ゴロゴロしながらリラックスした体勢で参加するのはどうでしょう。」
デブ大臣が言った。
「だから太るんだよ。」
王様が言った。
「すいません。」
デブ大臣が言った。
「玉座座り心地悪い。いっつもお尻イッタイイッタイなる。」
王様が言った。
「それでは王様。トランポリンにしてみてはどうでしょう。」
粉薬大臣が言った。
「ふざけてんの?上下運動激しくって、話し相手が首イッタイイッタイなっちゃうよ?」
王様が言った。
「すいません。」
追突大臣が言った。
「だったら王様。ここは、思い切って地べたに正座はどうでしょう。」
毒蛇大臣が言った。
「あーなるほどね。ってコラッ。どうして王様が地べたに正座なんだよ。そげん事したら足イッタイイッタイなっちゃうよ?」
王様が言った。
「すいません。」
反省大臣が言った。
「ならば王様。玉座を腐ったバナナで作ってみてはどうでしょう。」
デブ大臣が言った。
「ツッコミどころが多過ぎだよ。中でも一つだけ言わせてもらうと、それってもうイッタイイッタイ言わせたいだけでしょ?お腹イッタイイッタイ言わせたいだけなんでしょ?」
王様が言った。
「すいません。」
デブ大臣が言った。
「王妃ブス。」
王様が言った。
「それでは王様。整形手術をオススメしてみてはどうでしょう。」
追突大臣が言った。
「何て言うの?王妃は、ブスだから手術してって言うの?言えませんよ。そんな事言ったら殺されちゃいますよ。」
王様が言った。
「すいません。」
オペ大臣が言った。
「だったら王様。離婚されてはどうでしょう。」
反省大臣が言った。
「いや、好きは好きなんだよ?そんな国レベルの事件にしちゃダメ。」
王様が言った。
「すいません。」
報道大臣が言った。
「ならば王様。特殊メイクはどうでしょう。」
デブ大臣が言った。
「今でも十分、特殊メイクですよ。君も毎日見てるじゃないの。」
王様が言った。
「すいません。」
デブ大臣が言った。
「ペット飼いたい。」
王様が言った。
「それでは王様。熱帯魚などはどうでしょう。」
オペ大臣が言った。
「うーん。そう言うちっちゃな生き物じゃなくって、出来れば触れ合えるペットがいいんだよね。」
王様が言った。
「すいません。」
チビ大臣が言った。
「だったら王様。鷲などはどうでしょう。」
報道大臣が言った。
「かっこいいんだけどさぁ。かなり恐いよね。直に触れ合えないと思うよ?やっぱり哺乳類がいいな。」
王様が言った。
「すいません。」
ハゲ大臣が言った。
「ならば王様。豚などはどうでしょう。」
デブ大臣が言った。
「完全に君が食べようとしてるよね?」
王様が言った。
「すいません。」
デブ大臣が言った。
「寝る。」
王様が言った。
「おやすみなさいませ王様。」
チビ・ハゲ・デブの三人の大臣が言った。

第二十二話
「王様と三人の大臣」 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年11月22日 (水)

「第二十三話」

「あー全然思い付かない。参った。」
どうしたんですか先生?まさかスランプなんじゃないでしょうね?
「スランプ?スランプな訳ないじゃないか。」
だったらなんで頭を抱えてるんですか?
「今回の『COSMIC☆COMEDY』の話のネタが思い付かないんだよ。」
それスランプって言いません?
「言いませんよ!言ってたまりますか!だって、第二十四話の話のネタは、もう決まってるんだもん。第二十三話だけが浮かばないだけだもん。」
そんな可愛らしく言われても・・・・・・・・・だったら第二十四話を第二十三話に持ってくれば済む話じゃないですか。
「君は、なんも分かっとらんね。」
急に年を取りましたね。分かってないとは?
「だからさぁ。全体の流れっつうもんがあるだろ?内容的にかぶっちゃう話がある訳だよ。」
ふむふむ。
「なっ?」
いやちょっと話が中途半端で、まったく分かりませんよ先生。
「いい?僕的にはさぁ。例えば食べ物を題材にした話の次に、また食べ物を題材にした話とか。じいさんが主人公の話の次に、またじいさんが主人公の話とか。連続して話の背景を似せたくないって事だよ。」
なるほど。何となく分かりました。と言うよりも、先生そう言う全体の流れとか気にしていたんですね。
「当たり前だろ!どんだけちゃらんぽらんに見えてるんだよ!短編書いてるんだから、そう言うとこ一番気にしちゃいますよ。季節の変わり目に着る洋服ぐらい気にしちゃいますよ。」
大変ですね。
「大変だよ。大変だからさぁ。第二十三話を飛ばして、いきなり第二十四話ってのはどう?」
どう?ってさっきまであんな事を言ってた人の発言ですか?
「二十一、二十二、二十四。てな感じでさぁ。」
駄目に決まってるじゃないですか!
「バレないだろ?」
間違いなくバレますよ!それに、そんな事をしたら貴重な時間を割いて『COSMIC☆COMEDY』を読んで下さっている。読み手の方々に大変失礼ですよ。
「たいした数じゃないだろ?」
確かにたいした数ではないですよ!たいした数ではないですけど!それは失礼な事ですよ!
「君、意外とサラっとグサっと失礼な事を言うね。たいした数とかそんなん言うな!一人だろうが読んでくれている人がいる限り!俺は、書き続けるんだよ!!」
なんか私が言ったみたいになってません?まあでも、その意気ですよ先生。
「こう言うのどう?」
アイディアですか?
「とりあえず第二十三話は、抜かしておいてさぁ。そのうち浮かんだら書くって言うのは?」
何ですかそれ?
「だからね。第二十三話を空白にしといて、思い付いた時に書くんだよ。」
夏休みの宿題じゃないんですから、後回しにしてどうするんです。そもそもそんな事が許されると思ってるんですか!
「そんな怒るなって。ちょーっと言ってみただけじゃないのさ。」
まったく!どんだけ自由なんですか!
「君ねぇ。僕から自由を取ったらなんも残らないんだよ?こんな言葉聞いた事ある?」
どんな言葉ですか?
「天才とは、99%の努力と1%のひらめきである。」
なんかそんなような言葉聞いた事ありますね。先生もそうなんですか?
「先生?先生は違いますよ。先生の場合は、99%の自由と約1%のひらめきだな。」
努力して下さいよ!
「あとほんのちょぴっとの努力。」
わがままな女ですか!
「わがままな男です!」
わがままの部分も否定して下さいよ。なに乗っかっちゃってるんですか。
「じゃあ決まりだね。」
何ですか?その満面の笑みと親指は?私の知らない所でいったい何が決定してしまったのですか?
「空白でいこう。」
却下ですよ!
「えー思い付かないもーん。お金無いもーん。」
誰も飲みに行こうなんて誘ってませんよ。お金なんか使いませんから安心して下さい。その代わりに頭を使って下さい。
「君さぁ。さっきっからあーだこーだ言ってるけどさぁ。だったら自分が書いてみろよ!」
キレるとこおかしくないですか?『COSMIC☆COMEDY』は、先生の作品なんですよ?何を寝ぼけた事を言ってるんですか!
「寝言は、寝てから言え・・・・・・・・・か。」
そうですよ先生。頑張ってアイディアを捻り出して下さいよ。
「寝る。」
どこフィーチャーしちゃってるんですか!何を恐ろしい事言っちゃってくれてるんですか!そうじゃなっくって!
「分かってるよ。第二十三話だろ?一生懸命考えてますよ。」
お願いしますよ。
「あっ!!」
アイディア出ましたか!
「出たよ!出た!」
どんなお話ですか?
「これ。」
これ?
「これだよ。」
これって?
「そうだよ。これだよ。この手があったよ!」
いやいや先生。私には、さっぱり理解が出来ないんですが。これとは、いったい何の事なんですか?
「君とのこの会話自体を作品にしちゃうんだよ。」
ご冗談を。
「冗談なんかじゃない!なかなか斬新なアイディアだろ?」
斬新なアイディアと言うか、もはや裏話じゃないですか!小説じゃなくて単なる会話じゃないですか!
「しょうがないだろ?これしか思い付かなかったんだからさ。前にもこんな風な作品があったんだからいいじゃないか。」
あれは、割合が半分半分だったからいいんですよ。しかも、あれはちゃんと作品として成り立っているじゃないですか。これって全部じゃないですか。ストーリー性なんかまったくありませんよ?ゼロですよ?ゼロ!
「そこが逆にいいんじゃないか。全編を通して大スペクタクルじゃないか。」
逆の意味も大スペクタクルの意味もまったく分かりませんが?
「だから、第二十三話が出来るまでをドキュメンタリータッチでお送りするんだよ。」
大スペクタクルはいったいどこ行っちゃったんですか?ドキュメンタリーもなにも企画会議にすらなってないですよ。
「第二十三話のタイトルは、REALでいこう!」
もう私が何を言っても、輝いた目の先生を止める事は、出来ないんですね。でも先生。なぜタイトルがREALなんですか?ドキュメンタリーやノンフィクションの方がいいじゃないですか。REALじゃちょっと伝わりにくくないですか?
「ドキュメンタリーやノンフィクションでも良かったんだけどさぁ。なんかアルファベットにしとけば、若者の支持も得られそうじゃない。若者の支持も欲しいじゃない。」
そんな取って付けたような事を言って、ただ単に先生が格好付けたいだけじゃないんですか?
「それもある。」
否定して下さいよ。まあとりあえず第二十三話は、こんな作品でいいんですね?
「こんなって何だよ!これでも一生懸命考えたんだよ!それをこんなの一言で片付けるな!」
なんか立派風な事を言ってますけど、考えなどなく流れだけで作った話じゃないですか!
「バレたか。バレちゃっちゃーしょうがない。そうだよ。ちゃんとした話が思い付かなかったから、苦し紛れに出来ちゃった作品だよ。棚ぼただよ。棚ぼた。」
まあ、多少表現は間違っていますし、けして自慢出来る事じゃありませんけどね。
「あれだよ?意外と第二十三話が好きだって人がいるかもしんないよ?」
絶対いませんよ!だいたいこう言った作品って言うのは、百話記念だとか一周年記念だとか、もしくは番外編クラスの作品ですよ?第二十三話なんて中途半端な時に誰もやりませんよ。
「まさに伝説だな!」
そんなたいそうなもんじゃないですよ!恥ですよ!恥!
「人間恥じる事によって成長していくんだよ!」
どんだけポジティブシンキングなんですか!先生は今!無謀で失礼な事をやろうとしているんですよ!読み手の方々に申し訳ないと思って下さい!
「私は、物書きだよ?物書きの端くれだよ?申し訳ないと口で言うのは簡単だよ。誰でも出来る!私は、言葉じゃなく文章で表すのだよ!」
謝罪文でもお書きになるんですか?
「だから、第二十四話に期待してもらいたい!」
捨て石ですか!もはや第二十三話は、先生の中では捨て石なんですか!
「うるさい!第二十三話も愛すべき作品だよ!立派な作品だよ!何が悪い!この作品のどこがいけない!もう書いちゃう!タイトル書いちゃう!この覚悟は、誰にも止められない!誰も止める事など出来やしない!!さっ、タイトル書いちゃおーっと。」
分かりましたよ先生のその覚悟。私が何を言おうが、やっぱり第二十三話は、これでいくのですね。『COSMIC☆COMEDY』をお読みになって下さっている皆様。第二十三話がこのような作品になってしまった事を心より深くお詫び申し上げます。そして、これからも『COSMIC☆COMEDY』を末永くご愛読して下さる事を、心よりお願い申し上げます。

第二十三話
「REAL」

「書けたぁ。」
ご満悦じゃないですか先生。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
どうしたんですか先生?
「いやー、この手は二度も使えんぞ!と思って。」
御尤もですよ。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年11月29日 (水)

「第二十四話」

野原に
ひっくり返ってさ
でんぐり返ってさ
それでも
恋愛したくてさ
夜空を見上げたよ
無理だと
分かっていたってさ
どうしようもなくってさ
ご飯も
喉を通らなくてさ
そんな感じなんだよ

いっその事
言っちゃおうかな?
君に言っちゃおうかな?
死んでもいいから
告げちゃおうかな?
君に告げちゃおうかな?

野原で
満月見ちゃってさ
流れ星流れちゃってさ
なんだよ
僕だけのけ者か
って一人で拗ねてみた
駄目だと
知っていたってさ
止められないんだよ
明日
教会に行こうかな?
って何を考えてんだろ?

いっその事
行っちゃおうかな?
本当に行っちゃおうかな?
死んでもいいから
神父さんに
悩み打ち明けちゃおうかな?

野原を
ゴロゴロしたってさ
バサバサしたってさ
結局
何にも変わらない
変わるはずもない
やっぱり
この恋ダメかな?
僕が変なのかな?
彼女の
お手製パスタを
一度は食べたいな

いっその事
行っちゃおうかな?
彼女のレストランへ
死んでもいいから
食べちゃおうかな?
自慢のペペロンチーノ

野原に
ひっくり返ってさ
でんぐり返ってさ
それでも
恋愛したくてさ
お空を見上げたよ
もうすぐ
太陽昇るのさ
昇ってくるのさ
だったら
このまま寝っ転がって
そのまま寝ようかな?

いっその事
諦めちゃおうかな?
諦めちゃえるかな?
死んでもいいから
待っちゃおうかな?
太陽待っちゃおうかな?

きっと
そんな勇気があれば
今頃君に
気取った愛の言葉を
伝えているんだろう
きっと
今夜も僕はここへ来て
君についての
答えを探し求めて
悩んでいるんだろう

第二十四話
「恋する吸血鬼」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年12月 6日 (水)

「第二十五話」

「博士~!博士~!」
「おお!やっと来たか!待ちくたびれたぞ!」
「ハァ、ハァ、ハァ。いやこの時代に伝書鳩はおかしいでしょ。」
「フォロッフォ~。」
「私は、近代文明が生んだ機械社会に埋もれたくなどないんだよ。」
「バサバサバサ~。」
「でも、この手紙ってパソコンを使って打ち出していますよね?」
「そうだよ。」
「おもいっきり近代文明の利器を活用しているじゃないですか!」
「気付かんかった。」
「無意識レベルにまで達しているじゃないですか!ったく・・・・・・・・・それよりも、見せたい物があるって言うのは?」
「ふっふっふっふっふっ。」
「何ですか?その不敵な笑いは?」
「遂に完成してしまったんだよ!助手君!」
「博士?いい加減名前を覚えて下さい。結構長い付き合いなんですから。」
「まあまあ、御愛嬌ですよ。助手君。」
「どんな御愛嬌ですか!失礼ですよ。」
「気にする事はない。二人で過ごした時間は、けして無駄ではないのだよ。新しい恋を探しなさい。」
「失恋じゃなくって、失礼です!何の話をしているのかと思いましたよ。」
「いい事言って損した。」
「どんな感覚ですか!それで?いったい何が完成したんですか?」
「よくぞ聞いてくれた!!」
「博士の方から言ってきたんですよ?」
「タイムマシーンだ!!」
「今なんて!?」
「タイムカプセルだ!!」
「変わったじゃないですか!前者と後者じゃ驚きがまったく異なりますよ?」
「タイムマシーンだ!!」
「近代文明だの機械社会だのと、言ってる事とやってる事が矛盾していますが・・・・・・・・・凄いじゃないですか!いったいどうやって!」
「私が昼間、いつものように公園のベンチに座ってカレーライスの味を思い出していた時。」
「毎回そんな事をするために、公園に行ってたんですか!」
「子供達がブーメランをして遊んでいたんだよ。」
「なるほど!ブーメランは、投げると戻ってくる!そこからヒントを得たと言う訳ですか!」
「いや、何となく出来ちゃった。」
「ブーメランは、何だったんですか!」
「それは、上手い事やるもんだなぁ。って感心していただけだよ。」
「羨ましかっただけですか!何となくですか・・・・・・・・・まあ、博士らしいと言ったら博士らしいですね。」
「しかも二つ。」
「二つも出来ちゃったんですか!天才ですよ博士は!」
「忘れた頃にやって来るんだよ。」
「それは天災です。さっそく学会に発表する論文の作成に取り掛かりましょう!」
「待つんだ助手君!」
「どうしたんです?まさか!?何となく僕の事を騙したんじゃないでしょうね?本当は、タイムマシーンなんて作っていないのでは?」
「タイムマシーンは、ちゃんと作ったよ。」
「またまた。騙されませんよ?この前だって砂糖を塩にする機械を発明したと言って、大変な目に遭わされましたからね。作ったのなら実物を見せて下さい!」
「さっきっから目にしているじゃないか。」
「えっ!?」
「ほら。それだよ。」
「それってまさか!?この冷蔵庫ですか!?」
「いや冷蔵庫じゃなくってタイムマシーンだ。」
「冷蔵庫でしょ。」
「元はな。元は確かに冷蔵庫だが今はもうタイムマシーンなんだから、あんまり旧姓で呼ぶんじゃないよ。」
「俄かに信じがたい光景ですね。」
「勝手に氷を作ってくれるやつだ。」
「冷蔵庫の機能については聞いてませんよ!」
「その機能は、ちゃんと残しておいたから安心しなさい。」
「どんだけ僕は、氷好きだと思われていたんですか!」
「では、行くぞ!」
「行くって?」
「論文を書くには、まだやり残した事がある。理論上タイムマシーンであっても、正確に作動するかテストする必要があるのだよ。助手君!」
「我々自ら実験台になると言うのですか!?」
「当たり前だ!我々がやらずに誰がやる!!」
「分かりました博士!博士の世紀の大発明に僕もお供します!」
「ありがとう。」
「で、いったいどの時代に行くんですか?未来ですか?それとも江戸時代や平安時代ですか?」
「何をヌルい事を言っているのだね!」
「では、博士の大好きな戦国時代ですか?」
「確かにその時代にも行ってみたいが、まず最初に行くのならば、まだ誰も目にした事のない時代・・・・・・・・・。」
「やはり未来ですか!」
「いいや!恐竜時代だ!!」
「なるほど!確かに実物の恐竜をこの目で見た人間はいない!」
「そして映像に記録し、それをこの時代に持ち帰って来るのだよ。二つの意味で人類の大きな一歩になるはずだ!助手君!」
「行きましょう博士!」
「よし!開けるぞ!まだ見ぬ未開の地への扉を!」
「ガチャッ。」
「ずいぶんと冷ややかですね博士。そして狭い。」
「まあ、元々は冷蔵庫だからな。いいか?この弱・中・強のダイヤルで行く年代を決める。過去・現在・未来と言った具合にな。だいたい恐竜時代ならこの辺だ。そしてドアを閉めれば時空の旅に出発する。」
「タイムマシーンに乗っている気がしませんね。まるで野菜や肉の気持ちですよ。」
「実験が失敗に終われば、こいつはただの冷蔵庫にすぎんからな。行くぞ?」
「緊張しますね。」
「では!恐竜時代に!タ~イム!ワ~プ!」
「それ言わないといけないんですか?」
「別に。」
「バタンッ。」
「真っ暗ですね博士。」
「冷蔵庫だからな。」
「冷蔵庫なんですか?」
「冷蔵庫みたいなタイムマシーンだよ。」
「タイムマシーンみたいな冷蔵庫にならないように願っていますよ。」
「ありがとう。」
「いえ。」
「ウィ~ン。カラカラカラカラカラカラ。」
「何の音ですか?」
「勝手に氷が出来た音だ。つまり、到着したと言う事だよ。」
「勝手に氷の部分にも意味があったんですね。」
「当たり前だ。では、未開の地への扉を開けるぞ!」
「待って下さい博士!」
「どうした?」
「確か冷蔵庫って中から開けられないのでは?」
「そんな目に二度と合わんようにしているに決まってるだろ!」
「なるほど。製作段階で一度閉じ込められたのですね?」
「当たり前だ!」
「そのピンチをどう切り抜けたのか気になるとこですが・・・・・・・・・まったく、天才なのか馬鹿なのか分からない人だ。」
「何か言ったか?」
「いいえ。」
「さあ、開けるぞ!」
「ガチャッ。」
「は、博士!」
「助手君!」
「成功ですよ博士!タイムマシーンは完成したんですよ!!」
「痛い痛い。喜ぶ気持ちは分かるが、頭叩きすぎだよ助手君。」
「すいません。」
「まあいい。では、恐竜をこのカメラで撮影しようじゃないか。こりゃ、年甲斐もなくワクワクしてくるってもんだよ!なあ、助手君!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「どうした?この光景に開いた口が塞がらないのか?うんうん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「その気持ちは、手に取るように分かるぞ助手君。だが、今は私情よりも人類への」
「博士!!」
「びっくりしたなぁ!?なに?どうしたんだ?」
「あああああ・・・・・・・・・あれ!!」
「後ろに何かいるのか?ななななな・・・・・・・・・なんと!?」
「あれって博士!!」
「間違いない!ティラノサウルスだ!!」
「最強の肉食恐竜と言われているやつですよね?」
「そうだ。まずいぞ助手君!私達は、とっくにあいつに気付かれていたようだ!」
「どうするんですか?」
「どうするもなにもないだろ!!逃げろー!!」
「はいー!!」
「ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!」
「でも博士!追って来ますよ!」
「そりゃそうだ!私達は、餌なのだからな!!」
「ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!」
「ガシャーンッ!!」
「あぁぁぁぁぁ!!タイムマシーンが踏み潰されてしまいましたよ!!」
「そりゃそうだ!私達は、タイムマシーンから直線上に逃げているのだからな!!」
「何を悠長な事を言ってるんですか!!僕達は、もう二度と元の時代に戻れなくなってしまったんですよ!!」
「そりゃそうだ!タイムマシーンが壊されたのだからな!だがなぁ助手君!私がさっき言った事を思い出してみるのだ!!」
「博士の言った事ですか?」
「タイムマシーンを二つ作ったと言ったろ!!」
「言いました!確かに言いました!が博士!あんな大きな物!いったいどこにあるんですか!」
「ふっふっふっふっふっ。」
「その不敵な笑いは!持っているんですね!もう一つのタイムマシーンを持っているんですね!ボタン一つか何かで瞬時に時空を越えられるリモコン型のようなタイムマシーンを」
「ほれ!」
「何ですか?この手の平の上にある小さな冷蔵庫は?」
「さっきのタイムマシーンを最軽量化し最小化したものだ!!」
「えっ!?」
「まさに時代の最先端をいったタイムマシーンなのだよ!助手君!!」
「どうやって乗るんですかー!!」
「あっ!」
「ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!」
「助手君!とにかく今は逃げろー!!」
「はいー!!」

第二十五話
「モダン・タイムス」

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年12月13日 (水)

「第二十六話」

「ゲンさん!」
「おぉ!シゲさん!腰の具合はどうでぇ?」
「だいぶ良くなってきとるよ。ゲンさんの方こそ、肩の具合は良くなったのかい?」
「良くなったんだか良くなってないんだか。よく分かんねぇな。まあ、毎年の事だからな。ところでシゲさん。あっちの方はどうなんでぇ?」
「それなんじゃがな・・・・・・・・・。」
「なんでぇ?あんまし良くねぇのか?」
「その逆なんじゃ。今年はえらい豊作なんじゃよ!」
「なに!シゲさんとこもか!」
「ゲンさんとこもなのかい?こりゃあ今年は、やり甲斐があるのぅ。」
「まったくでぇ!ところでシゲさん!いい具合に太ったんじゃねぇか?」
「ゲンさん。あんたが言うと嫌みに聞こえるよ?ゲンさんには負けるよ。お腹も髭も。」
「いやいやいや。わしだって村長に比べたら赤子も同然よ。」
「あの人は、わしらの鏡じゃからな。」
「違いねぇ。あの人がいなかったら、この村は成り立たなかったからな。」
「それよりゲンさん。たっつぁんの事、聞いとるかい?」
「なんでぇ?たっつぁんがどうかしたのか?」
「どうやら一頭逃げたらしいんじゃよ。」
「あんだってぇ!?たっつぁんもツイてねぇなぁ。去年は、風邪で参加出来なかったってのに今年もかぁ。」
「どうやらそうでもないらしいんじゃよ。」
「たっつぁんの奴!無理矢理にでも参加する気なのか!?やめとけやめとけ。一頭いねぇだけでもだいぶ違うんだぞ?下手したら振り落とされて怪我しちまう!」
「そうじゃないんじゃよゲンさん。今年から役場が貸し出しを行うそうなんじゃ。」
「なに?やっとやるってぇのか!わしら何年も前から言ってたんだぞ!」
「まあまあ、ゲンさんそう熱くならんで、ええじゃないか。これでたっつぁんも今年は参加出来るんじゃから。」
「シゲさんは、甘過ぎるんだよ!もっと早くに役場は、貸し出しを行うべきだったんだ!今年の行事が終わったら文句の一つでも言ってやんねぇとな!そうでもしねぇとわしの腹の虫がおさまんねぇよ!」
「相変わらずじゃなゲンさん。そうじゃ!風邪で思い出したんじゃがな。」
「ん?」
「今年は、クマハチの奴がひきおったみたいじゃ。」
「クマハチが!?あの馬鹿!あれほどわしが体調管理には気を付けろと、口を酸っぺくして言っておいたってのに!何をやってやがるんだ!」
「だから、午後一番で編成についての集会があるんじゃよ。」
「なんでぇシゲさん。それを伝えに来たのか!」
「うっかり話が脱線してしまったようじゃな。ほぉっほぉっほぉっほぉっほぉっ。」
「相変わらずはどっちでぇシゲさん。ほぉっほぉっほぉっほぉっほぉっ。」
「じゃあ、ゲンさん。わしは、あとジロウさんとがんちゃんとサクゾウとコウノスケにこの事を伝えに行かなきゃならんからこの辺で。」
「あっ!シゲさん!」
「なんじゃ?」
「コウノスケのとこには、わしが行くよ。」
「ええのか?」
「あのやろうときたら、三日前に収穫用の袋を借りに来たまんま、返すのをすっかり忘れてやがるからよ。取りに行くついでに伝えとくよ。」
「コウノスケも相変わらず忘れっぽいのぅ。あれは、忘れっぽいんじゃなくて単に自分勝手で図々しいだけか。ほぉっほぉっほぉっほぉっほぉっ。」
「笑い事じゃねぇよシゲさん!」
「すまんすまん。」
「あれがねぇとせっかく豊作に実った玩具も収穫出来ねぇんだからよ。」
「収穫が終わったらそろそろじゃな。今日あたり、わしもソリの最終調整に取り掛かるとするかのぅ。」
「何を言ってやがるんでぇシゲさん!あんた、毎日ソリと睨めっこじゃねぇか!ほぉっほぉっほぉっほぉっほぉっ。」
「ゲンさんも人が悪いのぅ。見とったんなら声を掛けてくれればええじゃないか。」
「楽しそうに手入れをしてたもんだからついつい。ほぉっほぉっほぉっほぉっほぉっ。」
「のぅゲンさん?」
「ん?」
「今年もええクリスマスにせんとな。」
「あったりめぇよ!今から子供達の喜ぶ顔が目に浮かぶってもんよ!」
「そうじゃなぁ。わしらは、あの笑顔を見るために頑張っとるようなもんじゃからな。じゃあ、ゲンさん。またあとで。」
「おう。トナカイに襲われんなよ!」
「ゲンさん?いくらなんでも、まだまだわしだってトナカイなんぞに負けはせんよ!ほぉっほぉっほぉっほぉっほぉっ。」
「ほぉっほぉっほぉっほぉっほぉっ。じゃあ、シゲさん。午後の集会で・・・・・・・・・。さてと、これから忙しくなってきやがるぞ!ほぉっほぉっほぉっほぉっほぉっ。」

第二十六話
「さんたくろーす村」

| | コメント (6) | トラックバック (0)

2006年12月20日 (水)

「第二十七話」

「次の次の方どうぞ!」
立ち上がろうとした僕は、思わずズッコケそうになった。なぜ僕をとばす!てか、次の次と言っても僕しかいないじゃないか!
「ガチャッ。バタン。」
僕は、医者の姿を見て再びズッコケそうになった。ハゲヅラに付けヒゲって!なんてコントな医者なんだ!まあ、百歩譲ってハゲヅラは何となく分かるよ。けど、なんでお師匠さんみたいなヒゲなんだよ!それ、チョイスおかしいだろ!だが、僕はツッコミを入れなかった。熱っぽくて体がだるくてお腹の調子も良くなかったので、そんな余裕は微塵もなかったからだ。もし、そんな余裕があったなら、とっくに会社に行っている。
「お掛け下さい。」
いやいやいや、あんたの手の方向に腰掛けたらひっくり返って頭打っちゃうよ!また違う病院行かなきゃいけなくなるよ!
「ここでいいんですよね?」
そう言って僕は、丸い回転椅子に座った。
「ブッブッーッ!!」
その音に驚いた僕は、思わず立ち上がってしまった。椅子の下にブーブークッションって!
「なんで?」
あまりの出来事に僕は、気付くと無意識に自然と出て来た言葉で医者に尋ねていた。
「今日は、どうなさいました?」
だいぶ普通だ!ノンリアクションだよ!あんたが仕掛けたんじゃないのかよ!引っ掛かった僕の方が馬鹿みたいじゃないか!一人で驚いちゃったりなんかしちゃったりしちゃってさ!なんか面倒臭い雰囲気満々だなぁ。さっさと進めよう。
「なんか熱っぽくて体がだるくてお腹の調子も良くないんですよ。」
「いやそうじゃなくって、ちくわで例えて症状を言ってもらわないと。」
えっ!?ちくわ!?
「なぜにちくわ?」
「私の好物だから。」
知らないよ!あんたの好物なんかどうだっていいよ!特に知りたくもないプチ情報だよ!だいたいどうやって体の具合をちくわで例えるんだよ!
「どうやって言えばいいんですか?」
「そうだねぇ。長細くて真ん中に穴が開いてて・・・」
ちくわで例えるんじゃなくて、ちくわを例えちゃってるよこの人。案の定、面倒臭いなぁこの医者。
「真面目に診てもらえませんか?」
「これは失敬。では、気を取り直して・・・・・・・・・あなたの病気は!いったいどれだー!!のコーナー!!」
なんかご陽気に始めちゃったよこの医者。
「さて、このコーナーはですね。私が三つ病気の名前をあげます。そしてあなたには、その中の一つを選んでもらいます。」
三択ね。って言ってもクイズなんだか何なのかよく分からないけどさ。でもツッコミなんか入れないよ。だって面倒臭いからね。病気が分かるなら何でもいいよ。
「1番風邪。」
ああ、きっとそれだよ。
「2番風邪。」
それもだよ。
「3番風邪。」
まさかの展開だよ!いい加減過ぎるだろ!
「さあ!どれ!」
えっ?どれ?って聞く事なの?もうどれだっていいよ。どれだって同じだろ?何なんだこの無意味な作業は!何番だっていいよ!
「1番で。」
「いいんですね?」
「はい。」
「本当に1番でいいんですね?」
「いいです。」
「本当に?」
こんなとこ引っ張ってどうするんだよ!もう、さっさっとやってくれよな!
「1番で。」
「もっと大きな声で!」
「1番で!」
「もっともっと!!」
「1番で!!」
「なるほど。熱っぽくて体がだるくてお腹の調子も良くないんですか。」
なんだこの敗北感は・・・・・・・・・なぜ僕が負い目を感じなければならないんだ。とにかく面倒臭い。早く薬を貰って帰りたい。むしろ薬だけでいい。
「そうです。熱っぽくて体がだるくてお腹の調子も良くないんですよ。」
「難しいなぁ。赤いボタンと青いボタンを同時に押しながらレバーを上下に動かしてダイヤルを回さないと開かない金庫をお持ちなんですかぁ。」
確かに難しいよ。そんな風にしないと開かない金庫を持っていたらね。でもだよ?もしも僕がそんな金庫を本当に持っていたとしよう。だからってそれをなぜ医者のあんたに話さなきゃならないんだよ!どんなに僕とあんたの間に人を入れて伝言を頼んだとこで、そんな風には伝わらないだろ!面倒臭い指数かなりのもんだなぁ。
「そんな事、言ってませんよ。早いとこ診察して下さいよ。」
「もちろんだとも!」
僕は、初めて本気で人を殴りたいと思った。
「熱っぽくて体がだるくてお腹の調子も良くないんですね?」
「そうです。」
「私思うんですよ。」
「何ですか?」
「病院に行きなさい。そして、人に優しくしなさい。けして、自分一人だけで生きているだなんて思うんじゃないぞ。先生、いつでもここにいるからな。今日はもう寝なさい。おやすみ。」
優しな言い方とお言葉やなぁ。先生に相談して本当に良かった。って馬鹿!
「ここが病院じゃなかったら、いったいここは何なんですか?八百屋さんですか?」
「安いよー安いよー!奥さん!今日はねぇ。大根が安いよ。ってコラ!やらせるんじゃないよ!」
乗っかってきちゃったよ!それにしてもノリツッコミ下手だなぁ。セリフもだいぶ棒読みだったしさ。
「熱っぽくて体がだるくてお腹の調子も良くないと言ったらあれですよ。」
何回同じ事を言ってんだよこの医者は!まあ、だいたい分かるけどさ。
「やっぱり・・・・・・・・・か」
「やっぱりガンです!」
そのやっぱりって言葉は、いったいどこに掛かってるんだよ!本当に面倒臭いなぁ。
「何で精密検査もしてないのにガンと言い切れるんですか?」
「やだ?じゃあ何がいいかなぁ?どんな病気が似合うかなぁ?」
洋服屋さんじゃないんだからさ!似合うってなんだよ似合うって!もう答え言っちゃおう。だって、この医者面倒臭いんだもん。
「風邪でしょ?」
「まあね。」
僕は思った。人を不愉快にさせる笑顔って本当にあるんだなと。
「心配せんでもただの風邪じゃ。」
ここにきてお師匠さん出て来ちゃったよ!登場までえらい長かったなぁ。
「でも、ただの風邪で安心しました。」
「ただの風邪って言っても支払いがただって訳じゃないですよ。」
ガキみたいな事を言ってんじゃないよ。
「分かってますよ。」
「ただの風邪って言うのは、あなたがただで風邪になったと言う意味です。」
「お金を払ってなる風邪なんてあるんですか?」
「ありますよ。」
ないよ!
「そこのコンビニの横にある自動販売機で売ってますよ。あっ!?でも昨日、撤去されてたなぁ。」
なんでしてやったりみたいな顔してんだよ!見に行かないよ!別に帰りに確かめに見に行ったりなんかしないんだからガキみたいな下手な言い訳すんなよな!心底面倒臭い医者だなぁ。
「じゃあ、念のために一応診察しますんで上着を脱いで下さい。」
まったく、とんでもなく時間の無駄しちゃったよ!
「はい。後ろ向いて。」
なんか無駄にエネルギーを使った感じがするなぁ。
「はい。それじゃあ、上着を着たら次は熱を測りましょう。」
ん?待てよ?なんだか様子がおかしくないか?なんか変だぞ?
「やっぱりちょっとありますね。」
これ?普通じゃない?普通に診察してない?ここら辺のくだりこそ、ボケる要素満載じゃないの?
「念のために注射を打っときましょう。」
「は、はい。」
「注射を取ってきますんでお待ち下さい。」
「はい。」
「ガチャッ。バタン。」
なんだか拍子抜けした感じだなぁ。まるで、今まで起きていた事が全て絵空事のようにさえ思えてきたよ。もしかしたら僕は、勘違いしていたのかもしれない。
「ガチャッ。バタン。」
「それでは腕を捲くって下さい。」
って!?なんでパイまみれになっちゃってんだよ!「あんた誰だよ!」的になっちゃってるよ?向こうでいったい何があったんだよ!勘違いしていたのが勘違いだったよ!
「はい。終わりましたよ。」
そんな視界で無事に注射が終わった事が奇跡に近いよ!
「それじゃあ、お薬の方を19種類出しときますね。」
多っ!?とてもじゃないけど、もし食後の話だったら無理な量だよ!
「2、3種類程度にしてもらえませんか?」
「分かりました。じゃあ、3種類を一回分出しときます。」
少なっ!?昼過ぎには、また取りに来なきゃならないだろ!
「二、三日分ぐらいもらえませんか?」
「分かりました。じゃあ、三日分お出ししましょう。」
ここら辺は、相変わらずの面倒臭さだなぁ。そうだ!
「運動は出来ますか?」
「ああ、運動ね。どんぐり拾い以上でんぐり返し未満の運動なら出来ますよ。」
基準が分からないよ!悪かったんだね。聞いた僕が悪かったんだね。
「軽い運動なら出来るって事ですか?」
「そうですね。あと食事の方は、しばらく油っこいものは控えて下さい。」
満面クリーム顔で言うなよな!さっきっからパイがボタボタ落ちてるし、なんか見た目からしてグダグダ感あり過ぎだろ!
「それじゃあ、すぐお薬をお出ししますんで、受付の方でお待ち下さい。」
「はい。」
やっとだよ。やっと終わったよ。なんか病状が悪化した気がプンプンするよ。
「ガチャッ。」
「はぁ。」
出ちゃうよ。そりゃ溜め息も出ちゃうよ。出ちゃいますよ。
「バタン。」
「ガーン!」
タライだ。きっとドアの向こうで医者の頭の上にタライが落ちたんだ。でも僕は、ドアを開けて確かめる事などせず、長椅子に腰掛けた。なぜかって?それはどうでもいい事だからだ。そして、それはとても面倒臭い事だからだ。僕は、しばらく座りながら考えていた。次、病気になったらどこに行こうかと。ん?それにしても?すぐって言ってたのに気持ち遅くないか?僕は、受付を覗き込んだ。
「すいません。」
さっきいた受付の女性の姿が見当たらない。
「すいませーん。」
なにしてるんだ?こっちは早く帰って薬飲んで寝たいのに。
「すいませーん!」
待たせ過ぎじゃないか?
「すいませんっ!!」
「お待たせしました。」
案の定だよ!案の定あの医者が女装して出て来ちゃったよ!パイが残ってるし化粧が中途半端だし!やるならちゃんとやれよな!とことん面倒臭いなぁ。
「こちらを食後にお飲み下さい。」
絶対にツッコミを入れるものか!入れてたまるか!
「分かりました。」
「お大事に。」
「ありがとうございました。」
こんな屈辱的な気持ちで感謝の言葉を述べたのは、生まれて初めてだよ!
「ガチャッ。」
どうせ・・・・・・・・・。そう思いながら僕は、ドアを開けて外に出た。
「バタン。」
「ガーン!」
ほらね。やっぱりだ。僕は、もちろん振り返る事もツッコミを入れる事もなく、もう病気なんてうんざりだと思いながら家路を急いだ。

第二十七話
「コントな医者」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年12月27日 (水)

「第二十八話」

モシ
完全犯罪ノルールガ
「完全犯罪=捕マラナイ」
「完全犯罪=証拠ガナイ」
ダトシタラ
僕ハ完全犯罪者デス!!
シカモ
詐欺
痴漢
窃盗
誘拐
強盗
放火
ナドノ犯罪デハナク
殺人デデス!!
捕マラナイドコロカ
現ニ
警察モFBIモ
ドンナ機関モガ
僕ヲ捕マエル事ガデキテイナイ!
僕ガ完全犯罪者ダト言ウ事スラ
気付イテモイナイ!
コノ段階デ
完全犯罪ノ成立デス!
ヤリ方デスカ?
知リタイデスカ?
教エマショウカ?
誰ニモ分カラナイヨウニ殺シ
誰ニモ見ラレナイヨウニ死体ヲ処理シ
誰ニモ知ラレナイヨウニ社会ニ溶ケ込ム
実ニ簡単デ安易デス!!
言ッテシマエバ
怨恨
憎悪
快楽
復讐
ナドニ惑ワサレズ
タダヒタスラニ
殺人ダケヲ遂行スレバイイノデス
無関心
無関係
無意味
デ行エバイイノデス
ソレト
少シノ知識ト
少シノ注意力ガ
必要デス
プラスα
綿密ナ計画ダトバレナイヨウナ
計画性ガ大切デス
アトハ
空気ヲ吸ウヨウニ
瞬キヲスルヨウニ
ゴク自然ニ
マルデソレガ
当タリ前カノヨウニ
実行スルダケナノデス
ヤル時ハ
何ノ躊躇イモナク
オモイキッテヤレバイイダケノ事デス
完全犯罪ナド
タワイモナイ!!
ダガ!!
ソンナ
クダラナクテ
ナンノ得ニモナラナイ
馬鹿ラシイ事ヲ
僕ハヤラナイ!!
絶対ニヤラナイ!!
ヤラナイカラコソ
僕ハ完全犯罪者ナノダ!
ヤレルノニヤラナイ
ヤラナイカラ捕マラナイ
ヤラナイカラ証拠モナイ
「捕マラナイ=完全犯罪」
「証拠ガナイ=完全犯罪」
ユエニ
ココニ完全犯罪成立!!
イカニ凄腕刑事デモ
ドンナ名探偵デスラ
僕ヲ
捕マエル事ナドデキヤシナイ!!
イカナル大国ダロウガ
ドレホドノ情報機関デサエモ
僕ヲ
完全犯罪者ダト
認識スル事サエモデキヤシナイ!!
密室デモナケレバ
トリックモナイ
殺人ヲ犯シテイナイノダカラ
死体モナイ
マルデ事件ニスラナラナイ
マサニ僕ハ
完全犯罪者ナノデス!!

第二十八話
「完全犯罪者ノ完全犯罪」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年1月 3日 (水)

「第二十九話」

 僕が学校帰りにたて笛を吹きながら歩いていると、大きな緑色のドラゴンが道を塞いでいた。
「どいて!」
僕は、寝ているドラゴンに向かって言った。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
ドラゴンは、何も言わなかった。目を片方開けて僕を見たけど、何も言わなかった。そしてまた、目を閉じて寝てしまった。
「こんなとこに寝てたら邪魔じゃないか!!」
僕は、さっきよりも大きな声で寝ているドラゴンに向かって言った。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
やっぱりドラゴンは、何も言わなかった。大きなあくびをしたけど、何も言わなかった。その時一瞬、火が出た事には驚いたけど、そんな僕の姿なんか見ようともせず、ドラゴンは寝ていた。
「どいてよ!!」
「ベシッ!」
僕は、のの字に曲がったドラゴンの尻尾をランドセルから抜き出した30センチ物差しでおもいっきり叩いた。
「ギロッ!」
ドラゴンは、閉じていた両目を大きく開けて僕を睨み付けた。
「ギロッ!」
僕もドラゴンの事を睨み付けた。
「エーン、エーン、エーン、エーン。」
そしたらドラゴンが急に泣き出した。僕は、一瞬何が起こったのか分からなかったけど、それでもドラゴンを睨み付けていた。
「グスン・・・・・・なん・・・・・・なんでみんな・・・・・・ぼっぼっ・・・・・・僕の事を邪魔者扱いするんだ!」
そして、ドラゴンは震えた大きな声で僕に向かって言った。
「えっ!?」
僕は、ドラゴンの迫力と涙に驚いた。
「ズズズー!ぼく・・・・・・僕は、ただ寝ているだけじゃ・・・・・・ないか!」
鼻を啜りドラゴンが言った。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
僕は、黙ってドラゴンの言ってる事を聞いていた。
「おじいざんぼおばあざんぼ・・・・・・おじざんぼおばざんぼ・・・・・・おにいざんぼおねえざんぼ・・・・・・びんなびんなぼぐを・・・・・・ぼぐを・・・・・・ヒック、ヒック。」
ドラゴンの顔は、グシャグシャになってた。そして、ドラゴンは大きく一回深呼吸をした。
「ねぇ?僕はいったいどこで寝たらいいの?」
ドラゴンは、真っ赤な目で僕を見た。
「分からないよ。分からないけど・・・・・・きっとここで寝ちゃいけないんだよ。ここは、みんなの道なんだからさ。みんなが通る道なんだからさ。君だけの道じゃないんだからさ。だから・・・・・・ここで寝てちゃいけないんだよ!」
ってドラゴンに言おうと思ったけどやめた。ちょっと遠回りだけど、僕は空き地の方から帰る事にした。
「じゃあね。」
僕は、ドラゴンにさよならして歩き出した。また、たて笛を吹きながら歩き出した。すると僕の後ろからドラゴンの声が聞こえた。
「ありがとう!」
って声が聞こえた。

第二十九話
「少年とたて笛
      ドラゴンと道」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年1月10日 (水)

「第三十話」

 私は思った。こんな天気のいい日は、自慢の愛車に乗り込み優雅に当てのないドライブを楽しもうと。それは、日頃のストレスや日常生活から開放されるためでもあった。そして、気分転換は私が仕事を円滑に進めていくには、何よりも必要不可欠なものであったからだ。私がまず、やらなければならない事と言ったら、自慢の愛車にガソリンと言う名の食事をとらせてやらなければならない事だった。昔からよく言うじゃないか。「腹が減っては戦はできぬ。」とな。そう言う訳で私は、さっきっからガソリンスタンドを探している。
「ん?あそこに入るとするか。」
タイミングよく目の前にガソリンスタンドがあったので、そこで自慢の愛車に少し遅めの朝食をとらせる事にした。ガソリンスタンドの入口に差し掛かると、自慢の愛車を誘導する男の誘導通りに、私は正確かつ的確に自慢の愛車を動かし停止させると
「ウィーン。」
自慢の窓を開けた。
「いらっしゃいませ!」
元気よく誘導していた男が声を掛けてきた。よく見ると胸のところには、責任者と書かれたバッチを付けていた。どうやらこの背の高い痩せ男がこのガソリンスタンドの責任者らしい。
「ビチャビチャですか?カチカチですか?」
ん?私は、一瞬自分の耳を疑った。この男は、いったい何を言っているのだ?そして、いったい何を伝えたいのだ?
「今なんて?」
「ビチャビチャですか?カチカチですか?」
やはり同じ事を言っている。ビチャビチャ?カチカチ?なんだそれは?なんなんだそれは?何語なんだ?普通ガソリンと言ったらレギュラーかハイオクではないのか?新たな表現なのか?表現方法なのか?
「ハイオクを頼む。」
「カチカチですね。」
ビチャビチャはレギュラー。カチカチはハイオク。と言う訳か・・・・・・。おかしなガソリンスタンドに来てしまったものだ。
「お支払いは、現金ですか?カードですか?」
「現金で頼む。」
どうでもいい事なのだが、私はカードを持たない主義なのだよ。
「窓は、お拭きしてもよろしいですか?」
「ああ、頼むよ。」
昨夜の大雨ですっかり自慢の愛車が汚れてしまってい
「カチカチうんこ入りまーす!」
うんこ!?うんこと言ったのか?今、この男は大声でうんこと言ったのか?
「ちょっと君!」
「はい?」
「君は、今なんと言ったのだね?」
「カチカチうんこ入りますと。」
やはり残念ながら私の聞き間違いではなかったようだ。だが、うんこと言った事を確かめた上で、私は尚もこの男の言っている事が理解出来ない。
「うんこと言うのは、この場合ガソリンの事を言っているのかね?」
「いえ、うんこはうんこです。」
「うんこをこの車の中に入れると言うのかね?」
「そうです。」
「そうですって、君ねぇ。」
「何か問題でも?」
問題?大有りだよ!抜本的にお聞かせ願おうじゃないか!
「車の中にうんこを入れて、それでいったいどうするつもりなんだね?」
「どうすると言われましても・・・・・・ここには、入れるものと言ったらビチャビチャうんこかカチカチうんこしかありませんが。」
ありえない!ありえないぞ君!そんなガソリンスタンドありえてはならないぞ!ん?だいたいさっきこの男は、支払い方法を聞いていたな。まさか!?
「いくらなんだね?」
「カチカチうんこは、1リットル174円になります。」
「そんなにするのか!」
「まあ、人糞ですから。」
理論が分からんよ!理論が!そもそもの理論が分からんのだよ!!「人糞でその値段は安いね。」とでも言うと思ったのか!だいたいうんこをリットルの単位で表すところから間違っているのだよ。
「因みに、ビチャビチャうんこでしたら1リットル81円になりますが、どういたしますか?」
なぜビチャビチャの方の値段まで告げるのだ。私が金にケチケチしている人間だとでも思っているのか?カチカチとビチャビチャの値段を比較してから、安い方をこの自慢の愛車に入れようとしているとでも思っているのか?金の問題じゃないぞ!うんこの問題だ!そうだ!一つ根本的な事を聞き忘れていた。
「そもそもうんこで車が走るのかね?」
「知りません。」
悪ふざけもいいところじゃないか!根拠も無しにこんな事をやっているのか!
「カチカチうんこはもういい!そんなもん入れんでいいから!窓だけ拭いてくれ!」
「分かりました。」
一日平均の客の数は?店舗数は?君の年収は?苦情の数は?仕入先は?なぜ君はそんなにも痩せているのだ?と、たくさん聞きたい事はあったが、今はとてもそんな気分ではなかった。一刻も早く私はここを立ち去りたいのだよ。まったく、とんでもなくふざけたガソリンスタンドだ!危うく自慢の愛車にうんこを入れられるところだった。確かに、どうりで窓を開けた時に異臭がすると思ったよ。それに、どうやらあの男以外にここで働いている人間はいないようだしな。それもそうか。こんなとこで誰がはた
「なにを!?」
私は、自分の目を疑った。男がフロントガラスを拭いた後に付く、茶色い物体はいったい何なのだ!?いや、私にはこの目の前の茶色い物体が何なのかが、はっきりとくっきりと完全に分かっていた。しかし、分かりたくなかったのも事実だ。
「君!」
「はい?」
「この茶色い物体は、いったい何だね?」
私は、茶色に染まったフロントガラスを指差しながら言った。
「うんこです。」
分かっていたさ。ただ、何か可能性みたいなものを信じて聞いてみただけの事なのだよ。
「うんこですじゃない!これはいったいどう言う事なんだ!」
「窓を拭いていいとお客様がおっしゃったので。」
ああ、言ったよ。確かに言った。私は、君に窓を拭いてくれと言った。だがねぇ君?
「どこの世界にうんこで窓を拭く人間がいるんだ!!」
「ここでは、うんこでお拭きする事になっているもので。」
この出来事はある意味、超常現象に近いものがあり、私のキャパシティを遥かに凌駕する出来事であった。そして、自分をしっかり持たなければ私は失神しているだろう。なんと言っても自慢の愛車がうんこまみれになっているのだからな。
「窓を拭くのはもういいから!すぐに洗車を頼む!」
「水洗ですね?」
「洗車だ!」
「水洗でよろしいですね?」
「洗車だ!」
「水洗しまーす!」
「水洗、水洗って!うんこ主体で物事全てを運ぶな!!」
「申し訳ございません。でも、ここではそう呼ぶ決まりになっておりますので、どうかご了承下さい。」
何をだ?いったい私は、何をご了承すればいいのだ?落ち着け、落ち着くのだ。ここは、大人の紳士の対応で乗り切るのだ。
「いや、私も大声を出してすまなかった。水洗を頼む。」
「はい。」
そう、これでいい。これこそが大人の紳士の対応だ。だが、許せなかったのだよ。自慢の愛車がうんこ扱いされた事が・・・・・・・・・。深い憤りを感じてしまったのだよ。私からしてみれば、その辺をご了承願いたいものだ。
「それでは、あちらの方にお車を移動させて下さい。」
一刻も早くうんこまみれにされた自慢の愛車を綺麗にしてやりたかった私は、言われるがままに男の誘導に素直に従った。それにしても、相変わらずの正確かつ的確なハンドル捌きだ。我ながら惚れ惚れしてしまうよ。自分のテクニックに酔いしれていた私は、気が付くと大きな和式便器の形をした洗車機の中にいた。
「それでは水洗しまーす!」
「水洗て、おい!ちょっとま」
そんな慌てふためく私の事などお構いなしに、男は上から垂れ下がっている紐をおもいっきり引っ張った。
「ジャァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
轟音と共に勢いよく大量の水が目の前から流れて来た。私は、ただ黙っていた。恐怖で黙ると言う行動しかとれなかったからだ。正直、死ぬと思った。このまま死んでしまうと思った。自慢の愛車でいろんな場所をドライブした楽しい思い出が、走馬灯のように頭の中を駆け巡った。自慢の愛車と共に死ねるのであれば、本望とすら思った。がしかしそれは、一瞬の出来事で終わった。私の体に重く圧し掛かるこの疲労感は、いったい何なのだろうか?男の誘導でフラフラしながらもきちんと元の位置にピカピカになった自慢の愛車を戻すと
「ウィーン。」
自慢の窓を開けた私に向かって男が
「お疲れ様でした。」
と、今の気持ちにぴったりな言葉を言ってきた。大人の紳士な私は、とりあえず自慢の愛車が綺麗になったと言う事で、水洗代を支払った。もはやこの男との間には、必要最低限の会話しか必要なかった。それで十分だった。そして、男の誘導でガソリンスタンドを正確かつ的確なハンドル捌きで出た私は、いつまでも帽子を片手に持ち深々と頭を下げている男の姿をバックミラーで見つつ、ガソリンスタンドの全体像が一瞬視界に入った時に、一番目立つ大きな文字を見て思ったのだよ。「一連の出来事は、全て私の不注意だった。」とな。それから「リンていったい何なのだ?」とも思った。

第三十話
「クソリンスタンド」

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2007年1月17日 (水)

「第三十一話」

 携帯電話と言う代物を誰もが使っていた時代がある。そんな時代の出来事であった。
シャワーを浴び終えた若い女性が白いバスローブ姿に白いバスタオルで頭を拭きながら白いベットのある白い寝室を歩いていると突然。
「Ring!Ring!Ring!Ring!」
白い携帯電話が鳴った。
「Pi!」
若い女性は、何の躊躇いもなく慣れた手付きで白い携帯電話に出た。
「助けてくれ!」
白い携帯電話の向こうからは、危機迫る中年の男性の声が聞こえてきた。
「誰?」
「助けてくれ!」
「誰なの?」
「頼む!助けてくれ!」
「どうして番号を知ってるの?」
「この番号にしか掛けられなかったんだ!」
「どう言う事?」
「分からない!とにかく助けてくれ!」
「助けるって何?だいたい今何時だと思ってるの?夜中の2時よ?イタズラするにしても時間帯を考えなさいよね。」
「こんな夜中にいきなり電話をしてしまってすまないと思っている!だが」
「なら切るわよ。」
「待ってくれ!どこか真っ暗な場所に閉じ込められているんだ!助けてくれ!」
「知らないわよ!自分でどうにかしなさいよ!」
「どうにか出来ないから君に助けを求めているんじゃないか!」
「いい?私とあなたは、まったくの他人なの!分かる?何の接点もないの!あなたがどこに閉じ込められようが私には関係ない事なの!私にあなたを助ける義務なんて一つもないの!あなたのイタズラに付き合ってるほど私も暇じゃないの!!」
「イタズラなんかじゃない!お願いだ!助けてくれ!」
「本当に切るから。」
「待ってくれ!」
「いやよ!」
「頼む!聞いてくれ!!」
「さようなら!」
「妻が死にそうなんだ!」
「そんな嘘に引っ掛かると思ってるの?お大事に!」
「嘘じゃない!」
「あんまりひつこくするなら警察呼ぶわよ!」
「思い出した!」
「えっ?」
「思い出したんだ!」
「何を思い出したの?」
「事故に遭ったんだ!」
「事故?」
「ひき逃げだよ!」
「えっ?!」
「私と妻が横断歩道を渡っていた時に車が突っ込んで来たんだ!」
「じゃあ、その時に奥さんが事故に遭ったってわけ?」
「そうだ!その時妻が撥ね飛ばされ、そして地面に叩き付けられた後に妻の体の上をその車が・・・・・・・・・次に見た時には、変わり果てた妻の姿が・・・・・・・・・。」
「なんて事!?でもそれじゃあ、奥さんは死んでしまったんじゃ・・・・・・。」
「いや、微かにだが息はしていた!微かにだが・・・・・・・・・。」
「じゃあ、どこかに閉じ込められてるって、もしかして事故の目撃者のあなたを犯人は、連れ去ったって事?」
「いや・・・そうじゃない・・・。」
「違うの?奥さんをひき逃げした犯人は!目撃者であるあなたの口を封じるためにどこかに監禁してるって事でしょ!!」
「違うんだ・・・・・・・・・。」
「何が違うのよ!あなた気が動転していて状況が掴めてないのよ!早く逃げないとあなたも殺されちゃうわよ!分かったわ!すぐに警察に通報してあげる!」
「待ってくれ!また・・・・・・思い出したんだ・・・・・・。」
「何を思い出したの?」
「妻だけじゃない。」
「えっ!?」
「ひき逃げされたのは、妻だけじゃないんだ。」
「まさか!?他の通行人も巻き添えになったの!?」
「違う・・・あの時あの横断歩道を渡っていたのは・・・・・・・・・他の通行人じゃない。」
「ならあなたの勘違いよ!やっぱり気が動転してるのね!しっかりしなさい!落ち着いて!落ち着きなさい!」
「いや・・・気など動転していない。結婚記念日だったんだ。レストランで夕食をすませ、年甲斐もなく妻と私は手を繋ぎ・・・楽しい会話をしながら横断歩道に差し掛かった・・・他に通行人などいなかった・・・そう・・・ひき逃げされたのは・・・私達二人なんだ。」
「な、何を言ってるの!?あなたは、こうして私と話してるじゃない!」
「私は・・・妻と一緒に撥ね飛ばされた・・・そして・・・妻を真横でずっと見ていた・・・・・・地面に叩き付けられた時も・・・運悪く妻だけタイヤに踏み潰された時も・・・・・まるでスローモーションの映像を見ているかのようだった。」
「あなた大丈夫?」
「私達は・・・その間もずっとお互いの手を握り締めていた。」
「さっきから何を言ってるのよ!」
「大事な事を思い出したんだよ。」
「大事な事?」
「見たんだ。」
「何を見たの?」
「ひき逃げをした犯人の顔だよ。ひかれる直前に運転席の犯人と目が合ったんだよ。」
「見たの?」
「ああ、はっきりと思い出したよ。電話をしていた。携帯電話で誰かと会話をしながら運転していた。だから赤信号にも気が付かなかったんだろう。楽しそうに笑いながら・・・私達の事など気にもとめず・・・白い携帯電話で・・・きっと彼氏と話していたんだろうな?本当にとても楽しそうな笑顔だったね。」
「あなた・・・・・誰?」
「だから言ってるじゃないか。」
「誰よ!」
「君にひき逃げされた夫婦の夫だよ!!」
「ふざけないでよ!!やっぱりイタズラね!いったいどこから掛けてきてるのよ!!」
「君のすぐ近くからだよ。閉じ込められたのではなく、私はここに入り込んだんだ!君に懺悔させるためにな!!」
「どこよ!どこにいるのよ!」
「くっくっくっくっくっ。」
「どこ!どこ!どこよ!隠れてないで出てきなさいよ!!」
「くっくっくっくっくっ。」
「どこよ!どこ!どこにいるのよ!どこよ!どこ!」
「くっくっくっくっくっ。」
「どこ!どこ!どこにいるの!どこ!どこなのよ!どこにいるのよ!」
若い女性は、白い携帯電話を片手に家中の扉と言う扉を開けて回った。
「くっくっくっくっくっ。」
「とっとと出てきやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

第三十一話
「待受画面」

「くっくっくっくっくっ・・・・・・ここだよ・・・・・・ここ・・・・・・くっくっくっ。」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年1月24日 (水)

「第三十二話」

「我々は、この地球を守る!なるほど警備隊であーる!今日も一日!日がな一日!地球をなるほどと警備するのであーる!それでは諸君!いつものように順番に番号を言うのであーる!番号!!・・・・・・・・・であーる?隊員のみんなどうしたのであーるか?カタツムリ君!」
「ニョキ。」
「イモムシ君!」
「モソ。」
「くさや君!」
「ぷ~ん。」
「落ち葉君!」
「カサカサ。」
「目覚まし時計君!」
「チッチッチッ。」
「アイスコーヒー君!」
「カラン。」
「ブロック君!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「いるならいるでちゃんと番号を言うのであーる!毎回、毎回、同じ事で注意させないで欲しいのであーる!まったくもう!であーる。さてさてであーる。えーみんなも知ってると思うのであーるが。我々なるほど警備隊は、なるほど!彼等がこの地球を守ってくれているのか!と地域の皆様方に思っていただける活動を日々心掛けているのであーる!地球に危機が迫って来たら、即座になるほどと動き、瞬時になるほどと問題を解決し、地域の皆様方になるほどと思われ、何事もなかったかのように、なるほどとその場を立ち去るのであーる!」
「ニョキ。」
「モソ。」
「ぷ~ん。」
「カサカサ。」
「チッチッチッ。」
「カラン。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「しかーし!つい先日の宇宙人騒動があったであーるな!我々が極秘裏に調査し、秘密裏に任務を遂行していたあれであーるよ!」
「ニョキ。」
「そうであーる!お爺さんのような宇宙人を捕獲し、この地球から追放する大作戦であーる!」
「カサカサ。」
「ぷ~ん。」
「ここまで話せばだいたいみんななら分かるであーるな!なぜ日曜日でもないのに、この表向きは好奇心をそそられる遊具いっぱいの公園!しかーし!真の姿は!なるほど警備隊の本部!に集まってもらったのかであーるよ!それは他でもないであーる!この中にお爺さんのような宇宙人に情報をリークした者がいるであーる!インサイダー取引した者がいるのであーるよ!!」
「ニョキ。」
「モソ。」
「ぷ~ん。」
「カサカサ。」
「チッチッチッ。」
「カラン。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「つまり!スパイであーる!!なるほど警備隊のフリをして!なるほどと地球を守っていたかと思ったらであーる!実はお爺さんのような宇宙人の仲間であったであーるよ!!」
「ニョキ。」
「モソ。」
「ぷ~ん。」
「カサカサ。」
「チッチッチッ。」
「カラン。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「誰であーるか!正直に名乗り出るであーる!今ならまだ許すであーるよ!」
「ニョキ。」
「モソ。」
「ぷ~ん。」
「カサカサ。」
「チッチッチッ。」
「カラン。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「なかなか正体を明かさないであーるな。まあ、この展開はお見通しであったであーるがな。振り返ってみようじゃないかであーる。作戦当日、我々なるほど警備隊がお爺さんのような宇宙人がよく行く喫茶店で待ち伏せしていたであーる。でも来なかったであーる!来なかったであーるよ!その日に限ってお爺さんのような宇宙人は来なかったであーるよ!!コーヒー何杯おかわりしたか分からないであーるよ!トイレも何回行ったか分からないであーるよ!」
「モソ。」
「いちいちそんなの数えてないでいいであーるよ!おかしいであーるよ!来なかったのは絶対におかしいであーるよ!だって次の日は、来てたであーるもん!作戦当日だけ来ないなんてどう考えも情報が洩れていたとしか考えられないであーるよ!!」
「ぷ~ん。」
「そうであーる。隊長自ら作戦の翌日に喫茶店に行ったであーるよ!」
「チッチッチッ。」
「その日は、作戦の日じゃなかったから捕獲しなかったであーるよ。作戦じゃない日に捕獲したら、全然なるほどではないであーるからな。そんな事をしたらなるほど警備隊のなるほどの信義が問われるであーる!話が多少、横道にそれたであーるな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「いい横道を発見した話なんか今は、関係ないであーるよ!それは今度また、日を改めてみんなで行く日取りを決めるであーるよ!それよりも今はスパイの件であーる!カタツムリ君!君であーるか?」
「ニョキ。」
「ならイモムシ君であーるか?」
「モソ。」
「だったらくさや君であーるか?」
「ぷ~ん。」
「それじゃあ落ち葉君であーるか?」
「カサカサ。」
「まさか目覚まし時計君!君であーるか?」
「チッチッチッ。」
「それならアイスコーヒー君!君なのか?であーる!」
「カラン。」
「やっとスパイの正体が分かったであーるよ!ブロック君!スパイは君であーる!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「じゃあ、いったい誰がスパイであーるか!みんなで否定したらスパイがいないじゃないかであーる!困るであーる!困るであーるよ!それじゃあ物凄く困るであーるよ!!」
「ニョキ。」
「モソ。」
「ぷ~ん。」
「カサカサ。」
「チッチッチッ。」
「カラン。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「何であーるか?隊長であーるか?馬鹿を言わないでくれであーる!休み休みでも言わないでくれであーる!隊長がスパイな訳ないであーるよ!そんなの全然なるほどと思えないであーるよ!」
「ニョキ。」
「モソ。」
「ぷ~ん。」
「カサカサ。」
「チッチッチッ。」
「カラン。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「何であーるか?その疑いの眼差しは何であーるか?やめるであーる!怒るであーるよ!いい加減にしないと隊長の堪忍袋の緒が切れるであーるよ!」
「ぷ~ん。」
「何が臭うであーるか!よっぽど君の方が臭うであーるよ!」
「ニョキ。」
「喧嘩を売ってるであーるか!売るなら買うであーるよ!」
「カサカサ。」
「短気は損気と言われようがであーる!スパイ容疑をかけられたからには、力付くで無実を証明するしかないであーるだろ!!」
「モソ。」
「確かに青い考えかもしれないであーる!だが君にだけは言われたくないであーるよ!」
「チッチッチッ。」
「その挑発的な態度は何であーるか!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「いーやもう遅いであーる!みんなで疑ったであーる!もう許さないであーるからな!行くであーるよ!!」

 

「カラン。」

 

「はあ、はあ、はあ、君達なかなかやるであーるな!驚いたであーるよ!だが!勝負は、まだまだこれからであーる!!」

 

「カラン。」

 

「正直ここまで君達がやるとは思わなかったであーるよ!しかーし!隊長の威厳となるほど警備隊のなるほど旗に誓って負ける訳にはいかないであーるよ!」

 

「カラン。」

 

「待ったであーる!待ったであーるよ!何はともあれ待つであーる!!分かったであーる!分かったであーるよ!隊長の負けであーる!完敗であーる!」
「ニョキ。」
「モソ。」
「ぷ~ん。」
「カサカサ。」
「チッチッチッ。」
「カラン。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「スパイは、いなかったであーるよ。みんなを疑ったりして悪かったであーる。ごめんなさいであーる。」
「ニョキ。」
「モソ。」
「それと途中で何回かカタツムリ君とイモムシ君の事をであーる。微妙にキャラがカブっていると言った事も謝るであーるよ。ごめんなさいであーる。もう二度と言わないであーる。」
「ニョキ。」
「モソ。」
「ありがとうであーる。許してくれるであーるか?」
「ニョキ。」
「モソ。」
「ぷ~ん。」
「カサカサ。」
「チッチッチッ。」
「カラン。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「みんな・・・・・・・・・であーる。こんな隊長をこれからもなるほど警備隊の隊長として慕ってくれるであーるか?嬉しいであーる。とても嬉しいであーるよ。みんなありがとうであーる!!」
「ニョキ。」
「モソ。」
「ぷ~ん。」
「カサカサ。」
「チッチッチッ。」
「カラン。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「な、泣いてなんかいないであーる!泣く訳ないであーる!これは、涙腺から汗がじわっと溢れ出てきただけであーるよ!」
「ニョキ。」
「モソ。」
「ぷ~ん。」
「カサカサ。」
「チッチッチッ。」
「カラン。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「これからもみんなで!なるほどと地球を警備していくであーる!エイ!エイ!オー!!であーる!」
「ニョキ。」
「モソ。」
「ぷ~ん。」
「カサカサ。」
「チッチッチッ。」
「カラン。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「なんかより一層なるほど警備隊の団結力が増したって感じであーるな。うんうんであーる。」
「ジリリリリ!!」
「目覚まし時計君どうしたであーるか?」
「ジリリリリ!!」
「カチッ。」
「もうこんな時間であーるか。どうりで辺りが暗くなってきたと思ったであーるよ。今日はもう帰るであーる。あんまり遅いと妻と子供達が心配するであーるからな。妻と子供達に心配掛けるような隊長は、なるほど警備隊の隊長ではないであーる!とてもなるほどとは思えないであーる!話がちょっと長くなってしまったであーるな。では!」
「ニョキ。」
「モソ。」
「ぷ~ん。」
「カサカサ。」
「チッチッチッ。」
「カラン。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「なるほど警備隊!解散!!」

第三十二話
「だから今日も地球は
         円滑に回っている」

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年1月31日 (水)

「第三十三話」

遠い昔の
これはお噺です
まだ
地球も
無い頃の
お噺なんです

遠い昔の
これはお噺です
まだ
宇宙も
無い頃の
お噺なんです

そこはなん色で
そしてなに色で
まだ
誰も
見た事ない
虹色なんです

そこには

一人ぼっちの
独りぼっちの
神様がいました

とっても

寂しがり屋の
淋しがり屋の
神様がいました

だから

いつも泣いてばかりで
涙が
泪が
星になりました

そして

悲しかったので
哀しかったので
時間も空間も
黒く塗り潰しました

遠い昔の
これはお噺です
まだ
地球も
無い頃の
お噺なんです

遠い昔の
これはお噺です
まだ
人間も
いない頃の
お噺なんです

そこはどんな花が咲き
そしてどんな華が咲く
まだ
誰も
食べた事ない
果実をつけるんです

その前に

自己の意志で
事故の異志で
地球ができました

それから

偶然が混じり
必然が交じり
人が生まれました

いつの間にか

いつも泣いてばかりで
涙が
泪が
止まらなかったのに

気が付くと

楽しくって
愉しくって
朝も昼も夜も
神様は踊りました

でも遠い昔の
これはお噺です
まだ
地球も
無い頃の
お噺なんです

遠い昔の
これはお噺です
まだ
宇宙も
無い頃の
お噺なんです

まだ
続きも
有る未来の
お噺なんです

第三十三話
「∞」

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年2月 7日 (水)

「第三十四話」

 昨日、友達と夜遅くまで飲んでいたせいか、俺は昼過ぎに目が覚めた。まあ、どうせバイトは夜からだし、別に彼女がいる訳でもないし、やる事ないからゆっくりグダグダ時間まで過ごそうと思っていた。
「グゥー。」
何だか腹がメチャクチャ減っていた。そのせいで目が覚めたってのもあるんだよな。下から美味そうなカレーのいい匂いがしている。そう言えば昨日、家に帰って来た時もカレーのいい匂いがしてたっけなぁ。おそらく昨日の夕飯がカレーだったんだな。空腹の絶頂期に達していた俺は、いてもたってもいられなくなり自分の部屋を飛び出して台所に向かった。
「ガチャ。」
「バタン。」
「タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ!」
「ガチャ。」
「バタン。」
やっぱりな。しかも、テーブルの上にはカレーライスが用意されている。不思議と母親がいる気配は、感じなかった。
「買い物かな?」
そう言って、少し母親の姿を捜しながら椅子に座った。さすが俺の母親だ。ちゃんと俺の起きる時間を分かっていて、あったかカレーライスを用意しとくなんて、粋だね。わくじゃなくって、いきだね。俺は、にんまりしながら目の前のカレーライスを見た。
「ん?」
すると、その横に一枚のメモ用紙が置いてあった。俺は、それを手に取った。
「なになに?」
(おはよう。)
母親からだ。
(おはよう。母ちゃんは、ちょっくら買い物に行ってきやす。)
やっぱり買い物か。まあ、何でおはようを二回続けて書いてあるのか?どうして粋な表現なのか?気にはなったが、そんな事をいちいち気にしていたらこの母親とは付き合っていられない。まあ、でもよく三十年以上も付き合ってこれたものだと、自分で自分を誉めてやってもいいと思った。
(かれーらいすを用意しときました。)
なぜに平仮名?
(サービスでライス大盛りです。)
店か?どんだけ自由奔放な店なんだよ!店主買い物行っちゃったよ!
(しかもおかわり自由です。)
だったら大盛りにする意味無いだろ!おかわりさせる気無いだろ!
(ルーはダメ!)
どんな権限だ!もはやこの時点でライス大盛りは、サービスじゃなくて嫌がらせとその姿を変貌させたぞ!
(逆さから読むと!メダはール。)
棒ちょんはいいだろ!そこまで読まなくてもいんじゃないか?って、こんなメモ用紙一枚で言う事を聞くとでも思ったか!しちゃうよ!絶対にルーもおかわりしちゃうよ!
(お冷もおかわり自由です。)
書くほどの事か?こんなの書く暇があったら、さっさと買い物に行けよ!
(蛇口を捻れば出るようにしときました。)
元々だよ!自分の手柄みたいにすんなよな!
(捻ると言ってもそれは、あくまで表現方法の一つであって、実際には軽く下に押し倒すだけで出ます。)
知ってるよ!俺どんだけ馬鹿なんだよ!何回その作業を繰り返しやってきたと思ってんだよ!
(図5のように→)
無いぞ図5!矢印の先、空欄だぞ!そもそも1~4どこだい!
(二杯目からはアップルジュースが出ます。)
どんなシステムだ!じゃあ三杯目はなにか?オレンジジュースか?
(・・・・・・・・・・・・・・・。)
・・・・・・・・・・・・・・・。ってなんだよ!・・・・・・・・・・・・・・・。って!書かなくていいよ!オレンジジュースじゃないんだろ!ってそもそもアップルジュースが出ないよ!
(もしスプーンを落とした時は・・・・・・・・・。)
なんだよ。
(その時は・・・・・・・・・。)
だからなんだよ。
(そんな時は・・・・・・・・・。)
いったいなんだってんだよ!
(面白く拾え!)
どんなお題だ!誰が得すんだよ!
(それから福神漬けは、まだ漬け途中なのでありません。)
出来とけ!てか自家製なの?初めてその事実を知ったよ!なんかむしろカレーライスより福神漬けの方が食べたくなってきちゃったじゃないか!
(買って帰ります。)
自家製うそかい!そのための買い物だったのか。
(それでは、カレーライスを心置きなくお食べなさい。)
どっかの偉い人なの?俺招かれちゃってんの?まったく・・・・・・・・・やっと食べれるよ。食べてる間にちゃんと福神漬け買ってきてくれんのかねぇ?まあ、スーパーはそんなに遠くでもないからな。ん?ちっちゃな字でまだ何か書いてあるぞ?
(因みに、食べたら死にます。)
なんで?なぜそんなリスクをおかそうとしているんだ?だったらなんのための買い物だ!ん?更にちっちゃな字でなんか書いてあるぞ?
(食べないで下さい。)
だったら作るなよ!俺どんだけ悪い事しちゃったんだよ!悪戯にも限度があるだろ!こんなスタンバイまでされて食わない奴なんかいないっての!
「いただきます。」
そんな事を思いながらスプーンでカレーライスをすくって食べようとした俺は、驚愕の事実を知る事となった。
「な、なんなんだこれは!?」
ス、スプーンの先っちょの部分が!?そこで何かをすくうためにあるスプーンの先っちょの部分が!?スプーンとしては一番重要な役割を担っている先っちょの部分が!?まさにスプーンの部分が!?
「ない!!」
カレーライスを食べようとルーにつけてそれをライスに絡ませようと持ち上げたら先っちょの部分が無くなっていた!いや、よく見ると溶けた感じだ。だったらなぜ皿は溶けないんだ?金属だけに反応する薬品か何かなのか?冷静に分析している場合じゃないぞ!なんなんだこのカレーライスは!まさか本当に食べると死ぬのか!?こ、これは殺人じゃないか!立派な殺人事件じゃないか!なぜだ?なぜ俺の母親は、俺の事を殺そうとしているんだ?俺がいったい何をしたってんだ?俺は・・・・・・・・・。
「何もしていない!?」
確かに俺は何もしないで家でゴロゴロしてる生活を送っているよ!だからって何も殺す事ないじゃないか!待てよ?むしろここで俺が死なないで買い物から帰って来た母親と顔を合わせちゃった時の方が気まずいじゃないか!いったいなんて言えばいいんだ俺は?
「生きちゃった。」
馬鹿か俺は?何をニヤニヤしながら言っちゃってんだよ!
「今日のカレーは、一味違ったね。」
アメリカンコメディーか俺は!笑えるか!なんかいろいろと面倒臭いから、ここはおもいきってガッツリ食べて死んどこうかな?って、いかんいかん!動揺し過ぎて思考回路が麻痺しているぞ。
「ん?これは!?」
俺は、スプーンを握っていた手がベタベタしている事に気付いた。そして、その手を開いて見てみると手の平が銀色になっていた。
「まさか!?」
俺は、重要な部分が無くなったスプーンの溶けた部分を舐めてみた。
「甘っ!」
思った通りだ!このスプーンは飴だ!スプーンの形をした飴だ!おそらく銀色の着色料を使い、スプーンの形にわざわざ作ったんだろう。だから、あったかカレーライスに入れた時に熱で溶けてしまったんだ!・・・・・・・・・なんて手間の掛かる悪戯を!
「暇かっ!」
俺は、思わず声に出してツッコミを入れてしまった。
「はあ~。」
なんかもう疲労と空腹でついつい溜め息が出てしまった俺であったが、何気なくもう一度メモ用紙を手に取った瞬間!衝撃の事実を知る事となった。
「あれ?裏にも何か書いてあるぞ?」
(読んだら死にます。)
「えっ!?」
(読まないで下さい。裏へ続く。)
読んだら死ぬって・・・・・・読まなきゃ読めないだろ!別のメモ用紙に書くとかなんかもっと工夫しろよな!裏へ続く?って、だいたいこっちが表だったのかよ!裏表間違えて置くなよな!いっつも肝心なとこで詰めが甘いんだよ俺の母親は!
「えっ!?」
読んだら死ぬ?読んだら死ぬだって!?読んだら死ぬっていったいどっからどこまでを読んだら死ぬんだ?一文字でもアウトって事か?いやいや、そんな問題でもないぞ!ガッツリ読んじゃったぞ!ツッコミ入れながらガッツリ読んじゃったぞ俺は!死ぬのか俺は?死んでしまうのか俺は?まさか・・・・・・まさかありえない!ありえる訳がない!出来やしない!メモを読ませただけで相手を殺す事なんて出来やしナ
「ガタンッ!」

第三十四話
「おふくろの文字」

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2007年2月14日 (水)

「第三十五話」

 私は、毎朝の日課となっている犬の散歩をしていた。仕事に行く前のこの時間が私にとっては、何よりもの至福の時間であった。誰かに邪魔される事も何かに縛られる事もない時間。真横を流れる川を見ていると、自然と心も一緒に洗われる気がした。頭の中を無に出来る一時であった。この愛犬チョコ。黒い柴犬。オス五才が喋り出すまでは・・・・・・。
「ご主人。今日は、清々しい朝ですね。こんな日にする散歩は、一段と気持ちがいいものですね。」
自然と驚く事はなかった。朝の太陽の光がそうさせているのか?私の薄い髪の毛の間を心地よく吹き抜けて行くそよ風がそうさせているのか?
「ご主人?口が開きっぱなしですよ。それに、眼鏡もズレていますよ。」
まあ、心とは裏腹に見た目は、かなり驚愕している模様であった。
「お前!?喋れたのか?なぜこの五年間、主人である私に隠していたんだ?」
「隠していた訳ではありません。」
「ありませんてお前・・・・・・現に喋っているじゃないか!昨日までは、わん!としか言ってなかったじゃないか!」
私は、口と鼻の間までズレ下がっていた眼鏡を直しながらチョコに問い掛けた。
「確かに昨日までは、わん!としか言ってませんでした。でも、喋れるようになったんです。」
そんな世にも不思議な事がありえるのか?いやいや分からんぞ!こんなご時世だ!犬が喋ったとしてもおかしくはない!それに、そんな事ぐらいでいちいち誰も驚かないだろう。
「だがいったいどうやって?」
「昨日、夢に神様が出て来たんです。それで、お前を喋れるようにしてやる!と言われたんです。」
「お伽話じゃあるまいし・・・・・・本当に神様だったんだろうな?」
「さあ?」
さあ?って、しっかりしろよチョコ!お前は、もっと賢い犬だと思っていたんだぞ。
「でもやはりこうして僕が喋れるようになっているのだから、あれは本当に神様だったのだと思います。」
まあ、言われてみればそうだな。逆に神様じゃなかった場合、いったい誰なんだって事になりかねないからな。
「何か意味があるんだろ?わざわざ神様は、お前を喋れるようにしたんだからな。」
「はい!」
「で何なんだ?」
「忘れました!」
そりゃ、お座りって言ってもお手って言っても伏せって言ってもチンチンしちゃうよこの犬は。
「さっきから思い出そうと必死に考えてはいるんですが・・・・・・なかなか思い出せなくって困っていたんです。で、ここはご主人のお力をお借りしようと思い、おもいきって話し掛けたのです。」
まさか、朝っぱらから飼い犬に頼み事をされるとはな。思ってもみなかったよ。もし、思っていたとしても、どこの誰が現実になると思うよ。それに最近じゃ、娘達も大きくなってしまって、まるで私を頼りにしなくなってしまったしな。ろくでもない彼氏なんかよりも、私の方がよっぽど頼りになる事を娘達は知らんのだよ!まあ、それ以前に私とは、ろくに口も聞いてくれない始末だがな。そうだな。ここは、私を頼りにしてくれた可愛い愛犬のために一肌脱ぐとするか!
「よしチョコ!力を貸してやろうじゃないか!」
「ありがとうございます!」
ありがとうか・・・・・・・・・。久しく耳にしなかった言葉だな。妻の奴なんて、私がゴミ出しをしてやっても仕事帰りに明日の朝食のパンと牛乳を買って帰っても、今じゃありがとうの一言も言わなくなってしまったからな。それが当たり前になってしまっているのだろう。だが、この場を借りて私は一言だけ言いたい!
「私はお米派だ!」
「はい?」
「いや、何でもないんだ。こっちの話だ。」
何にせよ。おかえり「ありがとう」。よし!俄然やる気が出て来たぞ!
「よし!頑張るぞチョコ!」
「わん!」
いやどうして急に犬語に戻るんだよ。ガクってなったじゃないか。また眼鏡がズレちゃったじゃないか。
「急に言葉を変えるんじゃないよ!」
「すいません。つい嬉しさのあまり。」
なるほどな。訛りみたいなものか。感情が高ぶるとついつい生まれ故郷の言葉になってしまうみたいなものか。懐かしいなぁ。野山を駆け回っていた少年時代・・・・・・あの頃は、何の心配も不安も無く、何かに夢中になっていたもんだ。部長もいなかったしな。
「ご主人?ご主人?ご主人ってば!!」
「はっ!?」
いかんいかん。干渉に浸り過ぎていた。危うく取引先との接待ゴルフの話まで出てきそうになってしまったではないか。
「さてと、まったく思い出せないのか?」
「思い出せません!」
「そんな自信満々に言うんじゃないよ!」
「あっ!?でも何かこの世界についての重大な事だったような・・・・・・・・・?」
だろうな。だと思ったよ。私も薄々感づいてはいたよ。神様がわざわざチョコを喋らせたぐらいだ。事が世界規模に繋がるのは当然と言えば当然だ。驚きもしない。
「ご主人?ご主人?ご主人ってば!!」
「ん?どうした?」
「僕の手綱を放しちゃってますよ?」
「ああ。」
まあそりゃ私も人間だから、ちょっとぐらいの動揺みたいなものはあるさ。私は、チョコの手綱を手に取ると同時に、震える膝をその手で押さえた。
「この世界についての重大な事か・・・・・・・・・まさか!?」
「どうしたんですか?何か分かったんですね!さすがご主人!」
別に飼い犬に誉められたとこで嬉しくも何ともないよ。ボーナスが増える訳でもないしな。逆に馬鹿にされている気分だよ。しかし、いよいよ話は大事になってきたぞ。考えたくはないが、それしかないだろう。神様がわざわざ犬であるチョコに伝えさせようとした事・・・・・・世界規模な出来事・・・・・・映画や小説によくあるパターンだがきっとそうに違いない!この世界がこの世から消滅する!!
「チョコ!」
「はい!」
「これから私が話す事を心してよーく聞くんだぞ!いいな?チョコ!」
「分かりました!」
「私なりの仮説を考えてみたんだ。神様が犬であるチョコ!お前をわざわざ喋らせて伝えさせようとした事を!いいかチョコ!驚くんじゃないぞ!チョコの言っていたこの世界についての重大な事と言うのはおそらくこうだ!この世界がこの世か」
「あっ!!」
「突然なんだ!びっくりするじゃないか!尻餅ついちゃったじゃないか!いったいどうしたんだ!」
「思い出したんですよ!神様が伝えさせたかった事を!」
私は、息を殺した。チョコの口から、今まさに世界の終わりが告げられようとしている状況に、私の緊張はピークに達していた。世界が消える・・・・・・いったいいつ?そしてどんな風に?それを聞いた私は、これからいったい何をすればいいのだ?世界を救うために何が出来ると言うのだ?私にどうし
「バレンタインデー!」
「なに!?」
「そうですよ!今日は、バレンタインデーなんですよ!ご主人が僕の名前を何度も呼ぶんで思い出したんですよ!」
「2月14日・・・確かに今日は、バレンタインデーだが・・・・・・・・・。」
「あー良かった思い出せて!ご主人に相談して正解でした!スッキリしました!本当にありがとうございました!」
「どういたしまして。って、待てチョコ!お前が伝えたかったって事は、今日がバレンタインデーと言う事だったのか!」
「わん!」
「わん!てなんだおい!世界の終焉はいったいどうなったんだ!!」
どう言う事だ?どうなっているんだ?私の考えていた事は、いったい何だったんだ?この世界のこの世からの消滅はどこへ行ったのだ?チョコは、今日がバレンタインデーと言う事を伝えるためだけに、そんなどうでもいい事のためだけに、喋れるようにされたと言うのか?神様は、いったい何を考えているのだ?ん?待てよ・・・・・・チョコ・・・・・・バレンタインデー・・・・・・はっ!?・・・・・・まさか!?犬の名前がチョコだからか?ただ単に名前がチョコってだけで家の犬が選ばれたと言うのか?なんて・・・なんて・・・なんてくだらない事を!いや、もしかしたらバレンタインデーの裏に何か重要な謎が隠されているのかもしれないぞ!
「チョコ!」
「わん!」
「わん!は、もういいから!神様は他に何か言っていなかったか?」
「わん!わん!」
「スッキリした嬉しさのあまり犬語になるのは分かったが!今はそれどころじゃないんだ!人間語で喋ってくれないか?」
「わん!」
「だからお前は・・・・・・ってチョコ?」
「わん!」
「おい!お前まさか人間語が喋れなくなってしまったんじゃないだろうな!ほら!さっきみたく喋ってみろ!」
「わん!わん!わん!」
冗談じゃないぞ!世界の危機だと言うのに!私は、チョコの体を揺すりながら問い掛けていた。
「わん!」
「いったいこの世界は、どうなってしまうんだ!チョコ!!」
何としても真実を聞き出そうと、私はチョコの体をさっきよりも少し強く揺すった。
「わん!わん!」
「チョコ!どうして喋らないんだ!!」
だんだんと私のチョコの体を揺する両手には、自然と力が入っていた。当たり前だ!世界の危機なのだか
「ガブッ!」
「いっっっっったぁぁぁぁぁぁぁ!!」
何も噛み付く事はないじゃないかチョコ!!私は、お前の主人なんだぞ!立場と言うものを考え・・・・・・はっ!?もしかして、今のチョコの行動には、何か意味があるのかもしれないぞ!この世界を救うための何かヒントとなる鍵が隠されているのかもしれないぞ!そうだ!そうに違いない!
「教えてくれチョコ!私は、これからいったいどうすればいい?」
「わん!」
「何をすればいい?」
「わん!」
「チョコ!」
「わん!」
「チョコ!!」
「わん!」
「なぜさっきっからわん!としか言わないんだチョコ!なぜだ!なぜなんだ!チョコ!!」

第三十五話
「だって犬だもん」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年2月21日 (水)

「第三十六話」

何があったって
何が起きたって
俺は書き続ける
何かを書き続ける

雨が降ったって
雷が落ちたって
俺は書き続ける
常に書き続ける

それしか出来ないんだ
それしかやりたくないんだ

俺はライター
気ままなライター
俺はライター
さすらいのライター

何を言われたって
何を攻められたって
俺は書き続ける
気にせず書き続ける

ここがダメだって?
ここがイマイチだって?
俺は書き続ける
気にせず書き続ける

気にする理由がないんだ
気になる要素がないんだ

俺はライター
無敵なライター
まさにライター
仮面は付けてないんだ

恋をしたって
恋に破れたって
俺は書き続ける
ひたすら書き続ける

愛を知ったって
愛に裏切られたって
俺は書き続ける
前向きに書き続ける

感傷に浸れないんだ
そんな暇がないんだ

俺はライター
バカなライター
悲しきライター
本当は傷付いてんだ

君を忘れないために
傷はあえて治さないんだ

理由も告げずに君は
どこかに消えたんだ

俺はライター
不器用なライター
サムライライター
恋も出来ないんだ

タバコを吸いながら
ベランダで呟いたんだ

「雪でも降らねぇかな?」

君が消えた理由を
本当は知ってんだ

俺はライター
孤独なライター
だから書いた
だけど泣いた

何があったって
何が起きたって
俺は書き続ける
いろいろ書き続ける

夢に向ってるんだ
夢を追い掛けてるんだ

俺はライター
気まぐれなライター
端くれライター
ときどきウィンター

俺はライター
自由なライター
今日まではライター
明日からもライター

第三十六話
「ネンジュー☆ライター」

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年2月28日 (水)

「第三十七話」

くるぶし くるぶし
くるぶし仮面

くるぶし くるぶし
くるぶし仮面

全身タイツで戦う
真っ向勝負で戦う

価値ある未来のために
未知なる平和のために

悪者絶対 許さない
悪者断然 許さない

ピンチになったら使うんだ
ピンチになったら使うんだ
チャンスの時でも使うんだ

くるぶしビームを
使うんだ 使うんだ

くるぶしビームで
許さない 許さない

くるぶし くるぶし
くるぶし仮面

くるぶし くるぶし
仮面は付けてない

付けてる感じで戦う
付けてる風味で戦う

意味ある勝利のために
大いなる一歩のために

不正取引 許さない
交通違反 許さない

8割以上はくるぶしパンチ
2割未満もくるぶしパンチ
ピンチになったら使うんだ

ここぞ!と言う時に
使うんだ 使うんだ

くるぶしビームを
使うんだ 使うんだ

くるぶし仮面が
許さない 許さない

「よーし!今日も頑張るぞ!くるぶし号も絶好調だし!くるぶし履歴書だってバッチリなんだ!これで採用されなきゃ嘘だ!嘘に近い!っと!?おっとっと!」
「キーッ!」
「ここだな?ここのコンビニに今日バイトの面接をしてくれる店長さんがいるんだな?くるぶしヘルメット解除!」
「スポンッ!」
「さーて!行くぞー!!」
「テクテクテクテク。」
「オープン・ザ・ドアー!」
「ウィーン。」
「すいません!3時から面接予定のくるぶし仮面と言う者ですが!店長さんはご在宅でしょうか!はい!はい!そうです!はい!あっ!事務所の方にご在宅なんですね!どうもありがとうございました!レッツ・ゴー・オフィス!」
「テクテクテクテク。」
「ふ~ん。なかなかの品揃えじゃないか。これなら、いつ悪者が襲って来たとしても安心だな!安心に近い!おっと!?さてはこの重厚なドアの向こうに店長さんがいるんだな!」
「コンコン!」
「3時に面接のお約束をさせていただきました!くるぶし仮面です!悪者絶対許さない!くるぶし仮面です!青空大好き!くるぶし仮面です!見返り求めない!くるぶ・・・あっ!はい!では失礼します!」
「ガチャッ。」
「バーンッ!!」
「ああっ!すいません!思っていたよりもドアが軽かったもので!」
「パタン。」
「くるぶし仮面です!宜しくお願いします!悪者絶対ゆる・・・えっ!?はい!是非座らさせていただきます!オン・ザ・チェア!」
「ストン。」
「うむ!なかなかの坐り心地ですね!気に入りました!気に入ったに近い!あっ!履歴書ですか!」
「バッ!バッ!バッ!」
「どうぞ!くるぶし履歴書です!熱き魂を込めて!あえて利き手ではない方の手で書きました!はいそうです!くるぶし仮面と言います!はい?本名かと聞かれたらこう答えます!仮面を付けている場合ではない!!と、えっ?齢20歳です!夢はこの世界を悪者のいない世界にする事です!そこに愛はありません!あるのは勇気のみです!ほのかに香る勇気のみです!勇気が・・・はい?特技は皆のアイドル!くるぶしビームです!右足の内側のこの小さく開いた丸の部分から出ているくるぶしから発射されます!くるぶしビームは悪者を懲らしめます!懲らしめるに近い!左足ですか?左足からは出ません!だから穴も開いてません!ほらね?博士が言ってました!もっと強大な悪者が現れた時!その時!お前の左足からビームが出るようになるだろう!と、だから今は出ません!出そうと努力をしても出ません!それはなぜか?博士が言ってました!もっと強だ・・・はい?趣味ですか?こう見えても結構、多趣味なんですが・・・中でも昔から変わらないもっとも有名な趣味と言えばただ1つです!愛しのマスコット的キャラ!くるぶしフィッシュの飼育です!そうです!俗に言う金魚です!金魚に近い!いえ、金魚です!くるぶしフィッシュは、残念ながら喋りません!だから、言葉のキャッチボールは出来ません!が!!心のキャッチボールは出来ます!この前なんてくるぶしフィッ・・・はい?そうですねぇ?長所は悪者を絶対に許さない所です!今まで生きてきた中で悪者を許した事がありません!短所は飽きっぽい所です!あっ!特技で思い出したんですが!歌が得意です!では歌います!くるぶし仮面のテーマ!

くるぶし くるぶし
くるぶし仮面

くる・・・はい?動機ですか?あのう。ここだけの話なんですけど・・・・・・・・・。どうやら博士が悪者を懲らしめるための新たな武器を作るらしいんですよ!で、そのための資金を稼ぐために僕がバイトをしなければいけなくなってしまったんです!感動でしょ?感動に近いでしょ?泣いてもいいですよ?男が人前で泣くのは、何も恥ずかしい事なんかじゃありません!むしろ!正義です!それは正義なんです!博士が言ってました!もっと強だ・・・はい?時間帯は、いつでもオーケーです!曜日もいつでもオーケーです!ただし!悪者がこの世に蔓延りそうになった時には!その時には!!レジを打ってる場合ではありません!袋にお客様がお買い上げになった商品を入れてる場合ではありません!先入れ先出しなんかしてる場合ではありません!バイトの先輩と猥談してる場合ではありません!バイトの女子に恋をしてる場合ではありません!事務所で寝てる場合ではありません!悪者を退治しに行きます!!」
「くるぶし! くるぶし! くるぶし! くるぶし!」
「すいません!ちょっと電話が・・・あっ!出てもいいんですか?ありがとうございます!」
「くるぶし! くるぶ」
「ピッ!」
「はいくるぶし仮面!あ~博士!悪いんですけど今バイトの面接ちゅ・・・なんだって!?なんなんだって!!分かりました!直ぐ行きます!」
「ピッ!」
「店長さん!!今まさに悪者が蔓延りそうになっています!なので!行かなければなりません!ですから店長さん!面接の続きは、悪者を退治してからと言う事で!では後ほど!シー・ユー・アゲイン!」

もしも あなたの家に
写真立てがあったなら

それを くるぶし仮面に
送ってみて下さい

きっと 彼の写真が入って

送り返されてくるでしょう
着払いで届くでしょう

嗚呼 くるぶし仮面
笑顔素敵な くるぶし仮面

嗚呼 くるぶし仮面
心霊写真な くるぶし仮面

嗚呼 くるぶし仮面
今日も悪者 許さぬ仮面

もしも あなたの家に
冷やご飯があったなら

それを くるぶし仮面に
送ってみて下さい

きっと 彼は喜んで

冷やご飯を食べるでしょう
チンせずに食べるでしょう

嗚呼 くるぶし仮面
米大好き くるぶし仮面

嗚呼 くるぶし仮面
味付けは 嬉し涙の塩味

嗚呼 くるぶし仮面
毎日少し 痩せてく仮面

泣きそうになる日だって
折れそうになる日だって

涙は仮面の中で流してる

負けそうになる時だって
諦めそうになる時だって

正義が心の中で流れてる

嗚呼 くるぶし仮面
今日も 悪者と戦う仮面
明日も 空腹と戦う仮面

食費を 水道光熱費が奪う

第三十七話
「くるぶし仮面」

「くるぶし! くるぶし! くるぶし! くる」
「ピッ!」
「はいくるぶし仮面!あっ!店長さんですか!ちょっと待っていて下さいね!今この悪者をやっつけてからそちらに駆け付けますから!後はとどめのくるぶしビー・・・えっ?その面接結果は、決定事項なんですか!?決定事項に近いんですか!?」

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年3月 7日 (水)

「第三十八話」

 俺がこの世で一番嫌いなもの。
「ガタンガタン!ガタンガタン!」
電車・・・・・・・・・。
「ガタンガタン!ガタンガタン!」
満員の電車・・・・・・・・・。
「ガタンガタン!ガタン!キキッキーッ!!」
「痛ッ!」
「ガタン!ガタンガタン!」
特に朝の満員電車ときたら大が付くほど嫌いだ。
「ガタンガタン!ガタンガタン!」
ここには、汚い人間の本性と見るも無残な己がための欲望が渦巻いている。
「ガタンガタン!ガタンガタン!」
この空間の中には、自己犠牲の精神や人と人とが助け合う美しい繋がりや優しい心の断片すら持ち合わせた人間など誰一人として存在しない。
「ガタンガタン!ガタンガタン!」
乗客全員がそれぞれ自分勝手に自己中心的に思いのままの姿で目的地までの乗車時間を過ごしている。
「ガタンガタン!ガタンガタン!」
吐き気がする。
「ガタンガタン!ガタンガタン!」
嫌気がさす。
「ガタンガタン!ガタンガタン!」
まったく愚行で
「ガタンガタン!ガタンガタン!」
とことん滑稽だ。
「ガタンガタン!ガタンガタン!」
どんな人間だろうが、この空間の中では赤子よりもわがままで浮遊生物よりも知能が低い鬼畜だ!
「ガタンガタン!ガタンガタン!」
これが人間本来の実践理性や心理主義や情的過程や自己証明や純粋概念や自我意識だとしたら・・・・・・・・・。
「ガタンガタン!ガタンガタン!」
こいつら全員・・・・・・・・・。
「ガタンガタン!ガタンガタン!」
こいつら全員・・・・・・・・・。
「ガタンガタン!ガタンガタン!」
こいつら全員・・・・・・・・・。
「ガタンガタン!ガタンガタン!」
消えてしまえばいい!!
「ガタンガタン!ガタンガタン!ガタンガタン!ガタンガタン!ガタンガタン!ガタンガタン!ガタンガタン!ガタンガタン!」

第三十八話
「いきなり透明人間」

「先月末頃、通勤途中に忽然と姿を消した男性会社員の行方は、未だ何の目撃情報も手掛かりも得られていないようです。当初警察は、自殺の可能性も視野に入れて捜査を行っていましたが、遺書が発見されていない事からも今後は、捜査方針を事件と事故の両方面に絞り込んで行っていく模様です。続いては今日のお天気です。」
「プチンッ!」
相変わらず今日も俺は、人間本来の姿が渦巻く、吐き気のする満員電車に乗る為に、家を後にした。
「バタンッ!」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年3月14日 (水)

「第三十九話」

「プレジデント!48時間で国の約4分の1が、この未知のウイルスによって支配されてしまいました!」
「うん・・・・・・。」
「もはやこの猛威を止める事など我々には不可能です!」
「うん・・・・・・。」
「この国が未知のウイルスによって完全に支配されるのも時間の問題です!」
「うん・・・・・・。」
「プレジデント!」
「ちゃんと聞いてるよ。博士の意見はどうなの?」
「今さら私が口を出すのも何なんですけども・・・おそらく私の計算でいくと・・・24時間以内にこの国は完全に未知のウイルスによって支配されてしまうでしょうね。」
「24時間か・・・・・・。」
「もちろん最長での話ですけどね。」
「馬鹿な!早過ぎる!あまりにも早過ぎる!」
「それだけこのウイルスが恐ろしいウイルスだったって事よ。」
「当初の計算とだいぶ時差があるではないか!」
「あれは、まだ最初の感染者が確認された時点での段階の話でしょ?今とじゃ状況が全く違うのよ!あれだけ私達が何度も忠告していたじゃない!あの時に迅速に的確な処置を施していれば!こんな最悪な事態は避けられたはずよ!」
「くっ・・・・・・!こうなったらプレジデント!あなただけでも避難して下さい!」
「ちょっと待ってよ!何を言っているの!まだこの国には、多くの国民が残されているのよ!その人達は、いったいどうなるって言うの!その人達の事は、ほっとくって言うの!」
「仕方のない事だ!私だって感染していない国民全員を助けたいと思っている!」
「なら!そう思ってるんだったらその言葉通りにしなさいよ!」
「君も分かるだろう!これもこの国の為だ!」
「分からないわ!その決断が国の為ですって!」
「そうだ!国の為だ!苦渋の決断なのだよ!」
「ふざけないでよ!国の為であっても!あなたの決断は、国民の為ではないわ!」
「国の為に何かをすれば、それはイコール国民の為になるではないか!」
「違うわ!国は、国民の事を最後の最後まで守らなければいけないのよ!」
「そんなものは、理想論にすぎない!」
「だったら!国民は、国の犠牲になってもいいって言うの!あなたの考えは、間違ってる!国があってそこに国民がいるんじゃない!国民がいてそこに国があるのよ!理想論なんかじゃないわ!あなた達は、国民を守ってるんじゃない!国を守ってるのよ!!」
「くっ・・・・・・・・・。」
「まあまあ博士。そんなに司令官をいじめないでよ。」
「大統領?」
「プレジデント!?」
「軍はね。最初の感染者が出た街を封鎖する為に、博士が忠告した数時間後に出動したんだよ。ほら、博士がおっかない顔して、これが最後の忠告よ!って言った時だよ。でもね・・・間に合わなかったんだよ。その結果ね・・・司令官の部下は、8割以上が未知のウイルスに感染してしまったんだよ。」
「プレジデント・・・・・・。」
「天罰よ!あの時!私達にあんな態度をとるから天罰がくだったのよ!自業自得だわ!」
「うん。確かに自業自得だよね。でもね・・・独断でなんだよ。」
「えっ!?どう言う事ですか?」
「司令官はね。大統領命令で軍を動かしたんじゃないんだよ。博士の忠告で動いたんだよ。この国を国として成り立たせてくれている国民を守る為にね。それが例え軍の規約を破ると言う結果になろうともね。」
「しかし遅過ぎた・・・部下達が街に到着した時には・・・もう手遅れだった。私は、部下から送られてくる映像を見て、呆然と立ち尽くす事しか出来なかった。見るも無残な光景だったよ。君の言う通り、忠告を素直に聞かなかった我々に天罰がくだったんだな。」
「博士?1つだけ覚えておいて欲しいんだ。我々の中に、誰1人として国民を犠牲にしてまで国を守りたいなんて思っている人間なんていないんだよ。国民を犠牲にするぐらいなら国なんて無くていいよ。」
「プレジデント?少し言い過ぎなのでは?」
「ちょっと言い過ぎたかもね。ごめんごめん。」
「そんな・・・・・・私・・・・・・酷い事を言ってしまったわ。本当にごめんなさい。」
「君が謝る事じゃない。だが、君を怒らせてはいけないのだと勉強になったよ。軍の規約に付け足しとかないといけないな。赤毛の博士は、絶対に怒らすな!と。」
「もし万が一、怒らせた場合には一流レストランでディナーをご馳走せよ!とも付け足しといてよね。」
「ハッハッハッ!高くつきそうだな。」
「フフフ。当たり前でしょ?私を怒らせたんですもの。それぐらい当然よ。」
「アッハッハッ!大丈夫だよ。その時には、僕が支払うからさ。」
「国家予算じゃ足りないかもしれないですよ。何と言っても私は、短気ですからね。」
「そいつは困った!ハッハッハッ!」
「ウフフフフ。」
「参ったね。アッハッハッ!」
「ハッハッハッ・・・・・・・・・。さてとプレジデント!あまり時間がありません!避難を急いで下さい!確かプレジデントは、免許をお持ちでしたよね?あいにくここには、私が乗ってきたヘリが1機しかありません!なので!あなた1人だけで!」
「そうね!大統領!今はとりあえず避難して下さい!残り時間がどれだけあるのか分からないけど!まだ未知のウイルスをやっつける為の血清を持つ宿主が見付からないって決まった訳じゃないですから!」
「さあ!プレジデント!」
「大統領!」
「ありがとう。でもね。僕は、ここに残るよ。」
「何を言い出すのですかプレジデント!」
「そうよ!大統領のあなたまで感染してしまったら、この国は本当に終わってしまうのよ!国民を代表して言います!逃げて下さい!」
「や~だよ。」
「なっ・・・・・・。」
「大統領?」
「あのね。僕はね。この国が大好きなんだよ。大好きで大好きでたまらないんだよ。この国で生まれて、この国で育って、この国で友人が出来て、この国で信頼できる者達に囲まれて仕事が出来て、一緒に学び、一緒に遊び、一緒に笑い、一緒に泣き、一緒に怒り、時にそれが恋愛になり、そして愛する家族を持ち、分かるかい?この国は、僕そのものなんだよ。僕の思い出そのものなんだよ。僕の夢なんだよ。僕はね。まだまだこの国でやりたい事がたくさんあるんだよ。まだまだたくさんの思い出を皆で作っていきたいんだよ。まだまだ皆で夢を追い掛けていきたいんだよ。」
「しかしプレジ」
「あ~あ!やだやだ!な~んでこんなにわがままで駄々っ子な人なんかを私達国民は、大統領なんかにしちゃったのかしらね。はぁ~自分が情けない。」
「おい!プレジデントに向って何を言っているんだ!」
「ほんっとに!ガキなんだから!」
「ごめんね・・・・・・。」
「まっ!でも私達国民の選択は、間違ってなかったみたいだけどね。」
「博士・・・・・・うん。ありがとう。」
「もう!ズルいのよね。その優しい笑顔。」
「プレジデント・・・・・・では、この国に残ると言う事でよろしいのですね?」
「司令官?僕は最初からそのつもりだったよ。」
「あなたってお人は・・・・・・分かりました!少人数ではありますが!まだ感染していない残りの部下達を直ちにここへ集め!作戦会議を開きましょう!」
「私も最後まで諦めず!残りのメンバー達と一緒に未知のウイルスの抗体を持つ宿主を突き止めてみせる!最後の最後まで徹底的にあがいてやるわ!」
「そうそう。このウイルスの最初の報告があった時からずっと思ってたんだけどね。」
「何ですか?」
「お聞かせ下さいプレジデント!」
「うん。未知のウイルスって確か100%の発症率なんだよね?」
「ええ。発症率もそうだけど発症までのスピードもエボラやハンタの比較にならないほどだわ。それに、何よりもこのウイルスの恐ろしい点は、感染媒体が不明なとこね!この異常なまでの感染スピードは、空気感染以上のものがあるとしか考えられないわ!」
「うん。そこら辺は、前にも博士が言ってたよね。」
「何が言いたいのですか?プレジデント。」
「だからね。もし、この感染性の非常に高い未知のウイルスに感染してね。異常なまでの物凄いスピードで発症するとするよね?」
「はい。」
「ええ。」
「でもね。生えてくるだけなら剃りゃいいじゃん。」

第三十九話
「ヒゲウイルス」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年3月21日 (水)

「第四十話」

こちらザァァァァァァァ
こちらザァァァァァァァ
ァァァァァァのテスト中
只今マイクのテスト中

HELLO!ふれんず!
聴いているかい?
聞こえているなら笑っておくれ

HELLO!ふれんず!
元気かい?
だいたいが元気かい?
そうかい そうかい
それでいいさ
それぐらいが調度いいさ
疲れない程度に頑張ろう
挫けない程度に頑張ろう

HELLO!ふれんず!
だったら
そんなとこで何してるんだい?
ほら
立ち止まってないで
ほら
歩き出しなよ
下ばっかり見ていてもしょうがないさ
ほら
僕を見なよ
たいした人生を歩んでいない
僕を見なよ
どうだい?
少しは気が楽になったかい?
どうだい?
ちょっとは勇気が出たかい?

HELLO!ふれんず!
じゃあ行こうか
前にでも 後ろにでも
どっちでもいいから
右にでも 左にでも
どっちでもいいから
上にでも 下にでも
どこだっていいから
ほら
そろそろ歩き出そうか
でもその前に
背負い込んでいる荷物を
少し僕に渡しておくれよ

HELLO!ふれんず!
さあ行こうか
ただ止まっているだけじゃ
何もかもが止まってしまうよ?
何もかもを見失ってしまうよ?
分かっているから
だから
二度は言わないよ

HELLO!ふれんず!
HELLO!ふれんず!
聴いているかい?
聞こえているなら手を振っておくれ
そうだね
そうだったね
そうだったよね
言葉や文字じゃなく
行動や感情じゃなく
距離や時間じゃなく
根っこの部分で繋がっている
知っていたんだ
知っていたんだけど
知っていたんだけどね
たまに
確認したくなるんだ
たまに

HELLO!ふれんず!
死にたくなったら言っておくれ
僕も一緒に死ぬからさ
ただ
少しだけ待ってくれないか?
僕が死にたくなるのを
何年先か分からないけど
少しだけ待ってくれないか?

HELLO!ふれんず!
もし
その時になって
死にたくなくなっていたら
今度は僕が待つ番だね
ずっと ずっと
いつまでだって待つさ

HELLO!HELLO!
HELLO!ふれんず!
ところで今日は
晴れていたね?
ところで今日は
快晴だったね?
空が青いし
雲が白いし
風が甘いし
快適で 最適で 素敵で

HELLO!ふれんず!
そう僕らはだいぶ無敵だ

HELLO!ふれんず!
聴いているかい?

HELLO!ふれんず!
聴いているのかい?

HELLO!ふれんず!
聴いてくれているのかい?

HELLO!ふれんず!
だったら

HELLO!ふれんず!
また 明日 また 明日

こちらザァァァァァァァ
こちらザァァァァァァァ
只今マイクのテスト中
只今マイクのザァァァ
ァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァァァァァァァ
ァァァァァァ・・・・・・・・・

第四十話
「地球最期の人」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年3月28日 (水)

「第四十一話」

 

 

60秒後に死ぬと言われた。

なぜだ!!

どうしてだ!!

って考えもしたが阿呆らしい・・・・・・・・・。

 

 

 

第四十一話
「1分じゃ何も出来ない!!
   かと言って100年ありゃ何か出来るのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年4月 4日 (水)

「第四十二話」

「すいません。お聞きしたいのですが?宜しいですか?」
「聞くがいい。」
「この扉を開けたいのです。」
「なら開けるがいい。」
「ですが開かないのです。」
「なら諦めるがいい。」
「どうしても開けたいのです。」
「なら開けるがいい。」
「何度も開けようとしているのですが、開かないのです。」
「なら諦めるがいい。」
「諦める訳にはいかないのです。」
「なら開けるがいい。」
「でも扉の開け方が分からないのです。」
「なら諦めるがいい。」
「向こう側に、どうしても行きたいのです。行かなければならないのです。」
「なら行くがいい。」
「この扉を開けなければ行けないのです。」
「なら開けるがいい。」
「どうやれば開けられるのか?この扉の真横に立ってらっしゃる貴方なら、もしやご存知かと?」
「なら聞いてみるがいい。」
「知っているのですか?」
「喜ぶがいい。」
「良かった。知っているのですね。でしたら僕に扉の開け方を教えて下さい。お願いします。」
「こうやって!こうやって!この辺をこうやっといてから!ここをこう!そしてこう!さらにはこう!こんな感じで開けるがいい。」
「出来ればジェスチャーも取り入れて説明して欲しいのですが?」
「なら出題するがいい。」
「別にクイズをやりたい訳ではないのです。そう言う意味のジェスチャーではないのです。」
「ハイレベルなものから出題するがいい。」
「ですからそう言う意味ではないのです。それに、僕が出題して僕が解答するのは、あまりにも不自然な事なのでは?」
「なら司会にまわるがいい。」
「特にクイズ番組をやりたい訳ではないのです。それに、出題している時点で僕は司会者なのでは?」
「ならトーク中心にゲストの感動エピソードを引き出すがいい。番組の最後には、豪華プレゼントをハガキ抽選で発表は発送をもって行うがいい。」
「番組どうこうではなく、全体的に司会者になるつもりはないのです。僕はただ、この扉を開けたいだけなのです。」
「なら開けるがいい。」
「開かなくて困っているのです。ですから、扉の開け方を知っているのなら教えて下さい。」
「なら呪文を唱えるがいい。」
「呪文ですか?」
「なら呪文を唱えるがいい。」
「でしたら、その呪文を教えて下さい。お願いします。」
「適当に唱えるがいい。」
「えっ!?適当にですか?」
「とにかく思い当たる呪文を適当に唱えるがいい。何となく唱えてみるがいい。」
「何となくでいいのですか?」
「早く唱えるがいい。」
「は、はい。分かりました。では・・・ひらけ!扉!・・・・・・・・・開きませんが?」
「三回連続で唱えるがいい。」
「ひらけ!扉!ひらけ!扉!ひらけ!扉!・・・・・・・・・開きませんが?」
「もっと“ひ”の部分を強調して唱えるがいい。」
「ひ!らけ扉!ひ!らけ扉!ひ!らけ扉!・・・・・・・・・やはり開きませんが?」
「なら帰るがいい。」
「どうしてそうなるのですか?僕の事をからかっているのですか?でしたらやめていただきたい。」
「なら頬を殴るがいい。」
「そこまで怒ってはいません。それに、僕は暴力は嫌いです。それはなぜか?暴力では何も解決されないからです。」
「右頬を殴るがいい。」
「だから、暴力は嫌いだと言っているではないですか。」
「あの時のあの酒場の時のように、あの看板娘のあの取り合いの時のあのケンカの時のように殴るがいい。」
「あの多過ぎです。勝手にストーリーを組み立てないで下さい。」
「全治三週間ぐらい殴るがいい。」
「結構な怪我ではないですか。それに、貴方とは初対面ではないですか。誰かが聞いたら誤解するような人聞きの悪い事を言わないで下さい。」
「なら疑われないようにするがいい。」
「貴方が原因です。」
「なら謝るがいい。」
「貴方がです。・・・本当に扉の開け方を知っているのですか?」
「疑いたいなら疑うがいい。」
「疑いたくもなります。」
「なら帰るがいい。そして、帰る途中に犬に首根っこを噛まれるがいい。」
「嫌です。」
「帰る途中に意味もなく会う人、会う人に苦笑いされるがいい。」
「嫌です。」
「後ろ向きに歩きながら帰るがいい。」
「嫌です。」
「なら帰るのやめるがいい。」
「僕は、一度として帰るなどと口にはしていません。」
「帰るのやめるのやめるがいい!」
「だから、僕は帰りません。それになぜ、少し怒り口調なのですか?僕は、早くこの扉の向こうに行きたいのです。」
「なら行くがいい。」
「何度も言っていると思いますが、扉が開かないのです。」
「なら寝るがいい。」
「寝る?」
「そう。いくらやっても無理ならば、腹をくくって寝るがいい。一夜漬けなどと甘い考えをしていた自分を後悔しながら眠りにつくがいい。」
「今は、テスト勉強をしている訳ではないのですよ?」
「受験戦争に巻き込まれるがいい。」
「ましてや受験をする気などないのです。」
「なら働くがいい。」
「就職か進学かで悩んでいるのではないのです。」
「ならこれからは、一家の大黒柱として存分に大黒するがいい。」
「何がどうなったら話がそんな方向に進むのですか?どうでもいい事ですが、僕はまだ独身です。だいたい大黒するとは何なのですか?僕は、この扉を開けたい。ただそれだけなのです。」
「なら開けるがいい。」
「だから開け方を教えて下さい。タダとは言いません。ちゃんとそれなりに御礼はします。」
「金では人の心を動かす事など出来ないのだと思い知るがいい。」
「す、すいません。安易な発言をしてしまいました。貴方の誇りを傷付けてしまった事を深くお詫びします。」
「なら振り込むがいい。」
「なんだかんだで、結局はお金で解決しようとしているではないですか。」
「手数料は差し引いて振り込むがいい。」
「変なとこに小さなサービス精神を見せないで下さい。」
「小さなサービスの積み重ねで我が社が大きくなった事を新入社員の君も肝に銘ずるがいい。」
「勝手に就職させないで下さい。僕を助けると思って、どうか扉の開け方を教えて下さい。」
「なら聞くがいい。」
「お願いです。扉の向こう側で大切な人が待っているのです。」
「なら急ぐがいい。」
「貴方に言われずとも十分急いでいます。ですから、扉の開け方を本当の本当に知っているのなら教えて下さい。」
「鍵穴を見るがいい。」
「鍵穴ですか?鍵穴・・・・・・鍵穴・・・・・・鍵穴・・・・・・すいません。鍵穴が見当たらないのですが?」
「子供騙しに引っ掛かるがいい。」
「見事に引っ掛かりましたよ。結構、入念にチェックしてしまいましたよ。」
「なら笑うがいい。」
「ふざけないで下さい!貴方って人は!人が困っているのがそんなに面白いですか!人を茶化してそんなに楽しいですか!それが真面目に貴方の言っている事に耳を傾けている者に対してする行為ですか!少しは人の気持ちを考えたらどうですか!!」
「なら怒るがいい。」
「もう怒りましたよ!」
「気がすんだのなら帰るがいい。」
「だから!僕は扉の向こう側で助けを待っている大切な人のとこへ行かなければならないのです!」
「なら開けるがいい。」
「馬鹿ですか貴方は!開けたくても開けられないのです!さっきっから何度言えば分かるのですか!」
「なら諦めるがいい。」
「そんな事は絶対に出来ない!僕がここで諦めたら!大切な人は、死んでしまうのです!ですからお願いです!扉の開け方を!どうか僕に教えて下さい!!」
「ミイラ取りがミイラになるがいい。」
「何て事を言うのですか!例え僕が死のうが!彼女の命は助けます!」
「ならこんなとこで油を売ってないで、さっさと行くがいい。」
「キーッ!!分からない人だな!扉が開かないんだ!僕は!絶対に諦める訳にも帰る訳にもいかないんだ!」
「なら呪文を唱えるがいい。」
「やりました!開きませんでした!」
「なら“ら”の部分を強調して唱えるがいい。」
「もう騙されませんよ!次は鍵穴ですか?そうやって子供がする悪戯のような事を言って僕をからかうのは!いい加減やめていただきたい!!何なら貴方がこの扉を開けて下さっても良いのですよ!」
「なら・・・・・・・・・。」
「なら?」

第四十二話
「なら他を当たるがいい」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年4月11日 (水)

「第四十三話」

 誰でも一度ぐらいは、自分の頭の中で想像して人を殺した事があるだろ?それはストレス解消の為だったり、自我を保つ為だったり、自己の欲求を満たす為だったり、ただの暇つぶしだったり・・・・・・・・・。実際に殺す訳じゃないんだから別に悪い事じゃない。そうは思わないか?

「次は、今日のお天気です。」
「プチン。」
信じられないが、これがおそらく現実なんだろう。一昨日の公園で発見された男性の変死体。昨日の山林で発見された女性のバラバラ死体。今のニュースでやっていた一家三人惨殺事件。どれも俺が頭の中で想像して殺した人達だ。しかも全く同じ殺され方・・・・・・三日も連続するなんて・・・・・・。単なる偶然だよな?でもなぜなんだ?なぜ、俺が想像で殺した人達が、現実でも同じように死んでしまうんだ?
「ピーンポーン!」
ん?
「ピンポン!ピンポン!ピンポン!ピーン・・・・・・・・・ポーン!」
「ガチャッ。」
「どーも。」
「どーも。」
蛙の国の王様が大きな猿のお供を従えてやって来た。この二人は、いったい何者なんだ?
「どちら様ですか?」
「わたくし達は、こーゆー者です。」
「者です。」
警察手帳!?刑事!?いったい刑事が何の用があって俺の家に?まさか!?・・・いやいやいや、そんなはずはない。だってあれは・・・・・・想像。
「えーわたくしがチョコレートケーキ刑事で、こっちがモンブラン刑事です。どうぞ宜しく。」
「宜しく。」
チョコレートケーキにモンブランだって!?
「我々は、そんなに甘くないぞ!なぜならケーキじゃなくて刑事ですから!ゲコゲコゲコゲコ!」
「キッキッキッキッ!」
冗談のつもりなのか?全く面白くない。気味の悪い笑い方をしやがって・・・・・・何がそんなに可笑しい?
「いったい何の用で来たんですか?」
相手にするのも馬鹿らしい。さっさと用件を聞いて帰ってもらおう。
「ああ、こりゃ失敬。」
「失敬。」
だいぶ失敬だよ。
「我々が何の用で来たかですって?ゲコゲコゲコ!お分かりのくせに。」
「くせに。」
「分かりませんよ!」
分かる訳がないだろ!
「あなたを逮捕しに来たんですよ。」
「すよ。」
逮捕だって!?
「モンブラン刑事。逮捕状を見せて上げて。」
「アイアイサー!」
「逆さま逆さま。」
「あら?キッキッキッキッ!」
「ゲコゲコゲコゲコ!」
なぜだ?なぜ俺が?
「逮捕って!俺がいったい何をしたって言うんです!」
「何をした?ゲコゲコゲコゲコ!」
「キッキッキッキッ!」
「何が可笑しい!」
「ゲコゲコゲコゲコ!だって、あなたが最高に笑えるジョークを言うもんですから。なぁ、モンブラン刑事?」
「キッキッキッキッ!」
「冗談なんかじゃない!なぜ逮捕されなきゃいけないんだ!」
「それは、あなたが人を殺したからですよ。」
「ですよ。」
何だって?俺が人を殺しただって?馬鹿な!確かに殺した・・・・・・でもあれは頭の中で想像して殺しただけで・・・・・・実際に殺した訳じゃない!
「想像して殺しただけで実際に殺した訳じゃない。ですか?ゲコゲコゲコ!想像で人を殺しても殺人は殺人!」
「殺人は殺人!」
「えっ!?」
何言ってんだこの刑事は?なぜ俺が想像で人を殺した事を知っているんだ?
「なぜ想像で人を殺した事を知っているんだ?ですか?」
「すか?」
なぜさっきから俺の考えが分かる!どうなってる!?
「・・・・・・・・・確かに俺は・・・想像で人を殺した。」
「ほら、やっぱり殺してるじゃないですか。ゲコゲコゲコ!」
「ないですか。キッキッキッ!」
「だが!実際に殺した訳じゃないんだから別にいいだろ!」
「寝ぼけた事を言わないで下さい。」
「さい。」
「想像で殺したんなら、それは立派な殺人です。現に、五人もの尊い命が犠牲になっているじゃありませんか。それが、何よりもの証拠です。」
「拠です。」
そんなはずはない!想像で実際に人が死ぬ訳がない!死んでたまるか!
「ゲコゲコゲコゲコ!では、行きましょうか?」
「きましょうか?」
「行くってどこへ?」
「決まってるでしょ?」
「決まってるでしょ?」
「警察へ連れてかれるのか?」
「違います。死刑台にです。」
「にです。」
死刑台!?死刑って事か?ちょっと待ってくれよ!
「どうして俺が死刑にならないといけないんだ!あんたら無茶苦茶過ぎるよ!」
「無茶苦茶なのは、どっちですか?」
「っちですか?」
「人を五人も殺しておいて何を言ってるんですか?いや、本当はもっと大勢の人達を殺しているのかな?そんな奴は、すぐさま死刑になって当たり前!」
「たり前!」
「俺は誰も殺してない!!」
「なぜ我々がここにいるのかお分かりですか?」
「ですか?」
はっ?勝手にあんたらが来たんだろ?何言ってるんだ?
「知る訳ないだろ!」
「あなたが罪の意識に苛まれたから、我々がここにいるのでは?」
「では?」
「これ以上想像で殺人を繰り返していけば、本当に殺人をしてしまう。」
「しまう。」
「あなたの無意識の理性が我々を作り出した。」
「出した。」
作り出しただと!?
「違いますか?」
「?」
「まさか!?あんたらも俺が頭の中で想像したって言うのか?」
「ゲコゲコゲコゲコ!だから、そう言っているじゃありませんか。」
「キッキッキッキッ!決まってるだろ?こんなふざけた刑事を想像するのなんて、あんたしかいないよ。茶番だよ!茶番!」
「モンブラン刑事。少し言い過ぎだよ。ゲコゲコゲコ!しかし、まったくその通りですね。チョコレートケーキにモンブランだなんて、茶番もいいとこですよ。」
「ですよ。って何で俺は、チョコレートケーキ刑事の台詞を繰り返すんだ?まるで馬鹿じゃないか!」
俺の想像?殺人も刑事も?俺が頭の中で想像した事?それが現実になってしまうって事なのか?それともこれも想像なのか?俺は、いつの間にか想像に取り込まれてしまっていたのか?何なんだ?いったい何だって言うんだ?どうしちまったんだよ俺は!
「ここは現実なのか?」
「さあ?」
「さあ?」
「どっちでもいいじゃありませんか。ゲコゲコゲコゲコゲコゲコ!」
「キッキッキッキッ!」
「ゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコ!」
「キッキッキッキッキッキッキッ!」
「ゲロゲロゲロゲロゲロゲロゲロ!」
「ウッキッキッキッキッキッキッ!」
「笑うな!!」
「だったら、我々も想像で殺してみたらどうですか?」
「ですか?」
何を言ってるんだ?
「早く殺しなさい。」
「殺せ!」
殺せだと?
「殺しなさい!」
「殺せ!」
誰が?誰を?
「殺すのです!」
「殺せ!殺せ!」
うるさい。うるさいうるさいうるさい!俺は、誰も殺してなんかいない!ただ、想像しただけだ・・・・・・・・・。
「殺せー!」
「殺せ!殺せ!殺せ!」
黙れ・・・・・・・・・。
「さあ!殺しなさい!」
「殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!」
黙れ・・・・・・・・・黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!
「黙れぇぇぇぇぇ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
し・・・死んでる!?やっぱり俺は殺人をしたのか?いったいここは・・・どこなんだ?現実なのか?それとも・・・・・・・・・

第四十三話
「まだ終わらない!」
 
 
 
 
 
 
「おい!起きろ!」
「ん?」
ここは?今のは?
「何だ青白い顔して!仕事は、はかどったのか?」
「仕事?」
今のは夢?
「おいおい。顔でも洗ってきた方がいいんじゃないか?仕事ってゲームに決まってるじゃないか。」
いったい俺は?
「ゲーム?」
「うちの会社から出す新作のゲームソフトだよ。シナリオは、お前の担当だろ?」
そうか・・・・・・ここは仕事場か・・・・・・・・・。
「どうだ?いいシナリオでも浮かんだか?」
「・・・・・・・・・主人公は、想像力でモンスターと戦っていくんだよ。」
「いいじゃないかそれ!斬新だよ!」
「想像力のレベルがアップすれば、いろいろな想像でモンスターと戦っていけるようになるんだ。」
「なるほど!で?どんな風に戦うんだ?」
「公園のベンチで酔っ払って寝てるモンスターを大きな石で何度も殴って殺したり。」
えっ!?
「殺したモンスターをバラバラにして山中に埋めたり。」
何を言ってるんだ?
「一家三人で楽しく夕食を食べているモンスター家族を皆殺しにしたり。」
おい・・・・・・これじゃあまるで・・・・・・さっきの・・・・・・・・・。
「おいおいおい。子供もプレイするんだぞ?表現がグロテスク過ぎるんじゃないか?まあ、まだまだ期限は先だからな。そんなに根詰めて考える事はないさ。」
「あ・・・ああ。そうだな。でも、今の内に骨組みだけでも考えとかないと。」
「それで体を壊しちゃ冗談じゃ済まされないだろ?まあ、これでも食って一休みでもしろよ。」
「ん?ケーキか?」
ケーキだと!?
「疲れた脳には、甘い物が一番だ。」
「悪いな。」
「パカッ。」
「チョコレートケーキとモンブランだ。二つとも食うなよ?一つは俺のだからな。」
チョコレートケーキにモンブランだと!?
「ああ。」
「俺は、どっちでもいいから、好きな方を選んじゃっていいぞ。今、コーヒー入れてきてやるよ。」
単なる偶然だよな?いや、偶然に決まってる!
「悪いな。ギンギンに熱いブラックを頼むよ。」
「分かった。なあ?」
「ん?」
「どうしてお前が、さっき俺が頭の中で想像していた出来事を知ってるんだよ!?」
「さあ?きっとジョークなんじゃないか?これも何となくジョークなんだよ。だからそんなマジな顔してないで、早くコーヒーを入れてきてくれよ。ゲコゲコゲコゲコゲコゲコゲコ!」
ここは現実なのか?それとも・・・・・・・・・

第四十三話
「まだ終わらない!」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年4月18日 (水)

「第四十四話」

何にも知らないし
知りたくもないし

それ気にならないし
気にしたくもないし

限りなく不透明だし
何よりも不鮮明だし

知りたい事は
続きぐらいだし
気になる事は
天気ぐらいだし

ならば

すんなり すんなり
聞こうか?
すら~り すら~り
流し気味
どんより どんより
雨模様?
くも~り くも~り
空模様

何にも分かんないし
分かりたくもないし

特に注意する事も
それとなくないし

いまいち不安感だらけだし
でもって緊張感もなしだし

分かりたい事は
少し分かったし
注意していても
過ちは起こるし

ならば

きっぱり きっぱり
させようか?
とろ~り とろ~り
曖昧に
はっきり はっきり
させようか?
のら~り くら~り
適当に

まったくやってらんないし
されど生きなきゃならんし
事あるごとに困難続きだし
だいたいメリットがないし

疲れて寝ちゃうし
腹が減っちゃうし
嫌気さしちゃうし
身動きがとれなくなっちゃうし

もう朝が来るし
また夜になるし
けど月はないし
でも地球はぐるっと回っちゃうし

だったら

のんびり のんびり
行こうか?
ゆる~り ゆる~り
考えて
ゆっくり ゆっくり
歩こうか?
する~り する~り
くぐり抜け

イエ~イ まだまだ

まったり まったり
進もうか?
ゆら~り ゆら~り
風が吹く
やんわり やんわり
触れようか?
ふわ~り ふわ~り
空まで

衝動的だし 感傷的だし
合理的だし 意欲的だし
何なら知的だし
更には美的だし
情緒不安定だったりだし

こうなったら

ゆったり ゆったり
生きようか?
知らないフリして生きようか?

ゆったり ゆったり
生きようか?
知らない事にして生きようか?

無知な感じで生きて行こうか?

第四十四話
「能ある鷹は
     ゆえに爪を隠す」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年4月25日 (水)

「第四十五話」

 ペンギンです。
「おいペン!」
こいつもペンギンです。
「何だギン!」
僕等は、ペンギンです。
「スヤスヤ。」
とどのつまり三匹のペンギンなんです。
「おいってばペン!」
「さっきっから何なんだギン!」
「お前ペンギンだろペン!」
「当たり前だギン!ペンギン以外の何者でもないギン!」
「何て種類のペンギンだペン!」
「お前と同じ種類のペンギンだギン!」
「なるほど・・・・・・なかなか難しい事を言うペン!」
「どの辺が難しいんだギン!」
「スヤスヤ。」
「なあペン!難しい話は置いといてペン!」
「お前が振ってきたんだろギン!」
「聞いてくれペン!こいつのお腹を叩くとポムポムって音がするペン!」
「ペシペシ!」
「ポムポム。」
「どうだペン!面白いペン!」
「確かに面白いとは思うギン!でも気持ち良さそうに寝てるんだから、ほっといてやれギン!」
「スヤスヤ。」
とまあ。僕等は、だいぶ暇ペンギンだった。ポムポムをするぐらい暇ペンギンだった。
女の子が現れるまでは・・・・・・・・・。

「ペシペシ!」
「ポムポム。」
「スヤスヤ。」
「ペシペシ!」
「ポムポム。」
「スヤスヤ。」
「ペシペシ!」
「ポムポム。」
「スヤスヤ。」
「いい加減にポムポムするのやめてやれギン!」
「俺達は、暇を持て余してるんだから良いじゃないかペン!そんな事よりも大発見だペン!」
「どうしたギン?」
「いいかペン?よく聞いてるんだぞペン?」
「ペシペシペシ!」
「ポムポム。」
「大発見ペン!!」
「何がだギン!」
「もう一回やるからちゃんと聞いてろペン!」
「ペシペシペシ!」
「ポムポム。」
「三回ペシってやっても二回しかポムってしないんだペン!」
「下らないギン!下らなすぎるギン!そんな下ら」

「ドサッ!!」

「スヤスヤ。」
「ん?どうしたペン?」
「見たかギン?」
「見てないペン!」
「降って来たギン!」
「晴れてるペン!」
「雪じゃないギン!」
「じゃあ何が降って来たペン!」
「女の子だギン!」
「ペシペシ!」
「ポムポム。」
「ペッペッペッ!おいおいペン!寝ぼけるのは、こいつだけにしてくれペン!うけたうけたペン!ペッペッペッ!」
「ペシペシ!」
「ポムポム。」
「ペシペシ!」
「ポムポム。」
「ペシペシペシ!」
「ポムポム。」
「叩くなギン!別に笑わせようとして言ったんじゃないギン!本当に見たんだギン!あっちの方に落ちたギン!」
「そこまで言うなら確かめに行くペン!」
「ペシペシ!」
「ポムポム。」
「だから叩くなギン!行くギン!」
「ヨチヨチ。」
「ヨチヨチ。」

「スヤスヤ。」

「ヨチヨチ。」
「ヨチヨチ。」
「ペシペシ!」
「ポムポム。」
「いちいち叩くなギン!」
「まさか本当に女の子が落ちてるとは、思わなかったペン!」
「ここまで運んで来たけど、どうするギン?」
「どうするペンって言われてもペン!食べる訳にもいかないだろペン?」
「当たり前だギン!」
「生きてるのかペン?」
「生きてるだろギン?」
「ペシペシ!」
「おいギン!何やってるんだギン!」
「ポムポムって音がすると思ってペン!」
「思うなギン!音がするのは、こいつだけだギン!」
「スヤスヤ。」
「んっん~ん。」
「おいペン!女の子が目を覚ますペン!」
「ん?ここは・・・どこ?」
「おいペン!」
「何だギン!」
「何か言ってるみたいだけど何を言っているのか分からないペン!」
「当たり前だギン!相手は人間だギン!言葉を理解出来る訳ないだろギン!」
「知らなかったペン!今日、二度目の大発見だペン!」
「お前が物事を知らなすぎなだけだギン!」
「あ~っ!!」
「おいペンギン!俺達を指差して何か言ったペン!」
「うわ~!本物のペンギンだ~!!しかも三匹もいる~!かっわいい~!おいしょっと!」
「お、おいペン!抱きかかえられたペン!」
「そうだなギン!」
「呑気に見てないで助けろペン!こいつきっと食べる気ペン!!」
「あ~ん!そんなに暴れないで!何でだろ?食べられると思ってるのかなぁ?怖がらなくても大丈夫だよ?」
「スリスリ。」
「お、おいペン!顔と顔をスリスリしてきたペン!!やっぱり食べる気だペン!!早く助けろペン!!」
「落ち着けギン!食べようとなんかしてないギン!むしろ俺等に会えて嬉しがってる感じだギン!」
「本当かペン?」
「本当だギン!」
「あっ!おとなしくなった。ごめんね。驚かしちゃったよね?はい。下ろしてあげるね。」
「本当だペン!」
「だから言ったギン!」
「そうだ!忘れてた!初めまして!」
「ペコ。」
「今度は、頭を下げたペン!」
「とりあえず真似しとくギン!」
「ペコ。」
「ペコペコペコペコ。」
「やり過ぎだギン!」
「多くやった方の勝ちなんだろペン?」
「いつ決まったんだギン!」
「あっはは~!かっわいい~!!」
「パチパチパチ!」
「今度は、手を叩いたペン!」
「とりあえず真似しとくギン!」
「パタパタパタ!」
「パタパタパタ!」
「無理だペン!」
「俺等の腕の長さじゃ不可能だギン!」
「かっわいい~!ん?こっちのペンギンさんは、寝てるのかな?」
「おいペン!今度は、こいつを見てるペン!これは、チャンスだペン!」
「いったい何のチャンスなんだギン?」
「ペシペシ!」
「ポムポム。」
「なっペン?」
「なっギン?じゃないギン!どんなチャンスなんだギン!」
「うわ~!ポムポムって音がした~!やらしてもらお~っと!」
「ペシペシ!」
「ポムポム。」
「ペシペシ!」
「ポムポム。」
「おもしろ~い!ペンギンってお腹叩くとポムポムって音がするんだ~!」
「ペシペシ!」
「ポムポム。」
「おいギン!何か間違った知識を植え付けてないかギン?」
「考え過ぎペン!あんなに楽しそうにポムポムしてるペン!そしてすかさずこうだペン!」
「ペシペシペシ!」
「ポムポム。」
「何で~!三回叩いたのにポムポムって二回しか音がしな~い!ふしぎ~!」
「ペシペシペシ!」
「ポムポム。」
「ペシペシペシ!」
「ポムポム。」
「ペシペシペシ!」
「ポムポム。」
「あっはは~!たのし~!」
「えっへんペン!」
「何で得意気になってるギン!」
「ペシペシペシ!」
「ポムポム。」
「ペシペシ!」
「ポムポム。」
「ペシペシペシ!」
「ポムポム。」
「ペシペシ!」
「ポムポム。」
「うん!満足!満足!」
「ん?止めたペン?」
「きっと無意味な満足感を得たんだろギン?」
「さ~てと!もう帰らないとパパとママに怒られちゃうや。内緒で来ちゃったしね。遊んでくれてどうもありがとう。」
「おいペン!ガキの分際で俺達の頭を撫でてるペン!」
「きっと悪気があってやってる訳じゃないギン!」
「おいペン!ガキがどっか行くみたいだペン!」
「きっと家に帰るんだろギン?」
「バイバ~イ!」
「手を振ってるペン!」
「とりあえず真似しとくギン!」
「ペチペチペチ!」
「ペチペチペチ!」
「おいペン!ところで帰るっていったいどこへペン?」
「知る訳ないだろギン!」
「おいペン!さっき落ちて来た場所で立ち止まったペン!」
「ブワ~ッ!!」
「お、おいペン!」
「信じられないギン!」
「背中から羽が生えたペン!!」
「ブワ~サッ!ブワ~サッ!ブワ~サッ!ブワ~サッ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・!?」
「行ったペン!」
「行ったギン!」
「飛んでったペン!」
「飛んでったギン!」
「あれは天使ポム!」
「起きたのかペン!」
「本当かギン?」
「本当だポム!」
「そうだったのかギン!」
「それにしてもよく寝てたなペン!」
「寝てないポム!僕は、最初から起きてたポム!寝たふりしてただけポム!」
「何だとペン!おいペン!だったらもしかしてペン!」
「そうだポム!あれは僕が全部ポムポムって言ってただけポム!ペンギンのお腹を叩いてポムポムなんて音がするはずないポム!」
「ギッギッギッ!そんな事だろうと思ったギン!」
「よくも騙してくれたなペン!!」
「ポッポッポッ!楽しかったんだから別にいいポム!」
「ペッペッペッ!それもそうだなペン!」
「そうなのかギン?」
「そんな事よりポム!寝たふりしたらお腹が減ったポム!」
「何だそれギン!」
「じゃあ行くかペン!」
「行くポム!」
「やれやれだなギン!」
「ザバーン!」
「ザバーン!」
「ザバーン!」

とどのつまり僕等は、三匹のペンギンなんです。でも、天使と一緒に遊んだペンギンなんて、きっと僕等三匹だけだと思います。

第四十五話
「三匹のペンギンと天使」

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年5月 2日 (水)

「第四十六話」

 二人の男がだだっ広い廃墟の真ん中の鉄の支柱に背中合わせに座りながら鎖で縛り付けられていた。男達の視界の先には、デジタル表示でカウントダウンを刻み続けている時限爆弾が置かれていた。
「どうするんだ!」
中年刑事が体をくねらせながら言った。
「俺に聞くなって!」
若いカメラマンもまた、体をくねらせながら答えた。
「だいたい君があんな写真を撮ってくるからこんな目に遭うんじゃないのか?」
「あんたら警察が間抜けだからだろ!だから俺が代わりにスクープ写真を撮ってきてやったんじゃないか!」
「確かに我々警察は、連続殺人鬼である奴の手掛かりを見失っていた。だがな!君に間抜け呼ばわりされる覚えはないぞ!」
「へっ!よく言うよ!こうやって俺らがまんまと奴の罠にはまって爆弾を目の前にして縛り付けられてんのも!元はと言えばあんたのせいじゃないか!」
「何で私のせいなんだ!」
「奴は確か、二人でこの廃墟に来いって言ったよな?」
「ああ。だからちゃんと二人で来たじゃないか!」
「来るのは二人だって構わないさ。」
「なら問題ないじゃないか。」
「応援もなしで本当に二人だけで来る馬鹿がどこにいるんだよ!」
「いや、だが奴は二人で来いと言ったんだぞ?だから私は、その大事な約束を守ってだな。ここに来る事を誰にも言ってないんだぞ?約束を守った私がなぜ責められないといけないんだ!」
「真面目かっ!」
「真面目の何が悪い!どこがいけない!私と言ったら真面目!真面目と言ったら私!ってぐらい私は、署内でも真面目な男で通ってるんだ!」
「そんなんじゃ奥さんに逃げられちまうぜ?つまらない男ね。とか言われてな!」
「もう逃げられたよ・・・・・・・・・。」
「えっ!?」
「しかも今・・・君が言った言葉を残してな・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・悪かったな。」
「いいさ・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・罪の擦り合いをしている場合じゃないな。とりあえず俺らが今やらなきゃならない事は、一秒でも早くここから逃げ出す事だ。」
「そうだな。」
「罪の擦り合いは、その後だ。」
「どこでやるんだ?」
「はあ!?」
「いや、気持ち悪いんだよ。何かそう言うあやふやな約束って、性格的にとても気持ち悪いんだよ。はっきり決めて欲しいんだよ。」
「・・・・・・・・あんた友達いないだろ?」
「らしき人間は、ちらほらいるよ。」
「らしきでちらほらだったら、絶対いないな。」
「で?どこの公園で罪の擦り合いをするんだ?」
「何で公園は、決定済みなんだよ!だったら、あんたの好きな公園でいいよ!」
「五つあるんだが。」
「一番好きな公園でいいよ!」
「だとすると・・・・・・この建物の裏にある公園だな。あそこは、ひっそりとしていて人も滅多に来ない穴場的な公園なんだよ。私はね。何か悩み事があったりすると、よくあの公園に足を運ぶんだよ。あの公園は不思議といろ」
「話の腰を折っちまって悪いんだけどさ。」
「何だ?」
「死ぬ気かっ!!何でせっかく逃げ出したのに、わざわざこの建物の真裏にある公園に行かなきゃならないんだよ!確実に爆発に巻き込まれるだろ!」
「君が一番好きな公園を選べと言うから、私は素直に答えただけじゃないか!何で私が怒られないといけないんだ!」
「とことん真面目かっ!!少しは頭を使えよ!この建物から一番遠い公園でいいよ!」
「軽い旅行になるが準備は出来ているのか?」
「出来てる訳がないだろ!どこまで行く気なんだよ!」
「新婚旅行で一度だけ行った事のある海外の公園なんだがな。とても素晴らしい公園だったんだよ。確か国宝に指定されてい」
「おい!」
「ん?」
「現状をよく考えろよな!あんたの公園100選なんかどうだっていいんだよ!とりあえず俺は、爆弾が爆発する前にここを逃げ出したいんだよ!」
「同感だ。やっと意見が一致したみたいだな。」
「やっとなのかよっ!で?どうやってこの体に巻き付いてる鎖と鉄柱に溶接されてる足枷を外すんだ?」
「君は、やけに丁寧な説明口調なんだな。」
「あんたが間抜けだから分かりやすく説明してやってんだよ!」
「意外と優しいんだな。」
「真面目一本やりかっ!!で?何かいいアイディアとかないのか?」
「思ったんだがな。」
「小さい事でもいいから、どんどん試していこう。」
「あの爆弾って本物なのか?」
「そこからかっ!!」
「考えてもみたまえ。もしあの爆弾が偽者で、カウントがゼロになっても爆発しなかったらだよ?それまであれこれと一生懸命にもがいていた私達は、まるで馬鹿じゃないか。」
「何もしないで爆弾が爆発したら、俺らはもっと馬鹿だろ!」
「なるほど。一理あるな。」
「一理じゃなくって全理だよ!!あんた物凄く疲れる人だな!」
「妻もよくそれと似たような言葉を言っていたよ。」
「なんか奥さんの出てった気持ちが分かるよ。」
「分かるだと!?まさかお前が妻の浮気相手なんじゃないだろうな!だとしたら許さんぞ!」
「出てった理由って浮気だったのかよっ!ついでに変な言い掛かりすんなよ!あんた自分のガキとも真剣にケンカするだろ?」
「君は、さっきから私の事がよく分かるのだな。まさか!?エスパー!?」
「んな訳ないだろ!ガキかっ!!どっからエスパー出て来たんだよ!」
「もし君がエスパーなら、一つ頼みがあるんだが!」
「エスパーじゃないって言ってるだろ!!」
「あっそ。」
「あんた人を怒らすの得意だろ?」
「やっぱりエス」
「パーじゃない!!何か悪かったな!あんたの頼みを聞いてやれないでさ!」
「気にするな。さあ、早くこんな所とは、おさらばしようじゃないか!」
「何なんだあんた!・・・・・・爆弾の解除は諦めるとしてだ。」
「一番盛り上がるのにか?」
「盛り上がるって何だよ!」
「だってほら、よく映画とかで三秒前とかにコードを切って止めたりするじゃないか。あのシーンが観ていて一番ハラハラドキドキするとは思わないのか?」
「なら、あんた一人でハラハラドキドキしててくれ。俺は逃げる!」
「私も逃げる!」
「もう、好きにしてくれ・・・・・・そうだ!あんた刑事だろ?何か鎖を切るのに使えそうな道具とか持ってないのか?」
「家に帰れば立派なのがあるぞ!必要なら取ってくるが?」
「その時点で必要ないんだよ!今は、持ってないんだな?」
「自慢じゃないが持ってない!!」
「まったくだな!!くそっ!こんな下らない会話をしてる最中にも爆破へのカウントダウンがされてるってのに!ちくしょうっっっ!どうすりゃいいんだ!!」
「少しは落ち着いたらどうなんだ?」
「分かってる!分かってるが爆弾を目の前にしちまうと気持ちが焦っちまうんだよ!」
「私だってこう見えても君と同じだ。」
「全然そんな風には見えないけどな。」
「私も爆弾が爆発した時の事を考えると気が気ではない!だがな。カウントダウンしているデジタル表示の数字を見てみろ。逆にこう考えるんだ。まだあんなに時間がある!とな。」
「初めてまともな事を言ってくれたな。でもな・・・・・・・・・本当にあり過ぎなんだよ!!」

第四十六話
「爆発まで残り365日」

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年5月 9日 (水)

「第四十七話」

「じーちゃん!」
「・・・・・・・・・。」
「ねぇ!じーちゃん!」
「・・・・・・・・・。」
「じーちゃん?」
「・・・・・・・・・。」
「じー・・・・・・・・・ちゃん?」
「・・・・・・・・・。」
「ちょっと!?じーちゃん!じーちゃん!」
「・・・・・・・・・。」
「しっかりしてよ!じーちゃん!じーちゃーん!!」
「何じゃ?」
「じーちゃん!何やってんだよ!」
「死んだフリじゃが?」
「じゃーちゃんがやるとシャレにならないからやめてよね!心配した時間の無駄感が否めないよ。」
「・・・・・・・・・。」
「じーちゃん聞いてんの?」
「・・・・・・・・・。」
「じーちゃん?」
「・・・・・・・・・。」
「じーちゃーん!」
「それよりさっきっから、じーちゃん!じーちゃん!って、いったい何がそんなにじーちゃん何じゃ?」
「死んだフリ、ちょっとイラッとくるからやめてよね。」
「すまねぇ。孫よ。」
「いつの時代の人?」
「遠い未来よりの使者じゃ!」
「絶対むかしの人だったよね?」
「名前をジーチャンと言うんじゃ!」
「嘘じゃん!じーちゃんは名前じゃないでしょ!じーちゃんが名前だったら、世の中じーちゃんだらけでうじゃうじゃだよ。」
「それよりいい加減にじーちゃんに何の用があったのかを教えてくれんか?」
「僕が悪いの?・・・・・・あのね・・・・・・実はね・・・・・・学校でいじ」
「カァァァァァァァッペッ!!」
「何で話の途中で痰吐いちゃうの?しかも縁側にいるんだから庭の方に吐きなよ!どーしてわざわざ後ろ向いて部屋に吐いちゃうんだよ!ばーちゃんに怒られても知らないからね!」
「あの痰はのう。奇跡の痰と言ってな。あらゆる病気を治してくれるんじゃ。」
「吐いちゃダメじゃん!」
「学校でどうしたんじゃ?」
「ちゃんと拭いときなね。・・・・・・学校でいじめられてるんだ・・・・・・。」
「なんじゃと!?そりゃえらいこっちゃ!ママも大変じゃな!」
「どーしてママが学校でいじめられてる事になっちゃうの!?」
「いつもわしをいじめとるから罰が当たったんじゃと思ってな。いや、むしろ罰が当たれと思ったんじゃ!」
「じーちゃん!ちょっとじーちゃんってば!熱くなりすぎだよ!いいから座ってよ!ママはじーちゃんをいじめてなんかいないでしょ?あれは、じーちゃんが余計な事ばーっかするから怒られてるだけじゃん。」
「はて?」
「はて?じゃないよ。この前だってママの大事な化粧品を使ってお腹に顔書いてたじゃないか。」
「ちゃんと謝ったじゃろ?」
「お腹に書いた顔で謝ってたじゃん!」
「真の腹話術じゃ!」
「何言ってんだよ。それに口紅でお尻にハートマーク書いてお尻をくっつけたり離したりして遊んでたじゃん!」
「あれは新しい恋占いじゃ!」
「じーちゃんのさじ加減一つじゃないか!」
「お前?学校でいじめられとるのか?」
「たまにじーちゃんのペースに着いてけないんだよね。・・・・・・そうだよ。いじめられてるんだよ。」
「じゃっ!」
「ちょっちょっと!?どこ行くんだよ!じーちゃんってば!」
「小遣いをせびりに来たんじゃろ?じーちゃん今月あと三百円しか持っとらんのじゃよ。勘弁しとくれよお代官さま~って誰がお代官さま何だよバカヤロー!」
「え~!?何かいろいろ言いたい事があるんだけど何を言っていいのか分かんないよ。とにかく小遣いが欲しくて来たんじゃないよ。」
「何じゃ。びっくりして寿命が五百年も縮んじゃったじゃないか。」
「どんだけ長生きする気なの?・・・・・・だからね。どうやったら学校でいじめられないか聞こうと思ったんだよ。」
「いじめられとるって、いったいどんな風にいじめられとるんだ?」
「クラスにね。」
「クラスって何じゃ?そやつが我が孫をいじめとるのか!」
「そこからなの!?クラスってのは教室の事だよ。」
「ならその教室君が我が孫をいじめとるのか!」
「そこ分からないのおかしいでしょ!教室君て何なの?教室が僕をいじめるってどんな風になっちゃうの?」
「それはもう世にも恐ろしい事になっとるじゃろうな。」
「でね。」
「出おったな!必殺無視無視攻撃!」
「だって、何かきっと突き詰めて聞いても具体的に中身がないかなと思ってさ。」
「さすが我が孫じゃ!千里眼じゃな!」
「えっ?何か難しい言葉使わないでよ。」
「具体的に意味聞かれんで助かったわい。」
「何かモヤモヤ感が否めないよ。話を戻していい?」
「どんと来なさい!」
「クラ・・・教室にね。僕より背が高くて体格のいい奴がいるんだ。」
「十八メートルか!」
「スーパーロボットじゃん!何なら僕もそこそこのもんじゃん!ちゃんと最後まで話を聞いてよ!でね。そいつがいつも僕にケンカを吹っ掛けてくるんだよ。」
「何じゃ何じゃ。ケンカで負けとるのか!」
「だって・・・・・・・・・。」
「だったら強くなりんしゃい!」
「どこの人?・・・・・・でもどうやって?」
「わしを誰だと思っとるんじゃ!」
「じーちゃん。」
「そうじゃよ!じーちゃんじゃよ!わしがじーちゃんだと何か問題でもあるんですか!」
「どこに怒り出す要素があったのか分からないよ。」
「わしもじゃ!」
「・・・・・・だったらケンカに強くなる方法を教えてくれるの?」
「もちろんじゃ!」
「本当!?」
「ジーチャン ウソ ツカナイ ジーチャン ソラ トベル!」
「さっそくついちゃったじゃん!」
「お前には、教えとらんかったがな。実は、じーちゃんは何を隠そう!拳法の使い手なんじゃよ!」
「本当に!?」
「ジーチャン ウソ ツカナイ ジーチャン バーチャン!」
「見た目でバレバレの嘘じゃん!ねぇねぇ。だったら拳法を僕に教えてよ!」
「そうじゃな。そろそろ我が家系に代々伝わる秘伝の拳法をお前に教えてもいいかもしれんな。」
「やったー!これでもうケンカに負けないぞ!ところでじーちゃん?」
「何じゃ?」
「秘伝の拳法って名前ってあるの?ほら、だってよく拳法って名前があるでしょ?酔拳とか蛇拳とかさ。」
「じゃーちゃん拳じゃ!」
「じゃーちゃんじゃん!代々伝わってないじゃん!じーちゃんから始まってるじゃん!歴史浅いじゃん!」
「歴史とは多少の誤りがあるもんなんじゃよ。」
「多少じゃなくってほぼだよ!ほぼ!」
「細かい事にこだわる孫じゃな。」
「かなり大事なとこだと思うよ?」
「強くなれればいいんじゃろ?」
「うん。強くなれるならそれでいいよ。」
「じゃったらまずは、庭に出るんじゃ!」
「分かった。」
「トゥ!」
「トー!でしょ?トゥになっちゃってるよ?」
「さあ!わしのやる動きをよく見とくんじゃぞ?」
「分かった!」
「まず入れ歯がなくてあたふたするさまから名付けられた入れ歯の舞じゃ!」
「えっ!?」
「ふぁふふぁほぉほぉふぁふほぉ。」
「喋り方までその時にならないでよ!何言ってるか分からないじゃん!何て言ってるの?」
「ふぁふふぁほぉほぉふぁふほぉ。って言ったんじゃが?」
「まんまだったのね。ややこしい感が否めないよ。ふぁふふぁほぉほぉふぁふほぉ。って言えばいいの?」
「なかなか筋がいいじゃないか!」
「ただ、ふぁふふぁほぉほぉふぁふほぉ。って言ってるだけだよ?全然、舞ってないんだけどいいの?」
「次じゃ!」
「いいんだ!」
「究極奥義じゃ!」
「早くないじーちゃん!いきなり究極奥義教えてくれちゃうの?」
「仕方ないじゃろ?じーちゃんはな。後ちょっとで囲碁をやりに行かないとならんのじゃよ。」
「ええ~っ!何か片手間感が否めないよ!」
「なーに!この究極奥義はすぐに体得出来るから大丈夫じゃ!」
「そこが究極奥義として疑わしいんだよね。」
「その見た目から名付けられた。」
「られたってじーちゃんが名付けたんでしょ?」
「究極奥義!死んだフリじゃ!・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ええーっ!!残念感が物凄く否めない究極奥義だったよ。」
「いいか!今日のとこは、入れ歯の舞と究極奥義死んだフリの二つの技を伝授するのが、お前の技量から見てもやっとじゃ。」
「囲碁行くからでしょ?」
「あんまりたくさん技を伝授し過ぎてお前の体が壊れたらあれじゃからな。」
「囲碁行くからなんでしょ?あれって何?あれって?ええーっ!こんなんで本当に強くなれるの?」
「じーちゃんを信じるんじゃ!もし今度ケンカに負けたなら、そん時はそん時じゃ!」
「いやフォローとかしてよ!」
「じゃっ!じーちゃんは、囲碁に行ってくるけどちゃんと稽古をやっとくんじゃぞ!」
「本当に行くの?」
「当たり前じゃ!今日のこの日をどれほど楽しみにしとった事か!!」
「わ・・・分かったよ。行ってらっしゃい。」
「孫よ!もし生きて帰って来れたなら!この手で抱きしめてもいいでありますか!」
「囲碁行くだけでしょ?」
「ほな行ってくるで~!」
「陽気過ぎだよ。どんだけ楽しみにしてたんだよ。はぁ~本当にこんなんで強くなれるのかな~?・・・・・・うん!じーちゃんを信じよう!よし!入れ歯の舞だ!ふぁふふぁほぉほぉふぁふほぉ。」

第四十七話
「OLD IS NEW」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年5月16日 (水)

「第四十八話」

「おい人間!人間の男!男人間!」
「うるさい兎だな?何だよ!」
「我輩の耳を放してくれ!」
「放したらお前は逃げるだろ?」
「逃げるなどと卑怯な真似などしないから、我輩の耳を放してくれ!」
「信じられないね。」
「男人間!信じる心を失ってしまうってのは、とても悲しい事なのだぞ?」
「お前さっき逃げただろ!」
「過去を振り返るな男人間!」
「はいはい。」
「我輩には、全てお見通しだぞ?お前は、我輩を食べる気だろ!」
「そうだ。」
「しかも家族で食べる気だろ!」
「ああ、そうだ。」
「悪い事は言わない。男人間よ。我輩を食べるのは、やめておけ!」
「何でだ?」
「我輩には、毒があるのだ!我輩は、毒兎なのだよ!」
「そうかい。」
「いや男人間!本当なのだよ!」
「何でお前に毒があるって分かるんだ?」
「昔、我輩を食べた人間が死んだのだ。」
「どうして食われたのにお前は生きてるんだ?」
「その辺は、シークレットと洒落込もうじゃないか。男人間よ。」
「嘘なんだろ?」
「嘘ではない!男人間よ!」
「そもそもお前みたいに喋る兎自体が嘘みたいな存在なんだから、お前の言ってる事なんか最初から信じちゃいないさ。」
「男人間!お前とお前の家族が死んでも我輩は知らんぞ?」
「お前は、鍋の中から俺達一家の行く末を見守っていてくれ。」
「そうだ男人間よ!」
「何だ?」
「こんな事もあったのだぞ!ある日、我輩の所にそれはそれは偉い。とてもとても偉すぎる学者がやって来たのだ。でな、そのとてつもなく偉い学者が言うにはな。我輩の体には毒があるのだと。」
「何て学者だ?」
「えっ?」
「学者の名前だよ。有名な学者だったんだろ?」
「有名人間だったな。有名過ぎる人間だったぞ!」
「教えてくれよ。何て名前の学者だったんだ?」
「確か・・・・・・ここまで出てるんだが・・・・・・。」
「やっぱり嘘か。」
「嘘ではない!えいと・・・・・・そうだ男人間!」
「思い出したのか?」
「我輩の耳を放してくれたら思い出せそうだ。」
「やっぱり逃げたいだけか。」
「違う!我輩は、ただ男人間に有名人間の名前を教えたいだけだ!我輩は、生まれてから一度も逃げた事などない!」
「だからお前は、さっき逃げたばっかりだろ?」
「逃げると言うのはな男人間よ!逃げ切れてこそ初めて逃げたと言えるのだよ!」
「逃げようとしたんだろ?」
「男人間よ!」
「何だ?」
「何とか食べる方向ではなく、我輩を飼うと言う方向に話を持って行く事は、出来ないものだろうか?」
「そりゃ無理だ。なんせ俺達一家は、兎が大の好物だからな。悪いな兎。」
「我輩は、家事手伝いなら何でも熟せるぞ?美味しい兎鍋も作ってやろう。」
「別にいいよ。」
「何を遠慮しているのだ男人間よ。お前らしくもない。我輩は、知っているぞ?男人間の一家は兎が大の好物だって事をな。」
「俺がさっき言ったからだろ?兎よ。お前さっきから自分で何を言ってるのか分かってて話をしているのか?兎が兎を料理するなんて聞いた事ないぞ?」
「我輩もだ。」
「食われたくないだけなんだろ?もういい加減に観念したらどうだ?」
「男人間!観念しろとは、我輩に負けを認めろと言う事か?」
「簡単に言うとそうだな。」
「我輩は、敗北など認めないぞ!例えこの肉体が滅びようとも魂はこの世に生き続けるのだ!」
「だったら食われてもいいじゃないか。」
「いや男人間。それとこれとは、話が全然別なのだ。恥を承知で正直に言おうではないか!実は我輩、今ちょっとだけ恰好付けたかっただけなのだ!」
「そうかい。」
「男人間!!!」
「何だよ大きな声だして!」
「びっくりして手を放すかなと思ってな。実験を試みただけだ。」
「兎。」
「何なのだ?手を放す気になったのか?」
「お前、必死だな。」
「まあな。我輩は、何事にも一生懸命に取り組む兎だからな。」
「だったら一生懸命に食べられてくれ。」
「そうだ男人間!」
「今度は何だ?」
「今度とか言うな。男人間よ。我輩と組んで一儲けしようではないか!」
「何だって?」
「喋る兎などきっと世にも珍しいぞ!すぐに有名になってお金が入ってくるぞ!どうだ!なかなかのナイスアイディアだとは思わないか?男金持ち人間になれるのだぞ!」
「興味ないね。俺は今のままの暮らしで十分に満足している。それこそ大金なんてもんは、俺にとったら毒みたいなもんだ。」
「よし!ではこうしようじゃないか!男人間は、今までの暮らしをする。その間に我輩が稼いでくる!どうだ?悪い話しではないと思うのだが?」
「おいおい兎。俺の話をちゃんと聞いてなかったのか?金なんかいらないんだよ。それに、何だかんだでお前逃げる気なんだろ?」
「逃げるものか!」
「まあ、どっちにしろお前はもうすぐ家族みんなの胃袋の中だ。」
「面白いな男人間!そのジョークを食われる前に森の動物達に教えたいから耳を放してくれ。」
「次から次へと、よくもまあ下らない事を考えつくもんだな。」
「やはり我輩を食べる気なのか?」
「食べる気はない。」
「男人間!考え直してくれたのだな!うむうむ。男人間ならそうするだろうと我輩は、信じていたぞ!さすが男人間だ!立派だ!男人間の中の男人間だ!」
「食べる気じゃなく食べるって決定してるんだよ。」
「返してくれ男人間!今の我輩の大絶賛の言葉を返してくれ!」
「さて兎。あの赤い屋根の家が俺の家だ。」
「男人間!今まで黙っていた事を許してくれ!」
「まだ何か下らない事を言うつもりなのか?」
「我輩には、男人間に隠していた重大な秘密があるのだ!」
「別に聞きたくないって言っても喋るんだろ?」
「実はな・・・我輩はな・・・この国の国王なのだ!」
「・・・・・・・・・。」
「ん?どうした男人間よ?なるほど、さすがにこの真実には、男人間も驚いたって事か。分かるぞ男人間。しかし、我輩は男人間が我輩にしている我輩の耳を掴むと言う行為を許してやるぞ!男人間は、きっと我輩と兎を間違えたのだろうからな。我輩が男人間の立場でも同じ事をしただろう。さあ、お遊びはこれぐらいにして、我輩の耳を放してくれ。男人間とその家族を我輩の城に招いて兎を使った料理を振る舞おうではないか!」
「プッハハハハハ!」
「嬉しいか男人間!嬉しい時や楽しい時には、そのように大声で笑っていいのだぞ!逆に悲しい時や淋しい時には、大声で泣いていいのだぞ!」
「ハハハハハ!兎よ。そこまでの嘘をよく考えついたな。」
「いや男人間よ。これは嘘ではないのだ。」
「ほら、もうすぐ家だ。」
「男人間?よく聞くのだ!今までついた嘘に対しては、我輩が謝ろうではないか。だがな。男人間よ。我輩が国王って事は、本当なのだぞ!」
「分かっています分かっています。分かっていますよ国王さま。」
「そうか。ありがとう男人間よ。ならば、この手を放してくれないか?」
「ちゃんと国王さまを家族みんなで美味しく食べさせてもらいますよ。」
「おい男人間!話が違うではないか!」
「はいはい。」
「我輩は、この国の国王なのだぞ男人間!お前は、国王を鍋にして食べると言うのか!」
「久しぶりの兎鍋だ。」
「よだれを垂らすな男人間!何度も言うが我輩は、国王なのだぞ!」
「さあ、家に着きましたよ国王さま。」
「貴様!我輩を食べたら重罪なのだぞ!処刑なのだぞ!」
「国王さまに家の鍋の湯加減を気に入ってもらえるといいんですけどね。」
「まだ遅くはない!考え直せ男人間よ!」
「楽しかったよ兎。」
「我輩は兎ではない!」
「ガチャッ。」
「帰ったぞー!今日は、兎鍋だー!」
「我輩は国王だー!!」
「バタンッ!」

第四十八話
「謎の死を遂げた一家」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年5月23日 (水)

「第四十九話」

「シャーッ!」
勢いよくカーテンを開けると今日は凄く快晴だ。
「!?」
「シャーッ!」
そして、勢いよくカーテンを閉めた。まずい!僕は、殺し屋に命を狙われているんだった!うかつにカーテンなんか開けてマンションの部屋の向かいにあるビルの屋上なんかからライフルで撃たれたりなんかしたら洒落にならないじゃないか。
「今日一日どうやって過ごそうか・・・・・・・・・。」
う~ん。悩むな~。悩みまくりだな~。こんないい天気なんだからどこかに出かけたりしたいけど・・・・・・命を狙われてる身なんだからお出かけはまずいよな?
「とりあえず朝飯でも食おう。」
ちょっと待てよ?果たして家にある食料を食っちゃったりして大丈夫なのか?信じちゃっていいのか?もしかしたら殺し屋が食料に毒を入れてる可能性だってあるんだよな。超一流の殺し屋だったらそれぐらい朝飯前だよな。
「食べるのやめよう。」
どうせ今、家には食料がない事なんだしね。実に簡単な話だ。今日一日は、何にも食べずに過ごせば済む事なんだよ。簡単過ぎる話だ。あまりにも簡単過ぎて
「グゥ~。」
思わずお腹が鳴っちゃうね。あ~難しくなってきた。朝の段階でこのお腹の減り具合だと夜までに確実に僕は、空腹で死んでしまうな。
「はっ!?」
もしかしたらこれは殺し屋の綿密に練られた『僕暗殺計画』の一つなのかもしれないぞ?こうやって僕の事を餓死させようとしているに違いないぞ!
「そうはさせない!」
させてたまるか!お出かけしてやる!食料を買いに行ってやる!買い物袋いっぱい!両手いっぱい!夢いっぱい!ガッツリ買ってやるからな!殺し屋の思い通りにさせてたまるか!
「さて!」
僕は細心の注意をはらって歯磨きと洗顔と寝グセ直しと着替えをいつも通りの時間をかけてササッと終わらした。
「ヘヤ~!」
トイレではいつもより長い時間をかけて格闘した。
「ジャァァァァァ!」
今日の相手は、なかなかの強敵だったと『うんち戦記』に書き記しておこう。
「バタンッ!」
さあ準備はととのったぞ!いざ買い出しに行こう!
「!?」
僕は、ドアを開けようとドアノブに手を掛けた瞬間にある考えが頭を過ぎった。
「ガチャッ。」
こうやってドアを開けたと同時に
「バタン。」
爆発でもしたら今頃僕は、ドアの外側に立っていないだろうってね。木っ端みじんだろうってね。危ない危ない。
「気を付けよう。」
これからは、何をするにも慎重にやらねば!
「カチャカチャ。」
そう心に誓いながら鍵を掛けて
「ポチッ。」
僕はエレベーターのボタンを押した。
「待てよ?」
エレベーターの扉が開いた瞬間に殺し屋がマシンガンを持って立っていたら?エレベーターの中に手榴弾が置いてあったら?
「タッタッタッタッ!」
「やっぱり階段だな!」
殺し屋の裏をかくナイスアイディアだ!しかも日頃の運動不足も解消出来るし、まさに一石二鳥のワンダフルでスーパーでアメージングでビューティフルなアイディアだ!僕は、六階から一階までとことん猛烈ダッシュで駆け下りた。
「これは!?」
マンションの入り口までやっとの思いで辿り着いた僕を待ち受けていたのは
「ザァァァァァァァァァ!!」
大粒の雨だった。何でだよ!どうしてだよ!あんなにもいい天気だったじゃないか!僕が雨男だからか?いやいや、そんなはずはない!だって僕は、雨男じゃなくって犬好き男なんだから!マンションの入り口に犬が群がって僕の行く手を遮っていたのなら諦めがつくけど・・・・・・これは諦めがつかないぞ!
「雨か・・・・・・もしや!?」
これも殺し屋の仕業なのか!?僕をこのマンションから出さない為の『僕暗殺計画』のこれも一貫だってのか!?とんでもない殺し屋だ!なんて一流なんだ!
「負けるもんか!」
僕は、こんな嵐のような天候に負けるような犬好き男じゃない!
「タッタッタッタッ!」
出前だ!
「カチャカチャ。」
出前をとってやる!
「ガチャッ。」
朝昼晩と三食おそばを食べてやるからな!
「バタン。」
確か出前用のおしながきがどこかにあったはずだ!こんな時の為に取っておいたはずだ!
「ガサゴソガサゴソ!」
「あったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
僕は、歓喜の雄叫びを上げた。遠くまだ見ぬ未開の地に住んでいるであろう海王星人に聞こえるような感じで・・・・・・・・・。ざまあみろ一流の殺し屋!今からざるそばを出前してやるからな!
「ガビーン!」
まるでブラックホールに吸い込まれて行く気分だった。我が両眼を疑いたくなかったけど、とことん疑ったよ。ホント、後で眼医者さんに行かなきゃって思うぐらい擦りまくったよ。まさか今日がおそば屋さんの定休日だなんて・・・・・・あんまりだ。
「はっ!?」
これすらも殺し屋の仕業なのか!?違う違う!これはおそば屋さんの仕業だ!つまり殺し屋=おそば屋さんの店主って事か?あの岡持ちの中には、あらゆる殺しの道具が入ってるって事なのか?そんなおそば屋さんのおそばなんか・・・・・・そんなおそば屋さんのおそばなんか・・・・・・そんなおそば屋さんのおそばなんか・・・・・・
「食えるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ビリビリビリ!」
僕は、出前用のおしながきをビリビリに破り捨てた。殺し屋おそば屋さんのおそばをこれから先もニコニコ食べ続けていく自信がなかったからだ。
「ん?」
何やらお腹に痛みが走ったような?走らなかったような?
「!?」
走ったね。
「!!」
完璧に走っちゃってるね。
「!!!」
激痛だね。
「!!!!」
やばいね。
「トイレ!!」
僕は、お尻の穴に相当気を使いながら、ゆっくりゆっくりトイレに向かい、ドアを開けズボンとズボンの下に履いてる何かを脱いで、何の事故もなく無事に便器とのドッキングに成功した。
「ヒョエ~!」
それはそれは、物凄い下痢だった。まさか!?これも殺し屋の仕業!?いつの間に僕に毒を!?なんて考える余裕なんかある訳がなかった。
「キョエ~!」
お腹を出して寝ていた僕が悪いんだ。最近ちょっと暖かくなってきたと思って油断していた僕が悪いんだ。
「ムギョ~!」
油断が僕に下痢を招き入れたに違いない。
「ムヒョ~!」
そして僕は今、その招