2017年10月18日 (水)

「第五百九十二話」

「ん?」
「ん?どうした?」
「今日は、霜が凄いなと思ってさ。」
「確かにそうだな。まあでも霜が凄くなりそうな夜だったからな。」
「そうだ。こう言う霜が凄い時は、どうすればその凄い霜が一瞬で消滅するか知ってるか?」
「そんな事、出来るのか?」
「ああ、出来る。」
「どうすればいいんだ?」
「ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁!!」
「どう言う角度からの嘘だよ!」
「何で嘘だって言い切れるんだ?」
「そんな方法、聞いた事がないからだよ!」
「そりゃあ、今初めて言ったからな。」
「お前の口からじゃなくて、世間からだよ!」
「まあ、世間ってのはこう言う豆知識を知らないもんだろ?」
「豆知識レベルの話じゃないだろ?嘘にもならない嘘以前の話だろ!」
「やった事ないよな?」
「ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁をか?」
「ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁をだよ!」
「やった事ある訳ないだろ!」
「だったら、嘘かどうか分かんないだろ!」
「そんな訳ないじゃん!って話だよ!やってみなくても明らかな嘘は嘘って分かるもんなんだよ!」
「やってみろよ!ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁!!もう、一瞬にして霜が消滅するからさ!」
「あのな?いいか?万が一だぞ?万が一、ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁したら、一瞬で霜が消滅するとしてもだ!そんな小っ恥ずかしい事、出来る訳ないだろ!」
「でも、一瞬にして霜が消滅するんだぞ?」
「代償がデカいだろ!それで地球に迫る危機を回避出来るなら話は別だけど、そもそも、そもそもいいよ。別に霜が凄くたっていいよ。いいんだよ。」
「いいのか!」
「そうだよ!」
「何か物凄く損した気分だよ!」
「どの辺が?」
「師匠が物凄い最終奥義を教えたのに、それを絶対に使わない弟子!みたいな。」
「ここ、師弟関係じゃないんだからいいじゃん。」
「でもあれだぞ?ケンカになっても使えるんだぞ?」
「何が?」
「ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁!!」
「何でだよ!」
「そうすれば、相手が一瞬にして消滅する!」
「どんな一撃必殺だよ!どんな原理なんだよ!消滅って!どんな成分を放屁してんだよ!」
「知るかよ!とにかく!ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁!!ってのは、万能なんだよ!」
「んな訳あるか!」
「カレーの材料を買って来るだろ?」
「何でカレーの話?」
「いいから、聞けって!カレーの材料を買って来るだろ?それをテーブルの上に置くだろ?そして、ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁!!すると、テーブルの上にカレーライス!」
「何でだよ!」
「だから、何でかは知らないって言ってんじゃん!朝、目が覚めたら大事な会議の時間まであと5分!そんな人生の大事な瞬間に寝坊しても大丈夫!ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁!!気付けば、会議室!」
「何でちょっと通販みたくなってんだよ!」
「難しい手術だって、ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁!!ダイエットだって、ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁!!人気で予約が取れない時も、ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁!!」
「いやもう、何でもありかよ!時間止めたい時も、ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁!!かよ!」
「時間は止められないだろ。」
「急に真面目!?どした!」
「いやだって、時間を止めるって、そう言うのは、映画や漫画の世界の話だろ?」
「映画や漫画の世界の話みたいなのを散々してたは、お前だろ!」
「そう言えば、お前今日、彼女にプロポーズするって言ってたよな?」
「ああ、するよ。」
「よし!」
「絶対やんねぇよ!」
「何で!」
「何でって、例えそれで成功するんだとしても、そんな事をしなくても成功するからだよ!」
「でも、100%じゃないだろ?人間の気持ちなんて分かんないんだからさ。」
「100%じゃないかもしれないけど、99%成功するよ!」
「でも!でもでも!ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁すれば100%成功なんだぞ!」
「100%失敗するよ!そんなプロポーズ!」
「それは、お前の放屁力が未熟だからだろ?」
「俺の放屁力の問題じゃなくて、見た目の問題だ!」
「あ、ちょっと待って!お前、どのタイミングで、俺のカレーライスを作ってくれ!って言うつもりだった?ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁の前か?ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁の後か?」
「何で勝手にプロポーズの言葉が設定されてんだよ!えっ?そりゃあ、結婚して下さい!って言った後にだよ。」
「前だ!前!一緒にケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁しましょう!って言う前に、ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁しなきゃ成功しない!後にケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁なんてしたら、単なる変態だろ!」
「どのタイミングでしたって変態まっしぐらだろ!プロポーズの言葉の段階から変態だけどさ!いやそもそも何でそのプロポーズの言葉選んどいて、言う前にケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁すんだよ!」
「まあでもアレだな。」
「何だよ。急に真面目な顔付きで。」
「プロポーズ、成功するといいな。」
「ああ、そうだな。ありがとう。」
「結婚式には絶対呼べよ!」
「当たり前だろ。」
「絶対、どっかのタイミングで、ケツを丸出しにして、そのケツを天空に突き上げて、放屁してやるからさ!」
「じゃあ、絶対呼ばない!」

第五百九十二話
「巨大隕石接近中」

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2017年10月11日 (水)

「第五百九十一話」

「あーっ!便意!便意!便意便意!」
「ガチャッ!」
「ギャアアアアアア!?」
「いやいやいや、それはアタシの台詞でしょ!」
「すまん!」
「便意も止まるわ!マンションで一人暮らしの美大生の女子の部屋のトイレに爺さんがいたら、便意も止まるわ!」
「だから、すまん!」
「鍵ぐらいしといてよね!」
「鍵?」
「鍵知らないの?」
「すまん!」
「すまんばっかね!鍵って、これ!これをこうするの!そうするとこう言う過ちを防げるの!画期的でしょ?」
「なるほど!」
「鍵ぐらいしといてよねじゃねぇよ!何!?何がどうなってんの!?何で爺さんが便所にいんのよ!?えっ!?夢?これ、夢なの?夢だとしたらアレね。便意喪失のアタシは、完全にベッドで漏らしちゃってるね!これは、夢でも現実でも最悪のパターンのヤツじゃん!」
「すまん、強烈な便意に襲われてな。そう言う時に限って宇宙船のトイレが壊れていて、ここのトイレを借りる事になってしまったのだ。」
「ん?んんん?自宅を宇宙船って呼ぶ奇特な人ですか?」
「いいや、自宅は自宅でちゃんとある。宇宙船は、宇宙船だ。」
「つまり?」
「宇宙人だ。」
「ああ、宇宙人か!宇宙人だったんだ!そっかそっか!宇宙人なんですね!って、いやいやいや、有り得ない有り得ない!どう見ても爺さんだし、むしろ幽霊!?その方が納得が行く!」
「幽霊?」
「幽霊知らないの?幽霊って言うのは、死んだ人がこの世に姿を見せた姿!」
「なるほど!やはり地球は、面白いな。だが、私はその幽霊?とか言う存在ではない。なんせ本当に強烈な便意だったからな。地球のデータベース上の仮の姿を選んでいる暇がなく、とっさにこの姿になり、テレポーテーションしたと言う具合だ。」
「物凄い状況に巻き込まれ過ぎて逆に清々しいわ!脳味噌がキレッキレだわ!今ならこの頭で、前代未聞のデザインが浮かびそうね!なら、本当に宇宙人って事?」
「まあ、キミからしたら私は、宇宙人だな。私からしたらキミが、宇宙人なんだがな。」
「おおっ!?宇宙人に出会い、更には自分が宇宙人となる超激レアな体験!?いや、そんな超激レアな体験に感動して泣いてる場合じゃなくて!何でアタシのとこのトイレなのよ!公衆トイレとかでよかったじゃない!」
「だから、強烈な便意で、姿も場所も選んでいる場合ではなかったのだよ。本当に、すまん!」
「まあ、強烈な便意だったら、そこんところは仕方ないわね。それで?爺さんが仮の姿って事は、本当の姿があるのよね?」
「もちろんだ。」
「ちょっとこの際だから、本当の姿を披露しちゃいなさいよ!」
「いや、それは出来ない。」
「何で?やっぱり幽霊?」
「違う。キミの心臓が止まるぐらいの衝撃だからだ。トイレを貸してもらった恩がある。その恩人を殺したくはないからな。」
「そんな事言っちゃって!本当の本当は、宇宙人じゃなくて幽霊なんじゃないの!」
「手は、こんな感じだ。」
「ウッ!ゲボ出そう!分かった分かった!ゲボ出ちゃいそうだから、爺さんの手に戻して戻して!」
「信じてもらえたか?」
「ええ、物凄い勢いで信じたわよ。即効信じた!それで?宇宙人って言ってもどっから来たの?」
「太陽だ。」
「たたた太陽!?たたた太陽!?あの太陽?」
「そうだ。」
「なら、太陽人って事!?」
「そうだ。」
「すいません。握手して下さい。」
「では、手を洗ってこよう。」
「ありがとうございます!いやあ、凄いなぁ!まさか太陽人に出会えるだなんて!ヤバい!なんか感動の嵐で涙が出て来た!」
「お待たせした。さあ、握手をしようか。」
「あざーす!あと、サインと写真もいいですか?」
「仮の姿でもいいなら。」
「もちろんもちろん!それにあといろいろと聞きたい事があって!」
「ウッ!」
「ん?どうしたんですか?」
「また、強烈な便意が!?」
「早くトイレへ!」
「すまん!」
「バタン!」
「でも、何でそんな強烈な便意に襲われてるんですかね?もしかして、何か変な物でも食べたんじゃないですか?」
「えっ?何か言ったか?ちょっと排便の音で聞こえなかった。ウッ!」
「何か!変な物でも!食べたんじゃないですか!」
「ああ、そうかもな!ディナーで食べた地球人にあたったのかもしれないな!」
「えっ!?地球人に?って、ちょっと?ちょっと何で?何でこのタイミングで便意がリボーン!?」

第五百九十一話
「いろんな意味でエマージェンシー」

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2017年10月 4日 (水)

「第五百九十話」

 ここは、地球の危機を管理する機関。地球危機管理局の局長室。
「局長!」
「おう!誰かと思えば、大統領じゃねぇか!久し振りだな!」
「挨拶なんかどうでもいいです!局長!どう言う事です!」
「挨拶は、大事だぞ?まあ、そこに座りなよ。」
「局長!どう言う事です!」
「そればっかだな!まあ、とりあえずコーヒーでも飲むか?」
「コーヒーなんかいいですから!私の質問に答えて下さい!」
「朝のコーヒーは、大事だぞ?ん?質問?質問って何だ?」
「あと20日で、地球に巨大隕石が衝突すると聞きました!どう言う事です!」
「ん?まんまだが?あと20日で、この地球に巨大隕石が衝突する。そして、地球は終わる。」
「終わる!?」
「ああ、終わる。綺麗さっぱり跡形もなく終わる。がっはっはっはっはっ!」
「笑い事じゃない!どう言う事なんですか!そもそも何で大統領の私にすら、こんな最重要な報告がないんですか!」
「大統領どころか、局でも一部の人間しか知らない事だ。一体どっから洩れたんだ?アイツか?」
「局長!貴方は、こんな最重要な事を隠そうとしてたんですか!」
「隠してたって、人聞きが悪いなぁ。」
「現にこうして隠してるじゃないですか!」
「隠してねぇよ!」
「20日後に地球は木っ端微塵に消滅する!対策はない!だから世界に混乱を招かない為に隠していた!そうではないって言うんですか!」
「ああ、そうだよ。大統領。」
「では、何か対策があっての事なんですね!」
「ああ、そうだ。むしろ、対策があるんだったら、わざわざ世界に混乱を招くような発表をしなくたっていいだろ?」
「・・・・・・。」
「コーヒー?飲むかい?」
「・・・お願いします。」
「まあ、これでも飲んで落ち着きな。」
「ありがとうございます。それで?この絶体絶命の打開策は、一体何なんですか?」
「我々、危機管理局は、待ってんだよ。」
「待つ?何をですか?」
「ヒーローをさ。」
「ヒーロー?」
「ああ、ヒーローだ。」
「ん?」
「ん?」
「具体的にヒーローとは?」
「ヒーローは、ヒーローだろ。大統領だって、子供の頃に憧れたりしただろ?」
「ヒーローって言うのは、コミックに登場するようない言うヒーローの事ですか?」
「ヒーローって言ったら、そう言うヒーローだろ。」
「人間の力で何か巨大隕石をどうにかするって話じゃなくて、いるかいないか、いやむしろ100パーセントいないヒーローの事ですか?」
「人間の力じゃあ、もうどうにもなんねぇよ。」
「ちょ、ちょっと待って下さい。えっ?どう言う事ですか?」
「いいか?大統領。この地球のピンチを救うヒーローって奴はな。地球が最大限にピンチにならねぇと姿を現されない奴なんだよ。」
「何でそんな事が分かるんですか!」
「ヒーローって奴は、そう言うもんだろ?」
「だからそれは!コミックの中の話じゃないですか!」
「いやそれは違う。そもそもなぜ?人間がその発想に辿り着いたのか?って話だ。つまりは、コミックに登場するようなヒーローって奴は、何度も何度も地球誕生から今まで、地球のピンチを救って来たって話だ。実在するんだよ。ヒーローって存在は。」
「そんなバカな!?」
「こうして人間は、地球が最大限にピンチな状態に陥った時の為に、危機管理を伝えてってるって訳だ。コミックって方法を使ってな。」
「なら、我々が今、出来る事と言ったら?」
「こうして美味いコーヒーを飲んで、ヒーローの登場を待つ!それだけだ!」
「すぐにミサイル発射の命令を!」
「待て大統領!そんな事をしたって無駄だ。この地球上の全てのミサイルを発射したとこで、どうにもなんねぇ。むしろミサイルの影響で巨大隕石衝突前に地球は滅びるだけだ。人間には、どうする事も出来ねぇんだよ。」
「・・・・・・。」
「なあ?大統領?」
「何ですか?」
「一体どんなヒーローが現れると思うよ?」
「はあ?」
「俺はなぁ?やっぱりベタな奴が現れると思ってんだよ!がっはっはっはっはっ!」
「私は、こんなに地球がピンチなんだから、複数だと思います。」
「おっ!大集結って奴だな!」
「はい。もう、メチャクチャたくさん集まっちゃう感じです!」
「がっはっはっはっはっ!そりゃあ、いい!見物だ!」
「あはははははははっ!」
「がっはっはっはっはっ!」
「ははははははははっ!」
「がっはっはっはっはっ!」
「はははははは・・・。」
「ん?どうした大統領?」
「って、そんな訳ないだろっ!」
「・・・まあ、20日後には分かる事だ。」

第五百九十話
「そして、20日後」

 ここは、地球の危機を管理する機関。地球危機管理局の局長室。
「局長!」
「おう!誰かと思えば、大統領じゃねぇか!20日ぶりか?」
「巨大隕石がレーダーから消えたって本当ですか!」
「ああ、本当だ!」
「じゃあ!」
「ああ、地球の危機は去ったよ。」
「本当にヒーローが現れたんですね!」
「その事なんだがな?大統領。」
「何ですか?」
「正直、何でレーダーから突然、巨大隕石が消えたかは、不明なんだ。ヒーローかもしんねぇし、そうじゃねぇかもしんねぇ。まあでも何だ!地球の危機は去った事実は変わりねぇ!」
「そうですか。少しヒーローに期待したんですけどね。」
「がっはっはっはっはっ!20日前は、あんなに青ざめてたのにな!」
「それは言わないで下さいよ。」
「でだ、大統領?来たついでに言っとくが、40日後に今度は、超巨大隕石が衝突する!」
「ええーっ!!」

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2017年9月27日 (水)

「第五百八十九話」

「何してるんですか?」
「娘さん、何してると思いますか?」
「お爺さんが散歩の途中で疲れて道端に座ってる?」
「正解!」
「大丈夫ですか?救急車呼びましょうか?」
「と、言いたいところだが、不正解だ。」
「え?何でわざわざそんなフェイントを?」
「せっかくの娘さんの優しさを無下にして申し訳ない。」
「なら、本当に何をしてるんですか?」
「自分探しだよ。」
「自分探し?よく若者がしてるあの自分探し?」
「いや、よく若者がしてるあの自分探しとは、違う。」
「どう違うの?」
「本当の意味の自分探しさ。」
「はい?」
「私はね。この歳になるまで、この自分が、本当の自分だと思って生きて来たんだ。だが、妙な違和感と共に考えた。本当の自分は、別にいるんじゃないか?とな。」
「失礼します。」
「娘さん!ちょっと、まだ話は終わってないぞ?」
「いやだって、お爺さんが明らかに頭が狂っちゃった人だから!」
「随分とダイレクトにモノを言う娘さんだな。確かに、今の話を聞いたら、頭が狂ったと思うのも当たり前だな。しかしだ。娘さん?私の頭は、至極正常!」
「いやいやいやいや、お爺さん!無理がありますって!狂ってないにしてもとても正常とは思えません!狂う寸前ですって!」
「そうか?」
「え?そうですよね?だって、本当の自分は、どこかにいるって言ってるんですよ?じゃあ、今のこの道端に座ってるお爺さんは、誰なんですか?」
「誰なんだろうな?」
「いやちょっともう、不思議だらけで関わり合いたくないんですけど。」
「きっとな。どっかの人生のタイミングで、中身が入れ替わってしまったんだな。」
「本気ですか?本気でそんなSFみたいな事を言ってるんですか?」
「娘さんには、分からないんだよ。この妙な違和感がな。自分のようで自分でない。本当の自分は、どこかにいるはずだと言うこの違和感。」
「救急車呼びましょうか?」
「本当の私が医者なら、是非ともそうしてもらいたいもんだ。」
「本当のお爺さんがお医者さんかどうかは知らないでけど、とりあえず病院にいた方が安心安全なんじゃないですか?」
「まあ、確かに大勢の人間が集まる場所として病院で自分探しをするのは、一つの案だな。」
「いやいやいや、そう言う意味じゃないですよ。じゃあ、アタシはとにかくこれで失礼します。」
「待ちなさい。娘さん。」
「優しさが仇になった。」
「とりあえずおでことおでこをくっつけてみよう!」
「変態じゃないですか!」
「変態?そうじゃない。そうする事によって、本当の自分かそうじゃないか判別出来るんだ。」
「そこに正解が存在しないのに、どうして判別出来るんですか!例えばでよ?例えば、お爺さんの言ってる事が全て真実だとして、仮にですよ?仮に、アタシがお爺さんの本当の自分だったとして、どうするんです?」
「どうするって、娘さんが私の本当の自分だったとしたら、本当の自分を見付けたんだから、本当の自分に戻るだけだろ?」
「アタシ、急にお爺さんになっちゃう訳ですか?」
「急にお爺さんになる訳ではない。人生軸が元に戻るだけだ。正しく修正されただけの事だ。逆を言うなら、私は本当は娘さんなのに、お爺さんになっていたんだぞ?」
「もう何だかとにかくさっさとこの場を離れたいんで、おでことおでこをくっつけて違う事を証明しますよ!変なとこ触ったら、ぶん殴りますからね?」
「分かった。さあ、娘さん。来なさい。」
「え?いやちょっと何してるんですか?おでことおでこじゃなくて、唇と唇をくっつけようとしてますよね?目なんか閉じちゃって!」
「別に、おでこと言う決まりもないからな。とりあえず、チューに変更した。さあ!来なさい!」
「犬のウンコでも食ってろ!」
「ぶはっ!!」
「やれやれだわ。」
「ありがとう。お嬢さん。」
「まさか!?」

第五百八十九話
「ウンコの自分探し」

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2017年9月20日 (水)

「第五百八十八話」

「はあ。」
「どうしたどうした!溜め息なんて!え?」
「いや、酷い渋滞だなと思ってさ。」
「確かにな。全く動かないな。目的地に着くまで眠っててもいいんだぞ?」
「運転手の横で助手席の俺が寝るなんて、そんな事は俺には出来ない。」
「そうか。ありがとう。」
「事故でもないし、そう言う時期でも時間帯でもないのに、何でこんな渋滞なんだ?」
「渋滞の原因は、ブレーキだって話を聞いた事がある。」
「ああ、あれだろ?ブレーキの連鎖反応みたいな話だろ?それなら俺も聞いた事あるけど、俄に信じがたい話だよ。実際にこうして原因不明の渋滞に巻き込まれるとさ。ブレーキとか言われてもな。」
「確かにな。一台のブレーキが、ここまでの大渋滞を引き起こすとは思えないしな。だけど、仕方ない。現実は、そうなんだよ。」
「まあそうなんだろうけどさ。しっかしあれだよな?何か時間を無駄にしてる感が物凄いよな。」
「だったらどうだ?この渋滞に巻き込まれてる無駄な時間を有意義に活用してみないか?」
「この無駄な時間を?一体どうやって?」
「この渋滞に巻き込まれてる無駄な時間を有意義に活用するにはどうすればいいのか?そう考えるだけで既に時間は有意義に活用されてるじゃないか!」
「哲学者か?みんながみんな、そう考えて、そう納得してたら、渋滞に巻き込まれてイライラする人間なんていないよ。それに、それに気付いて青天の霹靂みたく、その後の渋滞を清々しい気分でいられるか?俺は無理だ。」
「じゃあ、ゲームをしよう!」
「まだその方がいい。で、一体どんなゲームをするんだ?」
「格闘技だよ!」
「格闘技?そんなの普通に車内で有り得ないだろ!」
「車内じゃない。ここでするんだ。」
「頭の中?」
「そう!イメージトレーニングってあるだろ?それの応用編だよ!」
「そもそもイメージトレーニングが出来ないのに、いきなりその応用編は無理だ!」
「さあ来い!」
「いやだから無理だって!だいたい運転手が目を瞑っちゃダメだろ!」
「盲点だな!」
「まず気付けよな!」
「じゃあ、この空飛ぶボタンを押して、空を飛んで目的地まで行くってのはどうだ?」
「はあ?」
「じゃあ、この空飛ぶボタンを押して、空を飛んで目的地まで行くってのはどうだ?」
「いや、何度聞いても意味が分からないけど?空を飛んで目的地まで?空飛ぶボタン?」
「分かってるじゃないか!」
「この車、空を飛ぶのか?」
「あははははははははは!」
「なぜ突然の大笑い?」
「あははははははははは!だって、お前が飛びっきりのジョークを言うからだろ!」
「言ってないだろ?」
「この車、空を飛ぶのか?って、言っただろ?あははははははははは!」
「いや、話の流れ的に言うだろ。」
「この車が空を飛ぶ訳がないだろ!この車が空を飛ぶなら、最初から空を飛んで目的地まで行けばいいじゃないか!」
「お前が空飛ぶボタンとか言うから言ったんだろ!」
「このボタンを押したって、ハザードランプが点滅するだけだよ!あははははははははは!」
「こえーよ!ひたすら、こえーよ!じゃあ、何で空飛ぶボタンの話なんかしたんだよ!意味分かんねーよ!」
「じゃあ、このミサイルが発射するボタンを押して、前の車共を一掃するって言うのは、どうだ?」
「ハザードランプが点滅するだけだろ?」
「じゃあ、押してみろよ。」
「何だよ!急にシリアスな顔して!」
「ミサイルが発射するか、ハザードランプが点滅するか、やってみればいいじゃないか。」
「シリアスな顔やめろよ!ミサイルなんか発射する訳がないだろ!」
「だから、そう思うなら、やってみればいい。ただし、ミサイルが発射された場合、考えれないぐらいの数の人間が、死ぬぞ!地球の人口が今の三分の一になるぞ?」
「どんなミサイルだよ!だいたい何で、そんなミサイルがこの車に搭載されてんだよ!」
「標準装備だ。」
「だとしたら狂ってんだろ!その自動車メーカー!」
「さあ!どうする!押すのか?押さないのか?」
「押さないよ。」
「あははははははははは!」
「何で大笑い?」
「あははははははははは!ジョークだよ!ジョーク!このボタンを押してもミサイルなんか発射されないよ!ハザードランプが点滅するだけだよ!そんなこの世の終わりみたいな顔するなよ!」
「いやしてない。」
「大丈夫!明日も今日と変わらずあの地球は回ってる!」
「どんな角度の励ましだよ!」
「例えば、今横を通過してった家族連れの車、本当の家族じゃなかったら、どうする?」
「どうするって、別にどうでもいいよ。」
「どうでもいい?なぜ?」
「楽しそうな車中だっただろ?別に、本当の家族だろうがどうだろうが、幸せそうなら別にどうでもいいだろ。」
「お前、何か宗教でも始める気か?」
「何でそうなる!そこまでの偉大な格言を口にしたか?」
「それともあれか?プロポーズの練習か?」
「どんな恋愛の果てのプロポーズだよ!」
「さあ、そんなこんなで目的地に到着だ!実に有意義だったな!」
「無駄話のオンパレードだったじゃねーか!」
「あれ?お前、少し老けたか?」
「お前もな!」

五百八十八話
「火星マデ残リ500メートルデス」

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2017年9月13日 (水)

「第五百八十七話」

「なあ?剣氏?」
「何だ?盾氏?」
「勇者、来ないな。」
「そうだな。」
「結構、来ないよな。」
「そうだな。」
「こんなにも来ないなんて思わなかったよ。」
「そうだな。」
「いやマジで!」
「そうだな。」
「なあ?剣氏?」
「何だ?盾氏?」
「どうして、こんなにも勇者は、来ないんだ?」
「世の中が、平和だからじゃないか?」
「世の中が、平和だからか!」
「たぶん、そうじゃないか。」
「確かに、魔物を見てない気がする!」
「見てないな。」
「なるほど!平和だから勇者が来ないのか。なるほどなるほど!でも、剣氏?」
「何だ?盾氏?」
「暇じゃないか?」
「暇だな。」
「異様に暇じゃないか?」
「異様に暇だな。」
「ムチャクチャ暇じゃないか?」
「ムチャクチャ暇だな。」
「トコトン!トコトントントン!暇じゃないか?」
「暇だな。だが、盾氏?」
「何だ?剣氏?」
「平和だ。」
「ああ、平和だ。」
「なら、それでいいじゃないか。」
「ああ、これはこれでいいのかもしれないな。」
「うん。」
「なあ?剣氏?」
「早いな?盾氏?どうした?」
「これはこれで、いいとしてだ。これはこれで、こっちに置いといてだ。やっぱり僕は、勇者と共に大魔王的な奴に立ち向かって行きたいって夢を捨てきれない!」
「まあ、その気持ちは分かるよ。盾氏。」
「そうだろ!そうだろ!剣氏!同じ伝説の武具としては、やっぱり勇者と共に大魔王的な奴に立ち向かって行きたいだろ!」
「ああ、分かる。分かるが、盾氏?」
「何だ?剣氏?」
「平和だ。」
「ああ、平和だ。」
「それでいいじゃないか。大魔王的な奴が現れて、勇者と共に退治し、平和を取り戻したとして、一時的にこの世界が平和じゃなくなると考えたら、ずっと平和ってのは、願ったり叶ったりじゃないか。」
「確かに、確かに剣氏の言う通りだ!剣氏の言う通り!」
「僕らが使われない世の中が、一番なんじゃないか?」
「ああ、そうだな。でも、剣氏?」
「何だ?盾氏?」
「そうすると、僕らは一体何の為に存在してるんだ?このままずーっと世界が平和だったら、僕らは一体何の為に存在してるんだ?」
「それはきっと、万が一の為に存在してるんじゃないか?」
「万が一、か。」
「不満かい?盾氏?」
「いやいやいや!不満じゃないよ!剣氏!ただ!」
「ただ?」
「ただ、これでいいのかな、ってさ。」
「ん?どう言う事だい?盾氏。」
「こうして犬に、おしっこ引っ掛けられるだけの運命なのかな、ってさ。」
「平和だ。」
「平和、か?これって、平和なのか?犬に、おしっこ引っ掛けられるだけの運命だとしたら、こんな平和なんか僕は、嫌だ!」
「そうかもな。」
「そうさ!」
「でも、盾氏?」
「何だ?剣氏?」
「大魔王的な奴の攻撃を防いで防いで、防ぎ続けて、壊れてしまうかもだぞ?」
「それはそれで、嫌だ!」
「だろ?」
「難しいな!平和って!」
「それが、平和だ。」

第五百八十七話
「盾と剣を洗う勇者の空想」

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2017年9月 6日 (水)

「第五百八十六話」

 飛び降り自殺したら、絶対に死ぬだろう高さのマンションの屋上に男が2人。
「スナイパーですか?」
「はい?いや、スナイパーじゃないです。」
「なら、こんな所で何をしてるんですか?」
「自殺ですよ。」
「じ、自殺!?」
「いや、普通ぼーっとこんな場所に立ってる人がいたら自殺でしょ。そう言う貴方も自殺ですか?」
「いえいえいえ、私はスナイパーです。」
「ああ、だから。」
「はい。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」

「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・スナイパー!?」
「そうです。」
「スナイパーって、初めて見ましたけど、映画やゲームの中から飛び出して来たみたいな出で立ちなんですね!?」
「映画やゲームで研究しましたから。」
「ああ、だから。」
「はい。」
「その?あれですか?やっぱり、誰かの依頼で、誰かを殺すんですか?」
「はい。誰かの依頼で、誰かを殺すんです。スナイパーですから。」
「いやあ、そう言うのって、ない事じゃないとは思ってたんですけど、こんな身近であるとは思ってもみなかったです。」
「きっと、気付かれてないだけで、結構ありますよ。」
「そうなんですか!?」
「それよりも、こんなスナイパーの私の話よりもです。なぜ、自殺を?」
「スナイパーさんの話、興味津々ですけどね。僕ですか?在り来たりな話ですよ。僕、この向かいのマンションに住んでるんです。」
「同じぐらいの高さなのに、わざわざ向かいのマンションで飛び降り自殺と言う事は、そこにも何か理由があるんですね。」
「ええ、妻にね。」
「奥さんに?」
「妻に、自分が飛び降りる瞬間を見せようと思いましてね。その光景を目に焼き付けてもらおうと思いましてね。」
「穏やかではないですね。」
「所謂、復讐ってヤツです。」
「復讐ですか。」
「僕も僕ですけど、妻も妻なんです。」
「何か深い事情がありそうですね。」
「僕、小さな会社を経営してるんです。」
「社長さんでしたか。」
「社長と言ってもホント小さな会社で、しかも全く上手くいかないんです。それで毎日毎日、妻とは大ゲンカです。」
「それは大変ですね。」
「ええ、会社は上手く行かない。家庭も上手く行かない。負のスパイラルって言うんですか?どんなに仕事の経営が上手く行かなくてもそれでも妻は、応援してくれるもんだと思ってたんです。」
「そうでしたか。」
「でも、毎日毎日、家に帰ればお互いを傷付け合う暴言の嵐です。」
「しかし、どん底の今の状態が、ずっと続くとは思えません。今は、じっとガマンする時期なのではないですか?なにもこんな死に方する必要ないじゃありませんか。」
「言われたんです。妻に。」
「なんと?」
「アナタなんか、死ねばいい、と。だから、死んでやる事にしたんです!望み通り死んでやる事に!もう、愛はないんだって確信しましたから!」
「人を殺して生業にしている私が言うのもあれなんですが、死ぬんじゃない!」
「えっ!?」
「いや、やはり驚かれますよね。しかし、やはりこんな死に方は、おかしいですよ。在り来たりな言葉で言うなら、逃げてるだけですよ。それはきっと、私が想像も付かないぐらいの辛い日々をお過ごしだったのでしょう!なにもかもをお一人で抱え込んでいたのでしょう!それでもやはりこれはおかしいですよ!」
「スナイパーさん。」
「まだ何か!まだ何か別の方法があるはずです!まだ何かやり残した方法があるはずです!見過ごしてる方法があるはずです!一時の感情で、こんな事をしたらダメです!事実どうでしょう?今まで誰にも話せなかった事を見ず知らずのスナイパーに語る事で、少しは気が晴れたのではないですか?」
「ええ、実は少しだけ気が晴れました。」
「そうでしょ!だから、自殺を考える前に、もう一度冷静な頭で、何か別の方法を考えてみて下さい。復讐して死ぬよりも離婚して生きてもいいじゃありませんか。そんなに頑固に生きてても息が詰まるだけです。負のスパイラルに巻き込まれるだけです。」
「スパイラルさん!」
「スナイパーです。」
「スナイパーさん!ありがとうございます!僕、目が覚めました!もっともっともっともっと!色々な方法を考えてみます!」
「はい!」
「そうと決まれば、こんなとこで自殺なんかしてる場合じゃない!まずは、家に帰らなきゃですね!」
「そうですね!」
スナイパーと固い握手を交わした男は、屋上から去って行き、自分のマンションへと帰って行った。スナイパーは、その一部始終をスコープから見届けると、抜群のタイミングで引き金を引いた。
「申し訳ない。自殺では、私に報酬が支払われないのです。そうですよね?奥さん。」

第五百八十六話
「スナイパーとターゲットとクライアント」

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2017年8月30日 (水)

「第五百八十五話」







「どうなっている!?」
「どうなってる?それは、こっちの台詞だぞ!教授!どうなってんだ!」
「そんなバカな!?有り得ない!?こんな事が有り得るはずがない!?」
「有り得るはずがない?有り得るはずがないだって?見ろ!こいつをよく見てみろ!有り得てんだよ!教授!これが現実なんだよ!教授!」
「こう言う場合は、こう言う方法で今まで解決出来ていたんだ!」
「今まで?今までが何だよ!そう言うの俺には関係ないんだよ!俺が知りたいのはな!これからなんだよ!これからの先の妻との人生なんだよ!」
「ここまで、アンドロイドはここまで進化してしまったと言う事か!?」
「教授!なあ教授!一体どっちが本物の俺の妻なんだよ!」
「申し訳ない。もはや今のアンドロイド法では判別が出来ない。」
「そんな・・・・・・。」
「一体・・・どうすれば。」

第五百八十五話
「震えた線」

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2017年8月23日 (水)

「第五百八十四話」

「神の」
「ああ、神父様?有難い言葉の最中申し訳ないんだが、俺の頼みを聞いて欲しいんだ。」
「私語は慎むように言われています。」
「いいじゃないか。俺は、間もなく刑が執行されて死ぬ身なんだぞ?少しぐらいいいだろ?きっとそれぐらいは神も許してくれるさ。」
「・・・・・・。」
「なっ?」
「・・・何ですか?」
「時間が無いから単刀直入に言うぞ。俺をここから逃がしてくれ。」
「なっ!?」
「俺は死刑囚で、間もなく刑が執行される。これが最後のチャンスなんだ。」
「そんな事が出来る訳がないでしょう。私は、神に仕える身です。貴方は、死刑囚で間もなく刑が執行されるのです。」
「だから、この最後のチャンスに賭けてみたいんだ。」
「人生最後のジョークを言っているのですか?」
「これがジョークを言ってる人間の目に見えるか?神父なら分かるだろ?」
「だけど、一体どうやって逃げると言うのです?何か秘策があると言うのですか?もし、万が一にもこの刑務所を逃げ出せるとして、まず初めに、ここで私が貴方に手を貸さなかったら話はそれで終わりです。」
「アンタは、俺に手を貸すよ。」
「いくら私が神父だとしても貴方は死刑囚です。犯してはならない罪を犯した人間です。そのような人間に手を貸すほど、私は神父として人間が出来ていない。」
「俺にはな。神父様、人の寿命ってのが見えるんだよ。丁度ここ、そう胸の辺りに生年月日みたく見えるんだ。」
「そんな話を信じろと?」
「信じてもらわないと困る。だって、神父様?アンタの寿命は、明日なんだからな。」
「な
っ!?そんなバカな話がある訳がない。」
「これは、百発百中の能力なんだよ。外れた事はない。間違いなくアンタは、明日死ぬ。」
「仮に私の寿命が明日ならば、貴方の寿命は、今日ではないですか。なぜ、明日死ぬ私が、今日死ぬ貴方を助けなければならないのです?矛盾しているでしょう。」
「この能力には、続きがある。」
「続き?」
「病死だ。」
「どう言う意味です?」
「あくまで俺の見える寿命ってのは、病死での寿命のみで、予測不可能な事故や自殺なんかは、除外される。きっと遺伝子レベルの能力ってヤツだ。そして、その寿命は、病の根源の場所に浮かび上がる。つまり、神父様?アンタは明日、心臓発作で死ぬ。」
「なっ!?」
「人生の最後に、良い行いをしたいとは思わないか?」
「貴方の脱獄に手を貸す事が良い行いだとは到底思えませんが?」
「俺の罪は知ってるな?」
「殺人医師。貴方が手術をした患者が何十人も死んでいる。手術中を含めれば更に人数は増える。」
「俺は、誰も殺しちゃいない。だが、致命的だったのは、院長の死だったな。」
「ではなぜ、患者が死ぬのです?患者を救うのが医師なのでは?貴方がしているのは、まるで逆の行為です。」
「まるで逆か。これでも運命に抗おうと必死だったんだがな。神父様に言われるのが一番キツいな。」
「まさか!?救えない命を救おうと!?いやしかし、そんな死刑囚の話、信じられる訳がない。」
「ああ、俺も運命を受け入れて、このまま今日、死のうと思ったよ。アンタがここにやって来るまではな。」
「どう言う意味です?」
「言っただろ?これが最後のチャンスだと。」
「だから、それはどう言う意味なのです。」
「アンタの手術を俺にやらせてくれ!」
「なっ!?」
「最後だ。運命に抗うのは、これで最後だ。アンタを救えなかったら、俺は生まれ持ってのこの呪われた運命を受け入れよう。」
「まさか!?それでもなお、医師を目指したと言うのですか!?」
「ふっ、占い師にでもなれば、今頃は大金持ちだったかもな。」
「しかし、どうやってここから?」
「逃げるのは簡単だ。」
「ここは刑務所ですよ?」
「神父様?誰がいつ、刑務所の外へ逃げると言った?」
「ならば一体どこへ逃げようとしてるんですか。」
「医務室へ行ければそれでいい。いや、手術が出来る場所へ、だ。心臓発作の演技なら得意だ。嫌ってほど目にしてこれまで生きて来たからな。」
「そんな上手く行くもでしょうか?」
「どうせ明日には死ぬ運命の二人なんだぜ?神父様。」
「・・・・・・。」
「なっ?」
「・・・分かりました。」
「ありがとう。」
「だけど、誰も死にませんよ。貴方が私を救い、そして私が貴方の無実を証明してみせます。」
「本当に、ありがとう。」
「では、始めましょうか。もう時間がありません。」
「分かった。」
「お願いしますよ。」
「神父様もな。」
「はい。誰かーっ!!誰か来て下さーいっ!!」

第五百八十四話
「死ぬには良い日だ、と」

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2017年8月16日 (水)

「第五百八十三話」

「ねぇ?アナタ、永遠の愛って、どう思う?」
「テーマが重い!夕食でカレー食ってる時にするような話題じゃないだろ!」
「夕食でカレー食べてる時にするような話題じゃないって、逆に夕食でカレー食べてる時にするような話って言うのがあるの?」
「あるだろ!ジャガイモの話とかニンジンの話とか!」
「具?具の話?じゃあ何?永遠の愛とかって話は、しちゃいけないって言うの?」
「したらいけないとは言ってないだろ?ただ、いきなりはテーマが重いって言ってるだけだ。」
「ジャガイモの話とかニンジンの話とかって言われてもジャガイモもニンジンも入ってないから出来ないわ。」
「ジャガイモとニンジン入ってない入ってないと思ってたら、俺に意地悪してるんじゃなくて、根本的に入ってないのか!?」
「そうよ。」
「何でジャガイモとニンジン入れてないんだよ!味がおかしくなるだろ!ジャガイモとニンジンは、レギュラーメンバーだろ!カレーの具の定義をいくら崩したとしてもカレーがカレーを保ててるのは、ジャガイモとニンジン入れてるからだろ!」
「味、味って言うけど、アタシがジャガイモとニンジン入ってないって言うまで、アナタ気付かなかったじゃない。」
「気付いてたよ。」
「嘘よ!」
「気付いてたって言ってんだから気付いてた!」
「子供ね。」
「お前さぁ?なあなあなあ?ジャガイモとニンジンのレギュラーメンバー無しで、何でこう言うピーマンみたいなトリッキーな具を使うんだよ!カレーは、冷蔵庫の余り物を処分する為の便利レシピじゃないんだぞ!」
「ピーマンがトリッキー?ピーマンがトリッキーだったら、こうしてスプーンでカレーをすくってイチゴが乗ってたらどうなるの?」
「それはもう、カレーの向こう側だよ。」
「カレーの向こう側?」
「もはやそれは、カレーであってカレーでない。カレーの向こう側だ。」
「いや、カレーであってカレーでないって、カレーじゃん!」
「カレーにイチゴ入れたいなら!カレー食った後にイチゴ食べればいいだろ!って話だよ!シンプルがベストって言葉があるだろ?カレーはまさにそれだよ!カレーこそが、シンプルがベストなんだよ!カレーの為に作られた言葉って言っても過言ではないんだよ!」
「いや違うでしょ。だから、海鮮のカレーも好きじゃないんだ。」
「そうだよ!」
「美味しいじゃん!」
「美味しいかもしれないが、あれはあれで邪道だ!」
「海鮮のカレーが邪道って、厳し過ぎない?」
「カレーは、厳し過ぎるぐらいが丁度いいんだ!」
「はあ?」
「いいか?具を変えるとしたら、肉だ!それ以外のバランスを崩しちゃいけないのがカレーだ!国と一緒だ。」
「違うでしょ!国とは!」
「いいや、一緒だ。国のトップを変えてもいいが、国民の資質を変えたらその国は崩壊する。カレーと一緒だ。」
「何か、これこそカレー食べながらする話なの?」
「カレーの話をカレー食べながらしないでいつするんだ?旅行の高速で渋滞に巻き込まれてる時にするのか?いいか?そんな時にカレーの話をしてみろ?その旅行の昼食は絶対にカレーだ!」
「いいじゃん!カレーで!」
「よくないだろ!旅行ってのは、その土地その土地で、名物を食うもんだろ!それを差し置いてカレーはないだろ!カレーは!何で俺、ここまで来てカレー食ってんだ?ってなるだろ!自己嫌悪で自殺するかもしれないだろ!」
「考え過ぎよ!そんな事で自殺なんかしないでしょ!」
「確率はゼロじゃない。」
「真顔でカレーを一口スプーンですくって口に運んで何言ってんの?」
「いいや、ジャガイモとニンジンが入ってない以上、これはカレーであってカレーでない。単なる茶色いヤツだ。」
「ヤツって何よ!ヤツって!」
「で、永遠の愛は、ある!」
「突然何!?」

第五百八十三話
「カレー、愛」

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