2006年6月21日 (水)

「第一話」

 春休みを目前としたある晴れた日の朝の事。いつものように僕が目覚めると部屋には、黒いタキシードにシルクハット姿でステッキを持ったおじさんがステップを踏んでいた。僕は、その異様にリズミカルな音に起こされたのだった。寝ぼけ眼を擦りながら、この非現実的な出来事をどうにか受け入れようと、立ち向かう決意をした。そして、このおじさんを何とかしてお父さんだと思おうとした。でも、正直無理だった。お父さんだと思えば思うほど、お父さんを嫌いになっていく自分が嫌いになっていくのが分かったからだ。
「おじさん・・・・・・誰?」
僕は、勇気を出してファーストコンタクトを試みた。
「おじさんは、おばさんなんだよ。」
えっ!?どっからどう見てもおじさんじゃん!なぜ嘘をつく?てか何だか曖昧な言い回しだなぁ。おじさんなの?おばさんなの?いやいや
「おじさんでしょ?」
振り返った!?さも、自分じゃありませんよ。何処におじさん何ているの?ってな具合でキョロキョロしてる!しょうがない。おじさんの言ってる事に合わせるか・・・・・・・・・。
「おばさん?」
振り返った!さも、自分じゃありませんよ。何処におばさん何ているの?ってな具合でキョロキョロしてる!ってどっちだよ!
「おじさん?」
「ん?」
見た!今度は、こっちをしっかりと見た!あまりにしっかり見すぎて顔がプルプルしてる!本当に何なんだよこの人。
「どうして僕の部屋にいるの?」
「それを聞いてどうするんだ?」
聞くでしょ。普通聞くでしょ。話の取っ掛かりとしてまず聞くでしょ。
「不自然だ。」
あんただよ!むしろあんたの存在の方がだよ!
「僕に何か用ですか?」
「ワッハッハッハッハッ。ワーッハッハッハッ!」
笑った!?本域で笑った!?これが大人笑いかぁ。って関心している場合じゃない。横に揺れだしたし、涙流し出したし、声裏返り始めたし、そして疲れてステッキにもたれ掛かって休憩してるし!
「用があるから来たんじゃないか。ボーイ。」
確かにボーイですけども、小学五年生ですけども、もうすぐ六年生ですけども、なんかムカツク!なんだかイラッとする!
「用って?」
「ないっちゃぁない!」
あるっちゃぁあるんかい!むしろこっちを使えよ!あぁ、なんかだんだん面倒臭くなってきた。
「帰って下さい。」
「ボーイ。ボーイに一つ聞きたい事がある。」
無視か!
「ボーイには、夢があるかい?」
「えっ!?」
何だよ突然真面目な顔付きになって。
「おじ・・・・・・。」
やっぱおじさんじゃん。
「いや、ジェントルマンにはね。」
いいよ言い直さなくって。それっぽいカッコしてますけど、あんまいないよ。自分の事を自分でジェントルマンって言う人。
「夢があったんだよ。」
いいよ別に。聞きたくないですよ。
「ボーイは、知ってるかなぁ。ペイロット。」
パイロットでしょ。
「いいぞ。ペイロットっていうのは。」
パイロットね。
「大空をさぁ。バーン!と、男の夢と浪漫を持って行くんだよ。」
パイロットじゃん。
「そいで言うんだよなぁ。アテンションプリーズってさ。」
スチュワーデスだ。そいつぁ、スチュワーデスだ。まてよ?もしかしたらこの人の中では、スチュワーデス=ペイロットなのかなぁ?だからあんなにペイロット、ペイロットって連呼してたのかなぁ?きっとそうだ!そうに違いない!
「あっ!パイロットか!」
違うんかい!!単なる言い間違いかい!少しでもおじさんよりに思考した自分の脳が憎い!
「おっと、ジェントルメンばっかり語ってしまっていたね。」
複数形!?どっからどう見ても一人なんですけど?光の屈折やら、その他諸々を利用したところで、やっぱり僕には、一人にしか見えないんですけど?
「ボーイの将来の夢は何なんだい?」
僕?こう聞かれると何だか恥ずかしいなぁ。
「・・・・・・・・・学者。」
「えっ?」
聞いてろよ!どんだけ距離あんだよ!両耳に手を当てる事かよ!
「学者!」
「えっ!」
聞こえんだろこの距離なら!どんだけ金持ちなんだよ僕の家!そんなに広かないよ。四畳半だよ。
「が・く・しゃ!」
「ペイロット?」
違う!
「違うよ。学者さん。」
「よ学者さん?」
どこ切っちゃってんだよ。誰だよそいつ!わざとだな。わざとやってんだな。
「そうそう。よ学者です。よ学者さん。」
「ジェントルマンもボーイの時代には、よ学者さんを夢見たものだよ。」
いるんだ!?そんな学者さんがいるんだ。名前のニュアンス的に中国とかあっちの方の人なのかなぁ?余とか於とか書くのかなぁ?だいぶ昔の人っぽい感じはしますね。
「学者かぁ。」
がっかりだよ。深読みしてがっかりだよ。考えに費やした僕の時間をどうか返して下さい。
「本当にもう帰って下さい。」
「やだ!」
子供かよ。
「警察呼ぶよ。」
「やだ!」
子供かよ!プイって!ジェントルマンがやる事じゃないでしょ。子供っつうか乙女かよ!
「乙女じゃない!」
何で会話出来ちゃうんだよ!テレパシー?超能力者なの?
「乙女じゃない!」
偶然かい!適当かい!
「時にボーイ。」
「はい?」
「冒険は、好きかな?」
「冒険?」
何だよ唐突だなぁ。話の展開が分からないよ。
「そうだ。大冒険だ。」
微妙にタッチが変わったじゃん。ほんの一、二秒で世界規模になっちゃったよ?
「した事ないから分からないよ。」
「ジェントルマンもだ。」
何なのこれ?何の問い掛けだったの?この人は、何がしたいの?
「あれは、ジェントルマンがジャングルに行った時だったかなぁ・・・・・・。」
した事ないんじゃないの?天井見ながら回想に入ろうとしてるけど大丈夫なの?
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
話さないんかい!何も話さないんかい!
「プッ。」
笑った!何かを思い出して笑ってる!いやだからジャングルの話をしろよ!
「あのシミ顔みたい。」
それかよ!笑った理由それかよ!しかもさらりと嫌な事に気付いてくれたなぁ。今夜寝る時、気になって恐くて寝れないじゃん!トイレ行けないじゃん!そいでジャングルなしかい!話さないんかい!何なのこの人?物凄く疲れるんですけど。
「僕これから学校行くんで帰って下さい。用も無いみたいだし。」
「怒るな!!」
怒られた!?
「怒ってないですよ。」
ってそっちかい。天井のシミの方ね。僕かと思いましたと。って何それ?しゃべるのそのシミは?で、さっき笑ったの、もしやにらめっこだったの?そのシミとにらめっこしてたんですか?朝の段階でそれだったら夜中は、動きだしちゃうんじゃないの?大丈夫なの?
「大丈夫だ!」
だから何で会話が出来ちゃうんだよ。よし!試してみよう。おじさん!後ろに包丁を持っておじさんを刺そうとしてる男の人が立ってるよ!
「大丈夫だ!」
今にも襲い掛かろうと包丁を振り上げたよ!
「大丈夫だ!」
刺されたよ!
「大丈夫だ!」
んな事あるかぁ!!
「大丈夫だ!」
もはや口癖かい!単なる口癖なんかい!
「時にボーイ。」
二度目。
「小腹が空いたな。」
知るかよ!じゃあとっとと帰れよ!自分の家に。
「今日のブレイクファーストは、何かなぁ。」
ブレックファーストね。何か最初の休憩OR最初に壊れたみたいになっちゃってるよ。
「ブロークンファーストは、何かなぁ。」
壊れたよ?何か壊れちゃったよ?いいの?
「楽しみだなぁボーイ。」
何そのギラギラした眼差しは?家!?さっきっから僕の家の朝ご飯の事を言ってたわけ?お断りだよ。こんなわけの分からない人、お断りだよ。
「時にボーイ。」
三度目。
「おじ・・・ジェントルマンは・・・・・・。」
いいよ言い直さなくったって。気にしてるのあんただけだよ。
「そろそろ帰ろうかな。」
待ってましたよ。万々歳だよ。いつもならとっくに顔洗って、歯を磨いて、朝ご飯の並んだテーブルについている時間だよ。
「バハァイ。」
軽いなぁ。のりが軽い。
「ガチャッ。」
「バタン。」
やっと帰った。一安心とかホッとしたって、この事を言うんだな。うん。
「ガチャッ。」
「シルクハットがなんちゃらって言ってたろ。」
言ってねぇよ!てか戻ってくんなよ!で!何で白いタキシードに着替えてんの?もうわけが分からないよ!いい加減にしてよ!!

「ジリリリリリリ!!」
夢!?
「リリリリリリリ!!」
夢だ!
「リリリカチッ!」
夢だったんだ。とても嫌な夢だったなぁ。よし!顔でも洗ってスッキリしよ!
「!!」
「時にボーイ。」
「おじさん!?」

第一話
「少年とジェントルマン」

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2006年6月28日 (水)

「第二話」

「ん!?んん!?んんんん!?んぬ!んぬ!んぬぬ!むむむ!?むむむむ!?むむむむむむむ!?むぅぅぅぅぅ!!ふんっ!ふんっ!ふんっ!ぬんっ!ぬんっ!ぬんっ!ぬぅぅぅぅぅぅぅうぉぉぉぉぉぉ!!くくくくくく!!はいぃぃぃぃぃ!はいっ!はいっ!はいっ!はいっ!はいぃぃぃぃぃ!どぉりゃぁぁぁぁ!!ん!ん!ん!ん!んんんん!はぁぁぁぁぁ!!ふんっ!ふふんっ!ふふんっ!ぐうぉぉぉぉぉぉ!ぐうぉっ!!うんぐ!うんぐ!うんぐ!うぅぅぅぅぅぅんぐぅぅぅぅぅぅぅ!!うぐっ!うぐっ!うぐっ!うぐぐぐ!うぐぐぐぐ!うぐぐぐぐぐぐぐぐ!!はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。おし!!ふんりゃぁぁ!きっ!きっ!ききっ!!うぅぅぅぅぅんっ!!はぐぅ!はぎゃっ!!ふんにゅっっっ!!ちっちっ!ほりゃぁぁぁ!あぁぁぁぁ!いぃぃぃぃ!うぅぅぅぅぅ!えいっ!!えいっ!!えいっ!えいえいっ!!おぉぉぉぉ!なんぐっ!なんぐっ!ぎゅるるぅぅぅぅ!ちょい!ちょちょい!ちょちょちょい!ほいちょい!はうぅぅぅぅぅ!!おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!どぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ふぐっ!!ふぐっ!へげぇぇぇぇぇぇ!ほげぇぇぇぇぇぇ!!はぅ!はぅ!はぅ!にょほ!にょほほ!にょほほほ!にょほほほほほほほほほほ!!はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。むぎぎぎぎぎぎ!!くそっ!くそっ!くっっっっっそぉぉぉぉぉぉ!!こんにゃろっ!!こんにゃろぉぉぉぉ!こぉぉぉんにゃろぉぉぉぉ!!でぇぇぇいっっっ!ちくしょっ!ちくしょっ!ちくしょっ!ちくしょぉぉ!ちっっっくしょぉぉぉ!なんでだ!なんでだ!なんでだ!なんでだ!なぁぁぁぁんでなんだぁぁぁぁよ!どぉぉぉぉしてなんだぁぁぁぁよ!;なぜなんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!のぉぉぉぉぉぉぉぉ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くっそやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!まけてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!どすこいっ!どすこいっ!どすこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!!ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。うし!どっせぇぇぇぇぇいっ!!ふんぐ!ふんぐ!ふんぐぐぐぐ!!ていっ!ていっ!はいぃぃぃぃぃぃ!!せいっ!せいっ!せいっ!なぁぁぁぁぁ!ぬうぉぉぉぉぉ!かぁぁぁぁぁ!とりゃぁぁぁぁぁぁぁ!へやっぁぁぁぁ!おりゃっぁぁぁぁ!こりゃっぁぁぁぁぁ!そりゃっ!!こなくぅぅぅぅぅぅそぉぉぉぉぉぉ!いぃぃぃぃぃっっっっけぇぇぇぇぇ!!これでもか!これでもか!!こぉぉぉぉぉぉれぇぇぇぇぇぇでぇぇぇぇぇもぉぉぉぉぉぉぉかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ぬぅぅぅぅぅぅおぉぉぉぉぉぉ!!おぉぉぉぉぉぉけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!ばっかやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!もぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ、げほっ、げほっ、げほっ、げほっ、げほっ、げほっ、おえぇぇぇぇぇぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっいぃぃぃぃぃ!!」

「パチン!!」

第二話
「割り箸を割る男!!」

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2006年7月 5日 (水)

「第三話」

 推理小説や推理ドラマなんかでよくあるだろ?クライマックスシーンで洋館の大広間みたいな所に生き残った奴等を集めて、探偵が犯人を当てるってのが。まさに今がそれだよ。で、この事件の犯人は俺だ。華麗でパーフェクトでアーティスティックなマーダー・ショーの真犯人は俺だよ。さぁ、探偵さん。犯人を暴いてみやがれ!!
「この事件の犯人は・・・・・・・・・あなたです!!」
「!?」
この馬鹿野郎、俺の隣にいる奴を指差しやがった。とんだ迷探偵だぜ。この呑気に鼻ほじくってる奴が犯人だって?笑っちまうぜ。今だって、自分が言われてるなんて気付きもせず鼻ほじくってやがる。点と線で描けるような面しやがってよ。おいおい早く気付いてやれよ。迷探偵さんの右腕がプルップルプルップル震えてんじゃねぇか。
「この事件の犯人は・・・・・・・・・あなたです!!」
「!?」
言い直したぞおい!って鼻糞を食ってる場合じゃないんじゃないの?お前が疑われてんだぞ?ほら、また迷探偵さんの右腕がプルップルプルップル震えてんじゃねぇか。
「!!」
あっ!気が付いた!って、酸っぱかったのかよ!酸っぱかったのかよ!どんな鼻糞だ!!
「この事件の犯人は・・・・・・・・・あなたです!!」
お前もお前で別の言い方があんだろ?回りもいちいちさも初めて聞いたかのようなリアクションしてんじゃねぇよ。鼻糞もういいんじゃねぇか?そんなに収穫出来るもんじゃねぇと思うぞ。迷探偵さんの左腕がプルップルプルップル震えてっぞ。
「!!」
あっ!気が付いた!って、頭が痛くなったのかよ!頭が痛くなったのかよ!どんだけキーンと冷えてんだ?その鼻糞は!お前の鼻の穴の中がすげーよ。
「あなたは、まず」
お前が鼻糞に夢中になってっから、迷探偵がついに無視して事件の全貌を話し始めちゃったぞ。
「最初の被害者でありますこの洋館のオーナー。彼は、事故死です!」
「!?」
待ておい!殺したぞ!俺は、ちゃんと殺したぞ!第一の殺人としてド派手に演出したぞ。ほら、この大広間にあるどデカイ絵画に貼り付けといたじゃねぇか。どんだけ不自然な事故死なんだよ!
「でも探偵さん?そうすると、あの手紙は、いったい何だったんですか?」
よし!メイドA。なかなかナイスな質問をした。あれは、第二の殺人への布石とも言える、渾身の犯行予告文だ。これから始まるマー
「ダイイングメッセージです。」
おい!!手紙二通にダイイングメッセージ書く奴がどこにいんだよ!つーかおめぇ事故死って言わなかったか?だからあれは、これから始まるマーダー・シ
「なるほど。」
なるほどじゃねぇよメイドA!何納得してんだよ!お前は、もういいや。こんな時に掃除してねぇでメイドBもなんか気の利いた質問をこの迷探偵にぶつけてやれ。
「他に汚れている所はございますか?」
あぁ、確かに気の利いた一言だよ。意味がちげーんだよ!!意味が!
「そして次に起き」
話し進めてんじゃねぇよ迷探偵!不思議だらけだろこの空間。
「すいません!」
おっ!?どうした?偶然この洋館にやって来た意味あり気でまったく事件と関連性がなかった中年男。
「トイレ行ってきていいでしょうか?」
済ましてこいよな!大事な話があるって呼ばれて来たんだろ?どんだけ緊張感無いんだよ!
「そう言えば主人もあの時トイレへ。そして主人は・・・・・・うっ。」
いいとこに話し持ってくじゃねぇか。泣くな!二人目の被害者の妻。
「トイレが詰まって大変だったあれか!」
そうだよ警部。あれこそが時間差殺人だよ。お前に解けるか?迷探偵!
「皆さんは、勘違いをしています。」
何!?こいつ解けたのか?そうだよ。お前らが二人目の被害者だと思ってる男は、実は、三人目の被害者なんだよ。あの水漏れは、発見を早めるための仕掛けだよ。腐っても探偵、か。
「あれは、彼が近年稀にみるどデカイうんこをしたせいです。」
「まさか!!」
まさか!!じゃねぇだろ警部。んなわけねぇだろ!見たろ?頭部を殴られてたろ?頭から血が流れてたろ?この探偵、単なる馬鹿じゃねぇのか?
「しかし、彼は、頭部を殴られ死んでいたぞ?」
そうだよ警部。あんたの言う通りだよ。
「あれは・・・・・・・・・。」
どうした迷探偵?言葉が詰まってるぞ?
「ゲフッ。」
ゲップかよ!
「びっくりしたのです。自分があまりにどデカイうんこをした事に。」
はぁ?何言ってやがるんだこいつ?
「そして、ズッコケてしまったのです。その時、タンクに頭をぶつけた。」
「なるほど。そして、その拍子にレバーが回り、うんこが詰まったわけですな?」
「その通りです警部。つまり、彼は殺されたのではなく、結果自殺したのです!」
なんで自殺なんだよ!何だ結果自殺ってよ!これこそ事故死じゃねぇか!って、俺が殺したんだよ!
「探偵さん?」
どうした盲目の少女?お前の父親が真の第二の被害者なんだよ。自分の父親についての質問かい?
「そのうんこは、どのくらいのどデカさなんでしょうか?」
どこに興味抱いてんだよ!
「このくらいです。」
説明してんじゃねぇよ迷探偵!両手で大きさ表現したって、こいつには見えねぇんだよ。
「私は、これくらいだと思います。」
見えてんだろ!お前、見えてんだろ!目、見えてんだろ!
「皆さん!いい加減にして下さい!!」
そうだ怒れ!!怒るんだ妻!自分の旦那が馬鹿にされてるんだぞ!
「わたくしの主人です!これぐらいのうんこは、するはずです!」
おい!!何を張り合ってんだよ!!だいたいさっきっからお前ら、うんこ、うんこってうるせぇよ!いったい何の集まりだこれは!そんな話をするために集まったのか?
「僕のは、これくらい!」
聞いてねぇよ鼻糞野郎!!見せんじゃねぇよ!
「まぁまぁ皆さん。うんこの話は、これぐらいにしといて。」
てめぇが言い出しっぺだろうが!くそ迷探偵!
「その後二人殺されて、最後に殺害されたのが、この洋館の前の持ち主です。」
何省略しちゃってんだよ!何か、なかったみたいになってねぇか?面倒臭いのか?ちゃんと謎解きしろよ!四人目の被害者の二重密室殺人の謎解きしろよ!あれはなぁ
「彼女は、寿命です!」
元も子もねぇ事言ってんじゃねぇよ!確かにベッドで眠るように死んでたけどよ。毒だよ毒!あのばばぁは、毒殺してやったんだよ。この迷探偵、思い付きで喋ってんじゃねぇか?
「つまりです。この洋館で起きた数々の連続した死は、殺人ではないのです。全てが偶然に引き起こされたものだったのです!」
おいこら!何をもっともらしく力説してんだ?勝手に幕を下ろそうとしてんじゃねぇよ!だったら何で最初に鼻糞野郎を犯人扱いしたんだよ!
「よかった。」
待てメイドA。納得してんじゃねぇよ!
「一件落着ですな。」
一件落着ですな。じゃねぇよ警部!ちょっと待てよ!こいつは、省略しやがったが三人目の被害者、本当は、二人目の被害者なんだけどな。そいつは、バラバラに体を切断されてたんだぞ?誰がどう見たって殺人だろ!
「ホッとしました。」
待て妻!お前の旦那、うんこで自殺した事にされてんだぞ?いいのか?あんたそれでいいのか?
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
今だに、うんこの大きさを両手で表現しながら考えてんじゃねぇよ少女!
「もう、トイレに行ってきてもいいでしょうか?」
行け!お前は行ってこい!で、戻ってくんな!
「他に汚れている所は、ございますか?」
してろ!お前は、ずーっとお掃除やってろメイドB!このひろーい洋館の隅々までやってろ!で、てめぇは、そうやって一生鼻糞をほじって自給自足してろ!
「それでは皆さん。」
待てよおい!帰るんじゃないだろうな?
「帰りましょうか。」
待て迷探偵!待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て
「待て!!」
「ん?どうしました?この洋館のオーナーの息子さん。」
「俺だよ!」
「何がですか?」
「五人を殺したのは、この俺だよ!!」
「何を言い出すのです。」
「だから!この洋館で起きた連続殺人の真犯人は、俺だって事だよ!分かったか迷探偵!!」
「そのお言葉頂戴しましたよ。」
「!?」
「あなたは、とてもプライドの高い人。無視される事がなによりもの屈辱。プライドが傷付けられる。だから、自分から自供して頂くため、ここにいる皆さんにお芝居を演じてもらったのです!」
「何だって!?」
「以上です警部。」
「いやぁ、いつもながらお見事だったよ。」
「偶然ですよ。単なる偶然です。皆さんもご協力ありがとうございました。」
「・・・・・・やられた・・・・・・。」

第三話
「名探偵」

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2006年7月12日 (水)

「第四話」

 このラブホテルの屋上がベストポジションと決めてから三時間が経過し、やっとターゲットが現れた。今回のターゲットは、あのオープンカフェのオープンプレイスで優雅にコーヒーを堪能している老紳士だ。なんでも国家機密を保持しているらしいのだが、私には、まったく関係の無い事だ。依頼人の理由とターゲットの原因には干渉しない。それが私のルールだ。もう、トラブルに巻き込まれるのは、ごめんだ。約束の報酬が頂ければそれでいい。完璧にターゲットの息の根を止める。それがヒットマンとしての私の仕事だ。
「あいつ、またコーヒーのおかわりをしたぜ。」
さて、この男はいったい何者なのだ?
「あーあ、あんなに砂糖を入れちまって、あれじゃあ、コーヒーがまずくなっちまうよ。あそこのコーヒー飲んだ事あるかい?美味いんだぜ。今度飲んでみなよ。あっ!見てみなよ。また、カップの中に入れ歯を落としてるぜ。でもって、またバッグからスペアーの入れ歯を出して装着して、そんでもってまたコーヒーのおかわりを頼んでるよ。あのじいさん、いったいいつになったらコーヒーを飲むんだ?そもそも、コーヒーを飲むだけなら入れ歯を装着する必要ないんじゃないか?まったく、何しに来たんだか?」
それは私も同感だ。と同時に私の中では、君も同等だよ。いったい君は、ここに何をしに来たのだ?ライフルを持ち、うつ伏せになり、スコープから老紳士を見ている。これではまるで君もヒットマンで、彼を狙っているみたいではないか。三時間前から気さくに話し掛けてくれてはいるが・・・・・・・・・仕方ない。いつまでも無視をしているわけにはいかなくなってきたようだな。もしも、この男のターゲットと私のターゲットが同じだとしたら・・・・・・・・・。
「君に尋ねたい事があるのだが?」
「んっ?やっと口を開いてくれたようだな。」
「君は、ここで何をしているのだ?」
「見れば分かるだろ?殺し・・・・・・・・・だよ。」
やはり・・・・・・・・・。
「あんたは?デートの待ち合わせってわけでもなさそうだけど?」
「君のターゲットは、誰なんだね?」
「おっとっとっと。それは、言えないね。守秘義務ってもんがあってさ。あんたが先に言ってくれたら言ってもいいけど?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
やはり、ターゲットはあの老紳士か。
「ほらな。あんたも言えないだろ?まあ、あれだよ。そんなに考えたってしょうがないさ。時間が来ればいずれ分かる事なんだし、それまで楽しくやろうよ。相棒みたいなもんなんだからさ。」
相棒だと?ふざけるな!私は、今まで一人で依頼をこなしてきた。これからだってそうだ。
「あっ!見てみなよ。あのじいさん、横を通った美女に話し掛けてるぜ。素通りされてやんの。そりゃそうだ。あっ!くしゃみで入れ歯が飛んで女のお尻に噛み付いた!あーあ、そりゃ殴られるよ。何考えてんだか?」
それは君の事だ。いったい何を考えている?
「あんたはこの仕事、何年やってるんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「また、だんまりかい?どうせもう二度と会う事は無いんだし、記念に少しお喋りしたって、罰は当たらないだろ?」
「五十年だ。」
「こいつはたまげた。」
「物心ついた時からこの仕事をしている。」
「じゃあ、もしかして、殺し屋一家ってやつかい?」
「そうだ。」
「俺なんてまだまだ、これだけだよ。」
「そうか、十年か。」
まあ、ヒットマンとしては、これからって時だな。
「一年だよ。」
何!?一年だと!?ルーキーじゃないか!
「いったいあのじいさんは、あそこで何をしているの・・・・・・・・・か?」
突然何を言い出すのだ?
「誰かを待っているのか?ただ、午後のひとときをコーヒーで満喫しているだけなのか?それとも、もっと大きな何かを秘めているのか?」
「なぜそんな事を聞くのだね?」
「暇つぶしだよ。そこに意味なんて無いさ。ふと、思っただけだよ。」
「私は、あんまり他人の人生には興味が無い。彼が何をしてきて、何をして、何をするかなど、あまりにも関係の無い事だ。」
「なるほどね。だったら俺の考えを聞いてくれよ。いったいあのじいさんは、あそこで何をしているの・・・・・・・・・か?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
何が可笑しい?なぜ私を見て笑う?
「・・・・・・・・・きっと誰かに殺されるのを待っている。」
これで決まりだな。このルーキーのターゲットもあの老紳士のようだ。
「なんてね。」
今更わざとらしく惚けても無駄だよ。
「そうかもしれんな。」
「ん?興味無かったんじゃないの?」
馬鹿にしているのか?
「人に命を狙われてるのは、どんな気持ちか考えた事があるかね?」
「さあね。場合によるさ。特に俺らみたいな奴に狙われてたら、それに気付く事なんて無いと思うね。ほら、あのじいさんのように。」
若いな。人は、命をターゲットされた時。無意識にシグナルを発するのだよ。私は、何度も経験がある。引き金を引く瞬間、スコープを覗く私の目とターゲットの目が合う時が・・・・・・・・・気付くものなのだよ。人は・・・・・・・・・。
「さあ、もう無駄話は終わりにしよう。帰って美味しいコーヒーが飲みたくなってきたよ。」
「あのじいさんをあんたに殺させるわけには、いかないんだよね。」
「何!?」
「知ってるかい?依頼人は、直接ターゲットを始末した人間だけに報酬を支払うって?」
なるほど。ここにヒットマンが二人。そして、ターゲットが一人。私と君の勝負って事か。
「ギャンブルは、あんまり得意ではないのだが、嫌いではない。」
「何言ってんだか?この仕事自体がギャンブルみたいなもんじゃないか。」
「そうかもしれんな。」
「まあ、勝負はすでに決まってるけど。」
「ほほう、ずいぶんと自信があるようだな。」
「自信?確信だよ。」
若いな。だが、その心意気は立派だ。しかし、若いからこそ必要な時があるのだよ。敗北が・・・・・・・・・。
「そろそろ決めようじゃないか。」
「カチャッ。」
「決めよう?決まってるって言ってるだろ?」
「カチャッ。」
初めてだな。スコープを覗く人間の横でスコープを覗き、ターゲットを狙うのは・・・・・・・・・。
「あれは!?」
「気付いたかい?」
「ああ、あの円盤は、いったい何なのだね?」
「ありゃ、UFOだ。」
なんと!?あれがUFOなのか!実際、この目で見るのは初めてだが、随分と小さいものなのだな。蝶ぐらいの大きさと言ったところか。
「あのじいさん、まったく気付いてないぜ。」
老紳士の頭の上をクルクル回っている。その回り方は、実に不規則だ。何かしてるようにも見えるのだが・・・・・・・・・。
「あれはいったい!?」
何なのだ?老紳士の頭の上に、摩訶不思議な模様が作り出されたではないか!
「ミステリーサークルだよ。髪の毛でミステリーサークルを作ったんだ。」
あれがミステリーサークル!聞いた事はあったが、これまた見るのは初めての事だ。
「なあ、UFOの窓を見てみなよ。」
振っている!?全身灰色の大きな目の宇宙人?が二人で手を振っている!我々になのか?あっ!?
「行っちまった。」
「ああ、行ってしまったみたいだな。」
老紳士よ。優雅にコーヒーの香りを堪能している場合ではないぞ。凄い事になってしまっているのだぞ?自分の頭のてっぺんが!
「なあ、あのじいさんって双子だったか?」
「そんな話は、聞いていない。どうしたのだ?」
「だったら、じいさんの後に立っている、じいさんそっくりのあのじいさんは、誰なんだ?」
いつの間に!?本当にそっくりだ。しかし、無表情でどことなく生気を感じられない。何者だ?まさか!?新手のヒットマンか?
「あれってまさか!」
「知っているのか?」
「ドッペルゲンガー!」
ドッペ・・・・・・・・・?ドッペン・・・・・・・・・?なに?
「何だって?」
「ドッペルゲンガーだよ。もう一人の自分だよ。自分の死期が迫っていると姿を現すって言われてる現象だよ。」
「つまり何だと言うのだね?」
「簡単に言うと出会ったら死ぬ!あのじいさんが、もし振り向いてあいつと対面した時、あのじいさんは死ぬ!!」
そう言えば、そんな現象を聞いた事がある。我々に命を狙われているからこそ出て来たのか?いずれにせよまずい。老紳士よ。絶対に振り向いてはいけな・・・・・・・・・ん?ドッペルゲンガーが床に置いてある老紳士のバッグをあさり出し、スペアーの入れ歯を取り出して装着した!帰るのか?帰ってしまうのか?そうか、帰るのだな。いったい何をしに来たのだ!
「どうやら、あれを取りに来ただけのようだぜ。」
「そのようだな。」
まあ、何はともあれ一安心だ。何!!!
「な、何だあれは!?」
「えっ?」
「頭上を見たまえ!」
「おいおいおい。宇宙人、ドッペルゲンガーの次は、黒いマントに大きな鎌を持ったガイコツかよ!」
「いいのだな?あれはあれでいいのだな?」
「いいんじゃないか?あれは、誰がどう見たってあれだろ?」
死神!どうなっているのだ?お迎えか?それとも我々に殺される老紳士を待っているのか?しかし、老紳士を自ら迎えに来たと言うのならば・・・・・・・・・。まずい!これでは、私が直接殺す事にはならないではないか。
「おいおいおい!鎌を大きく振りかぶったぞ!!」
殺す気だな!死神に手柄を譲るほど、私は若くはない!どうやら!
「今のようだな!」
「ターン!ターン!」
「待ってました。」
同時?いや、私の方が幾分早かったようだな。ん?死神がいない。どうやら、諦めて帰ってしまったようだ。
「ピューン!」
「ピューン!」
「カンッ!」
「ヒュンッ!」
ん?なに!?ルーキーの弾と私の弾がぶつかった!!ぶつかった?ぶつけたのか?私の弾がそれて壁に当たった。偶然なのか?これがもし必然ならば、私は、ルーキーをなめていた事になる。何にせよ次で分かる事だな。
「引き分けのようだな。しかし次は、今回のようにはいかないぞ。」
「引き分け?何言ってるんだ?俺の勝ちだよ。問題!あんたの弾は、壁。さて、俺の弾は、どこに行ったの・・・・・・・・・か?」
「何を言っ・・・・・・・・・!?」
血!?
「そう。あんたの眉間の奥深くだよ。真上の死神がお待ちかねだぜ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ば・・・・・・かな・・・・・・。はじ・・・・・・・・・めから・・・・・・このわた
「ガクッ。」
「任務完了・・・・・・・・・と。」
「ピロリロリロ、ピロリロリロ、ピロリロリロ。」
「ピッ。」
「はふほふほふひ。」
「入れ歯付けてくんないと何言ってるか分からないんですけど?」
「カポッ。」
「すまんすまん。ご苦労さん。これでわしも命を狙われながら、コーヒーを飲まずにすみそうじゃ。そうそう、約束の報酬だが、コーヒーの味を満喫した後で振り込んでおくとしよう。」
「よろしく。」
「ピッ。」

第四話
「ターゲット」

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2006年7月19日 (水)

「第五話」

雨降ってる。
でも
濡れない。
でも
傘ない。
宿るところも
大きな葉っぱもない。
でも
濡れない。
不思議?
不思議じゃないよ。
曇り?
曇りじゃないよ。
雨は
ちゃんと降ってる。
音は
ちゃんと聞こえる。
ざあざあ
ざあざあ
降ってる。
ざあざあ
ざあざあ
聞こえる。
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
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ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
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ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあ
と。
でも
濡れない。
でも
傘ない。
でも
濡れない。
でも
傘ない。
でも
濡れない。
不思議?
不思議じゃないよ。
偽り?
偽りじゃないよ。
空が
青くても
雲が
白くても
風が
淡くても
雨は
ちゃんと降ってる。
でも
濡れない。
夢?
夢なんかじゃないよ。
だって
ボクが
雨だから。
今日は
ボクが
雨だから。

第五話
「rainypain」

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2006年7月26日 (水)

「第六話」

 いつもの夕方。窓から見えるいつもの町並み。
「ごはんよー。」
そして、いつものママの呼び声。
「はーい。」
いつものように私は答える。そして、調度やり終えたばかりの算数の宿題を机の中にしまい込み、急いで自分の部屋を出た。それから、今日の夕ご飯は何だろう?ってウキウキワクワクしながら階段を駆け下りて台所に向かった。
「今日のごはんは、なーにかなぁ?」
「ガチャッ。」
自然と出た喜びの言葉と同時に台所のドアを開けると、食卓には、パパ、ママ、お姉ちゃん、そして、熊。熊!?熊がいる!?なんで?どうして熊がいるの?しかも、大きい!本格的な熊がいる!なぜ?いつもなら私の横にお姉ちゃん、私の前にパパ、その横にママって感じで食卓を囲んでるはずなのに、私とお姉ちゃんの間に熊!?が座ってる。もしかして、夢?ヤダヤダ!もしこれが夢で、目の前にいる熊が嘘だったら、私が一生懸命やり終えた算数の宿題も嘘になっちゃう。そんなのダメダメ。
「何やってるの?早く座りなさい。」
「う、うん。」
ママ?どうしてそんなに普通でいられるの?ま、まあ、と、とりあえず座ろう。うん。せ、狭い!そりゃそうだよ。普通は、二人並んで座る幅なんだもん。熊がいたらこうなるよね。私、半分出てるもん。お姉ちゃんも半分出てるもん。
「よし。みんな揃ったな。それじゃあ、いただきます。」
「いただきます。」
「いただきます。」
みんなどうしてそんなに普通にしてられるの?
「い、いただ」
「ガォー!!」
「!!」
ほ、吠えた!吠えたよ。隣の大きな熊が吠えたよ。なに?いただきますって事?とてもじゃないけど怖くて横見れないよ。だ、大丈夫なんだよね?私、食べられないよね?いただきますって、私の事じゃないよね?
「パ、パパ?」
「何だ?」
「く、熊がいるよ?」
「あぁ、熊がいるな。」
ちょ、ちょっとそれだけ?おかわりしてないで聞いてよ。パパ、もっとゆっくり噛んで食べないと、消化に悪いよ。ってそんな心配してる場合じゃなかった。そしてママ、いつも思うけど、それは盛りすぎだよ。それじゃあ、昔話だよ。だったら始めからその量で出してあげれば?っていけないいけない、今はそんな事を考えてる場合じゃなかったよ。それよりも今は、このく
「ガォー!!」
「!!」
な、なになに?いったいどうしたの?あぁそっかぁ、熊もおかわりね。ってちょっと!!あんたちゃんと器用にお茶碗とお箸を使ったわけ?すごいよ!あんた、たいした熊だよ。ってなに感心してんのよ。だからママ、それじゃあ、盛りすぎだよ。
「ママ?」
「おかわり?」
いやいや、私は、そんなに食べれませんよ。育ち盛りと言えども、そんなに食べれませんよ。
「そうじゃなくって、熊だよ?」
「熊ね。」
ママー。違うよ。熊って事は、分かってるんだってば。鮭の骨を取ってる場合じゃないんだってば。
「おねえ・・・・・・・・・。」
み、見えない・・・・・・・・・。熊が邪魔でお姉ちゃんがまったく見えない。いるよね?そこにいるんだよね?食べられてないんだよね?
「ママ!私ピーマン嫌いだって言ってるじゃん!」
いたぁ。良かった。お姉ちゃん、ちゃんといたよ。
「好き嫌いするんじゃない。何でも食べなきゃ健康でいれないぞ。」
「いくらパパがそんな事言ったって、食べれない物は、食べれないの!」
うんうん。分かる。分かるよお姉ちゃん。だって私もピーマン苦手だもん。パパは、好きみたいだけどね。だって苦いんだもん。
「熊を見なさい。何でもモリモリ食べてるじゃないか。」
「熊と私を一緒にしないでよね!」
おかしい。おかしいよ今の会話。パパもお姉ちゃんもごく自然に熊を会話の中に織り交ぜてたよ。この熊いったい何者?そうだ!私は、重要な事に気付いてなかった。それは、この熊が本物なのかって事。さ、触ってみようかな?ここは、勇気を出して触ってみようかな?うん!触ってみよう!ゆーっくり、ゆーっくりと、熊に気付かれないように慎重に慎重にと。
「ツン。ツンツン。」
この感触は、間違いないよ。本物だ!
「!!」
気付かれてる!見てるよ。こっち見てるよ。私の事じっと見てるよ。どうしようどうしよう。ツンで止めときゃよかったんだよ。ツンツンいらなかったんだよ。行けるんじゃないか。ツンが出来たんだからツンツンまで行けるんじゃないかと思っちゃったのがいけなかったんだよ。先生も言ってたじゃん。調子に乗り過ぎるところがあるって。馬鹿私!私馬鹿!はっ!
「ググゥ。」
頭撫でたよ。この熊、私の頭を撫でてるよ。本当にいったいこの熊は、何なのよ!うん!ここは、真っ正面から聞いてみよう。先生も言ってた。疑問に思った事は、どんどん質問しなさい。聞く事よりも聞かない事の方が恥ずかしいって。頑張れ私!私頑張れ!
「パパ?この隣にいる大きな熊は、なに?」
「ああ、気付いたか。その熊は




「はぁ。」
二人の男が机を向かい合わせにして、黙々と執筆活動をしていた。
「どうしたんだいN氏?溜め息なんかついて。」
「P氏。何だか行き詰まっちゃったよ。」
「今回の話の事かい?設定に無理があったんじゃないのかい?」
「そんな事はないさ。何処にでもいるような家族。その日常の一家団らんの夕飯の食卓風景の中に熊がいる。発想としては、面白いじゃないか。」
「確かに面白いかもしれない。でも、それだけでは話が広がらないのではないかい?」
「途中までは、上手い事いってたんだよ。」
「オチがなかなか見つからないとか?」
「そう、そこなんだよ。重要なのは、オチなんだよ。ここまできて読んでる人間の発想の上をいくオチが考えつかないんだよ。」
「例えば今、頭の中に思い描いているオチを聞かせてくれないかい?」
「熊が一家を食べてごちそうさま。どう?」
「ちょっと、角度が急すぎないかい?展開的にも無理があると思うな。」
「一周回ってやっぱりこれは、夢でした。」
「この話に夢オチは、合わないよ。現実だから熊が引き立って面白さが出る。夢だったら何だか、がっかりしてしまうよ。」
「だよねぇ。うーん。P氏ならどうする?」
「そうだなぁ。僕なら熊に喋らすかな?」
「P氏っぽいね。」
「それなら、一家の方が熊の家に住み着いてた。ってオチはどうだい?」
「それも考えたんだけどさ。それこそP氏っぽくなっちゃうからボツにしたよ。あくまで僕的な作風で書きたいからさ。うーん。なんかない?」
「N氏らしさなら、次々に動物達がやって来るってのはどうだい?」
「なるほどね。来るって言ってもいろんな動物達じゃなくって、全部熊。いろんな種類のが来て、その熊達をいちいち女の子が詳しく説明する。」
「よさそうだね。」
「でもなぁ。図鑑とかで熊を調べないといけないし、意外と伝わりにくそうだなぁ。」
「N氏は、面倒臭がりだからね。駄目かぁ。」
「駄目だね。そもそも、それでいくとオチが中身に負けそうな気がする。」
「ありえるね。これ鮭って熊が獲ったの?」
「そう!さすがP氏!後々何かに使おうと思って布石で置いといたんだ。」
「じゃあ、設定もあったって事かい?お父さんと熊の出会いとか。」
「やるねP氏!一番最初は、お父さんが熊を拾って来た事にしようと思ったんだよ。それで、御礼に鮭をもらった。それが夕飯のおかずとして出された。」
「それいいと思うよ。」
「いまいちなんだよね。想像したら熊が捨ててあるなんて面白いんだけどね。読み手の頭の中に絵が浮かばないかなと思ってさ。」
「熊が体育座りでダンボールに窮屈そうに縮こまって入っている所とか。」
「ダンボールには、かわいがって下さい。人なつっこいです。なんて書いてあったりね。」
「熊出没注意!とかも書いてあったり。」
「うーん。想像するだけで面白いんだけどなぁ。」
「どうだいN氏。こうやって考えてるのも楽しいけど、この話の結末、そろそろ考えついたのでは?」
「結末ねぇ。結末、結末。結末かぁ。うーん・・・・・・・・・・・・あっ!これだ!よし!これで行こう!!」
男は、生き生きとした表情で、物語の結末を書き出した。

第六話
「第六話」 

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2006年8月 2日 (水)

「第七話」

 ここに、二人の男がいる。会話は、朝からなされている。晴天の中。
「ハンバーグ。」
「ハンバーグ?グ、グ、グ、グラタン!あっ!」
「おいおい。」
「強いなぁ。」
「俺が強いんじゃなくて、お前が弱いんだよ。今日まで俺に一度として勝ってないだろ。・・・・・・・・・あれ?だいぶ爪伸びてるなぁ。」
「えっ?」
「ほら。」
「本当だ。切れば?」
「そん時が来たら、そうするよ。」
「そうだなぁ。俺も髪の毛切りに行きたいしなぁ。あっ!そう言えば、花屋のさっちゃん。来月、結婚だってな。」
「ああ、知ってるよ。」
「お前、確かずっと好きだったよな。」
「・・・・・・・・・むかしな。」
「むかし?嘘つけ!今だって好きなくせに。」
「うっせぇ!」
「告白したのか?」
「・・・・・・・・・してない。」
「なーんだよ。してないのかよぉ。待ってたんじゃないの?さっちゃん。」
「まさか!?で、でたらめな事言うなよ。」
「でたらめ?でたらめじゃないよ。俺からしてみれば、何でお前とさっちゃんが結婚しないんだろうなぁ?って感じだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「奪っちゃう?」
「奪う?」
「式当日にさぁ、花嫁を奪うんだよ。今まさに!二人が誓いのキッスをする瞬間!お前がドアを勢いよく開けて、花嫁に駆け寄る!そして、腕を掴みドアの方へと走り出す!なんか古い映画のワンシーンみたいだけど、ロマンチックじゃない?で、二人が教会の外に出ると、車が用意されてんのよ。もちろん!運転手は、俺ね。」
「何でお前いんの?」
「いいじゃんいいじゃん。お前の人生のビッグイベントに参加したいじゃない。俺はねぇ、世界中の人々がお前ら二人の結婚を認めなくても、お前とさっちゃんの結婚を認める!神様が反対しても俺が賛成する!」
「たまに羨ましくなるよ。お前のその性格。」
「あはは。なっ!いいアイディアだろ?絶対上手くいくって!」
「式に間に合えばな。」
「そっかぁ・・・・・・・・・まっ!だけどあれだ。女は、星の数ほどいるって言うだろ?男ならあんまりくよくよするなよ。」
「してないっての!お前が頭の中で勝手にさせてるだけだろ!」
「あはは。わりぃわりぃ。しかし良かったなぁ。」
「何が?」
「えっ?ほら、晴れて良かったなぁって事。」
「ああ、天気な。」
「そうそう。だって雨とか風とか嫌じゃん。」
「まあな。」
「お天道様が拝める日が一番だよ。」
「お前は、百姓か?一昨日だったっけか?物凄い天気だったの。」
「ああ、あれは、凄まじかったよ。まるで、台風が二つ同時に上陸したみたいだったよ。この時期にだよ?まったく!困っちゃうってんだよ!」
「だから、百姓かって!それに、時期は関係ないだろ?時期は!確かにありえない天気だったけどな。」
「なあなあ。」
「ん?」
「もしかしてお前って今日、誕生日?」
「・・・・・・・・・そう言えば、今日は十七日?」
「そうだよ!」
「お前、よくそんな事を覚えてたなぁ。」
「あれからずっと数えてたからね。任せなさい。」
「お前に任せたらロクな事にならないのは、身を持って体験してるからな。遠慮しときます。」
「それを言うなって。今は、仲良く元気にやってるじゃないか。」
「・・・・・・・・・やれやれ。」
「おめでとう!」
「いいよ別に。思い出したかのように言いやがって。それに、そんなにおめでたくもないっての。」
「照れんなって。こういうのは、縁起もんなんだからさ。とりあえず、素直に言葉だけでも受け取っておけって。プレゼントは、後々あげれたらちゃんとお前の欲しいものをあげるからさ。なっ。」
「はいはい。期待しないで待っとくよ。」
「そうそう。ポジティブ、ポジティブ。人間、ネガティブになっちゃあ、おしまいだよ?いかなる時にもポジティブ!苦しい時こそポジティブ!あれっ?と思ったらポジティブ!」
「なんか薬みたいになっちゃってるぞ。」
「なっ!だから、さっちゃんの事は、気にしない気にしない。」
「なっ!じゃねぇよ!さちの事は、これっぽっちも気にしてないっての。」
「またまたー。」
「はぁー。」
「ほら気にしてる!」
「今の溜め息は、そんなんじゃないよ。」
「じゃあ、なに?どしたん?」
「何て言うかさぁ。俺は、今日でまた、一つ歳をとったわけだろ?なのに、いったい何をしてんだか。と、思ってさ。」
「何もしてない。」
「うっせぇ!何もしてないじゃなくて、何も出来ないんだよ!」
「しょうがないよ。人間それぞれ立場ってもんがあんだからさ。他人が何をしようと、俺らは、俺らだよ。今出来る事を一生懸命にやればいいじゃない。むしろ、今やってる事は、今しか出来ないのかもしれないんだしさ。例えそれが、しりとりだとしても!そのしりとりを一生懸命にやってれば、きっといつか!いつの日か!いつの日にか!!ああ、あの時しりとりしといて良かったなって日が必ず来るよ。来るはず!」
「そんな日来なくっていんだよ!」
「それにしても暇だなぁ。まいったなぁ。なあ、俺らの長い人生の中でも、これほど暇な時間って無いんじゃない?そう思うと何だかこの時間も貴重に思えてくるよな。」
「お前だけだよ。」
「おいおい。ポジティブ、ポジティブ。」
「はいはい・・・・・・・・・。俺らの人生、長いかどうかも分かんないだろ?」
「またまたー。お前の悪い癖だよ?何でもマイナス思考になっちゃうとこ。」
「そう言えばお前。親父さんと仲直りしたのか?」
「何だよ急に。気持ちがブルーになるような話題すんなよな。」
「店継ぐの継がないので大喧嘩したろ?」
「したよ!しちゃ悪いの?するだろ!あの場合するのが普通だろ!して当たり前!しなきゃ損!」
「いっつも、この話題になると怒り出すよな。」
「あったりめぇよ。」
「なぜ江戸っ子?」
「だいたい何で長男だからって親の後を継がなきゃならんのよ!おかしくない?人権侵害だ!差別だ!もっと世の中の長男に自由を!of the people. by the people. for the people.」
「なぜリンカーン?まあな、お前の気持ちも分かるよ。でも、親父さんの気持ちも分からないでもないけどな。」
「何だお前!親父派か!親父派閥の人間か!親父国務長官か!親父書記長か!親父後援会会長か!親父マニアか!おや」
「うっせぇよ!親父国務長官とか親父書記長って何だよ!俺は、お前派でも親父さん派でもねぇよ!」
「お前が親父寄りに意見するからだろ!」
「してないって言ってんだろ!二人の言ってる事は、どっちが間違ってるってわけじゃなくって、どっちも正解だって事だよ。お前がこの先、人生をどう歩もうが、それは間違いじゃないってだけの話だよ。」
「いい事言うねぇ。この眼鏡の人。」
「かけてねぇよ!」
「眼鏡風味な人。」
「どんな味だ!」
「眼鏡。」
「もはや人じゃなくなってんじゃんかよ!」
「じゃあさあ。」
「ん?」
「今のこの現状も間違いじゃないって事?」
「ある意味な。」

第七話
「雪山遭難九日目の昼」

「あっ!!」
「どしたん?」
「・・・・・・・・・見間違えか。」
「・・・・・・・・・それにしても・・・・・・・・・暇だなぁ。」

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2006年8月 9日 (水)

「第八話」

ジェット兄さんが
ジェットに飛んでいる
ジェット兄さんが
今夜も飛んでいる
真ん丸お月様
目掛けて飛んでいる
しょぼくれ笑顔で
惚けて飛んでいる
スピーディーに
それはスピーディーに
スピーディーに
まさにスピーディーに
ジェット兄さんが
ジェットに飛んでいる
ジェット兄さんが
夜空を飛んでいる

ジェット兄さんは
そんなにジェットじゃない
ジェット兄さんは
それほどジェットじゃない
とか言う人も
中にはいるけれど
とか言わない人も
稀にいるけれど
アグレッシブに
それはアグレッシブに
アグレッシブに
とてもアグレッシブに
ジェット兄さんは
思いのほかジェット
ジェット兄さんは
予想外にジェット

ジェット兄さんの
ジェットのひみつは
ジェット兄さんの
そこんとこのあれは
誰も知らない
ジェットが知ってる
誰も知らない
あるかも分からない
ミステリアスに
それはミステリアスに
ミステリアスに
ここはミステリアスに
ジェット兄さんの
ジェットのひみつは
ジェット兄さんの
日記に書いてある

ジェット兄さん
ヒューンと飛んでく
ジェット兄さん
ビューンと飛んでく

ジェット兄さんも
疲れる時がある
ジェット兄さんも
止まる時がある
ハンカチ片手に
汗を拭きながら
常連顔して
喫茶店に入る
ノーコメントで
それはノーコメントで
ノーコメントで
軽くノーコメントで
ジェット兄さんも
アイスコーヒーを飲む
チョコレートパフェも
ぺろりとたいらげる

ジェット兄さんを
見ているだけじゃなく
ジェット兄さんと
一緒に飛んでみたい
追い着きたいな
追い着けるかな
追い越したいな
追い越せるかな
タイムイズマネーだ
それはタイムイズマネーだ
タイムイズマネーだ
世の中タイムイズマネーだ
ジェット兄さんを
待ってるだけじゃなく
ジェット兄さんと
ジェットに飛んでみたい

ジェット兄さん
僕の兄さん
ジェット兄さん
自慢の兄さん
ジェット兄さん
訳あり兄さん
ジェット兄さん
たぶん兄さん

ジェット兄さんが
ジェットに飛んでいる
ジェット兄さんが
今宵も飛んでいる

第八話
「ジェット弟」

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2006年8月16日 (水)

「第九話」

 私は、毎日、家と家から電車で九駅行った所の駅近くにある公園を往復する生活を送っている。
「にゃー。」
もちろん、好きでこんな生活をしているわけじゃない。原因は、会社を解雇された事にある。会社が経営難に陥り、大規模な経費削減と言う名目で、社員を集団リストラしたと言うわけだ。勤続二十七年と八ヶ月と十六日の私も例外ではなかった。この事実を家族に打ち明けられるはずもなく、気が付けば半年以上もの時間が経過していた。貰った退職金を取り崩し、なんとかそれを給料として毎月妻に渡してはいるが、そろそろそれも限界に近付いてきている。もってあと、二、三回がいいところだろう。最初の段階で無理にでも打ち明ければよかったと、今になって後悔している。思い返せば家族のため、会社のためと言って一生懸命に働いてきた二十七年と八ヶ月と十六日。
「にゃー。」
こうやって、公園のベンチに座り、ゆっくりとした時間の流れの中で、改めて自分の人生を見つめ直すと浮かんでくる。果たして本当にそうだったのだろうか?家族や会社を理由に私は、私自身から逃げていたのではないのだろうか?本当に自分がやりたかった事を諦め、妥協した人生を家族や会社のせいにして生きてきただけではないのだろうか?そう考えると本当の被害者は、そんな私の偽りの人生に巻き込まれた家族なのではなかろうか?
「にゃー。」
だからと言って、一度として家族と過ごした日々を不幸だと思った事などない。初めて子供が生まれた時の喜びは、私の人生の中で、もっとも幸せな時間であった。二人目、三人目の時も同様だ。それは、比べられるものじゃない。三人とも、私の愛すべき子供達だ。宝物だ。私は、この子達に出会えただけで、今の人生に感謝している。満足している。そして、こんな私を一生懸命に支えてくれた妻には、感謝してもしきれない。ありきたりだが、「ありがとう。」と言う言葉しか出てこない。愛すべき家族を持てた。この選択が、間違いだとは思ってない。
「にゃー。」
だけど私は、いったい何をしてるんだ?公園のベンチに朝から夕方まで座り続け、毎度顔を合わせる黒猫に餌を与え、今では、すっかり私になついている。
「にゃー。」
こんな事をするために私は、働いていたのか?こんな惨めな姿を見せるために子供達を授かったのか?こんな想いをさせるために妻と一緒に人生を歩む事を誓ったのか?今の自分では、到底答えの見つからない支離滅裂な自問自答をこうやって、半年以上も続けている。偽りの人生?よくそんな事を言えたもんだ。今までの二十七年と八ヶ月と十六日は、私の人生だ。後悔などない。しかし、正直疲れてしまった。この無意味な半年間を過ごし、こんな自分が嫌になった。
「にゃー。」
そしてまさか、自分が自殺を考える日がやって来るとは、思いもしなかった。しかし、こんな生き恥を曝してこれからの人生を生きて行くのならば、せめて最期ぐらい自分らしく生きよう。自ら幕を下ろそう。誰に迷惑をかけようが、誰が何と言おうが、この選択肢が間違ってるとしてもだ。私の人生だ。これは、私の人生だ。そして、これが私の人生なのだ。
「にゃー。」
公園の遊具で無邪気に遊ぶ野球帽の少年とその仲間達よ。こんな大人になってはいけない。死を考えながら生きてはいけない。希望を持って生きなさい。いつまでも夢を持ち続けなさい。人を信じる人になりなさい。そして、友を大切にしなさい。
「にゃー。」
私は、いったい何を言っているのだろう。私が言える立場ではない。未来がある君達に、未来のない私が言える事など一つもない。
「にゃー。」
「よしよし。すまんな。もう、お前に餌を上げられなくなってしまったよ。この公園にも、もう二度と来る事はないが、達者でな。」
「にゃー。」
「しかし、お前は、いいな。何の悩みも抱えてなさそうだし、自由で気ままで、のんびりと毎日を幸せに暮らせる人生で、まったく羨ましいよ。」
「それは、こっちのセリフだ。」
黒猫は、私を睨み付けてそう言うと、ベンチから軽やかに飛び降り、お尻を突き出すようにして身体を伸ばしながら欠伸を一つした。それから姿勢を正し、尻尾を真っ直ぐ突き立てると、ゆっくり歩き出した。そして、ゆっくりと公園を去って行った。

 あれから一ヶ月が経ち、今日も私は、いつもの公園のいつものベンチに座っている。いつもと変わらぬ空間。昨日と変わらない今日。今日と同じ明日。明日と同等の昨日。ただ一つ変わったと言えば、あの日以来、黒猫の姿を見なくなったと言う事だけだった。
「それでも地球は、いつも通りに回る・・・・・・か。」
そう呟きながらふと目をやると、いつかの野球帽の少年がいた。ブランコに揺られながら吹く、少年のオカリナの音色に耳を傾けつつ私は、ベンチの上に仰向けになり、考えるのをやめ、空だけを眺める事にした。

第九話
「FATHER」

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2006年8月23日 (水)

「第十話」

 夏休みを目前としたある晴れた日の少し蒸し暑い朝の事。いつものように私が目覚めると部屋には、黒いタキシードに黒いシルクハット姿でステッキを持ったおじさんがスッテプを踏んでいた。私は、その異様にコズミカルな音に起こされた。私は、寝ぼけ眼を擦りながら、この目の前の非現実的な出来事をどうにか受け入れようと、ステッキを蹴っ飛ばした。
「ハウッ!」
おじさんは、よろめいて倒れそうになったけど、持ち堪えた。
「おじさん誰?」
私は、勇気を出して、
「ハウッ!」
もう一度、ステッキを蹴っ飛ばしてみた。
「いやはや、パワフルなガールだ。」
ガール?確かにガールだよ。間違ってないよ。六年生だからね。
「おじさんは、どうして私の部屋にいるの?」
「おじさん?おじさんじゃないんだよ。ジェントルマンなんだよ。」
「私に何か用?」
「ワッハッハッハッハ。ワーッハッハッハ!」
大人笑いね。大人は、みんなこうやって笑う。そして大人達は、このおじさんのように、横に揺れ出して、涙流し出して、声を裏返して、そして疲れてステッキにもたれ掛かって休憩をする。
「ハウッ!」
なわけないよ。
「用があるから来たんじゃないか。ガール。」
「用って?」
「ひ・み・ハウッ!」
「用って?」
「ガール。ガールには、夢があるかい?」
「お金持ちになる事。」
「おじ・・・・・・いや、ジェントルマンには、夢があったんだよ。」
「何?」
「ガールは、知ってるかなぁ。マジチャン。」
「知らない。」
「いいぞ。マジチャンって言うのは。」
「ふーん。」
「人々に驚きと感動を与えるのだよ。」
「へー。よさそうだね。」
「鳩を出したり、体を半分にしたり。」
「マジシャンじゃん。」
「ハウッ!そして、最後にこう言うんだ。アテンションプリーズ。」
「それは、スチュワーデスじゃん。」
「ハウッ!おっと、ジェントルメンばっかり語ってしまっていたね。」
「マンね。」
「ガールの将来の夢は、なんなんだい?」
「だから、お金持ちになる事だって言ったよ!」
「スルッ。」
「チッチッチッ。ガール、そう何回もステッキを蹴っ飛ばされるわけにはいかないんだハウッ!なかなかやるじゃないかガール。今度、大会に出場するといい。そんなガールには、特別にこのステッキにまつわる不思議で愉快なお話を聞かせてあげよう。」
「何?」
「実は、このステッキ、普通のステッキに見えるが、喋るんだよ。」
「うそよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「うそ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「う・そ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「時にガール。」
「うそじゃん。」
「ハウッ!」
「何しに来たの?何かしに来たんでしょ?」
「歌を聞かせよう。
黄金を目指せー
黄金を目指せー
仲間を増やせばいいんだよ
仲間を増やせばいいんだよ
黄金を目指せー
黄金を目指せー」
「それだけ?」
「そうだとも。」
「その繰り返し?」
「もちろんだとも。
黄金を目指せー
黄金をハウッ!」
「もういいよ。」
「ガール。途中で止めるとは、酷いじゃないか。」
「だって目指してばっかりだったんだもん。」
「時にガール。」
「何?」
「冒険は、好きかな?」
「だから黄金の歌?」
「そうだ。だから大冒険だ。どうだい?」
「嫌いじゃないよ。」
「おじさんもだ。」
「ジェントルマンでしょ。」
「そうだ。ジェントルマンもだ。」
「した事あんの?」
「ない!」
「じゃ何で大冒険の話なんかしたの?」
「してない!」
「帰って!」
「帰らない!」
「帰って!!」
「やだー!はいっ!
黄金を目指せー
黄金を目指せー
仲間を増やせばいいんだよ
仲間を増やせばいいんだよ
黄金を目指せー
黄金を目指せー」
「やっぱり目指してばっかりじゃん。」
「時にガール。」
「何?」
「時にガール!」
「何!」
「続きを考えてくれ。」
「は?」
「歌の続きを考えてくれ。」
「何でよ。自分の歌じゃん。」
「もはやこの歌は、ジェントルマンとガールの二人の歌だ。」
「いやよ。」
「なぜだガール。」
「面倒臭いし、意味分かんないし。」
「面倒臭いかもしれないが、意味は、分かるはずだ。
黄金を目指せー
黄金を目指せー」
「仲間を増やせばいいんでしょ?」
「そうだ。黄金を目指すには、多くの仲間が必要なんだ。分かるかガール?」
「なんとなく。」
「大冒険には、危険がつきものだ。黄金を目指すとなれば、それは普通の何倍もの危険がつきまとうのだよ。しかし!仲間がいれば、危険などなんのそのなのだよ。仲間は、多ければ多いほどいい。分かるかガール?黄金を目指すには、多くの仲間が必要なのだ!」
「ジェントルマンは、黄金を目指してんだ。」
「特に目指してない!」
「テイッ!」
「ハウッ!チョップか。チョップなんだなガール。ステッキを折るつもりでのチョップなんだな。」
「帰って!!でないと本当にステッキ折るよ。」
「分かったガール。チョップをされてしまってはしょうがない。君を仲間にするのは、このジェントルマン、諦めよう。」
「目指してなかったんじゃないの?」
「じゃ、バハァイ。」
「ガチャッ。」
「バン。」
「何でこんなに朝から疲れなきゃいけないわけ?」
「カチャッ。」
「ガチャガチャ。」
「鍵か?鍵を掛けたのだなガール。」
「ガチャガチャ。」
「ガール!開けてくれないか?ガール!」
「ドンドンドン!」
「話は、まだこれからなんだガール!」
「ガチャガチャ。」
「鍵を開けてくれガール!もう一度だけ部屋に入れてくれガール!」
「ドンドンドン!」
「このままでは、終われないんだガール!話が終わらないんだよガール!」
「ドンドンドン!」
「聞いているのか?そうか。そうだったのか。聞きたかったのだな?このシルクハットにまつわる不思議で愉快なお話が聞きたかったのだな?してあげようじゃないかガール。してあげるから開けてくれよガール。実は、このシルクハットは、喋るんだよ。」
「ガチャガチャ。」
「ドンドンドン!」
「ガール!約束が違うじゃないかガール!もう一度だけ言うぞガール。ジェントルマンがもう一度、ガールの部屋に入らない事には、話が終わらないんだ。分かったかなガール?」
「ガチャガチャ。」
「分かってくれよガール!そうか。そうだったのか。歌だな?あの歌を聞きたいのだな?いいだろうガール。歌おうじゃないかガール。ガールのために心を込めて歌おうじゃないか。
黄金を目指せー
黄金を目指せー
仲間を増やせばいいんだよ
仲間を増やせばいいんだよ
黄金を目指せー
黄金を目指せー」
「ガチャガチャ。」
「まあ、あれだなガール。ガールは、頑固者だな。それは、けして悪い事ではない。むしろいい事だ。しかしだなガール。」
「ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ。」
「この場合は違うぞガール!今は、素直にならなくてはいけない時だ!心を開放するんだガール!心だけでなく、ドアも開放するんだガール!」
「ガチャガチャ。」
「ガァァァァァル!!」

「うるさいなぁ。まっ、ほっとけばそのうち諦めて帰るよね。」
そう言って私は、ドアの上に掛かってる時計を見た。
「いっけなーい!遅刻しちゃうよ。」
私は、大急ぎで洋服に着替えようと、ドアとは真逆にあるクローゼットの方に向きを変えた。
「時にガール。」
「ジェントルマン!?」

第十話
「少女とジェントルマン」

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